ファム・ファタール~寝取らせモノが大好きな剣士が異世界転移した場合~ 作:幻闇
場は混沌の様相を呈していた。
数多の触手によって虚空に固定された美しき人妻を犯す人外の存在。淫らに震える妻の口に荒ぶる男根を突き立てて息も荒く犯し抜く夫。そのすぐ傍で三者の痴態にあてられたかの様に、防具も服も脱ぎ捨てて産まれたままの姿で互いを貪り合う一組の恋人。
淫らの神に捧げるサバトじみた光景であるが、それはあながち間違いでは無かった。一柱はまぎれもなく神であり、犯される人妻は神に至る器であったのだから。
「はぁ……はぁ……寝取られてる麟華の口マンコを犯すのは最高だぜ。くぅっ……いい感じに歯が当たって……食道と噴門の締め付けもたまらん!」
虚空に仰向けで固定された麟華の頭を両手でがっちりと掴み、顔面に激しく腰を叩きつけていく黒斗。イラマチオなどという生易しい代物ではもはや無い。 並の男の逸物であれば即座にズタズタにされかねない麟華の鋭利な歯列でさえも、オーラを纏って強化された黒斗の逸物にとっては程良い刺激でしかなく。50センチオーバーの巨根が突き入れられる度に、白く細い喉は張り裂けんばかりに膨張し、みぞおちのあたりまでボコリと膨れ上がっている。明らかに呼吸ができる状態では無い。相手が麟華でなければとうに酸欠で死んでいるだろう。
「くくく……黒斗様も愉しまれているようでなによりです。ですが、まだ遠慮されているのでは? 良いのですよ、私の事は気にせず
「あー……。どうも寝取らせてる時は相手を立てちまう癖がな……。でも、そんな甘い事を言ってられる相手じゃあないか。ナイさんは」
有象無象の男であれば寝取られる心配など毛すじほどもないのだ。誰よりも愛されている夫という揺るがぬ立場から、上から目線で寝取らせてやる。愛妻を使わせてやるというスタンスを黒斗は愉しんですらいた。アルフェンといった親友相手に貸し出す場合はまた別の愉しみ方であるが、それでも麟華を本当に堕とされるといった心配は無い。だが、今回は違う。
ナイは黒斗の事を心底から好んでいるし、その人としてはあり得ざる精神と強さに尊敬すらしている。だが、それは麟華を奪わないという理由にはならない。
かの邪神のように恋に狂うといった事こそ無いが、ナイはナイなりに麟華という存在に惚れていた。理を外れた神としての長き生を経て、これほどに興味をそそられた女はかつていなかったのだ。
故に、ナイは奪えるならば奪っても良いと考えていたのだ。黒斗という男ならば、己が認めた男であるならば、たとえ完全に麟華という女を奪おうとも、神たる己を超えて奪い返すはずだ。それはなんと素晴らしい事だろうか。永劫の時を生きる中で、麟華という魅力的に過ぎる女を奪い合って過ごす。退屈という神を殺す病すらも、その劇薬じみた刺激の前には意味をなすまい。
「いいぜ……バトルといこうや。それによ、一番な大事なのは麟華を悦ばせてやる事だもんな。いつもどおり全力でヤってやるぜ!」
瞬間――空間が震えた。
黒斗が纏うオーラの質が変わり、戦闘時のソレへと変化したのだ。
軋み、歪みさえした空間の中心は麟華。その胎内であった。
――ドゴォッ!!
戦闘時は己が得物。黒き刀身に纏わせる絶大なオーラを、現在の得物である逸物に集中させた黒斗。その巨根ではあっても人外の存在たるナイの超重兵器には及ばぬソレが神すら殺し得る神器と化し、実物よりも遥かに巨大な刀身を実体化させたのだ。
空間内に響き渡った極大の破砕音は、その神器と化した逸物と神たるナイの逸物が、麟華の胎内で粘膜越しに激突した証左であった。
「ん゛う゛っ゛──────────────────!!!!」
人知を超えた逸物同士のぶつかり合いに、さしもの麟華も激烈な反応を示す。その腹部は凄まじい衝撃に破裂せんばかりに膨張し、歪んだ空間と共に激しく波打つ。しかし、それは始まりの剣戟に過ぎなかった。
――ドゴォッ! ズドォッ! ボゴォッ! ドッゴォッ!!
連続した破砕音がこだまするたびに、中心に座す女体が激しく痙攣し、その塞がれた口から無音の断末魔めいた嬌声が響き渡る。局地的な次元震すら観測しうるだろう超絶の交合に耐えうるのは、神の器たる証か。
否。
麟華の胎内は、黒斗とナイの超逸物同士が激突するたびに、破壊され尽くしていた。子宮底はナイの突き込みに耐えきれずに突き破られ、胃の粘膜は黒斗の逸物によって千々に引き裂かれ、直接的に逸物同士がぶつかり合う兜合わせの度に周囲の臓物はぐちゃぐちゃに攪拌されて消し飛ばされていたのだ。持ち前の不死に近い再生能力で復元を繰り返しているだけでしかない。故に、その激しすぎる痛みと快楽は凄まじかった。
――ひぎゃあああああっ♡♡♡ やばいやばいやばい♡♡♡ これボクだめになるきもちよすぎるんああああああ♡♡♡♡ ボクがこわされてなおってこわされてなおってこわされるううううう♡♡♡♡ きひあああああああっ♡♡♡♡
もはや念話でさえもまともに発信できぬ麟華の精神が、快楽と苦痛に悲鳴を上げる。
並の男では真の意味で麟華を翻弄する事は不可能だ。あえて弱い者に嬲られ、指先だけで殺せる相手に支配的に犯されるという精神的な快楽。それは確かに心地よい。だが彼等では、どうにもならぬ理不尽な暴力に晒され、抵抗できぬままに肉体を好き放題に嬲られる被虐的な快楽はけして満たせないのだ。
そんな麟華の被虐願望を満たせる数少ない男の内の二人が、黒斗とナイであった。
――あひいいいいっ♡♡♡ ふたりともさいこうだよぉ♡♡♡ もっとおかしてぇ♡♡ こわしてぇ♡♡ ボクをめちゃくちゃにしてえええ♡♡♡
「ほぉ……流石は黒斗様。ですが、まだ足りませんな」
ナイは愉快そうに口許を笑み曲げた。挑発的な言葉と同時に、麟華の胎内をぐちゃぐちゃに突き壊していた超重兵器に融合していた触腕が、更に速度を上げて膣内を蹂躙していく。その威力は、レムリアが誇る不朽不壊の絶対金属ですらも触れただけで粉微塵に砕け散るほどであった。かように凶悪というにも生温い逸物を、先端が抜けてしまうギリギリまで抜き出したナイ。次の瞬間、捲れ上がり破砕した夥しい膣肉の破片を纏わりつかせた血塗れのソレがひときわ強く、マッハを遥かに超えた速度で根元まで突き込まれた。
――ギュボッ!!
直後に発生した逸物同士によるぶつかり合いの余りの激烈さよ。事前にエイネスが念のためにと揺籃炉に施した対次元兵器結界の臨界稼働処置。それが無ければ炉心に異常が生じてもおかしくはないほどであった。
「ぐうっ!」
呻き声と共にあとずさる黒斗。麟華の頭をがっちりとホールドした手こそ離してはいないが、その逸物はあと一ミリで完全に麟華の口マンコから抜け落ちてしまう程に押し負けていた。踏みとどまれたのは己こそが麟華の夫であるという意地だろう。
「ははっ……。やっぱナイさんはスゲェな。だがよ、全力を出してダメなら更にそれを上回る全力を出せばいい。俺の麟華への愛に限界なんてねぇんだからな」
「それでこそです。もはや言葉は不要でしょう。あとはただ――穿ち続けるのみなれば」
「いくぜぇ――うおおおおおおおおおおっっ!!」
――ゴッ!! ドッゴオオオオオオオオッッッ!!!!
二人の男が腰を突き出す度に凄まじい爆音が響き渡り、びりびりと空間が震え、ぎしぎしと次元が軋みを上げる。
だが、それらは全てが余波にしか過ぎない。彼らの逸物がぶつかり合うたびに生じるあり得ざる衝撃。原始的な核爆弾にすら匹敵するであろう超絶の威力のほぼ全ては、ただ一人の女の胎内で受け止められていたのだ。
――ぎゃはああああああっ♡♡♡ 凄すぎりゅううううううううっ♡♡♡ ぶつかるたびにボクのなかみがああああああっ♡♡♡ とぶっ♡ とんじゃうっ♡♡ またイくうううううっ♡♡♡ 意識ごとぶっ飛ばされてイっちゃのおおおっ♡♡♡ ひぎいいいいいいいいっ♡♡♡♡
ただ一個の女体をステージにして繰り広げられる男同士のぶつかり合い。もはやそれはセックスではなく戦いであった。力無く四肢をだらりと垂らしたまま、男たちの逸物が突き込まれるたびに腹部を風船のように膨らませてビクリと震えるだけの肉人形と化した麟華。
だが、その意識は確かに歓喜していた。そして、未だ人の枠組たる黒斗には伝わりようもない筈のそれを、黒斗はしっかりと認識していた。否、認識していたというよりは疑っていなかったのだ。なればこその本気のぶつかり合いであった。
「あれが神の交合か……凄まじいというにも足りぬな」
「ああ、だが女としては羨ましいな。それだけ愛されているのだろう」
余波を防ぐ結界を張ったまま繋がり合うキュクレインとアルティマは、三者の交合に感嘆の表情を浮かべていた。かたや神々の血戦もかくやという戦いの如き交合。かたや優し気に交わり合う恋人同士の交合。規模の違いはあれど、その二つに差異は無い。ただ愛し合う方法の違いだけでしかない。だがそれでも、常人であれば余りの光景に正常な精神を保つ事も難しいだろう。黒斗らの戦いを間近でみた英霊たる二人であればこそであった。
「アルティマよ。私もあのように激しく愛するべきだろうか」
「やめろ。転生の前に滅びてはかなわぬ。だがまぁ……新たな肉体の性能次第では……ありやもしれぬな♡ ふふ……お前に胎内が壊れるほど愛される時を楽しみにしておこう」
「ああ。今はただ、望外の幸運を噛み締めつつ汝を抱こう。ぬぅ……そろそろ達するぞ……孕ませる事もできぬかりそめの精に過ぎぬが……それでも汝の最奥に解き放とう」
「我も同じくかりそめの揺り籠であるぞ。ふふっ……よかろう。たっぷりと放つがよい♡ ああっ……キュクレイン……共に快楽の園に至ろう♡」
「くうっ……そのような睦言を囁かれては……余裕など……アルティマ、愛している……くうっ!」
「ああっ♡♡ かりそめの揺り籠ですらも孕みそうに濃く……んはあああっ♡♡ 果てるっ♡♡ 果ててしまうううっ♡♡♡」
圧し掛かったキュクレインのぬくもりを全身に感じながら、繋がり合った最奥に熱い迸りを受けて果てたアルティマ。事後の余韻を口づけで堪能する二人の横で、黒斗らもまた最終局面を迎えていた。
――ボッゴォォォォォォォォォォォォォ!!
空間そのものが爆砕するかのような衝撃音を響かせつつ、麟華を串刺しに貫き合う黒斗とナイ。それまで沈黙を保ったまま、ただひたすらに胎内でのバトルを繰り広げていた二人であったが、その時が近いと感じたナイによって静寂は破られた。
「くふふふ。素晴らしい……。これほどの昂りを覚えたのは数万年ぶりでしょうか。間もなく受胎の刻です。黒斗様も存分に放ち、注ぎ込んで下さい」
「む。それは構わないが……この状態で放っても大丈夫なのか? 俺が孕ませちまうかもしれないぜ?」
通常の性交であれば、黒斗の返答はまずあり得ない。いくら口を犯して精を放とうとも、それが子宮に影響を及ぼす事はないからだ。だが、この状況においては正しかった。
一突きごとに互いを消し飛ばそうとでもいうかの如く、全力をもって突き入れられる神と修羅の逸物によってグチャグチャに潰されて破壊され、瞬時に復元を繰り返す麟華の胎内。そこに精を注ぎ込めば当然の如く、麟華の貪欲な子宮は黒斗とナイの区別なく、復元する際に周囲に存在する全ての精を吸収するだろう。
「問題ありません。たかが人間の精で受精しようとも、私の神たる精は関係なく受精卵を突き破り、犯し尽くし、奪い尽くす事でしょう。ですので……例え黒斗様が放とうとも意味は無いのです。いわゆる無駄撃ちというやつですな」
「格差社会ゆるせねぇ……。でもそう言われると余計興奮しちまう……くそっ! ザーメン登ってきやがった! くああああっ!!」
「くふふ。愉しまれている様でなによりです。それでは私も──かのエイリアンの兵器に続き、黒斗様を差し置いて麟華様を孕ませると致しましょう」
「ちっくしょおおおおっ!! 滅茶苦茶悔しくムカつくけど
――ドッゴオオオオオォォォォォォォォッ!! ブビュッバッ!! ドッパアアアアアアアアアアアアアアアァ!!
精を放つ為の最大級の突き込みが胎内で炸裂し、夥しい量の精が解き放たれる。直後、瞬間的に腹部を臨月の妊婦の何倍にも膨らませた麟華の、もはや意識すらも虚空に飛ばしかけている肉体がひときわ大きくビクンと跳ねた。
周囲に漏れ出た余波とは比較にならぬ衝撃波によってバラバラに弾け飛び、ミキサーに攪拌されるミンチ状態となった臓物が復元していく。心臓、肺などの循環器系が再構成され、胃腸や肝臓を含めた消化器が続く。そして最後に、腹腔内を満たすほどに多量に放たれた白濁液を貪欲に呑みこんだ子宮と卵巣が復元を終えた。
「めっちゃ出た……リンカの腹がパンパンのまんまだぜ……って」
「戻りましたな。受精を終えて、不必要な分は吸収したのでしょう」
「いつもの事だな。まぁよく考えたらおかしいんだが……リンカだしな」
二人はそれぞれ貫いていた穴から、ずるりと逸物を引き抜いた。乳房や陰核を責めていた触手をさがらせたナイは、影から祭壇めいた闇色の台座を顕現させると、その上に麟華を丁重に寝かせる。
「んで、孕んだのか?」
「間違いなく。私の精にて麟華様の卵子を二つ、受胎させました」
「あっさり托卵されたな……まぁ合意はしてるんだが。それで、お二人さんの方はどうだい?」
悔し気ではあるものの、どこかすっきりとした表情を浮かべた黒斗が後ろを振り返る。
「問題ない。心構えなどとうにできている」
「我もだ。少々、お三方にあてられてしまってはいるがな」
「あー……まぁ仲が良いのは良い事だしな」
繋がり合ったまま返答したアルティマとキュクレインに、人の事は言えぬと己を振り返って納得した黒斗。そこに、エイネスからの通信音声が届く。
『無事に受胎したようですね。ではここからは私の出番です。先ほど教示頂いた内容に沿って疑似魂魄転生を行います。麟華様、よろしいですか?』
「うん。始めてくれて大丈夫だよ。ボクはいつでもオッケー」
「起きてたか。どうだ? ナイさんに孕まされた気分は」
「えへへ♡ ちょっと前に浮気した人に死ぬほど孕まされたけど……やっぱりお腹に赤ちゃんがいるのって、女として凄く幸せな気分♡ ありがとうナイさん♡」
「ぐおお……。茶化すでもなく普通に微笑んで喜ばれるとダメージがすげぇ……俺の嫁さんなのに……畜生」
聖母の様に微笑みながら腹部を撫で始めた麟華の姿に、過去最大級のダメージを喰らって落ち込む黒斗。邪神にしろナイにしろ、純粋な子作りという訳ではないのだが、それでも感情で納得できるかはまた別問題であった。
「麟華殿。いや、母上殿と呼ぶべきか? よろしく頼む。そして最大級の感謝を」
「同じく、感謝を」
「気にしないでいいからね。ボクが二人っていう友達が欲しくて勝手に提案したことだからさ。あと普通に麟華って呼んでね。ボクはあくまで二人の肉体を造るだけだもの」
「そういや二人は赤ん坊からやりなおすのか?」
ふと疑問に思った事柄を口に出した黒斗。赤子からやり直すとなると、いくら記憶を保持しているとはいえ養育の問題もあるのだ。
「普通の子供ならそうだけど、肉体的にはナイさんとの子でエイネスさんのサポートもあるからね。普通に今と同じような肉体で産まれるよ」
「成人状態で産めるのかよ……普通に腹が裂けそうだがリンカなら問題ないか。つくづく人外になっちまったな」
「ブーメランだからねソレ。二人に犯されてる間も最後以外は意識があったけど、本気のナイさんと張り合えるクロトも十分アレだよ。でもまぁ、ボクの旦那ならそれくらいしてくれないとね」
黒斗の疑問は杞憂であったようだ。
麟華の言葉に納得したアルティマとキュクレインは、ナイに促されるままに麟華に近寄り、その華奢な腹部に片方の掌の乗せた。暫くして、二人の肉体を構成するエーテルが解け、金色の光となって周囲を舞い始める。
『英霊を構成する霊素子の分解を確認。続けて疑似魂魄の保護──完了。では麟華様、二人をお願いします』
「うんうん。さぁおいで……二人とも。ボクの中に」
美しい光景であった。
亜神とはいえ神は神。腕の中にかきいだいた二人の疑似魂魄を微笑みながら慈しむ麟華は、まさしく女神そのものであったのだ。
二つの光球は、寝そべった麟華の腕から零れ落ち、腹部に沈み込むように入っていく。これから胎内にある麟華とナイの二つの愛結晶に宿るのだ。
エイネスの制御に従い、揺籃炉に貯め込まれたエネルギーが解放され、麟華に向けて放たれた。
人の身に余る膨大なエネルギー。大陸一つを消し飛ばして余りあるそれを何ほどの事も無く受け入れ、己が子宮に宿る二つの受精卵に宿らせた英霊たちに注ぎ込んでいく麟華。ややあって、揺籃炉が放つ光が弱まり、暴走しかけていた炉心が正常に戻っていく。
『シーケンス完了。揺籃炉の通常稼働、及び疑似魂魄のロストを確認。麟華様……二人の魂は──』
「うん。ちゃんと二人とも、ボクとナイさんの受精卵に宿ったよ。あと一年くらい経てば産まれてくるね」
『深く感謝を。生まれ変わった二人に合会える事を楽しみにしています』
「一年かー。まぁ大人で産まれてくるならむしろ早い方か、暫くは冒険もできそうもないな」
「ん? クロトなんか勘違いしてない?」
麟華であれば、たとえ妊娠していようとも戦闘行為なども容易くこなすだろう。だが何事にも万が一という事はある。本人が冒険に行きたいといっても止めるべきだろうなと考えていた黒斗であったが、その未来予想図はきょとんとした表情を浮かべた麟華によって容易く崩された。
「今から時空加速空間を造って一年過ごしてくるよ。クロトたちにとっては五分も掛からないんじゃないかな? あ、ちなみにナイさんと二人で過ごしてくるからね♡」
「そういやそんな無茶苦茶な能力があったな……。っと、ちょっと待て。なんでナイさんと? そこは俺と二人じゃないのか?」
「申し訳ありません黒斗様。私が孕ませた受精卵が育つには通常の方法では不可能でして、具体的には常に受精卵に私の精を注がなければなりません。当然、先ほどの交わりの様な激しい交合はご法度です。目の前で麟華様を一年の間抱かれ続けて何もできない状況となりますが、それでも宜しければ……」
「いや無理だな! 大人しく待ってるよ」
地獄の責め苦も生温く思える拷問の様な状況を聞き、考えるまでも無く断った黒斗。若干の寝取られマゾ気質も持ち合わせる黒斗であったが、メインとなる性癖は自慢の妻を抱かせて興奮するサド的な気質の方が強いのだ。そんな黒斗にとって手も出せずに一年もの間、浮気セックスを見せつけられ続けるのは苦痛の方が大きかったのである。
「だよね~♡ クロトが我慢できるわけないもん。そういう訳でちょっとナイさんと一年ほど繋がりっぱなしだらだらイチャラブ浮気セックスしてくるから♡ クロトにとっては五分だけだし、少しだけ待っててね♡」
いつもの様に気楽極まる麟華が直径三メートル程の漆黒の球体を生みだし、ナイと共に入っていく。空間を任意に歪ませた内部は相応に広く、大きなベッドが置かれた寝室となっていた。ちなみに食事は必要ない。ナイの触腕が生成する体液には莫大な神気が込められている為、食事の心配はいらないのだ。
「あっさり行っちまったな。まぁ五分だし、麟華も100年囚われてた事に比べれば一年はあっという間か」
『黒斗様……私も初めて知ったのですが、奥様はあのような超常の権能をお持ちだったのですね。本当に現生人類であるのか少々不安になって参りました』
「俺は異世界から流されてきたが、麟華は間違いなくこの世界で龍人族のご両親から産まれてきたよ。まぁちょっと天稟の武才があって強敵相手にどんどん強くなって、いまやもう神殺しだが……ナイさんの加護とかなんとかのお陰もありそうだな」
『エーテルに適応した種族として一万年の進化を経て作られた強靭な肉体。外なる神の加護。あなたという規格外の伴侶。なるほど、それらの要素もあって、奥様は見事に開花されたと。納得しました。多次元スキャナーで異常が無い以上当たり前なのですが、余りにも……その……凄まじすぎましたので……』
「わかる! よくわかるぞ!」
出産が終わる五分間の間、一人残された黒斗はフォーマルハウトの魔導管理頭脳たるエイネスととりとめのない雑談をしていた。
『一つ、手慰みに黒斗様をスキャンさせて頂いても宜しいでしょうか? 万一病などに罹患していれば即座に特定完治できますし、多大なる恩義のほんの一部くらいの物ですが、お返しできればと』
「おお! 要は健康診断だろ? 助かるよ」
『では失礼──多次元スキャン開始』
――これは……凄まじいですね。肉体と魂魄が高純度のエーテルに完全適応している。異世界人のエーテル適正は所属していた世界によって変わりますが、黒斗様の世界には沢山の神秘が溢れていたのでしょう。
人にはあり得ぬ超速度思考によってゼロコンマ以下の速さで分析を終えたエイネスは、結果を簡潔に黒斗へと伝える。
「肉体、霊体、魂。どれも問題ありません。現生人類種と比べてもトップクラスにエーテルと適合しており、英霊よりも高い戦闘能力を有していると断定します」
「はやっ! 一秒経ってなかったぞ。この健康診断楽すぎる……。ところで、現生人類の事も調査してんだよな? 俺と麟華と同じくらいに強い奴ってのはそこそこいるのか?」
「強さという物は様々な状況で変化する物ですので、その者が宿す潜在能力という点で鑑みれば……8人ほどかと」
「思ったより多いな。けど伸びしろも含めてって事ならそんなもんか。詳しく教えてもらえたりとかは……」
「申し訳ありません。流石に個人情報となりますので、黒斗様と親しい方々の中にそのうちの4人が揃っている……とだけ」
まぁ当然だろうと納得した黒斗。半数というエイネスのヒントじみた言葉に少しだけ考えを巡らせる。
「アルフェンにリルさん、アマナさんにボルボルってとこか」
「ふふ、正解と答えるわけにはいきませんが、それらの方々は現生人類の中でも素晴らしい資質をお持ちですね」
「なるほどねぇ……っと、そろそろ出てくるかな?」
『間も無くですね。固有空間に綻びが──』
──バリィン!
麟華らが入っていった時空加速結界が綻び、盛大な破裂音と共に爆散した。爆散した欠片は即座に淡く輝く白銀の粒子となって周囲に舞い散る。まるで、誕生を祝うかのように。
「久方ぶりだな。エイネス。黒斗殿。いや、貴卿らには数分だったか?」
「ああ、その筈だ。だがこちらからは久方ぶりで正しいぞ。我とキュクレイン、共に受肉し、転生を果たしてきたぞ」
場に残った空間の歪みからまず現れたのは、見慣れた服装に身を包んだ元英霊の二人であった。エーテルのみで作られていたアバターの時とは異なり、その肉体は覇気と生気に満ち溢れている。
「あぁん♡ ダーリンもっと抱いてぇ♡」
「結界は破れましたよ。ハニー。本当の旦那様がお待ちです」
「んー? あっクロトだ。やっほ。でも……今はダーリンに甘えたいんだもん♡」
続けて、普段のスーツ姿に戻ったナイと、その身体にべったりと絡みつくように抱き着いている麟華がにじみ出る様に現界すると、背後にあった空間の歪みは音も無く消失する。
「無事、終わったみたいだな。リンカはまぁ……予想通りだ」
「申し訳ありません黒斗様。じき、いつものハニーに戻るかと」
「呼び方とか何があったとか気になる部分ではあるが、まぁそれはベッドでの楽しみにしておくさ。とりあえず落ち着ける所まで戻るか」
予想通りとはいえ、表面上はどうみても寝取られ済みである妻の様子に苦笑しつつ、冷静に皆を促す黒斗。だがその股間は着衣の上からでもわかるほどにしっかりと盛り上がっていたのである。