※この作品はR-18です。

ファム・ファタール~寝取らせモノが大好きな剣士が異世界転移した場合~   作:幻闇

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102話 The Warring God ★

 邪神の構築した加速世界に囚われた鱗華。

 外界よりも遥かに速いスピードで過ぎ去る時間の中、実に100年もの時間を邪神と共に過ごした鱗華は、ありとあらゆる苦痛と快楽を与えられていた。

 その喜悦に歪んだ表情からは、夫に対する想いなど欠片も見て取れない。もしや、本当に身も心も堕とされてしまったのであろうか。 

 

 果たして黒斗は、邪神を討ち、鱗華を奪り戻す事ができるのか――

 

 

 ※   

 

 

 神降ろし。

 それはかつて、レムリア神王国において創り出された神の如き力と知性を持つ兵器をその身に降ろし、ヒトの限界を超越した闘神と成す禁忌の技術だ。

 

 神が真体と呼ばれる戦闘用外殻を纏った状態はあくまで、兵器単体としての運用法に過ぎない。その恐るべき本領は、神と人の究極幻想である闘神形態となってこそ発揮されるのだ。

 遥か星辰の彼方よりきたるエイリアンとの戦争末期に開発されたその技術は、瞬く間に戦況を覆してエイリアンの侵略を防ぎ切ったと云われている。

 

 だが、その力の余りの凄まじさ故、戦争の終結と共に関連する知識は銀河の深淵に存在する大重力場に封印された。また、人格を持つ功ある兵器達は現世と関わらぬ様、亜次元の狭間に造られた《夢世界》にて、微睡と安寧を約束されたのである。

 

 依り代となる者は誰でも良い訳では無い。

 人の創りし神と遺伝子レベルで調整された適合者、又はその因子が稀に発現した子孫でなければ神降ろしは行えず、一たび神降ろしを行えば依り代は兵器のパーツと成り果てる。それは人を捨て、化け物となる事に他ならないのだ。

 そしていまの時代においては、色濃く先祖がえりを起こしたナモモ以外に適性者は存在しなかったのである。

 

 ツァトゥグァから説明を受けたナモモは、それでも決意は変わらないという事を示すかのように、唇を引き結んだ凛々しい表情で頷いた。

 元より神の伴侶として育てられてきたのだ。眷属となって人を辞める事などいまさらである。そして、ふれあった時間は短くとも、姉と呼んでくれと気さくに接してくれた鱗華を助ける為なのだ。否やがあろう筈がなかった。

 

 続けて、神降ろしを行う為の具体的な方法を教示するツァトゥグァ。

 肉体を密着させ、互いの精神を感応させて魂で情報を共有していくナモモの心に、禁忌の知識が植え付けられていく。

 

 

「あれ……クロトは何をしているのだ?」

 

 知識の共有をある程度終わらせ、ふと黒斗の方を眺めやったナモモ。彼はその視線の先で、愛する女と己を隔てる障壁の前に立ち、居合の構えを取ったまま静止し続けていた。

 

「いや、大した事じゃないさ。斬れるようになるまで斬ってみようとな」

「さっきは駄目だったのになのだ? 諦めない心が本当に凄いのだ!」

「一回は斬れるんだ。すぐ復元されちまうけど……つまり、障壁そのものと、復元させる事象を同時に斬れば……」

「出来るのだ?!」

「試してみるさ……――ハッ!」

 

 裂帛の気合と共に、黒刃の閃きが鞘走る。

 漆黒の太刀は一度しか振られていなかった。それは確かであるにも関わらず、障壁に刻まれたのは二つの斬線。物理的にあり得ぬ事象を生み出す理外の絶技。人の身にて放たれた事が信じられない程の業(わざ)を受けた障壁は、ぶるりと大きくその表面を震わせ――――何事も無かったかの様に復元した。

 

「今の凄かったっぺ! でも斬れてないっぺ……こりゃあ異界の概念も同時に斬らないと駄目っぽいっぺ……」

「一振りにて三度斬る……か。雑に斬るならともかく、正確に斬るのはまだ無理だな」

「残念なのだー……。クロトでもダメなのに、ナモモに出来るのかなぁ」

「大丈夫だっぺ! オラを信じるっぺ!」

「わかったのだ! 神様が言うならきっと大丈夫なのだ」

「期待してるぜ。おふたりさん」

 

 ふよふよとナモモの頭の上に移動したツァトゥグァが、ぺたりと尻もちをつくように着地する。

 

「こうしてる間にも、内部の時間はどんどん過ぎてるっぺ。ナモモ、準備はええだか?」

「神様を拒まないで受け入れればいいのだな? 大丈夫、いつでも来てよいのだ」

「ちぃとゾクっとして、頭の中を擽られる程度の感覚だっぺ。ほなら……いくっぺよ……――神核接続開始(コネクトウィズゴッド)>>>>汝、内ナル瞳ヲ啓ケ(オープンユアアイズ)」

「神様……? はにゃっ?!」

 

 それまでの温かみのある声音とは一線を画す、まるで機械の様に無機質な声で始まりを告げたツァトゥグァ。

 現身(アバター)の全身から、朧げに透けた幾つもの管が出現してナモモの頭部に突き刺さり、星素子(エーテル)で形作られたそれらが、ナモモの魂そのものに接続されていく。

 

「あっ!! ――んくっ……ふにゃあああああああ!!」

 

 魂に直接干渉される違和感に、思わず声を上げてしまうナモモ。どこか艶めいたその叫びには確かに、快楽の色が滲んでいた。

 

「んっ……くふぅ……神様がナモモの中に入ってぇ……ふにゅううう! からだが熱いよぉ……んにゃあああああっ!!」

 

 自らの身体を掻き抱きながら、年齢に見合わぬ艶めかしい叫びを上げて見悶えるナモモ。ロリコン趣味の無い黒斗ですら、その様子に興奮を隠せず前屈みになっている。

 

「俺はロリじゃないロリじゃない……いやでも無駄にエロイなコレ……流石に反応しても許されるだろ――むおっ?!」

 

 突如眩い光を発し始めたナモモに、情けない姿勢になっていた黒斗が驚きの声を上げる。

 

「依リ代トノ直結回路生成完了>>>>分解再構成フェーズニ移行>>>>闘神顕現(アドヴェントゴッド)」

 

 邪神の破壊魔法によって吹き抜けとなった祭壇の間から、天空へ向けて黄金の光が吹き上がる。かつて究極とも呼ばれた兵器の顕現に伴う余波は雲を貫き、遥か宇宙にまで届いていた。

 

「こりゃ半端ねぇな……あの神様、ちんちくりんのナリしてとんだ化け物だったぜ」

 

 屹立した黄金の柱が、呆然と見舞っている黒斗の前で収束していく。

 やがて、全ての輝きが消え失せた時、そこには一人――否、一柱の猛々しき闘神が姿を現した。

 

――身に纏うは溶鉄の神衣。

 

――背に負うは輝ける光輪。

 

――瞳に宿るは黄金の輝き。

 

――手に握るは神罰の巨斧。

  

 荒ぶる獅子を思わせる鬣の様な金髪を靡かせて、凛々しくも美しく成長したナモモの姿がそこには在った。

 

「かっけぇ……つーかこれ、どうみてもゴールドセ――っとあぶない……」

「待たせたのだ! クロト! ってナモモおっきくなってるのだ?!」

 

 どうやら本人もびっくりしている様だ。身に着けた見慣れぬ鎧と巨大な斧に驚き、なにやら眩しいなと首を後ろに向けて、支えも無く背後で浮遊している光輪に更に驚くナモモ。

 

「見た目は大分変っちまったが、中身はどうやらナモモのまんまみたいだな。あのちんちくりんはどうしたんだ?」

「神様はナモモの中にいるのだ。ちんちくりん言うなっぺ! って怒ってるのだ」

「成程……そういうタイプね。力の使い方とかはわかるのか?」

「今ならわかるのだ! ええと……神様がしこうせいぎょさぽーとってのをしてくれて、せんとうちしきはさっきいんすとーる? したって言ってるのだ!」

「思考制御にインストールね。なんかSFじみてきたな……いやまぁエイリアンって時点でそうだったか」

 

 そのうち宇宙戦艦が出てきてもおかしくないなと、内心で溜息をつく黒斗。最初はただの異変調査でしかなかったはずの依頼が、気付けばエイリアンだ神だ人類の滅亡だと大事(おおごと)になっていたのだ。愚痴りたくなるのも仕方ないといえよう。

 

「クロト、ナモモがこの姿でいられるのは半日くらいなのだ。祭壇に満ちてたエーテルを全部取り込んだから、一度解除されたら暫らくは闘神になれないのだ」

「確かに周囲から魔素がごっそり消えたな。半日か……中の広さ次第じゃ厳しい……か?」

「そこはすでに解析済みなのだ。せいぜい百キロ四方の空間だから距離は問題無いのだ」

「朗報だな。俺はいつでも構わん、頼んだぜ! ナモモ」

「任されたのだー! 抗異界術式を組み込んだ兵装で障壁に数秒間だけ穴を開けるから、閉じる前にすぐに飛び込むのだ!」

 

 鱗華が囚われた闇色のドーム。神界と外界を分かつ障壁に向かい、闘神と化したナモモが携えた巨斧を構える。

 

――……ィィィィィィィィィィン

 

 その背に輝く光輪が回転を始め、次第に速度を上げて澄んだ音を奏で始めた。

 

――リィィィィィィィィィン

 

 光輪の速度に比例する様に高まるナモモの神気。その、周囲全てを圧する波動のただ中で、樹齢千年の巨木の如くたたずむ黒斗。この男もまた、人の域を超えた化物であった。

 

「ぶちかますのだ! 【兵装展開(ディプロイウェポン)・地殻破壊砲(メガリスクラッシュ)】なのだあああ!!」

 

 正面に突き出すように両手で構えた岩の様な巨斧。その先端から超高密度に圧縮された地属性の神気が極光と化して迸り、邪神の創り出した固有神界に突き刺さった。

 

――バリィィィン!!

 

 先程の黒斗の奮闘はなんだったのだろうかという程にあっさりと、大きく割れて砕け散った障壁。だが、数秒後には復元が始まるだろう。

 

「しゃあ! いくぜっ!」

「ナモモも行くのだ!」

 

 破損個所の近くにいた黒斗は素早く滑り込み。離れていたナモモは、背の【後光転輪炉(ハロードライブ)】の出力を上昇させ、宙を飛翔して飛び込んでいく。

 

 

 飛び込んだ瞬間、どろどろとした闇が全身に絡みつく感触と、法則の違う世界に無理矢理入り込んだ不快感が二人を包み込む。常人であれば闇に絡めとられた瞬間に正気を失い、異界の概念に肉体をグズグズに溶かされてしまうだろう。

 闘神となったナモモはともかく、超越者とはいえ一応ヒトの範疇にある筈の黒斗がその程度で済んでいるのは明らかに異常であった。

 

「うわぁ……なんか凄く嫌な感じの世界なのだ。クロト大丈夫なのだ?」

「肌がピリッとする程度だな」

「流石クロトなのだ! ……ん。神様どうしたのだ? えーと……クロトは元々異界の人間だから次元渡りに耐性があるんだっぺ。そういえば漂流者って言ってたのだ」

「そういやあの闇の穴みたいなのに吸い込まれた時と似た感覚だったな。成程な」

 

 かつて日本での滝行中に、空間の歪みに呑み込まれた事を思い出しながら黒斗は想う。そのすぐ後に鱗華と出会えたのだ。であれば今度もまたすぐに会える。例え世界を超えて引き離されたとしても関係ない。世界などいくらでも超えて会いに行こう。鱗華こそ、俺の運命の女(ファム・ファタール)なのだから。

 

 

「クロトっ!!」

「わかってる。結構なお出迎えのようだが……邪魔立てするなら斬り捨てるだけだ」

 

 眼前に広がる闇の大地。朱き太陽に照らされた地平線を埋め尽くす様に、雲霞のごとき異形の軍勢が二人に迫っていた。

 

「どうにも最近、見(ケン)に回る癖がついちまっててなぁ……鱗華の戦いぶりは見てて飽きないし、あの邪神野郎も凄かった。でもよ、ナモモにも良い所を見せときたいしな」

「クロト……? はわわ! 一杯来るのだ!」

「まぁ見てろ……ついつい直接ぶった斬る感触が好きで愉しんじまうが、今回は出し惜しみ無しだ。ただ斬るだけの剣技に技もくそも無いが――フゥー……」

 

 腰を落とし、納刀した黒刀の柄に右手を掛けた黒斗が細く長い息を吐く。

 

 漆黒の泥濘の如き無形の落とし仔。奇怪な大蛞蝓。ヒキガエルの様な怪物。鱗の無い竜。出来損ないの人間を幾つも捏ねて固めた様な肉塊。その他大勢の、見た事も無い名状し難い妖異の群れ。

 

 彼我の距離はすでに、20メートルも無い。あと一息の合間に化け物たちは二人に殺到し、その肉体を贄として惨劇の宴を開くだろう――と思われたその刹那。

 

 

 

「――神薙(かんな)ぎ」

 

 造られし神では無い真なる外神ですらも知覚不可能な速度で、音も無く横薙ぎに振り切られた黒刀が空を斬る。その刹那――

 

――二人の眼前に広がっていた異形の軍勢すべてが、ズ(・)レ(・)た(・)。

 

「んなーっ!? 全部斬ったのだ!?」

 

 驚愕の叫びを上げる闘神形態のナモモの前で、上下二つに断たれた化け物たちが崩れ落ちる。斬撃を飛ばすなどといった生易しい現象ではない。それは、切断という概念事象の結果そのもの――ただ斬るという理を突き詰めて至る、剣の究竟であった。

 

「これくらい出来なきゃあいつの横に立ち続けるなんて出来ねぇよ……。とはいえ結界は斬れなかったし、ナモモには本当に感謝だぜ」

「えへへ。でもクロトも十分凄いのだ! ……あっ! 神様が内部の解析を終えたって! 遠くに見えるおっきな建物に邪神もリンカ姉ちゃんもいるって言ってるのだ!」

「まぁこれみよがしに建ってるもんな。あの城、エイリアンが何だってあんな魔王みたいな城立ててんだ?」

「あんなに禍々しくないけど神様のおうちに似てるらしいのだ。たぶん真体の記憶を読み取ったんだろうって」

「成程な。んじゃまぁ……間男野郎の所に旦那降臨といきますかね」

 

 残骸と成り果てた化け物達を踏み越え、朱き地平線の先に見える闇色の魔城を目指して進みだした二人。

 

 土中に潜んでいたのか、ときおり地面の中から砂蟲をいびつに歪めた様な化け物が不意に襲ってくる事もあったが、ナモモの光輪から迸る閃光や黒斗の一閃であえなくその命を散らしていく。

 

 だが、元をただせばこの化け物達は全て、囚われた間に鱗華が産み出した落とし仔たちである。神の権能により肉体改造された鱗華の肉体は、今や一日に数百体もの仔を孕む苗床となっていた。先程倒されたおよそ10万体の群れなど、あくまで氷山の一角に過ぎなかったのである。

 

 

「またわらわらと集まってきたな……。いちいち相手してる時間も勿体ないっつーのに……」

「クロト……その……実は……」

 

 ツァトゥグァから敵の正体を知らされたナモモが、どこか躊躇いがちに黒斗に声を掛ける。

 

「ん? ああ、リンカが産んだんだろ? それくらいは予想がつくさ」

「リンカ姉ちゃんこんなに沢山化け物を産まされて可哀想なのだ……。ナモモならきっと怖くて痛くて死んでしまうのだ……早く助けてあげないと」

「あー、そっちはまぁ問題ないんじゃないかな……――ほら、リンカは強いから」

「そうなのだ? 流石なのだ」

 

 むしろ嬉々として産んでると思うぞ。という言葉を内心に留め、無垢なナモモを誤魔化す様に曖昧な笑みを浮かべた黒斗。鱗華の本性を知るには、いささかナモモは若すぎると判断したのである。

 

「さっきよりも凄く沢山なのだ。今度はナモモが頑張るのだ! クロトはリンカ姉ちゃんの所に急ぐのだー」

「おう! 久し振りに隠密モードで急ぐとするか。あとは頼んだぜ! ナモモ」

 

 姿を隠して気配を消し、超常の感知能力を持つだろう異形の化け物達の感覚すら欺いた黒斗が魔城目指して駆け出す。

 それを見送ったナモモが、神気を全開に放出して化け物達へ存在を示した。空を飛んで魔城に向かう事は容易い。だが、邪神との戦闘中に邪魔をされても困るのだ。どのみち化け物達は片付ける必要があった。

 

「ナモモはここなのだ! 沢山沢山集まって来いなのだ! うにゃー!」

 

 可愛らしい掛け声と共に空へと舞い上がったナモモが、周囲をぐるぐると跳び回りながら存在を誇示し、百万に迫る異形の軍勢をひとところに集めていく。それはさながら、地獄に垂らされた蜘蛛の糸に群がる亡者の群れそのものであった。

 

――ぶぢゅるぶぢゅる

――がぢがぢがぢがち

――ざくざくざくざく

――うじゅるぐじゅる

――ぽぽぽぽぽぽぽぽ

――ごぶぶぶぐぶぶぶ

 

 不定形の者、多足の者、這いずる者、泡めき立つ者、膨らむ者、零れる者。其は闇の大地を埋め尽くす怪異、妖物、化け物、異形の群れ、群れ、群れ。ナモモという光に群がる、浅ましき闇の汚泥。

 その数、優に百万を超えるだろう蟲毒の渦中にあって、ナモモの放つ輝きのなんと弱々しきことか。いくら、古代文明が誇る究極幻想たる闘神と化したとはいえ、本人はまだ齢14に達したばかりの少女なのだ。

 

「うわー……気持ち悪いのがいっぱいなのだ……。――兵装展開(ディプロイウェポン)・属性装填(エレメントロード)」

 

 少しでも近付こうしているのだろう。浮遊するナモモに向かい、仲間であるはずの化け物達を踏みしめて土台とし、異形で形作られたグロテスクなピラミッドが作られ始める。中には奇妙な翼を生やし、不格好ながらも飛翔を試みようとする者すらいた。

 

 だが、力ある【神の言葉(ワードオブゴッド)】を発したナモモは、更なる空の高みへと急速に上昇を始めていた。

 

「気持ち悪いの殆どが真下にきてるのだ! 神様もうぶちかましても大丈夫なのだ? うんうん……わかったのだ!」

 

 半球状に広がっている固有神界の上空、上部障壁にほど近い所まで上昇したナモモが、眼下に広がる異形の闇わだを見下ろす。

 

――ィィィィィィィィィィィィィィン……

 

 その背に輝く【後光転輪炉(ハロードライブ)】が超高速で回転を始め、大地を司る荒ぶる神、ツァトゥグァの力を臨界にまで高めていく。

 

――リィィィィィィィィィィィィィン……

 

「依り代保護術式起動……攻性障壁展開」

 

 三桁を超える頂点を持った、金属を思わせるいびつな球形をした外殻障壁が、ナモモの姿を包み込む様に隠していく。

 

「衝突角調整……多重次元加速空間形成……降下開始」

 

 硬質な外殻に包まれたナモモがゆっくりと落下を始めた。その直下、闇の大地とのはざまにいくつもの空間魔導陣が形成されていく。到達距離を増大させ、落下速度と衝突のエネルギーを指数関数的に増大させる魔導術式であった。

 

――ゴゴゴゴゴゴゴ……

 

 魔法陣を通過する度にその速度を増していくナモモ。一つ目――二つ目――三つ目、もはやその速度は秒速20キロメートルにも達していた。時速に換算すれば、およそ7万キロメートルである。

 

――ゴオオオオオオッ!!

 

 直上に迫る、赤く燃える恒星。彼等はそれをどこか眩しそうに、或いは救いを求める様に、見上げ――

 

「【地属性最大励起(ガイアーズ)――激神最終審判(ジャッジメント)】なのだあああああ!!」

 

 全てを呑み込む黄金の輝きに包まれ、汚れた闇の大地もろとも――消滅したのである。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「やべぇ! ナモモの奴張り切り過ぎだろ! 気付いて死ぬ気で走ったから間に合ったが、俺まで巻き込まれる所だっだぜ……」

 

 背後で落着したナモモの衝撃で、波打つ大地と吹き荒ぶ衝撃波が固有神界全体を揺るがす。その衝撃波を利用して、まるで波乗りの様に闇の大地を進んで魔城に辿り着いた黒斗。

 

「うおっ! バカでかいクレーターが出来てやがる。コロニー落としかよ……むしろ余波がこれくらいで済んでるのがすげぇな。神の力ってやつか」

 

 魔城の入り口で振り向いた黒斗が、ナモモの産み出した惨状を見て目を丸くする。その推測通り、ナモモの使用した兵装に使われたエネルギーはその大半が余波の収束に使われているのだ。衝突に際して発生したエネルギーのほぼ全てを中心点に収束させて破壊力と成す、正に究極と呼ばれるに相応しい威力であった。

 

「ナモモも頑張ってくれたんだ。俺もさっさと嫁さんを迎えに行かないとな」

 

 決意も新たに、魔城の奥へと進んでいく黒斗。

 名状し難い造形の城内を進みながら、どの様な異形が出てくるかと身構えていた黒斗であったが、予想に反して城内は化け物の気配一つ無い。

 

「不気味な静けさだな。奥にデカい気配が一つと……小さい気配が一つ。小さい方が鱗華か? にしてはちょっと変だな……」

 

 最奥部に感じる大小二つの気配。禍々しいオーラに包まれて認識し難いが、その片方には感じ慣れた愛する妻の気配も含まれている様だ。

 

 まっすぐに進んでいるつもりが、いつのまにやら捩子くれ、さかしまに立っている様な錯覚に囚われながらも突き進み、やがて黒斗は巨大な扉に突き当たった。

 

「この中か……――はっ!」

 

 佩刀一閃。ただ一振りの黒刃の閃きによって、微塵に刻まれた扉が消滅する。その奥に進んだ黒斗は遂に、己が愛する運命の女と再会を果たす。

 

 

「まさかこの時代に適性者が存在していたとはな……。忌々しきレムリアの虫けらどもめ。滅びに抗い改造を施すのみならず、依り代の因子まで受け継がせていたか」

「御託はいい。リンカは返して貰うぞ。その様子だと、だいぶ好き放題してくれたみたいだしな……」

 

 巨大なベッドに坐す邪神と、その異形の肉体の股間に裸体をもたれさせてうっとりした表情で逸物を舐めしゃぶっている鱗華。改造された妻の巨大な乳房や、下腹部まで割れ目の入った土手高マンコを眺めながら、黒斗は膨れ上がる感情を抑えきれていない声色で邪神に告げた。

 

「怒っているのか? ぐぶぶぶ……確かに予測よりも早い来訪だったが、もはやこの女の身も心も我のモノよ。その身体を我に合う様に造り替えようと、貴様には関係のない事だ」

 

 己の逸物を熱心にねぶり続ける鱗華の、燃える様に美しい赤髪を愛撫しつつ答える邪神。だが、その言葉は少々的外れであった。

 

「いや、それに関しては感謝しても良いくらいだ。単にリンカの肉体改造シーンを見れなかったのが悔しいってだけさ。くそぅ……まぁ後でたっぷり報告してもらうさ」

「戯言を……もはや貴様の許には還らんというのに。ほれ……我が伴侶よ、待ちに待った存在が来たのだぞ? 少しは反応してやったらどうだ?」

「んっ……ちゅぱ……じゅるじゅる……ちゅぷ――ん? どうしたの? アナタ……あいつ誰? そんなことよりぃ……もうボク欲しくて堪らないよ」

 

 胡坐をかいて座る邪神のまたぐらにそそり勃つ。とても生殖器には見えぬ肉の凶器に対し、口での奉仕を続けていた鱗華が黒斗を一瞬だけ一瞥し――すぐに興味を失ったとばかりに邪神に向き直る。

 

「ねぇ……さっき産んだばかりで子宮が寂しいの……アナタの熱くてどろどろの濃厚ザーメンでまた孕ませてぇ♡♡♡ アナタのおちんちん欲しくて欲しくて……もうおまんこドロドロのグチャグチャなのぉ♡♡♡♡♡」

 

 立ち上がった鱗華が、ビキビキと幾つもの筋を浮かばせてヌラヌラとぬめり輝く邪神の男根に跨って腰を沈め始める。その赤く濁った瞳に、淫欲の炎のみを灯して――

 

――ぐぢゅっ……ずぶり……ずぶずぶ……

 

「んはぁ……♡♡おっきぃ……アナタ専用のボクのおまんこでも裂けちゃいそうだよぉ……♡♡早くぅ……♡♡いつもみたいにぃ……ボクの子宮思いっ切り突き上げてぇ♡♡♡♡」

「ぐぶぶぶ……もはや記憶にも残っていないようだぞ? 人の身にとって100年という年月は存外長い物なのだな」

「…………………………ぐぅッ――」

「絶望の余り声も出ぬか……。ではそこで、奪われた女の痴態を眺めているが良い。我が伴侶よ、待たせてしまったな。愛しきそなたの希望を叶えるとしよう……むんっ!」

「んあ゛ッ!! ……子宮思いっ切り潰されてイくッ♡♡♡いぐッ゛いグぅ゛♡♡♡♡んお゛っ!! もっろ゛ぉ゛……お゛まん゛ごブッ潰゛じて゛え゛え゛え゛♡♡♡イぐッ゛お゛っお゛っお゛っ♡♡♡イ゛グっ゛う゛っう゛ッ♡♡♡♡」

 

 ズンッ!! と、邪神によって力強く逸物を突き上げられた麟華が仰け反って絶頂し、屠殺される豚の様な濁った嬌声を上げる。背骨が折れてしまう程にカラダをしならせた鱗華の、快楽に蕩ける歪んだ顔がさかしまになって黒斗の方を向いた。

 

「リンカ…………」

 

 邪神の凶器が鱗華の子宮を叩き潰す、湿った生々しい破壊音と獣の嬌声が玉座の間をこだまする。

 

――ぶぢゅんどぢゅん……ぼごっ……ごどんっ……

 

「お゛っほッ゛♡♡ん゛お゛っ……♡♡イ゛ぐっ……イ゛ぐッ……お゛まん゛こ゛死゛ぬッ!!!! でか゛ちん゛ぽでほじられ゛て゛壊゛れ゛うッ゛!!!! ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ♡♡♡♡♡」

 

 その様子を、微動だにせずに見つめ続ける黒斗。まるで遅すぎた自分を責めるかの様に佇むその姿は、邪神の歪んだ自尊心を満足させるに足る光景であった。

 

「ぐぶぶぶ……そろそろ放つとするか。もう何百万回孕ませたかも判らぬ我が子種をな。もう死にたいとでも言いたげな顔をしているな……ぐぶぶぶ……種付けの後で殺してやろう。ほかならぬ我が伴侶の手でなぁ! ぐぶぶぶぶっ!」

 

――ぶじゅるっ!! ぶぢゅるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる……ぶぢゃっああああああああああああ……ぶちゅぶぢゅ……

 

「ぎひいいいあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ♡♡あっついどろどろザーメンで孕むう♡♡♡アナタの愛でボクの卵子受精すりゅう゛う゛う゛う゛♡♡♡ん゛あ゛あ゛あ゛ッ!! 着床ア゛ク゛メ゛き゛た゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛♡♡♡イ゛っ゛ク゛う゛う゛う゛う゛う゛♡♡♡♡」

 

 黒斗の目の前すぐ傍で、鱗華の蕩け顔が種付けの絶頂により更に醜く歪んでいく。見開かれた瞳から溢れた涙と、緩んだ口許から流れ出る夥しい唾液が混ざりあい、快楽に狂ってさかしまになった顔はまるで、泣き笑いを浮かべる道化師そのものだ。

 

(なんて顔してやがる……エロ過ぎだろこんちくしょう……でも流石に100年は待たせ過ぎちまったか……? 俺との一年なんて上書きされちまったってのか? ――まぁどうでも良いか。それならそれで、奪い返してまた俺の色に染めてやるまでさ)

 

 スッ……と腰を落とした黒斗が、腰に帯びた黒刀の柄に手を掛ける。

 

 たとえ身も心も奪われたとしても構わない。何度でも奪り還せば良い。その度に刻み付けよう。全霊をもって己が存在を、何度も。鱗華の魂に――

 

「ぐぶぶぶ……これは驚いた……。まだ折れておらぬとはな。ならば往け! 我が伴侶よ。己が手にて過去と訣別せよ」

 

 邪神の精を胎内に受けて絶頂し、蕩けた表情で逸物に跨ったまま快楽の余韻に浸っていた鱗華。そのカラダを、漆黒の闇が覆い尽くす。

 

――じゅぶじゅぶごぶぶぶぶ

 

 鱗華を包み込んだ粘体の様にねばつく闇。その表面が不気味に泡立ち波打つと、そのままゆっくりと浮遊しながら邪神の逸物から離れる。

 

――じゅぶりぞぶり……ぐぷっ……ごぽっ……

 

 鱗華を包み込んだ蠢く闇塊が黒斗の前に降り立ち、絡み纏わりつく闇が内部にじわじわと浸透する様に吸収されていく。

 

――ずぞぞぞぞぞぞぞ……ぞりゅっ!!

 

「……んっ……はァ……♡ 全くもう、誰だか知らないけどボク達の邪魔しないでよねぇ♡♡」

 

 そこに現れたのは、闇に染まった甲冑と魔槍を身に着けた美しき魔人。

 腹部がまるまる隠れてしまう程に巨大化した超乳に、申し訳程度に乳首が隠れたブレストプレート部分以外は、以前と寸分変わらぬ造形の装備に身を包んだ鱗華であった。

 

「ちゃっちゃっと片付けちゃおうか♡ もうボク、アナタに抱かれるのが愉しみで愉しみ……待ちきれないんだぁ♡♡」

 

 その言葉に呼応するかの様に、手に携えた闇の魔槍が深紅のオーラで覆われる。

 ゆらりと、魔槍を中段に構えた隙のない仕草は、100年もの間ただ苗床と化していた雌とはとても思えぬ達人の構えであった。

 

「邪魔者は死んで……ね♡」

 

 朱い閃光と化した邪槍の一閃が、かつての夫である黒斗に対し放たれた。




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