※この作品はR-18です。

ファム・ファタール~寝取らせモノが大好きな剣士が異世界転移した場合~   作:幻闇

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一章 そして、巡り合う
1話 落ちる


――ドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!

 

 清冽な流れが、凄まじい勢いで滝壺に流れ落ちる。

 観光地にすらならない程、奥深い森の中の大瀑布。

 

 そこに修行僧の如く滝に打たれる男がいた。

 白い装束に身を包んだ、身の丈190cm程の引き締まった鋼の様な筋肉に覆われた肉体。

 作られた筋肉では無い。闘うという事に特化した結果鍛錬され、研ぎ澄まされた厚重ねの打ち刀の如き筋肉である。岩を荒々しく削りだしたかの如き面に、巌(おごそ)かといえるほどの神妙さで閉じられた眼は、邪魔をするのであれば天上の神々すら打ち砕かんと言わんばかりの意思を感じさせた。

 

 つまり……とても――――――――――――逞しすぎた。

 

 名を荒神黒斗(あらがみくろと)。とてもそうは見えないが、昨年高校を卒業した19歳の青年であった。

 

 幼い頃に両親を事故で亡くした黒斗は、父方の祖父に引き取られ育てられた。祖父の名は荒神鉄心(あらがみてっしん)。古流剣術の道場主たる彼は、黒斗を学校に通わせる一方、その戦いの技術の一切を黒斗に伝授してくれたのだ。

 

 稽古の時以外は優しさに満ち、間違ったことをすれば厳しく教え導いてくれた祖父も先月、寿命により亡くなっており、親しい家族はもはや居なかったが、己の全ては伝えたとばかりに満足そうに息を引き取った祖父を看取る事が出来たのはとても幸運だったと、両親の死を看取れなかった黒斗は思うのだった。

 

(卒業後は道場を継ぎたいと思ってたんだがなぁ……じいちゃんが死んで元々少なかった門下生は皆辞めちまったし。とりあえず滝に打たれに来て考えればなにか思い付くかと思ったが……)

 

 滝に打たれながらそんな事を思案する黒斗。元々道場を継ぐつもりであったので進学や就職など、何もしていなかったのである。

 いかに鋼の肉体を持つ古流剣術の達人といえど、彼はまだ若かった。

 

(思い返せば修行や稽古に明け暮れて、女の子とも満足に話せなかった高校生活。夏休みは海外に武者修行。あー……セックスしてぇなぁ……彼女がほしいぜ)

 

 滝に打たれる敬虔な修験者の如き黒斗もなんといっても童貞の19歳、雑念だだもれであった。

 

(帰りにエロ漫画でも買って帰ろう……こないだ読んだ奴は滅茶苦茶ヌけたから同じ漫画家のを探してみるか)

 

 AVより漫画派の黒斗であった。

 ちなみに彼が気に入ったものは妻をあえて寝取らせて輪姦させる夫と喜んで犯される妻、ハードな輪姦の後にイチャラブセックスという展開のモノである。

 本気寝取られはNGであくまでプレイの一環としてのモノが好みの様だ。

 

(まぁ流石に彼女が出来てもそんな事は出来ないが……普通嫌だろうしな……まぁ出会いがそもそもないんだが……――いかんいかん……進路だ、進路を考えよう……――んっ?)

 

 雑念しか考えられなくなってきた黒斗は迷いを振り払うようにかぶりをふると、閉じていた眼を開けて困惑した。

 

 

 景色が歪んでいる。

 目の錯覚かと疑い何度か瞬きを繰り返すが、やはり目の前の景色が歪んでいる。

 黒斗の前方すぐ前の空間を中心に球形に歪みが生じているようだ。

 

「なんだこりゃ……下手に動いたら危なそうだな。様子を伺うしかないか……むっ!! 大きくなっている――だと?」

 

 目の前の歪みが大きさを増していく、幼い頃にみたSFアニメの光景が黒斗の脳裏によぎる。

 あれはたしか……世界の神隠しは次元に開いた空間の歪みに引き摺り込まれるせいだとかなんとかいう話だった。場所や時間、時には世界すらも飛び越えて――。

 

「むぅ……吸い込まれっ!! くおおおおおおおおおおお…………――――」 

 

 踏み留まろうとした黒斗であったが、空間の吸引力の凄まじさにたいした抵抗も出来ずに吸い込まれていく。

 遠のいた意識がぷつりと途絶える――――後には耳を聾する程の瀑布の音だけが響いていた。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

「――――ッ!!!! なんだっ?! 落ちているっ?!」

 

 突如、意識と感覚が戻ったかと思えば一瞬の浮遊感の後の急激な落下感。

 更に背中に感じる衝撃と全身にはしる激痛に、黒斗は体を丸めながら落ちていく。

 

「うおっ!! ぐはっ!! ぐううぅぅぅ……」

(なんだ……木の枝か?地面が来るはずだ、受け身を!!)

 

 ドシーンと音を響かせながら地面に叩きつけられた黒斗は、辛うじて取れた受け身で致命的なダメージを回避する。

 そこまでの高さがなくて助かったようだ。実際落ちた距離は20メートルもないだろう、木の枝がクッションに成ってくれたのも不幸中の幸いであった。

 

「……ハァー……スゥ……ハァー……」

(呼吸は出来るか……節々は痛むが、致命的なダメージは無さそうだ……もしさっきのアレが子供の頃にみたアニメと同じものなら……)

 

 まだ各所に痛みの残る体を起こし、周囲を確認する黒斗。少なくとも見える範囲では見知った山の中の光景ではない。専門知識があるわけではないが、明らかに植生等が異なっていたのだ。

 

 そもそもまだ昼過ぎであった筈だ……と思いつつ、昏くなり始めた空と輝き始めた大きな月を見上げて黒斗はひとりごちた。

 

(少なくとも場所は違うようだ……街かどこか近くにあれば良いのだが……――むっ!)

 

 近くの茂みが、がさりと揺れて一人の女性が姿を現す。

 

 それは若草色の革鎧を着て槍を携えた美女だった。

 雪のように白い肌と散りばめられた紅玉の様な鱗がまず目を引いた。

 胸部は鎧越しにも解るほど存在を主張していて、同じくらいのボリュームの臀部と信じられない程引き締まった腹部とのバランスが、神の手による芸術品かと見紛う程だ。

 時折揺れる尻尾の動きが艶かしい。

 

 顔は……――直視しようとすると、霞がかった様にぼやけ――やがて焦点を結ぶ。まるで、未知の概念に対する学習の様に。

 スッと通ったひとすじの鼻梁に、やや釣り目がちな瞳。唇は薄桃色で、あどけなさと妖艶さが矛盾無く同居している。

 

 人外の魔性の美がそのまま顕現したかのような……つまり……とても――――――美しすぎた。

 

「美しい……」

 

「逞しい……――っ!! ボクは何を……って日ノ本言葉!! ……美しいってボクが?」

 

「女神か……はっ! 俺は何を……すまない、取り乱した。貴女は一体?」

 

「ボクの名前はリンカ。凄い音がしたから様子を見に来たんだけど、キミこそそんな丸腰で森にいるなんてどうしたんだい?」

 

「俺の名は荒神黒斗。実は……――」

 

 

 黒斗は今日起きたことを最初から、一切の虚飾無く彼女に話した。

 見知らぬ土地で、他人を警戒して誤魔化す者もいるだろう。もしくは信じて貰えないまいと誤魔化す者も居るだろう。

 しかし生来の正直者である黒斗に加え、この女性の魔性の如き美しさである、仕方あるまい。

 

「……成る程。話を聞くにどうやらキミは漂流者のようだね。しかも日の本の国からだろう?」

 

「ああ、だいぶ古い呼び方だが合っている。薄々分かってはいるのだが、漂流者とは?」

 

「時空に空いた穴、そこに飲み込まれた者が時折この世界に落ちてくるんだ。ボクの故郷の里は日の本の国から落ちてきた漂流者によって作られてね、日の本の言葉も子供の頃に教わるのさ」

 

「やはりか……戻る事は難しそうだな。さてどうしたものか……」

 

「戻れた話は聞かないねぇ……里の掟で漂流者は出来るだけ保護する事になっていてね、勿論悪人以外はだけど。とりあえず落ち着ける場所に行かないかな?」

 

「それは……いや有り難い、色々尋ねると思うが構わないだろうか? リンカさん」

 

「そりゃいきなり知らない世界に落とされたんじゃ仕方ないよ。クロト君はすごい落ち着いてるね、冷静だし。すごいなぁ」

 

 そんな会話を交わしつつ、近くにあるという街に向かう二人。

 道すがら簡単に話した内容によれば、ここはアストラ王国の東部、大陸中央の大樹海の縁で、近くの街の名前はセーヌという名前のようだ。

 

 リンカは大陸をまわる流れの冒険者であり、先ほど街に到着したばかりだが、依頼を受ける為の下見として森の浅部を見回っていたら黒斗を発見したとの事である。

 

「あとは恰好だねぇ……そんな白装束だけで旅というのはあからさまにおかしいよねぇ」

 

「あー……確かに門番の人に不審者として尋問されるよなぁ」

 

「こういう設定にしようか。ボク達は同郷のもので、この街で合流する為に旅してきたけど、キミは途中で水浴びをしているときに荷物を盗まれてしまった。なんとか着の身着のままで辿り着いてようやく合流出来た。という感じでどうかな?どのみち日ノ本言葉はボクの同郷の者くらいしか使わないからさ」

 

「あーなるほど……言葉が通じないのか……ちなみにこちらの一般的な言語はどんな感じなんだ?」

 

「キミ達の世界の英語というものにかなり近いね。恐らく元々は漂流者が伝えたモノなんじゃないかなぁ」

 

「英語なら各国で修行した時に現地で覚えたからな、問題なさそうだ。言葉が通じるのは助かるぜ……物語だと自動翻訳の魔法とかあるんだろうけど……魔法とかあるのか?」

 

「あるよー。まあでも、詳しい話は落ち着いてからにしよう。まだギリギリ店の開いている時間だろうから、服を揃えて宿に行こう」

 

「ありがたい……金なんてもってないからなぁ……必ず働いて返すよ」

 

「いいのいいの。どうせ里に戻って報告したら援助金も貰えるからね。気にしないでいいよ」

 

 セーヌの街は、周囲を石壁に囲まれた城塞都市、といった趣の街だ。

 森が近い事もあり魔獣なども出現する為に石壁は頑丈に作られ、感覚をあけて建てられた見張り台には物見の兵が詰めている。

 

 魔獣退治の冒険者も多く訪れるのでとくに厳しいチェックなどはされないが、流石に白装束に手ぶらの男一人では入れなかったかもしれない。

 

 リンカと一緒である為、特に問題なく街に入ることが出来た二人。そのまま服を扱う店で黒斗の服や下着を買い揃えると、近くにある宿に向かうのだった。

 

「かなり文明は進んでいるみたいだな、街灯もある。服も良いものが安く沢山あったし」

 

「ときおり迷い込んでくる漂流者の中に、専門の進んだ知識を持つ人もいたからねぇ。キミ達の世界では科学というものが発展しているんだろう?ボク達の世界は魔科学が発達していてね、大気中の魔素を利用して様々な魔道具が作られているのさ」

 

「成程なぁ。ところで宿ってのは……風呂なんてもんもあったりするのか?」

 

「やっぱり日ノ本の人だねぇ。辺境の方や村には共同浴場くらいしかないけど、これくらいの街の宿なら風呂は部屋ごとにあるよ、ボクもお風呂は大好きなんだ」

 

 そんな話をしている内に宿に到着し、受付で記帳を済ませた二人が部屋につくやいなや俄かに黒斗が焦り出す。

 

「あのー……リンカさん? 同じ部屋なんです?」

 

「ああ、二部屋だと高くついちゃうでしょ? 節約できるところはしていかないと、ベッドは二つあるから大丈夫だよ?」

 

「ああ、そうですよね。お金掛かりますもんね……」

(マジかマジかマジか……こんなメチャクチャ可愛くて綺麗な子と同じ部屋に泊まるとか……。オイオイオイ落ち着け落ち着け……クールになれ……クールになるんだ黒斗)

 

「ふふっ……それともぉ……ベッド一つの方が、良かったかなぁ♡」

 

「――ッ!!! いやっあのっ……すいません詳しい話を聞きたいです!!」

(なんだ今の小悪魔スマイルは……見た目はクール系美女っぽいのにボクっ娘で小悪魔系とかヤバすぎるだろ。スタイル抜群だし……落ち着け……素数を数えるんだ……まずは話を聞かないと)

 

 リンカの甘い囁きに一瞬で赤面し、照れ隠しの様に話を変える黒斗。無理もあるまい、彼は童貞なのだから……風呂の準備などを進める間に聞いた話を要約すると、このような感じであった。

 

 いまいる大陸の名はゴルディオス。その西部にあるアストラ王国東、大陸中央部に位置する大樹海の畔に造られた、前線都市セーヌ。

 

 大陸には幾つかの国があるが貨幣は共通で、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨とあり、それぞれ日本の価値に無理矢理合わせれば100円、1000円、1万円、10万円、100万円、1000万円という感じだろうか。

 

 大地の霊脈や深い森林、火山等から星の内側より放出される魔素を用いて、様々な魔道具が作られている。

 魔法もある程度体系化されており適性の有る属性の魔法をスクロールを使い習得し、体内の魔素を消費し使えるらしい。

 漂流者達もこの世界に来たら体内に魔素が取り込まれ、生成できるようになるとの事で適性が解れば黒斗にも魔法が使えるとの事である。

 

 文明の割りに開拓が進んでいないのは、魔素により活性化した動物である魔獣が多く存在し、深い森や火山等、魔素の濃い地域はより強大な魔獣が出現する為だ。その為、都市部と辺境では文明に大きく差があるのだ。

 

「そろそろお風呂出来たんじゃないかな? 先にゆっくり入るといいよ~考えを整理する時間も必要でしょ? キミの選択肢は大きく二つ。ボクの里に来て静かに暮らすか、好きな所に行って自活するか、だねぇ。働き手は何処も必要だから移住は簡単だと思うよ」

 

「色々ありがとうリンカさん、風呂でじっくり考えをまとめてみるよ」

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 さっと体を洗い、一日の汚れを落として湯船につかる黒斗。

 熱い湯が体に染み渡る……やはり日本人は風呂だよなぁなどと呟きながら考えをまとめていく。

 

(しかし異世界かぁ……まさかこんな事になるとはなぁ……色々考えたけど元の世界にはもう家族もいないし、正直未練は……まったくないわけじゃあないが、ほぼ無いな)

 

 仕事も進学も決まらず、門下生たちは去り、家族も居ない。

 完結していないアニメや漫画などに未練はあるが、逆にいえばその程度の事でしかなかった。

 

(でも魔獣か……リンカさんは冒険者って言ってたし、正直ワクワクするのは抑えられないな。鍛えた剣術がどこまで通じるか……試してみたいぜ……――なるか! 冒険者)

 

 刀が一番扱いに慣れているが、西洋剣や槍、投擲術、組手甲冑術等もある程度修めている黒斗。彼は、この世界で自分の力がどこまで通じるのか、実戦を積み、より高みに至れるのではないかと、己の中の剣士としての心が沸き立つのを感じるのだった。

 

(それになにより……冒険者になればリンカさんと一緒に冒険が出来るかもしれない。あんな綺麗で可愛い女の子は初めて見たし……優しいし、鱗や角、尻尾もとっても似合ってて素敵だよなぁ……恋人はいるんだろうか?)

 

 まあ一番の理由はリンカだった。黒斗はあまり自覚出来ていないが、彼は初めて見た時に彼女に一目惚れしていたのだから。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 黒斗が風呂場でじっくり考えをまとめている間、リンカはといえば、彼女は彼女ですこし考える事があったようだ。

 

(森の下見をしてみれば、まさか漂流者とはねえ……十年ぶりくらいかなぁ、しかも日ノ本の人なんてね。でもクロト君だったっけ……最初の一言が美しいなんて……いやいや聞き間違いじゃないよね? だってボク全然モテないし……)

 

 どこをどうみても美の女神そのもの、としか思えない容姿のリンカであったが同族の龍人族の中では鱗が少なく人に近いせいでモテず、人族の住む場所を通る時は人目を気にしてフードで頭を隠したロープを着ていた鱗華。不審者にしか見えぬ鱗華を避けるのは当然であった。

 

 美的感覚の違いであろうか、リンカを性的な視線で見る者は多かったが、普通の意味でモテるのとはまた別であろう。

 ましてや美しいなどと言われた事など一度も無かったのだ。確かめるつもりでからかってみたりもしたがすぐにはぐらかされてしまった為、黒斗が本気で言っていた事が解ってしまい、心の中ではかなり慌てていたリンカであった。

 

(う~……ほんとに綺麗って思ってくれてるんだぁ……どうしよう……黒斗くんボクの好みドストライクなんだよねぇ……鋼の様な筋肉とおっきな体、角ばった精悍な顔付き……日ノ本言葉も使えるし……あれで強かったりしたらもうダメだよぉ……元の世界に恋人とかいて未練があったりするのかな)

 

 大きく逞しく、素直な正直者で自分と同じかそれ以上に強く優しい漢、更に日本語が出来たら完璧。

という好みのリンカにとって黒斗はど真ん中ストレートクラスの物件だったようだ。

 ちなみにこちらも彼氏いない歴=年齢の人だったりするのである。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

tips

 

漂流者

 

 地球から不定期に転移してくる人間たちの事。

 詳しく解明されてはいないがどうやら次元的に地球世界の方が上方に存在する為、稀に世界の歪みや隙間から落とされるのではないかと言われている。

 概念的に上から下への一方通行になっており異世界側から地球に落とされる事は無くまた戻ることも不可能。

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