ファム・ファタール~寝取らせモノが大好きな剣士が異世界転移した場合~ 作:幻闇
その構えを見た瞬間に、明鏡止水へと至っていた黒斗の心にさざ波が生じた。
(なんだ? この場面……どこかで……)
紅き閃光と化して迫る鱗華の魔槍が、集中の極致に至った黒斗の視界の中で、ゆっくりと迫る。
(ノーモーションの縮地から突き出される穂先……躱せば即座に穂先を斬り返して薙ぎ払われる……つまり――)
するりと、
「あははは! キミ強いねぇ! そらそらぁ!」
いつの間にか引き戻されていた魔槍が、まるで驟雨の如く残像を残して乱れ舞う。
ほぼ同時に襲い来る無数の刺突を紙一重で躱しつつ、より強く突き出された己が心臓を狙った一閃に狙いを定め、黒刀を振り下ろした黒斗。
――ギィン
(ああ……懐かしいな……)
振り下ろした黒刀で魔槍を抑えつける。だが、その勢いすらも利用して円を描く様に魔槍を返し、黒斗の脇腹を薙ぎ払う寸前で穂先をピタリと静止させた鱗華。
「キミ弱すぎない? こんなんじゃ遊ぶ価値も無いんだけど――って……」
呆れた様な声色で見下しつつも、何かに気付いて驚く鱗華。その様子に、ニヤリと頬を歪めた黒斗が応じる。
「いや……相撃ちじゃないか?
黒刀の切っ先を、鱗華の股間ギリギリに斬り上げた姿勢で――
(あの時と技もスピードも段違いだ。もう一年以上もたつのか、リンカにとっちゃ……101年か……)
「へぇ……ちょっとはヤるみたいだね。ここからは本気で行こうか――
それはかつて、二人が初めて出会った日の翌日の出来事。
黒斗の冒険者登録をするついでに、ギルドの訓練場で行われた二人にとって初めての模擬戦の再現であった。
互いに跳び退って改めて対峙した二人。膨大な殺気を放ちながら発した鱗華の言葉の真意を、黒斗は正確に受け止める。
(付き合うなら自分よりも強い男。義父さんに聞かれて鱗華が答えた理想の男性像だったか……。改めて、証明して見せろって事だよな)
「簡単に死なないでよねぇ! はァッ!」
優に10メートルは離れている黒斗に向かって無数の突きを繰り出した鱗華。当然の如く穂先は空を突くのみだ。だが――
――キィン! キンキンキンッ!
黒刀を幾重にも閃かせて不可視の刺突を防いでいく黒斗。魔闘気を操る鱗華の槍術に間合いなど有って無きが如しである。
牽制の突きを放つと同時に床を蹴りつけ、暴風の様に槍を回転させた鱗華が黒斗に躍りかかった。
――ギィン!
一際かん高い戟音を響かせながら刀身と穂先を噛み合わせ、互いの吐息が掛かりそうな程にまで密着した二人の口許が弧を描く様につり上がる。
「楽しい……『ね!』『な!』」
――ガガガガガガガガッ!!
本来、槍の間合いというモノは中距離である。
刺突の届くギリギリの間合いを維持しつつ、無数の牽制の合間に本命を紛れ込ませる虚実の戦いが本領なのだ。
にも関わらず、刀の間合いである近距離において、一振りで無数の斬撃を放つ黒斗の剣術に槍の柄を用いて同格の戦いを見せる鱗華。槍術のみならず、棒術すらも神域にある証左であった。
「やるねぇキミ。でもここからが本番だよ?」
――ドガッ!
黒曜石の様な輝きを放つ床を蹴りつけ、高さ百メートルはあろう天井に飛翔した鱗華が肉体を華麗に捻って天井を蹴りつける。禍々しい装飾の壁面を、捩子くれた列柱を、次々に蹴りつけて加速度を上げていく。もはや常人の瞳には広大な室内を瞬く紅き閃光にしか見えぬだろう。
――ガッ……ガッ……ガガガガガッ!!
神の力で造られた、不朽不壊の建造物である筈の魔城。それが、ただ移動するという動作だけで砕かれていく。
「ぐぶぶぶっ……流石は我が愛しき伴侶よ。かなりの神気を用いて造った筈なのだがな……」
当然、事が終わった後で直すのは邪神である。二人の戦いを邪悪な笑みで眺めていた邪神の額に、一筋の汗が伝っている様に見えるのは幻覚であろうか。
「あははははははっ! いっくよー!」
ずだんっと一際強く壁を蹴り砕いた鱗華が黒斗目掛けて飛翔する。それはまるで、尾を引く
(受ければガードしていようが死ぬな。躱してもそのまま加速して次が来る。ハハッ……これが鱗華か。まったくお転婆な嫁さんを持つ夫は大変だぜ――)
音速などとうに超え、閃く深紅の稲妻と化した鱗華を前に、加速された思考の中で冷静に状況を分析する黒斗。
絶対金属ですらも容易く貫通するだろう超絶の暴威の前に防御など役には立たぬ、躱そうが受け流そうがそれは先延ばしに過ぎぬ、ならば答えは決まっていた。
――リィン
しまう間も見えぬ程の神速の納刀。いつのまにか鞘に納めていた黒刀の柄に手を添えていた黒斗の腰から、涼し気な鞘鳴りの音が響き渡った。
熟練した職人は、ミクロン単位での細かなズレを調整するというのは有名な話だ。それが神域に至った職人、或いは武芸家であったなら? その答えが今ここに示された。
迫る深紅の穂先のただ一点。ナノミクロン以下の金属分子構造の最先端部である分子の一つに正確に狙いを定めて放たれた、無窮の一閃。その超常の業によって、寸でのところで魔槍がかちりと跳ね上げられる。
とはいえその代償は大きかった。片や100年の歳月をかけて邪神の神気を馴染ませた魔槍、片や神界を突破しようと闇の汚泥を斬りつけて劣化していた黒刀、必然の結果として黒刀は半ばから圧し折れたのである。
「あはっ♡」
そして、防がれる事すらも予想の範囲であったとでも言いたげに、狂笑を浮かべた鱗華のあぎとが開かれ――美しく並んだ牙の如き歯列が露わとなる。加速の勢いそのままに喰らいつけば、胸骨を砕いて心臓まで食い破られるであろう
――ばぐんッ!
喰らいついた鱗華の顔に驚愕の色が浮かぶ。
「ぐううう……しつけのなっていないメス龍だぜ。旨いかよ? 俺の腕はよぉ……このまま喉マンコの奥までフィストで犯してやろうか?」
「――んっ♡」
厚い胸板に牙を突きたてる寸前に突き込まれた逞しい左腕。
食い千切ろうと咢に力を籠めた瞬間に喉奥を指先で刺激され、鱗華は思わず快楽の喘ぎを漏らしてしまう。
当然、その隙を逃す黒斗ではあり得ない。先程の神業の代償に、刀身の半ばから圧し折れた黒刀を躊躇いなく水平に振り抜き――
――ヒュパッ
首を失った鱗華の肉体が、ぐらりと膝をついた。
――ぶしゃああああああああ……
切断面から噴水の様に噴き上がった夥しい鮮血が、漆黒の床にコントラストを描いていく。
糸の切れた人形の様にぱたりと倒れた鱗華の手足が、頭を潰された蟲の様にピクピクと震えていた。いくらその程度では殺す事は出来ぬと解っていたとしても、果たして愛する女の首を一瞬の躊躇もなく斬り飛ばせる男がどれほどいるのだろうか……。
「バカな…………我が伴侶が負けるなど……。いや、我が伴侶は不死身。定命の貴様如きではどう足掻いても勝てぬ摂理よ」
至極当然の理屈であった。
ここは邪神の創り出した神界。闖入者である黒斗とは違い、唯一の伴侶と認められた鱗華が死ぬ事は無い。とはいえ、首を失い斃れ伏した女がゆっくりと立ち上がる光景は悪夢以外の何者でもないのだが。
ゆらりと、未だ切断面から鮮血を噴き出したまま直立した妻に向かって、腕に食らいついていた首を外して放り投げる黒斗。当然その腕は無傷ではあり得ず、半ばから千切れかけて黒血を滴らせている。
己の首を無造作に受け取り。スッ……と、冗談の様にも見える仕草で生首を切断面に接合した鱗華。
みるみるうちに斬線が消え去ったかと思えば、舌をだらしなく垂らして白目を剥いていた死相が、すぐさま血色を取り戻してニヤリと微笑んだ。
「あはっ♡ ボク殺されちゃった♡ 首を斬られる痛みってとっても官能的だね♡ でももう良いや、キミの事はよく解ったし、茶番劇もそろそろ終わらせようか」
身体を濡らしていた鮮血などもはや影も形も無い。狂った笑みを浮かべながらも、全く笑っていない凍てついた瞳を向けて……鱗華が終幕を告げた。
「ぐぶぶぶぶ……同じ生物だというのに性別でこうも違うとは面白いものだな。女とはなんと合理的な生き物よ……あれほど逢いたい逢いたいと、何十年も焦がれて止まぬ様子であった男を相手にこの態度か……ぐぶぶぶ」
知性体を滅ぼす為に造られた存在。だが、彼は
覚悟せよ、深淵を覗く者。汝もまた深淵に覗かれているのだ。探求の末に狂い果てた哲学者の言葉通り、常世の理を超越した魔性の美を直視してしまったエイリアンの兵器は――生まれて初めて、恋に狂った。
恐るべきは異界の兵器すら狂わせる鱗華の美貌である。
己に入力された目的をあっさりと捨て去り、ただ一人の女を手に入れる為だけに世界まで作り出してしまった邪神。だが、彼は知らなかった。創り出されたばかりの兵器である彼には、理解できる筈も無かった。或いはツァトゥグァの様に、長い年月を人の間で過ごしていたら理解できていたのかも知れない。
女という存在はつまる所、どこまでも理不尽な存在であるという基本的事実を……。
「あは♡」
――ドボッ
「あ…………――――?」
呆けた表情で、胸元に大きく空いた虚ろな穴を見下ろした邪神。
「――え……?」
投擲された魔槍によって胸部を大きく抉り取られた邪神が、震える手で自らの胸に空いた空隙を撫でる。肉体の喪失感よりも遥かに大きな、何かとても大切なものを失ってしまったという喪失感が、彼の心を粉々に打ち砕いていた。
「ごめんねー? キミのおちんぽはとっても良かったんだけど……ボク、ちんぽ一本だけなんて耐えられないの。それに黒斗は美味しいご飯も作ってくれるから♡ さよなら、ボクの
「なんで…………だって……あんなに……100年も…………うそ……だろう……?」
神気満ちる限り神は不滅。だというのに復元が行われる気配は無い。
我を失うほどの衝撃の中で、彼は気付く。己の力の大半は既に、世界の維持と一人の女に注ぎ込んでしまっていた事に。
「ボクはね? 一人の男を愛しながらも、沢山の……本当に沢山の男達に愛されないとダメなんだ。色んな快楽をくれてありがとうね。でもバイバイ♡ ――クロト」
長い時を共に過ごした相手に告げた最後通告。そして最後に、己が永遠のパートナーと定めた相手の名を静かに呼ぶ鱗華。
「あっ……ああ。邪神さんよ、なんだかちっと可哀想だが……介錯はしてやる。もしお前に来世があるんなら、今度は悪い女に騙されるんじゃねーぞ――ハッ!」
低い姿勢から、音も無く折れた黒刃が空を斬り上げ、邪神の正中線に斬線が走った。
「我は……ただ……そなた……欲し――」
一人の女を手に入れる為に己が使命を捨て、100年もの長きに渡り奉仕の限りを尽くしてきた女に呆気なく捨てられた邪神。
哀れなエイリアンの兵器は絶望の中で、憑依した肉体ごと左右に断ち割られ、その虚ろな生を終えたのであった。
「迎えに来たぞリンカ」
「ちょぉぉぉぉぉっとだけ長かったけど、許してあげる。ちゃんと証明してくれたしね♡」
黒斗にとっては数時間ぶり、鱗華にとっては100年ぶりの再会であった。普通の人間の精神では到底耐えられないだろうが、その精神性も含めて人の域を逸脱している鱗華にとっては、やや長めの浮気期間でしか無かったのかもしれない。
とはいえ、互いに無言で歩み寄って抱き合う鱗華の瞳には確かな潤みがあった。愛する夫に気取られまいと隠してはいたが、やはり100年という時間は短い物ではなかったのだろう。
「100年分、しっかり上書きしてよね」
「勿論だ。今夜だけで完全に書き換えちまうくらい愛しまくってやる」
「ふふ……――ってあれ? 何か来る?」
逞しい夫の背中を撫でさすり、懐かしいその感触を味わっていた鱗華が、自分達に近付く強大な気配に気づく。
「ああ、ナモモだ。なんか神様と合体して闘神とかってのになってた」
「え? なにそれ……ってなんかナモモちゃんが大人になって光る輪っか背負って飛んでる!?」
黄金に輝く鎧に身を包み、背の
抱き合う二人の前で急停止した彼女は、鱗華の変わり果てた姿をみて驚きの表情を浮かべる。
「リンカ姉ちゃんがおっぱいおばけになってるのだ!」
「ナモモちゃんも大概だよ?! それもう神様じゃん!」
わいわいと騒ぐ二人を、苦笑いを浮かべつつ眺める黒斗。
先程までのシリアスな雰囲気はどこへやら、すぐにいつもの混沌とした日常が戻ってきた様子である。
「まぁ二人とも落ち着け。というかアレだ。こういう場合すぐに脱出した方が良くないか? この世界を維持してる邪神が滅んだんだから、この世界も崩壊するってパターンだろこれ」
「そうなのだ! それを先に伝えたかったけど、リンカ姉ちゃんがあんまりアレだったんで忘れてたのだ。神様お願いなのだー」
融合したツァトゥグァにナモモが呼びかけると、その身体から眩い光が溢れ出して包み込んでいく。
変化は一瞬だった。
「分離完了だっぺー!」
瞬く間に小さくなった輝きが収まると、そこには金色に輝く瞳以外は元通りの姿になったナモモと、マスコットの様にディフォルメされた
「詳しい話は後だっぺ。まずはそこの真っ二つになってるオラの真体に宿るっぺ。三人は固まってそこで待ってるんだっぺ」
ふよふよと浮かんでいるツァトゥグァが、見るも悲惨な有様となっている己の真体に近付く。そのまま宙に溶け消える様に真体に重なると、両断されていたそれぞれの半身があっという間に融合していった。
「なんかエイリアンが憑依してた時とは全然違うな」
「ねー。表情も柔らかいし、なんか凄くカワイイ」
「神様カッコいいのだー!」
一か所に集まった三人が、口々に真体を取り戻したツァトゥグァをみて感想を言い合う。雰囲気だけではなく、異形染みた全体の容姿もどこか丸みを帯びたユーモラスな造形に変わっていた為に余計そう感じるのだろう。
「そ……そうだっぺか? なんか照れちまうっぺ。……っと、まずはこの空間を消して、元の世界にもどるっぺ」
ツァトゥグァが権能を振るったのだろう。三人の周囲に亀の甲羅を思わせる障壁が展開されたと思うやいなや、邪神の創り出した世界全体を包み込む様に神気が放たれた。
「うわっ! 凄いね! どんどん世界が縮んでいくよ」
「俺たちだけを世界から切り取って保護してるんだな」
「そうなのだ。後はこの世界を折り畳んで丸めてぽいっとなのだ」
眷属となったナモモには、ツァトゥグァが行っている事がちゃんと理解できていた。その知識も含めて、ここに来るまでの人間であった頃とは比べ物にならない程の力を身に着けていたのである。
そうして、三人と一柱の神は、元の場所である祭壇の間へと戻ってきたのだった。
邪神の力によって天蓋を吹き飛ばされ、吹き抜けとなっていた地下空間も先程の権能によって元通りに復元されている。更には鱗華に噛み千切られかけた黒斗の左腕さえも。
「この肉体は要石だったんだっぺ。古戦場全体を巡る星脈からエーテルを吸い上げて神気に変換し、100年毎にオラが受け取るんだっぺ。そうしてエイリアン共の兵器工廠に供給されるエネルギーを制限する為のシステムなんだっぺ」
「その割には憑依体とかが産まれてたようだが……」
「完全にゼロにするのは無理だっぺ。だからあいつらを狩る為の武器や祝福をナモモ達に与えてたんだっぺ」
「成程なぁ。色々と合点が言ったぜ」
ツァトゥグァの説明を聞き、頷く黒斗。だが、そこに鱗華が疑問を差し挟む。
「あれ? でもそのシステムってさ、100年ごとにお嫁さん貰うのは何か関係あるの?」
「………………」
ギクリとした表情で固まってしまったツァトゥグァ。色々と察した黒斗が助け舟を出そうとしたのだが……。
「だってオラ女の子にちやほやされたかったんだっぺ!! そりゃあレムリアの人達は親みたいなもんだし、恩もあるっぺ! でもずっと一人でエイリアン共を監視してるのも結構キツかったんだっぺ! ちゃんとオラの事好きになってくれる娘っこしか貰ってないっぺ……少しくらい良い思いしても良くないっぺ?!」
早口でまくし立てる様に言い訳を喚き続けるツァトゥグァを、どこか生暖かい眼差しで眺める黒斗と鱗華。当のナモモはと言えば……。
「全然良いのだ!! 神様は凄いからお嫁さん沢山貰うべきなのだ! きっとみんな幸せなのだ。だから神様はもっと堂々としてて良いのだ!」
まるでぬいぐるみの様にツァトゥグァを抱え上げて抱き締めるナモモ。何故か涙目になっていたツァトゥグァは感動の余りナモモの胸でおんおんと泣き始めてしまった。
「いやまぁ全然いいんだけどよ……なんかこう、最初思ってたのと全然違って肩透かしだったよなぁ」
「ねー。そもそも黒斗が憑依体をきっちり仕留めておけば、何事も無くナモモちゃんが嫁入りして終わってた話だったよね」
「それは言わないでくれ……ちょっと、いやかなり気にしてるんだ……」
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その後、ナモモによって慰められて落ち着いたツァトゥグァと共に一行は里へと帰還した。
語る事は多々あれど、まずは、里に帰りついて大雑把な説明もそこそこに神とナモモに詳細を任せて魔導テントに引きこもった我らが荒神夫妻についてだ。
「ゴクリ……まさかリアルに肉体改造モノが愉しめるとは思わなかったぜ……」
「どう? あの人に変えられちゃったボクのカラダ……♡ 何度も壊されて復元を繰り返して、もうクロトの知ってる場所なんて一ヵ所も残って無いんだよ? うふふ……♡♡」
玄関から通路にかけて転々と転がる、折れた黒刀や禍々しいオーラを纏った魔槍などの武器防具。それらを追いかけて寝室に入れば、ベッドの周囲には鎧下や下着などが乱雑に放り捨てられている。足早にベッドへ向かいながら装備を次々に脱ぎ捨てていった二人の姿が目に浮かぶようだ。
「すげぇエロイ……つーかもう我慢出来ん。改造された超乳マンコにぶち込むぞ」
ベッドサイドに座っている鱗華の巨大化した乳房の先端部。そこに造られた、淫汁溢れる卑猥な肉の裂け目に逸物を突き込む黒斗。愛する妻の肉体の変貌ぶりに抑制が効かなかったのだろう。
――ずにゅっ!
「んっ……――どうかな? 前みたいにただ穴を開けたのとは別物だよね。だってこれはこういう器官だもの♡」
「めちゃくちゃうねって絡みついてくる! くああああっ……なんだこの感覚……マンコともケツマンコとも微妙に違う……ねっとりとして……でも幾つもの筋が個別に締め付けてくるような……ぐうううううッ」
本来の役割である授乳の為の機能を切り捨て、邪神の性器に快楽を与える為に造り替えられた鱗華の乳房。
乳腺は愛液に似た体液を分泌し、クーパー靭帯は男根を締め付ける役割を担い、乳管は逸物を包み込んで蠕動する肉の穴と化していた。そして、放出された精は直接粘膜に吸収されて鱗華の栄養となる。もはやそれは乳房とは言えぬ淫靡な性器そのものであった。
張り裂けそうな程にビキビキと隆起した逸物に絡みつく乳穴の新感触に、早くも腰砕けになってしまう黒斗。とはいえ邪神専用に造られたソコは、黒斗の逸物にぴったりとフィットしている訳では無かった。
「うふふ。久しぶりだっていうのに、ボクの気持ちとか雰囲気とか一切気にしないで性欲処理を優先するよねクロトって……あの人はもっと優しかったよ? うふふ」
自分ではない男の為に造り替えられた肉体を犯しながら、鱗華に軽蔑とも取れる様な言葉をぶつけられ……それだけで黒斗の興奮は最高潮に達してしまう。
――ブビュバッ!! ドビュルルルルルルルルルルルルルルルルル……ブビュルッ……
「相変わらず早漏だし、そんなにあの人と比べられるのが気持ち良かった? クロトってホントに変態だよね」
己以外に最適化された妻の穴。そして、この世の物とは思えぬ程に美しく冷たい表情で見下される快感に刺激され、乳管の奥深くに埋め込んだ亀頭の先端部から白濁液をぶちまける黒斗。
その無様な敗北感に満ちた表情を見上げた鱗華の口許が、サディスティックに歪んでいく。
「ぐううっ……全然フィットしないのに滅茶苦茶気持ち良かった……くそっ……あいつの方が良かったのか? 俺のちんぽじゃもう駄目なのか?」
「あの人みたいにトゲトゲもしてないし、いろんな形のしっぽおちんちんも生えてないしねぇ……もう片方のおっぱいまんこも使う? それとも……あの人のカタチにピッタリになってるボクのおまんこ……上書きしてみる? 無駄だと思うけど♡」
「くっ……次はオマンコだ! デカパイマンコはニプルフィストでぶっ壊してやる! あいつ専用の乳マンコなんてもういらねぇ! 中身全部引き摺り出してペチャパイにしてやる!」
――ずにゅううう! グジュッ! ブジュウッ!
「んッ……いいよ。クロトの好きな様にしたら? ……ふふっ♡」
造り替えられた過程で消えてしまったのだろう。人妻肉便器のタトゥーが無くなった下腹部の、臍辺りまで伸びた女性器の縦筋を割り開いて、成人男性の拳ほどに拡がった膣穴に逸物を突き込む黒斗。
併せてスイカより大きくなった乳房の先端部、ビール瓶をさかしまに突きたてた様な形状の乳首の割れ目に、両腕を肘の辺りまで埋め込んで内部をグチャグチャに掻き混ぜていく。
思わせぶりに黒斗に言葉を掛け、ベッドに押し倒されたまま、手足を投げ出した鱗華。一見なげやりにも見えるその仕草に、より敗北感を刺激された黒斗が狂った様に鱗華の肉体を壊し始める。
――どぢゅんっ! ぶちゅんっ!
邪神を屠った事により跳ね上がった身体能力を全開にして、二人の為に特注で造られた筈のベッドが軋みをあげる程の勢いで猛然と腰を振りたくる。
――グチャッ! グチャグチャグチャ……グヂィッ! ブチブチブヂィ……グヂュッブヂュッ……
両の乳房内に潜り込ませた掌を開いて内部組織を手当たり次第に掴み、邪神に対する嫉妬の感情のままに握り潰し、手首を大きく捻りながら引き千切る。
「んっ……ふふ……そんなに妬ましいの? でも……クロトのおちんぽ全然届いてないよ♡ おっぱいは少しくすぐったいけど……なにかしてるのかな?」
かつて下腹部に合った可愛らしい子宮は胸元に移動し、膣は邪神の巨杭に合わせて大きく、深く、そのカタチを変えていた。黒斗の40cm超の逸物をもってしても届かぬ程に。
そして胴回りを超える程に巨大化した乳房は、内部を破壊されたその場で再生を繰り返していた。どれ程深く抉ろうとも、どれ程激しく引き千切ろうとも、瞬く間に内部組織を復元してしまうのだ。まるで、永劫にループする賽の河原の石積みの如くであった。
「くそっ! くそっ! 子宮口にも届かねぇ! ユルユルなのは仕方ないとしても……いつもならガバガバでもマン肉がピクピク絡みついてくるってのに……くそォッ! でも射精ちまうっ!」
ぴくりとも動かぬ粘膜に逸物をひたすら擦り続けて射精に至る黒斗。ビュルビュルと発射された精が、届かなかった子宮口目掛けて放たれる。しかし、普段であれば貪欲に開いて精を受け入れる筈のソコはピクリともせずに閉じきって、放たれた精は虚しく結合部から零れ落ちていく。
何度も何度も、腰を巨大なドテ高マンコに叩きつけて虚しい射精を繰り返しながら、片腕を引き抜き、一方の乳房に両腕を抉り込んで破壊力を集中させたり、大口を上げて乳房に歯を立て食い千切り始めた黒斗。
乳首の割れ目を両腕でグイグイと抉じ開けて引き裂き、露出した乳腺や脂肪を食い散らかしながら両手で抉り取った組織片をゴミの様に放り捨てる。そこまでやっても次の瞬間にはグロテスクな傷口が逆再生する様に復元してしまうのだ。
どれ程そんな事が繰り返されただろうか。
ベッドのシーツには絶倫の黒斗が放った白濁液が大量に溜り、シーツから零れた精液が床に大きく広がっている程だ。
乳房を破壊する事を諦め、尿道に両腕を同時に抉り込ませて粘膜越しに逸物を扱いて自慰をする。親指ほどに肥大化したクリトリスをライターで炙る。ベッド脇の道具入れからいくつもの巨大ディルドや魔導具バイブを取り出してきて全ての肉穴が裂けるまで詰め込み、全てのバイブを起動する。
しかし、それ程までに責め苛んでも鱗華の反応は無い。
事が始まってからすでに、三時間は経過しているだろう。その間、微かな呼吸音以外は一切の反応を見せていなかった鱗華がようやく、物憂げに口を開いた。
「ねぇ……まだやるの? あの人と違って全然気持ち良くないんだけど」
「うぐっ……ううっ……射精るっ……――はぁ……はぁ……もう俺じゃあ駄目なのか……リンカを満足させられないのか……」
「別に愛情は変わらないよ? クロトの事は大好きだし。でもセックスはもう感じないかな。毎日時間を決めて、その間だけオナホ役してあげるからそれで良いよね?」
「ぐうっ……射精止まらんっ……すまん……すまん……リンカを満足させられないザコチンポの俺を許してくれ……ううっ……」
「はぁ……ホント精力だけは無駄にあるよね。ここまで言われても壊れた蛇口みたいにザー汁吐き出しまくってさ。どれだけ変態なのかな? 負け犬ザーメンだらけでおまんこのナカ気持ち悪いからボクお風呂入るね。じゃあね」
圧し掛かっていた黒斗の下からするりと抜け出した鱗華が、股間から大量の精液を垂れ流しながらスタスタと扉へと向かう。残された黒斗は、未だビキビキと屹立したままの逸物を自ら扱いて射精を続けていた。
「ううっ……リンカ……リンカ……ぐううっ……射精るっ……」
打ちのめされ、それすらも興奮に変えて虚しくシーツの上に精を放つ黒斗。そんな夫を振り返りもせずに鱗華は部屋を出て、浴室へと入る。
「ふぅぅ……もうダメぇ……♡♡♡くひいいいィィィ♡♡♡♡」
我慢の限界に達していた鱗華が、それまでの冷淡ですらあった表情を一変させて崩れ落ち、だらしないアへ顔で股間から大量の潮を噴き出して絶頂する。
「クロトのあの顔……あの表情……んああッ!! イくイくっうううううッ♡♡♡♡」
先程の不感ぶりは演技であったのだ。
100年の経験値の積み重ねは伊達では無いのだろう。黒斗に気取られる事無く快楽と苦痛に耐え、何も感じていない風を装っていたのだ。
全ては、敗北感に打ちひしがれ、情けない惨めな夫の姿を見たいが為の行為だったのである。
そして今、それまでに耐えて来た快楽を解放するかのように鱗華は法悦の極みにあった。神域の極致にある気配感知能力を鈍らせてしまう程に――
――ガラッ!
浴室のドアが音を立てて開かれた。足早に移動していった鱗華の様子に、一抹の違和感を抱いた黒斗が自慰もそこそこに追いかけてきていたのである。
「見事に騙された……でもスゲェ興奮した! くうううっ! やっぱリンカは最高の女だぜ」
「はぁん……♡♡もうバレちゃったぁ……♡♡ああすれば絶対喜んでくれると思ったんだよねぇ♡♡♡ホントは凄く感じてたのぉ……♡♡♡必死に頑張る黒斗が健気すぎて耐えるの大変だったよ♡♡イくッ♡♡♡」
ひとしきり絶頂を味わった鱗華が、ゆっくりと立ち上がり浴室に常備されているマットの上に移動する。そして黒斗に向かって妖艶に微笑みかけるとその姿が漆黒の靄で覆われ始めた。
「おおっ?! それが神気ってやつか? なんつー圧力だよ……ってそのカラダ――」
「またあのプレイがしたくなったら変えてあげるよ。サプライズ感は無くてもそれなりに愉しめるでしょ? それにやっぱりボクはこの、父さんと母さんに貰ったカラダが一番だからね」
言い終えるや否や、鱗華の肢体を覆っていた靄が薄れていく。その下から現れたのは、邪神に攫われる以前の美しい黄金比の如き鱗華の肉体であった。
大きすぎた乳房は縮小し、先端部は桃色の慎ましい突起を淫らに尖らせ、大きすぎたドテ高マンコは程よく盛り上がった無毛の恥丘へと戻る。ご丁寧に、下腹部に彫られた人妻肉便器のタトゥーまで復元されている。
「ああ! 見慣れたリンカだ! 最高に綺麗でエロイ、俺の嫁さんのナイスバディだ!」
「ほら……もうあの人の痕跡なんてどこにもないよ? 黒斗が大好きなボクのカラダだよ……♡こんどこそたっぷりと召し上がれ♡♡」
「うおおおおおお!!」
獣の様にマット上の鱗華に襲い掛かっていく黒斗。
掌に慣れたサイズの乳房を握り潰し、とろりとした愛液をこぼすキツキツの膣口をメリメリと抉じ開けながら逸物を抉り込ませていく。
「ひぎッ!! おっぱい潰れてぇ……痛゛ああああッ!! まんこ裂けちゃうッ♡♡♡ボクの大好きな夫チンポでぇ……♡♡浮気妻のキツマンごりごり抉って子宮ブッ潰してぇ♡♡♡」
ズンっ! 大きく突き込まれた逸物が臍の辺りで子宮を叩き潰し、下腹部に浮かび上がらせていく。乳房を乱暴に揉み潰して乳首に噛みつけば、鱗華は凄まじい絶叫を上げてイキ狂い始める。
それは紛れもなくいつも通りの、見慣れた夫婦の愛の交歓であった。
その後は夜が明けるまで、二人の時間を必死に取り戻すかのように二人は互いを求めあった。
互いの全てをまるごと愛していた二人にとって、100年程度の試練など軽いものであったのだろう。どんな姿の鱗華だろうと、どんな無様な夫だろうと、その程度で弱まる愛の絆では無いのだ。
仮にあの世界で一万年を過ごしていたとしても……鱗華の黒斗への愛が揺らぐ事など有り得なかったのである。
ーーーーーーーーーーー
黒斗と鱗華が深く愛を確かめ合っていた頃。
里長であるナスティと、神であるツァトゥグァの間では今後に向けての話し合いがもたれていた。
今回の発端である、神の伴侶が実は生贄では無いかという疑惑は、結局のところ杞憂であった訳だが、後々の為にツァトゥグァの語った話を口伝などでは無くきちんと記録として残すという措置が取られる事となった。
この辺りに関しての理由は、おおむねセーヌの街におけるアンダーレムリアランドとの関係が大きく参考となった様だ。
里の過疎化に関しても、事態を重く受け止めたツァトゥグァが共に打開策を考えるという事に落ち着く。
神の正体と人類との関係、それらはレムリアが滅びた今、知る者はほぼいない。しかし現代の人類たちは文明を開化させ、アンダーレムリアランドと対等に付き合い始めたのだ。神の力を巡って不毛な争いや悲劇が起きる事を嫌って、現世への干渉を控えていたツァトゥグァを含む神々は話し合いの末に、干渉制限の緩和を選択する事になる。
だが、その選択の決め手となった大きな要素がもう一つだけあった。
「父さん母さん行ってきますなのだ! 皆の欲しい物リストもちゃんともらったし、お土産として沢山買ってくるのだ!」
「あんらー都市はおっとろしい所って聞くけど、大丈夫かねえ」
「オラもついてるっぺ! ちゃんとナモモはオラが護るから心配いらないっぺ」
「おお我らが神よ。義父とはいえ恐れ多い……ナモモをどうか宜しくお願いします」
黒斗と鱗華に連れられて、大都市セーヌに向かう事となったツァトゥグァとナモモ。前々から行きたがっていたソレをどうせなら新婚旅行にしようと鱗華が提案し、あっさりと受け入れられたのだ。
巨石造りの門から出発した一行は一度、レイダースに寄って代官に説明を行った。
涙を流して男泣きに感謝を伝える代官に別れを告げ、一行はセーヌの街へと向かう。
「そういやリンカさんだっぺ? なんかカラダにおかしい所ないっぺ?」
「何もー? 前より力が溢れてくるし、お腹空くけど体型もある程度自分で変えられる様になったし、あとは今なら、頭と心臓刺されてもその場で復元できるね。バラバラでも余裕かも」
「おかしい所しかないっぺ!? 多分邪神の神気が何割かリンカさんに吸収されてるっぺ。亜神クラスくらいになっとるっぺ……黒斗も憑依体ごと真体斬ったっぺ! あれで肉体が超強化されてるっぺ……これも亜神クラスだっぺ……こんな化け物たちがふらふらしてる現世なら、神がちょろちょろしてても同じ事だっぺ……」
セーヌに向かう道中、衝撃的な話が語られたが、当の二人は顔を見合わせると何をいまさらと笑い合う。とっくに化け物であるという自覚はあった様だ。
「そういや神さん、家には一度戻らなくていいのか? いくら新婚だからって、報告とか色々あるんじゃないのか?」
ナモモの頭の上で寛いでいるツァトゥグァに、ふと思い付いた疑問を投げかける黒斗。大勢いるという伴侶を放置して良いのかという揶揄も含まれているのだろう。
「これでも神様だっぺ。並列意思を分身体に分けるくらいは簡単だっぺ。嫁っこ一人一人にオラがついてるんだっぺ」
「えー!? 凄い! ボクにも一匹欲しい!」
「分け御霊みたいなもんか……。あとリンカの事はスルーで良いぞ」
「なんでぇ!?」
そんな風にわいわいと旅を続け、里を出発して一週間後にはセーヌの街門が見えてきた。
黒斗にとっては半月程度の外出であったが、鱗華にとっては100年ぶりのセーヌである。それはもう嬉しそうに飛び跳ねながら街門を潜って、警備の門衛を驚かせているのであった。
「やっと帰ってきたなあ……リンカには特にそうか。まずは皆を集めてナモモと神さんの紹介と……何はともあれ歓迎の宴だな!! よっしゃ! ただいまセーヌ!」
今回の冒険は二人にとって、得る物の大きい冒険であった。
神たるツァトゥグァとの友誼。その伴侶であるナモモとの絆。死闘を乗り越えてより強くなった肉体。だが、二人が何よりも喜んだ成果は別にあった。
「リンカ。その肉体変異や復元能力は単にメシを沢山食えばいいのか?」
「後は魔素だね。ガーちゃんが言うにはエーテルだっけ? それも吸収できるようになったからさ、ご飯を一杯食べて周囲のエーテルを吸収すればいつでも肉体改造プレイが出来るよ♡」
「そいつぁ愉しみだ。アルフェンとリルも喜ぶだろうな」
ニヤニヤと下衆な笑みを浮かべて妻のカラダを舐め回す様に眺める黒斗。今回一番良い報酬を得たのは、他ならぬ黒斗であるのは間違いないだろう。
愛する妻は以前よりも更にドスケベな能力を手に入れて、黒斗の許に戻ってきたのだ。バラ色――否、桃色の未来に向けて妄想が止まらない黒斗であった。
今回で七章は完結となります。ここまで読んで頂きありがとうございます。
次章はまた暫く掛かると思いますが、サブキャラたちのエピソードもそろそろ幕間の様な感じで書きたいとも思っています。
面白い、エロイと思って頂けたら評価感想などを頂けると作者が泣いて喜びます。よろしければ一言でもお寄せ頂ければ幸いです。お付き合いありがとうございました。