ファム・ファタール~寝取らせモノが大好きな剣士が異世界転移した場合~ 作:幻闇
木造の建物内らしき部屋、外は夜なのだろう。
部屋の窓からは優しい月明かりが降り注いでいる。
部屋はそこそこの広さが有り様々な武具や道具、水瓶が置いてあるようだ。
一際大きな家具、恐らく乾かした草に獣の鞣した毛皮を被せた作りの寝台の上に一組の男女が横になっていた。
女はやや発育の良くない、悪く言えば貧相といってもよい体型の女だった。
身長は150cmを超える程度だろうか華奢な体つきに細い手足、少女の様にも見えるが大人びた優し気な面差しがそれを否定している、どうやら微かに聞こえる寝息から眠っているようだ。
20台くらいであろう女を優しく包み込む男、そちらは一言で言うと……――異形であった。
引き締まり均整の取れた筋肉質の美しい肉体、身の丈は2メートルはあるだろう。
金糸のように長く伸びた癖のない髪、顔付きは細面の恐ろしい程の美形……不退転の意思を秘めた力強い切れ長の瞳が美しい顔にも関わらず精悍な雰囲気を醸し出している。
そして口許から真っ直ぐ上方に突き出した牙……その一点だけが残りの要素を全て台無しにするかのような異形さを放っていた。
男は腕に抱いた女の金色に輝くさらさらとした髪を
「リリアかあさま……必ずかあさまを……幸せに致します……守り抜いてみせます。私の魂に誓って……例えこの手を罪の血に染めようとも……」
静かに……しかし確かな決意をもって呟いた男は安らかに眠る女の頬にそっと口づけをする。
激しい激情の炎を閉じこめた様な燃える瞳を窓の外に向けると今度は其処に居ない誰かに向かって呟く。
「あの死体の有様……ああ……待ち人よ……待ちあぐむぞ……」
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「ここが新しく発見されたって遺跡かァ……見つけたのはクロト達なんだろ?すげぇなァ」
「運が良かっただけだ、クソ豚共が住み着いててな……まぁ全員ぶっ殺したけどよ」
「奥の方で別の洞窟に繋がっててね、そこは水も補給できるしその先で中部の奥地に出れるんだ。大集落はそこから暫らく進んだ所だよ」
黒斗達が発見した古代遺跡の中を進み、豚人の大集落への道を進んでいく三人。黒斗と鱗華と白狼のアルフェンだ。
「ギルドの調査員が地図を作ってくれたみてェだからな、まぁ迷わずにいけるだろ。んでまずは近づいてクロトが姿隠しで忍び込んで女たちの場所を探るんだよな」
「ああ、近付いたら様子を見て、問題なさそうなら侵入する。簡単な見取り図でも作れて持ち帰ればそれだけで成功なんだからな」
今回の依頼は大集落の戦力調査と苗床にされているであろう女達の場所の確認だ。
今までに集められたデータから女達は一か所に纏められていて、中心部に近い位置に囚われている可能性が高いという事だ。
集落の規模から恐らく15人前後は居るのではないかと推測されていた。
遺跡の中と洞窟を抜けて中部奥地の森に出た一行は周囲を警戒しつつ大集落の方へ進んでいく。
「なんも出ねぇなァ……雑魚の魔獣は何体が出たがよ、肩慣らしにもなんねェ」
「まぁあいつらはバカしか居ないからな、哨戒や巡回なんて高度な事が出来るとも思えん」
「確かに下っ端はそんな感じだなァ……でも上の奴らは違うぜ……あいつらの中には俺と同じくれぇ強い奴もいるかもしれねェ」
「それ程か……確かに追放された下っ端しか見た事はなかったな……」
アルフェンは数多の蛮族集落を滅ぼしてきた冒険者だ、その言葉は決して無視できる物ではないと考えた黒斗はアルフェンにより詳しい話を聞きたいと尋ねる。
アルフェンは語った、半分ほど推測も混じっていたが彼が言うには明らかに上位種の様な存在と下位種の様な存在とに分かれている気がするとの事だった。
見た目に違いは無いが、知恵の廻る者や武器を使いこなす蛮族達が少数ながら存在していたとの事だ。
「成程……俺の世界の物語ではオーク族にはハイオークなんて種類も居たが……この世界の蛮族達は魔物とかってわけじゃあなからな、単に原始的な亜人にしか見えない。でも知能に違いがあるのか……全然解らんけど兎に角油断は禁物って事だな」
「ボクも蛮族はこないだ殺した奴らくらいしか知らないなぁ……確かに話を聞くとなんか変だね。それにこれから行く大集落は砦みたいになってるんでしょ?こないだの奴らみたいにバカばかりならそんな建物作れないよね?」
「そうだよな。リンカの言う通りだ、こりゃあ一筋縄じゃあ行かなそうだな……」
改めて周囲の警戒をしっかりと行いつつ大集落へと近づいていく黒斗達一行、その姿には油断や慢心等は今はもう少しも感じられなかった。
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【ああっ?なんで人の女がこんな所にいやがるんだ?】
巨大な木造の建物の外周部分をぐるりと回る通路を歩いていた金髪の女性に近付く一体の豚人族。
ここは豚人の大集落の中、彼らの言葉で西の砦と言われる場所であった。
本来であれば人の女は苗床として中心部の産女屋敷と呼ばれる建物の中にしか居ない筈なのだ。
拘束などはされていないが逃げ出さない様に常に見張りが入り口に控えていて目を光らせている。
【まぁいいか。丁度持て余してた所だ、産女屋敷にいねぇんなら好きにしていいんだろ、貧相だが女だ。どっかに連れ込んで種付けしちまおう】
居る筈の無い人の女が居る、その事実に頭を悩ます事も無くその豚人は女の腕をつかんで近くの部屋に無理矢理連れ込もうとしていた。
女がなにやら叫んでいるようだが彼には鳴き声にしか聞こえないのだ。
「痛っ!!何をするのじゃ……この者は新入りか?
豚人のオークが泣き叫ぶ女性を部屋に連れ込もうとしたその瞬間、風の様に駆け寄ってきた人間……いや豚人だ。
信じられないような美形であるが口許から上へと伸びた牙は間違いなく豚人の証であった、そのまま女性を掴んだ豚人の腕を握り締めると凄まじい握力で握り潰す。
【ぎぃあああ!!なにをっ!!!――ボルボル将軍……?】
【貴様!!我が妻と知っての狼藉か……許さぬ!!死して償いとせよ】
【えっ!!??人の女が……?!知らなかっ――あぼっ】
左手で豚人の腕を握り潰したまま残る右腕で首を捻り折る異形の豚人、死体をそのまま部屋の中に投げ捨てた異形の豚人は、掴まれていた女性に歩み寄りいたわる様に掴まれた腕を確認する。
「母上……腕は……怪我は無いようですね。申し訳ありません、新入りへの周知が出来ていなかった様です。怖い思いをさせてしまいました。このボルボル一生の不覚……」
「良いのじゃ……坊やは助けてくれたではないか。すまぬのう……
「母上に何かあれば私は生きていけませぬ。不自由を強いていますが、必ず母上の望みを叶えて差し上げますので、今暫くのご辛抱を……」
「
異形の豚人、この砦の全ての戦士を統括する男、ボルボル将軍……人なのか豚人なのか、少なくとも、凄まじい程の武威を誇りどちらの言語も自由に扱える存在なのは間違いがなかった。
「ところで母上、どうしてこちらに?」
「産女屋敷を確認しておこうかとな……また新しいおなごが攫われてきたのであろう?」
「ええ……間もなく事が成るかというこの時に……まったくこれだから出来損ない共は……」
「仕方あるまい……暫くは薬で誤魔化せるであろ。坊やは仕事に戻るが良い」
「はい。何かあれば大声で呼んでくだされ、何を置いても駆け付けますゆえ」
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大陸中央部の大樹海、中心部の人跡未踏の魔境はともかくその周囲に広がる中部地帯。
ここには様々な蛮族達が暮らしていた、西部には主に豚人達でありその中でももっとも人の領域に近い大集落がここである。
セーヌの冒険者ギルドでもその存在は把握されていたが周囲に生息する大型魔獣や地形の問題もあり、本格的な討伐は行われていなかったが、黒斗達夫婦の活躍により遺跡から比較的簡単に侵入するルートが発見されたため今回の作戦が提案されたのだ。
豚人の大集落に接近した黒斗達一行、木造の壁に囲まれて周囲を空堀に囲われた其処は正に砦であった。
門に入るには堀の上に渡された橋を通らなければならない様だ。
橋そのものは幅も広く、狩に出かけたり又は戻ってきた豚人の集団の出入りも多い為、姿隠しを使える黒斗であれば侵入自体は問題が無いだろう。
鱗華とアルフェンの二人は砦からやや離れた場所で待機する、万一騒ぎが起こっても即座に対応できる程度の距離から砦を監視する手筈だ。
黒斗は二人に無言で頷くと姿隠しを発動して、狩りの帰りだろうグループに紛れて開いた門の内側に侵入するのだった。
(さてさて……狩りの帰りだろう集団と一緒に門を抜けたは良いが……今の所強そうな奴は見当たらないな)
砦内部はそれなりに広く、通りの幅にも余裕があった。
黒斗は小さい建物を後回しにすると中心部の大きな建物に向かって慎重に進んでいく。
(まずは女性達の囚われている場所の確認だ……酷い光景を見る羽目になりそうだが……まぁリンカの時で慣れてるしな、問題無いだろう)
女達が豚人達に弄ばれる光景を予想する黒斗、目の前で最愛の恋人の処女を奪われそのまま犯し尽された光景を思い出した黒斗の股間が熱く滾り膨張する。
そんな体の反応とは別に、意識を冷静に保ちながら進んでいくと入り口に二人の豚人が番人の様に立つ建物を発見した。
(怪しいな……扉も無いしこのまま入ってみるか)
もしここがそうなら……目を覆いたくなるような凌辱劇を覚悟しつつ建物の中に入った黒斗の目に映った光景は……――
「ねぇちょっと~これ見てよ~良くない?この口紅」
「あらぁいいわね、また貢がれたの?あんたモテるからねぇ」
「別に嬉しくないけどねぇ、まぁ嘆いても仕方ないしさ。少しでも女でありたいしね」
「昔に比べるとほんとに待遇良くなったからねぇ……リリアーヌ様のおかげよ」
「どうせ私達なんて娼婦くらいしか出来ないし、太ったオヤジの相手するなら豚でもムキムキの男の方がマシよ」
「御飯も病気も心配しなくていいのは気楽よね、でも絶倫すぎるのがなぁ……」
「昔は休み無くだったんでしょ?さすがに保たないわよね……」
わりと身綺麗な恰好で化粧をしつつ朗らかに談笑する女達であった。
(あー……行った事はないが……キャバクラの控室みたいな雰囲気だな……)
ドラマやテレビで見た光景を思い出しながら別の意味で衝撃を受ける黒斗。
気を取り直して建物の内部を確認していく、入り口から入ったここはやや大きめの部屋で、管理人らしい豚人がカウンターに座っていた。
大きなテーブルを囲んだ女達が姦しく話している、奥には扉の閉まった部屋が四つに二階へ続く階段があった。
(とりあえず二階だな、扉の奥は気になるが……まずは見れる所からだ)
階段を上がり二階についた黒斗、ホテルの様に通路沿いにいくつも部屋があるのが見て取れる。
ご丁寧に気配のある使用中だろう部屋には赤い札がつけられているではないか、想像以上にしっかりしたルールがあるらしい。
なんとなく釈然としない顔の黒斗が使用中の部屋に近付いて聞き耳をたてる。
――パン!パン!パァン!
「あっ……んっ……あんッ!!……はんっ!!……そこいいのぉ……やあっ……んあっ!!」
(なんか悪い事してる気が……これじゃただの出歯亀だよな……)
部屋の中から聞こえてくる嬌声を聞いている内に気まずくなってしまった黒斗。
(まぁそこまで酷い扱いは受けていない様だ……他の建物も調べよう)
扉から離れて階下に降りていくと先程閉まっていた奥の扉が開き、一人の女性が姿を現す。
(あれは……女の子か?……いや大人の女性だな、背が低くて華奢なだけか……なんとなく気品がある女性だ)
「皆の者、新しく連れてこられた者には
(――ッ!!気付かれたのか?!)
広間の女達に話しかけていた高貴な雰囲気を漂わせた女性がちらりと黒斗が隠れている方に視線を向ける、まるでそこに誰かが居る事に気付いているかのように。
「まぁいくら冒険者とはいえおなごよ……おぬし達で気遣ってやってくれまいか。間もなく捲土重来の時はきたる、今暫くの辛抱じゃ」
女達は神妙な顔で気品のある女性に頷いている。
気品ある女性は再度、隠れているはずの黒斗に目を向けて軽く首肯すると表に出て行った。
(俺の存在に気付いていたな……あの仕草は、ついてこいって事だよな……さて鬼が出るか蛇が出るか……ついていくしか無いよな……)
出ていく女性の後について移動する黒斗、時折すれ違う豚人達は女性を見ると道を譲ったり頭を下げたりと明らかに目上の扱いを受けているようだ。
(どんな存在なんだ?豚人達が凄くかしこまってるぞ……少なくとも只の苗床扱いでは無いな)
女性は中心部に存在する一番大きな建物に入っていくようだ。
警護らしき門番の豚人達でさえ頭を下げている様子にますます混乱する黒斗。
訳も分からぬまま後をついていくと女性は装飾の施された扉の前に立ちどまりノックをした。
「母上か?ノックをする者など母上しかおらんな。入られよ」
返事を聞いた女性は扉を開けて室内に入っていく、扉は開けたままだ。
(英語?!人がいるのか?……――なっ!!??)
中から聞こえた人の言葉に驚き、続けて室内を確認した黒斗は更に驚愕する。
美しい男だった。
流れる様な金髪に先程の女性によく似た面差し、全身は引き締まった筋肉に覆われているが、決して不格好ではない鍛え上げられた戦士の肉体だ。
口許から天に向かって伸びた大きな牙だけが全てを台無しにする異彩を放っていたが。
(ハーフってやつか?!いやでもそんな奴見た事も……そうだ豚人と人の女の間に生まれるのは皆、豚人だ……どういうことだ?)
「母上?閉めぬのか?」
「ボルボルや……待ち人が来られた様じゃ。其の方も入ってくるが良い。大丈夫じゃ、騙し討ちなどせぬ」
「なんと!!……いやそうか姿隠しか?私が気配も感じぬとは……流石母上……そこに居るだろう者よ、母上がそう言うならば信用できるのだろう、現れるが良い」
状況は良く解らないが、少なくとも敵意は感じられない。
ここは腹を割るべき場面だろうと判断した黒斗は扉を音もなく閉めると姿隠しを解除する。
「ほぉ……貴公、かなりの手練れと見た。私の名はボルボル、ここ西の砦にて将軍の位を受ける者だ」
「
「俺は荒神黒斗、鉄級の冒険者だ。って母で妻ってなんだよ……というかどうして気付いたんだ?」
お互いに自己紹介をするともっともな疑問をリリアーヌにぶつける黒斗、やはり姿隠しを見破られたのは気になるようだ。
「
「成程な……この魔法も万能じゃないんだからそりゃそういう事も有るか……確かにその冒険者絡みの依頼できたのは間違いない、出来れば詳しい話を聞きたいのだが」
リリアーヌの答えに納得したように頷く黒斗、便利な魔法ではあるが過信は出来ないなと改めて己を戒めると、自分に用が有るのだろう二人に問い掛けた。
「うむ。単刀直入に言おう。我らの悲願の為に協力して頂きたい。内容は人の女たちの救出と出来損ない共の処分だ」
「は?……女達の救出はこちらの目的でもあるが、処分ってのは何の話だ?よく解らんが詳しく説明して貰えるのか?」
「勿論だ。少々長い話になる、母上、お茶の用意を頼む。初めての客人にして最後の客人だ」
「ふふっ、一番上質な茶葉を用意しようかの、とはいっても都のモノとはくらべるべくもないがのぅ」
リリアーヌがお茶を入れる為に席を立つ、心なしかその足取りは軽い様だ。
(12年待ったんじゃ……せめて女達だけでも……頼むぞ、黒斗殿)