ファム・ファタール~寝取らせモノが大好きな剣士が異世界転移した場合~ 作:幻闇
辰宮邸の麟華の部屋に設置された魔導テントの中、荒神夫妻が使う寝室に異様な物体があった。
本来であれば巨大サイズのベッドを設置していた筈のそこには、ただ漆黒に染まった巨大な半球があるのみだ。半球の表面は時折り、まるで鼓動しているかの様に波打っている。それはまるで、内側にある封印された悍ましい存在が、殻を突き破って産まれいでようとしているかの様だ。
実際の所は……似たようなモノであるのかもしれない。
闇色の球体は、周囲と内部を空間的に断絶する麟華謹製の時空加速結界だ。今この場合、内部に在る存在にとっての一か月は外部の5分程度にしか過ぎない。そんな神の如き権能によって造られた内部空間では……黒斗と麟華による壮絶な死闘が繰りひろげられていた。
「覇っ!」
「噴ッ!」
――ガギィン!!
一振りにて次元ごと切断する黒斗の抜刀術が迸り、一突きにて那由多の突きを放ち、空間を軋ませる麟華の魔槍が受け止める。
互いの衝撃を受け流し、その力すらも利用して至近距離から突き、斬り、払い、打つ。刹那の時間にどれほどの攻防が行われたのか、もはや常人の瞳ではとらえる事も出来ぬ神速の攻防がぶつかり合うたびに、隔離空間が揺らいで結界表面を波打たせる。
当人たちにとっては永遠に続くかと思われるほどに永い闘いであったが、第三者から見れば決着がつくのは恐ろしく早かった。
大陸標準時間でおよそ10秒。それが二人の戦いの始まりから決着までの時間である。だが、その間に繰り出された攻防の数々は、百万言を弄しても語り尽くせぬ程に濃密であった。
「しゃおらァ! 首と四肢ぶった斬ってやったぜリンカァ! 概念破壊の気を籠めたから暫くの間は復元できないだろ」
「くやしいいいっ! さっきは勝ったのにいいい」
「油断大敵だな。クソッたれの浮気妻め。わからせてやるぜぇ!」
首だけになって転がり、悔し気に顔を歪める麟華。その様子をあざ笑いつつ、黒斗はダルマの首なし死体と化した麟華の胴体を拾い上げ、着ていたボディスーツを一刀のもとに斬り捨て微塵に消滅させる。
――グジュボッ……ズンッ!
「ひぎいいいい♡♡」
「徹底的に犯してやる。何度もぶちのめして犯して、俺の方が相応しいって事を刻み付けてやるからな。オラッオラァッ!」
「あぎいっ♡♡ このレイプ魔ぁ♡♡ 夫婦だって同意がなければ犯罪ッんうっ♡♡ なんだよぉ! 嫌あああああっ!! 助けてダーリンッ♡♡♡ ボク、ダーリンの女になったのにDV夫にレイプされちゃってるううう♡♡♡」
「ダーリンは俺だろうが! 上書きしてやる。何年かかってもだ! オラッ! 子宮でわからせてやるぞっ! 今度こそ俺が孕ませてやる!」
――ボコォッ! ドゴッ! ズドォン!
軽くなった妻の裸の胴体をオナホの様に抱え上げた後、黒斗は自らの逸物に叩きつけて子宮まで貫き上げる。持ち上げ、再度叩きつける。何度も何度も、飽きる事無く犯し続ける。
肉体をバラバラにされ、復元を封じ込められた麟華の胎内は巨根の一突きごと膣肉をめりめりと引き裂かれながら悲鳴を上げ、火薬で撃ちだされるハンマーの如き亀頭が子宮底を抉るたびに、子宮を支える骨盤底筋が断裂していく。
そうして破壊されながら犯されていく自らの肉体を、転がったまま生首の麟華は眺めていた。抑えきれぬ喜悦を必死に隠して、見せかけの不快感を露わにしながら。
「そうやって力任せに腰振るだけだから寝取られちゃうんだよ♡ んっぐっ♡♡ くひっぎぃ♡♡ 全然気持ちよくないね! もっともっとブチ抜くくらいじゃないとボクは取り戻せないんだからァン♡ はぎいいいいっ♡♡♡」
どう考えても神経が繋がっている様には思えぬのに、生首となった麟華は感覚を共有しているように見えた。別段おかしくはない。人間ではないのだから。
「うるせぇ! 黙って犯されてろ。オラッ! 射精すぞっ! 子宮のナカパンパンにしてやる!」
――ブビュバッ!! ドッバアアアアアアアアアアッ!! ドビュドバッ!! ブババババババババババババババッッ!!
「いやああああああああん♡♡ 子宮壊れちゃうよぉ♡♡♡ イクっ♡ イクウっ♡♡♡」
「はぁはぁ……オラッ! 次だ! 掛かってこいや!」
「相変わらず量だけは人間離れしてるよね。ふふっ……いっくよー」
射精を終えた黒斗が下衣を引き上げ、ゴミでも扱うかのように無造作に麟華の胴体部を投げ捨てる。すると空中で漆黒の靄に包まれた胴体部は即座に五体満足な麟華となって復活した。床に落ちていた生首はいつのまにやら消えていたのである。
――ドッガァン!
空中から投擲された魔槍が、唸りを上げて黒斗の足元に突き刺さる。コンマ一秒でも遅れていれば、その槍は黒斗を串刺しにして床に縫い付けていただろう。
――ドガガガガガガガガッッッッッ!!
投擲された魔槍は一本では無かった。投げたそばから麟華の手に生み出される新たな魔槍が雨あられと黒斗へ降り注ぐ。時に心臓を、時にその回避先を封じるかの如く、意識外の死角から超音速で迫りくるミサイル群の如き飽和攻撃をいなし、裁き、回避していく黒斗の表情に焦りは無い。この程度は当たり前の攻防だからだ。
その表情が陰ったのは次の瞬間であった。
「はい。詰んだ」
「んなっ!?」
前方やや斜め上から降り注ぐ魔槍を回避し、反撃の斬撃を放とうとした刹那、真後ろから聞こえてきた囁くような声音。なぜ? 麟華は空中では? 残像? 否、気配の位置は変わらない。そこまで考えた所で、背後から黒斗の肩口に牙が突き立てられた。
「ぐああっ!」
「もぐもぐ……はぁ……♡ クロトのお肉美味しい♡」
「前のは……」
「ただの残像だけど? ここはボクの作った空間。好きな所に気配を発生させるなんて朝飯前だよね。地の利地の利♡」
「きったねええええぐわああああっ!」
噛みつかれた傷口から神気を流し込まれた黒斗の四肢が動きを止める。先ほどとは真逆の構図であった。動きを止めて大の字になった黒斗に跨った麟華は、下衣を脱がせて股間の逸物を露出させると、戦闘の高揚でビキビキといきり勃ったそれに腰を沈めていった。
「動けないで犯される気分はどうかな? ふふっ……クロトってば結構マゾだから気持ちいいんじゃない? ボクのナカでびっくんびっくんしてるよ♡♡ このまま搾り取ってあげるね♡♡♡」
「くそっ! ぜってぇイかねぇ!」
「ムリムリ♡ 100パーセントわかる強がりって逆に可愛いね♡♡ ほーら♡ イっちゃえイっちゃえ♡ ザコちんぽ震わせてビュービュー射精しなさい♡♡♡」
――ばちゅんっ! ばちゅんばちゅんばっちゅんぶちゅん!
弄ぶかの如く黒斗を言葉で責め嬲り、超高速で騎乗位スクワットを開始する麟華。50センチを超える長大な逸物を根元まで己が胎内に打ち込み、抜け落ちるギリギリまで腰を上げて再び叩きつける。その一連の動作が一秒間に実に10回近く繰り返されるのだ。黒斗の感じる快感は凄まじいものであった。
もちろん、単調に腰を上下させるだけでは無い。艶めかしく腰を捻り、膣内を自在に蠢かし、あらゆる手管をもって黒斗の逸物を責めたてる麟華。口でいくら強がろうとも、何万回と黒斗のモノを銜え込み、完全に弱点を把握している麟華の責めに抗えるはずもない。当然の様に、数分も持たず精を放ってしまった黒斗。
互いの肉体を知り尽くしているという条件は同じなのだが、いかんせん自由を奪われた状態では主導権は揺るがない。それは、先ほどの一戦が正反対の結果に終わった事を見れば明らかであった。
「これで32001戦中ボクの16001勝だね♡ ここで諦めたらどうかな? ボクの勝ちってコトでクロトとは離婚してぇ……♡ ダーリンと再婚するの♡ たまに浮気相手としてセックスくらいはしてあげるからさ♡♡」
「くうっ……。その提案はそれはそれで魅力的だが……認める訳にはいかねぇな。次こそわからせてやるぜ」
「そうこなくっちゃね♡」
引き伸ばされて隔離された空間の中で、ヴァルハラに召し上げられた戦士たちの如く戦い続け、屈服させるかのように互いを犯し合う黒斗と麟華。一見にして痴話喧嘩をスケールアップさせたかのような光景であるが、むしろ二人の気持ちは真逆であった。
その証拠に、この戦いが始まってより今まで、二人の体感にして半年ほどの時間。黒斗と麟華の表情に笑みが途切れる事は一度たりとて無かったのである。
紛れもない逢瀬である。
「やっぱ麟華とヤるのが一番だわ。どっちの意味でもな」
「ふふっ、同感……ってつい本音でちゃったじゃん! もう……折角イイ感じにツンツンしてたのに! あーもう……次も逆レイプしてあげるから覚悟してよね!」
「って速ッ! くおおおっ!」
何気なく発された言葉に、つい返してしまった麟華が照れ隠しのように魔槍を投擲する。いくらバレバレの演技だとしても、急に素に戻ってしまった気恥ずかしさはあるのだ。誤魔化す様に投擲された容赦のない一撃の鋭さに冷や汗をかく黒斗であった。
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「そろそろ産まれるわね……陣痛が来たわ。解体小屋にいきましょうか」
「えらく落ち着いてるんですね……。てっきり色々と大変なのかと」
「最初はそうかもねぇ。でもあたしゃ麟華も産んだ事のある経産婦だからね。知り合いのを手伝った事もあるし、慣れてるのさ」
郷の地下に眠る魔導船フォーマルハウトの件から一月。いよいよ二人が郷帰りした本当の目的である火燐の出産が始まった。ちなみに一件が片付いた直後に行われた、黒斗により寝取り返しバトルファック祭りであるが、50000回にも及んだ長く快感に満ちた闘いを、25001勝をもって制した黒斗が勝利を飾った事は言うまでもない。そして、そんな些事よりも今は大事な事があった。
経産婦でなおかつ狩人として強靭な肉体を有する火燐に過剰な医療設備は不要だ。なんといっても龍人族である。恐るべきことに、現代における郷の龍人族たちの出産による母子死亡率は50年ほどに渡ってゼロを更新し続けているのだ。母子ともに強靭なうえ、血を大量に失おうともその場で食事をすることによりありえない速度で造血細胞がフル稼働し、失血によって命を落とす事もない。そもそも普段から過激な性交を行う事が多い彼女たちにとっては出産は命がけなどでは当然無かったのである。
今では自宅出産を選ぶものが大半だ。火燐は広く、汚れを洗い流しやすい解体小屋に分娩用の設備を買いそろえて用意しておいたのである。
「火燐。精がついて血の作りやすい食事を用意したぞ。二度目とはいえ久し振りなのだ、無理はせんようにな」
「あはは、大丈夫でしょ。父さんは相変わらず心配性だよね」
「なんか想像してたのと違うな……。まぁでも、無事に産まれてきてくれるのが一番だしな。あ、ちなみに料理は俺も協力したぞ。実の父親として何もしない訳にはいかないからな」
「ははっ。賑やかでいいねぇ。麟華の時はダーリン一人だけだったからね。娘と義息子にも囲まれて幸せだよ」
「あはは! ママ今から死ぬみたいな事言ってる」
「んなワケないだろうがこのバカ娘! 縁起でもない」
和気藹々とした雰囲気の中、火燐は分娩台に座り込み、間隔が短くなると共に痛みが増してきた陣痛の波に身を任せる。そして最後に赤子を取り上げるのは夫である雄大の仕事だ。龍人族の出産はこのように、夫婦二人の共同作業として行われるのが常であった。
「いたた……そろそろ出てくるよ。麟華ほどじゃあないけど、元気な子だね」
「うむ。良き事であるな」
改めて説明する事でもないが、龍人族の再生力はその他の人類種族を圧倒するレベルで高い。なおかつ肉体の強さもかなりのものだ。そしてそれは、赤子でも同じである。
「やっぱ、ひっひっふーとかってリズムをとりながらゆっくり産むのか?」
「なにそれ謎の呪文? クロトってたまに変な事言うね」
「いや多分他の種族はしてるとおもうが……ちなみにこの後はどうやって産まれてくるんだ?」
「どうやってって言われても……普通に這い出して来るけど」
「え……こわ……」
「怖くないよ!」
ホラー物にありがちな恐怖シーンを想像してしまった黒斗がドン引きしかけていると、火燐が痛みを堪えるかのようにくぐもった呻きを上げる。その大きく膨らんだ下腹部が、もぞもぞと波打ち始めた。
龍人族の赤子は大抵の場合、自ら子宮口を開いて産道をくつろげながら地力で這い出して来るのだ。夫の役割はそうして産まれでた赤子を受けとめる事である。
稀に早産などで這い出る力のない赤子もいるのだが、その場合は夫が両腕をこじいれて胎内まで迎えにいくのである。強靭な肉体と再生力をもつ龍人族ならではの出産法であった。
「うむ。もうすぐである……おいで……我が妻の子よ。育ての父として私が取り上げよう。黒斗君、しっかり覚えておくのだぞ。次は君の役割なのだからな」
「なるほど……確かに」
雄大の言葉にハッとした表情を浮かべて頷いた黒斗はしっかりと、大きく開かれた火燐のまたぐらを凝視し始めた。邪な心は無い……いや余り無い真剣めいた眼差しであった。
「ぐうっ……産まれるっ!」
「ふぎゃ……ほぎゃあ……」
「ああ、無事に出てきたぞ。ふふ、女の子だな。きっと火燐に似た美人になる」
産声を上げた赤子はむずがるように四肢を震わせた。暖かな母の胎内とは誓う環境に不満を漏らすかのように。
麟華は父によく似た顔つきであったが、今回産まれた子供は黒斗と火燐の子だ。この場合は母方の種族の容姿と特性を引き継ぐ事になるので、雄大の言葉も間違いではないだろう。
「赤……いや、桜色の鱗ですね。綺麗だな」
「ハーフだからね。多少の影響はあるんだよ。あたしの紅麟がやや薄まったんだろうねぇ。桜麟の子は国樹である桜と同じ色だからきっとモテモテの美女になるよこの娘は」
「できれば麟華に似ず、優しく大人しい娘に育ってくれると嬉しいんだが……まぁ実父が黒斗君では難しいか? 健やかに育ってくれればよしとしよう」
用意しておいた産湯に生まれてきた赤子を漬からせて、柔らかい布でやさしく羊水や血をふき取り、臍に繋がる緒を切り離す。止血処置を行うまでも無く、軽微な傷は即座に再生して癒えた。
麟華と黒斗の二人でおくるみに包んでいる間に、雄大は素早く妻の胎内に残っていた胎盤を抜き取って処理をする。終わってみれば30分もたっていない出産は、あっさりとしたものであった。
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「名は爛華だ。辰宮爛華。良い名前だろう」
出産祝いの賑やかな宴の席で、雄大が五人目の家族の名前を発表した。
「さすがパパだね。センスいいなあ」
「成程。爛漫と咲き誇る桜で
「あたしもそれでいいと思うよ。慣れるまではリンカとランカで間違えそうだけどね」
「あ……それはたしかに……。ま、まぁおいおい慣れれば問題はあるまいよ」
黒斗と火燐という背徳の義母子から産まれた爛華であったが、義父や妻も含めた合意の上での子作りである。故に、家族の間にわだかまりは一切無かった。
雄大から注がれる愛情も麟華の時となんら変わらないだろう。自分の種であるかなど関係ないのだ。愛する女が生んだ子供というただそれだけで、無償の愛を注いで当然の存在なのだから。
「ほう。流石は麟華様の御尊父殿。雅やかで、良き名かと」
「うむ。まこと素晴らしき命名であるな。アルティマもそう思わんか?」
「確かに。我も雄大殿のセンスには脱帽だ」
「いやいやあんまり褒めちぎらないでいいからね。パパったらすぐ調子に乗るし」
「あー……そのへんは遺伝だな。なんせ麟華の父親なんだから仕方ない」
「クロト? あとで覚悟しといてね。具体的には夜のベッドでね」
「やべぇ……震えてきやがった」
賑やかなのもむべなるかな。
辰宮家で行われた爛華の誕生を祝う宴の席には、じつに八人もの参加者がいたのだから。
家族である四人に加え、新たに産まれた爛華。そしてナイに、麟華の胎を借りて転生したアルティマとキュクレインの二人である。
「しっかしクロちゃんや。あたしたちは気づかなかったけど今回も大冒険だったみたいじゃないか」
「俺としちゃあ単にカレンさんの出産の立ち合いを兼ねた、里帰りだけのつもりだったんですけどねぇ……ほんとどうしてこうなった」
当然だが、家族である雄大と火燐には今回おきた事件のあらましを説明してある。また、郷の運営を行う長や上層部にたいしても、麟華のクラスメイトであり治安を守る黄龍隊のサムライ大将であるナガレを通じて報告済みだ。
フォーマルハウトを統括する魔導頭脳たるエイネスは情報の開示に少々悩んだようではあるが、既にセーヌではショゴスロードたるシャロが冒険者ギルドに協力していたり、人造神であるクトゥグアなどの件もあり、徐々に現生人類とのコンタクトを行うべきだと判断を下したのである。
勿論最初は各国の首脳クラスに限られるだろう。それも無条件では無く、今は肉体を得てフォーマルハウトを離れても自由に動けるアルティマとキュクレインの二人が大陸を渡り歩き、各国の首脳たちをその目で確認し、資質を判断した後の事となる。
「でもそのお陰で新しい友達もできたしね。結果的に街も無事だし、良かったよ」
「まぁその大事件のきっかけはリンカなんだが……」
「アーアー聞こえなーい」
「いや、先走った私の責任もある。すまなかった」
「いや別にキュクレインは責めてないから。俺がアンタの立場でもこんなヤベェバケモンが近づいてきたら警戒する。誰だってそうする」
「今夜は加速結界で回復させながら搾精一か月の刑かな?」
「やめてくださいしんでしまいます」
アルティマとキュクレインの正体についても雄大たちは知らされていた。流石にナイに関しては黒斗たちと同じくらいの力を持つ友人であり、今回の件に関して協力してもらったと説明するに留めていたのであるが。
一万年以上も過去の文明が未だに息づき、今を生きる自分たち人類を見守っていたという事実に二人は驚嘆し、だがそれだけであった。麟華という特大の爆弾めいた娘をもつ二人からすれば、驚きこそすれ畏怖したり恐怖にかられたりといった感情は持ち得なかったのだ。
むしろ創作家としての血が騒ぐのか、二人に対してあれこれと雄大が質問責めにしてしまう有り様であったほどだ。流石になんでもかんでも教える訳にはいかないアルティマらではあったが、過去の英雄たちの逸話であるとか、ヴォイドの化け物たちと闘った話などを披露し、雄大の創作意欲を大いに掻き立てていたようである。
「あぶー……きゃっきゃっ」
「お、爛華が笑ったぞ。いやぁ可愛いなぁ……でへへ」
「ずっと笑ってるでしょ。もう露骨に話をそらして……まぁボクの妹が超絶可愛い事に異論はないけど」
「これからは月に一度はセーヌに帰るか。いや、むしろ半分くらいこっちで過ごすべきかもしれない。赤ん坊のうちは色々危険も多いと聞くし……」
「金級冒険者がつきっきりでないといけない危険なんて郷にあるもんかい。くろちゃんの気持ちもわかるけど、爛華はあたしとゆうちゃんでちゃんと育てるから心配しないでおきな」
「うう……仕方ない。あくまで俺は義理の兄だからな。でもなんかあったらすぐ読んでくださいよ? 飛んでいきますんで」
「飛ぶったって……ってああ、麟華かい」
「翼生やしてドラゴンモードになれば黒斗背負って半日くらいでこれるからねー」
「小生の娘がついに人外に……いや、今までも割と人外であったな」
クトゥグアの欠片を討滅し、更に力を増した黒斗と麟華。今の二人であれば、かつて戦ったヴォイドと人造神の融合体である邪神ですらも危なげなく滅ぼしきれるだろう。
そんな超越者たる二人であるが、目下のところは可愛すぎる妹的な存在にメロメロであった。
直接戦った事もあるアルティマとキュクレインの二人は、そんな二人を微笑ましそうに眺めた後、互いに視線を絡ませるように目を合わせる。
「いまだ信じられない事だが……私たちも彼らのようにできるのだろうな」
「ああ、麟華殿に頂いたこの肉体であればキュクレイン……お前の子を孕む事も出来る。勿論任務もあるからすぐにとはいかんが……」
「なに、私たちには悠久の時がある。いつか落ち着いた折に……などと希望を口に出せること自体が幸福であるよ」
「違いない。ふふ……名を考えておかねばな。いや流石に気が早いか?」
かつての始祖の様に己が子を産み、今度こそは叶えるのだ。始祖が叶えられなかった家族そろっての幸せな時間を、彼らの記憶を受け継ぐ自分たちで取り戻す。ああ、それはなんて素晴らしく、尊い事なのだろうか。アルティマとキュクレインの心中は、そのような夢と希望で満たされていた。
『良かったね。二人とも♡』
アルティマとキュクレインの脳に、神の権能たる麟華の念話が届く。胎を痛めて産んだ二人との間にある繋がりの一つだ。ハッとした表情を浮かべて麟華を見つめた二人に、彼女は悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
二人の奥ゆかしく一歩引く性格を見抜き、あえて周囲に悟らせぬようにとの心遣いであった。
『ああ、一万年の感謝を……』
『ありがとう。我が永遠なる友、麟華よ』
なまじ愛し合う始祖の記憶を引き継いだばかりに苦悩した二人。果たしてこの思いは偽物なのか、ただ守護者たらんとする生き様に反し、愛し愛されたいと迷い続けた一万年。だが、長きにわたるかりそめの生はここに終わった。
これから先の二人にどのような未来が訪れるかはわからない。二人は今後、魔導戦の特殊乗務員として大陸や星、他の地に眠る魔導戦を巡り、時々に起こる災害から人々を護るのだろう。
その旅の中で力及ばず滅ぶ事もあるやもしれぬ。もしくは現人神としてこの星の人類史を永劫に守り続けるのかもしれない。だが、それらは全て喜びだ。生あるからそこの喜びなのだ。
星の守護者たる英霊を半神として受肉させた麟華。ただ友達が悲しむのが嫌だった。長く友として付き合っていきたかった。欲望のままに二人の願いを叶えた事に麟華はなんの気負いもないだろう。
だがそれで良いのだ。間もなく羽化の時は近い。理を外れし神。そこに新たなヒト柱が加わる事になるだろう。影響は甚大だ。久しくなかった真なる外神の誕生は、幾つもの災厄や破局を呼び込むかもしれない。しかし、当の本人にとってみればそれは──望む所であったのだから。