※この作品はR-18です。

明日から使えることわざ・故事講座   作:筆先文十郎

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第十七回&十八回&特別編 明日から使えることわざ・故事講座

 本番5秒前! 4,3,2,1

 

「皆様こんばんは。『明日から使えることわざ・故事講座』のお時間です。司会は私、筆左記(ふでさき)分重郎(ぶんじゅうろう)です。どうぞよろしく」

 眼鏡をかけた小太りな男が頭を軽く下げてお辞儀する。

「さて今回も多くの方から応援のお便りを頂きましたので一部をご紹介させていただきます」

 そう言って筆左記は手紙が入った箱から無作為に取り出す。

「まずは……、おやまたもや以前紹介させていただきました某県在住の筆先さんからのお便りです。日本を代表するコメディアンがお亡くなりになって小説を書く気力がなくなったのですでこの小説はこれで終わりに──」

 

「すんじゃねぇよ、コラアアアアアアアァァァァァァァッッッッッッ!!!! 」

 

 ボオオオオオオォォォオオオオオオォォォッッッッッッ!!!! (手紙を火炎放射で焼き尽くす音)

 

「ハァハァ……も、申し訳ございません。手紙が勝手に(・・・)燃えてしまい読めなくなってしまいました。それでは気を取り直してこちらのVTRをどうぞ!」

 

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「ふふふ」

 とある空き教室で、一人の男子生徒が笑っていた。その笑みは己の欲望に満ちた邪悪そのものだった。

 そんな笑みを浮かべているのは藻部山(もぶやま)壁男(かべお)。名前の通り、主人公達の後ろにいそうな目立つことのない男だ。

 しかし彼は 他の男子学生とは違うものを持っている。それは他人を操ることのできる催眠アプリが内蔵されたスマートフォンを所有しているということだ。

 この催眠スマホを使って、彼は様々な女性を毒牙にかけた。美人であれば同級生だけでなく上級生や下級生、教師にも手を伸ばした。

 そして今日、彼はとある女子生徒にある催眠を施した。それはこの教室にいる自分を見た瞬間、意中の相手に見えるというもの。悪い噂がある自分が恋い焦がれる男子生徒に見える。そして情交を重ねた所で催眠を解く。

「その時彼女はどんな顔をするだろうか」

 そんな想像をしていた時、教室の扉が開く。

「お、来たか……え?」

 壁男は固まった。そこに立っていたのは「ウホッ、イイ男……」と言いたくなる、がっしりとした体格の青いツナギが似合いそうなちょっとワルそうな男がいた。その後ろには男性に興味がありそうな普通っぽい男子生徒の姿もあった。

「おや? 俺達の愛の巣に何のようだい?」

 その言葉に壁男の危機管理センサーはMAXになった。

 

 ここから逃げないと‼

 

 横を通りすぎようとした壁男を、ちょっとワルそうな男が腕を掴んだ。

「どこに行く気だい?」

 女を口説くような囁きにビクッと体を震わせた壁男は催眠スマホを男にかざす。しかし男に反応はない。

「ど、どうして……」

 狼狽する壁男をよそに、後ろに立っていた男がちょっとワルそうな男に尋ねる。

「別にいいじゃないですか。彼はノンケみたいですし。それにイイ男じゃない。ほっといていいじゃないですか?」

「甘いな」

 優しく否定する。

「真のホモというのは男ならば誰だって喰ってしまうものなのさ」

 男の言葉に、尋ねた男は涙する。

「僕が間違っていました」

 そう言うと男はちょっとワルそうな男と一緒に壁男を挟み込むように立つ。

 

 その後、空き教室で壁男の叫び声が響いた。

 

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「さて。今回は催眠を仕掛けようとした主人公でしたが、いい体格を持つ男には通用しませんでした。このことわざを

 

 

 ゲイは身を助ける(芸は身を助ける)

 

 

 と言います。これは男同士の性行為は体力が必要→そのためには体を鍛える→その結果精神も鍛えられて催眠にかからなかった。それから転じて別のことのために身に付けたものが、何か事あるときには思わぬ役に立つという意味です。

 またさらに、ちょっとワルそうな男は相手がノンケで不細工でも喰ってしまうものだと相手の男性を説き伏せました。

 このことわざは

 

 

 モーホー竿を選ばず(弘法筆を選ばず)

 

 

 と言います。これは本当に優れた者は道具や相手にこだわらないという意味です。最後に特別編として」

 そう言って眼鏡をかけた小太りな男はうっすらと浮かんだ涙をハンカチで拭う。

「2020年3月29日。お茶の間に笑いを届け、日本中の老若男女から愛された一流コメディアンS氏がお亡くなりになりました。その悲しみは一週間以上経過した中でも人々の心に穴を空けているほどです。そこでS氏と視聴者の皆様にこのことわざを送ります」

 そう言って男は

 

 虎は死して皮を留め人は死して名を残す

 

 と書かれたフリップを出した。

「このことわざは、獣の王者の虎は死んで後にりっぱな毛皮を残すように、優れた人は死後に名を残す。そんな人間になるように努力せよ、という意味です。

 今なお涙を流されている方は涙をしっかり流し、今できることに全力で取り組みましょう。また今歩みだしている人はS氏が安心してあちらの世界で心置きなくコントが出来るように頑張っていきましょう。

 それではこの辺で」

 




前回、投稿する前に頭を整えようと寝たら、朝になっていました。
楽しみにされていた方がいましたら本当にごめんなさい。

最後に。
日本中に笑いと笑顔を届けて下さった志村けんさんにお礼の言葉を送ると共にご冥福をお祈りさせていただきます。

志村さん、本当にありがとうございました。
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