ファム・ファタール~寝取らせモノが大好きな剣士が異世界転移した場合~ 作:幻闇
考えをまとめた黒斗が風呂から上がる。
交代で入ったリンカが入浴を済ませ、夜着に着替えたタイミングで黒斗が話を切り出した。
「リンカさん。俺は冒険者になりたいんだ。どうすればよいのか教えて貰えないだろうか?」
「えっ?! 本気なの? そちらの世界に魔獣はいなかったんだよね? わざわざ危険な仕事を選ぶ必要はないと思うけど……」
リンカが驚きながら黒斗に考えを尋ねる。
「確かに命の奪い合いは経験したことは無い。でも戦いの技術はずっと磨いてきたんだ。対人用の技術だから魔獣相手には色々試さないといけないだろうけど、自分の力が何処まで通用するか試してみたいんだ」
「成程、基礎は出来ているって感じなのかな。冒険者になるにはギルドで登録する必要があるけど。逆に言えばそれくらいだね。自己責任の職だし、登録したデータは大陸全体で共有されるから悪事をすればお尋ね者だよ。魔獣に殺される者も多いかな」
冒険者に成るのは簡単である。ギルドで登録すればその日から冒険者だ。一定の給料なんて保証も無く、魔獣に殺されたからと家族に見舞金が出るわけでもない。
「自分の決めた道なら例え死んでも本望だ。力及ばないならそれまでだったって事だな。所でリンカさんは誰かとチームを組んでいたりとかは?」
「ボクかい? ボクはいわゆるソロ冒険者って奴だよ。あんまり無茶は出来ないけど気楽でいいし、人族にこの容姿は気味が悪いみたいでね。それでも昔よりはだいぶマシになったんだけど」
ソロ冒険者とは、パーティを組まずに一人で活動する冒険者達である。
龍人族は数が少なく里の外に出る者も多くないため、昔は亜人どころか魔物扱いされる事もあったようだ。
「気味悪い? リンカさんが?! 節穴ばかりか? この世界の人族は」
現代日本の感覚で育った黒斗にとってリンカは、とても美しい幻想世界の女性そのものだった。
厳しい修業の傍で、エルフ族や人化したドラゴン、魔族等の綺麗な女の子が沢山出てくるアニメや漫画が大好きだった黒斗にとって、リンカはまさに理想のヒロインだったのである。
「うえ?! うう……ありがとうクロトくん。所でボクがソロだったらなにかあるのかな?」
不意打ちに照れつつも訪ね返すリンカ。
「リンカさんが良ければで構わない。実際に戦いを見ていないから、付いていけるのかも分からないが、俺と一緒にパーティを組んでほしい」
「ボクとパーティを?! 本当なら喜んで組みたいかも、流石にそろそろソロでは限界を感じてて……その本当にいいのかな? キミならもっと良い冒険者と組めるんじゃないかな?」
「リンカさんと組みたいんだ。貴女と一緒に知らない世界を旅してみたい……」
「えええ?! ……――キミはいつも女の子にはそんな感じなのかな?」
余りに直球な言葉にさすがのリンカも疑い始める。見た目によらず、軽薄なナンパ野郎ではないのかと。
「あっ! ……いやすまない、そんなつもりでは無かったんだ。どうも昔から思った事をそのまま口に出してしまうタチでね」
黒斗は語った。幼い頃に事故で両親を亡くした過去を……。沢山話したい事があったのに、二度と話せなくなってしまった辛い思い出を。その時の後悔から、伝えたい思いはすぐに相手に伝える様になった事を。相手がいつ居なくなってしまうのか分からないのだから――と。
ベッドに座ったまま過去の話を淡々と語った黒斗。どこか寂し気に笑う彼に、スッと自分のベッドから立ち上がったリンカが近付き、その頭を両腕で包み込む様に抱き締める。
「ちょ! リンカさん?」
「ごめんね……辛い話をさせちゃったみたい……そんな理由があったんだね」
「ほんとに昔の話だ。大丈夫……って当たってる! まずいですよ!」
沈んでいた黒斗の顔を、容赦なくリンカの豊かな双丘が蹂躙する。
「いいよ……辛い話をさせちゃったお礼かな。それともボクのじゃ嫌?」
「いやいやいや! 大好きです! 一目惚れしましたしっ! でも、こんな無防備じゃ危ないですよ!」
混乱の余り、自分が告白をしている事すら気付かない程に慌てる黒斗であった。
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なんとか桃色の呪縛から逃げ出した黒斗が、先程の発言を思い出しつつ厳つい顔を真っ赤にしている様子を見て、笑いながら謝るリンカ。
「ごめんごめん……でも、ふふっ、惚れられちゃったかぁ……まぁ誰にでもこんな事はしないよ。ボクもキミに惚れちゃったみたい」
「えっ!?まさかそんな……――マジですか?」
「傷つくなあ……疑うなんて。これまでそんな事を言ってくれる男の人なんていなかったし、キミみたいに逞しくて素直な人に弱いんだ。ボクは」
まさかのリンカの気持ちに、天にも昇る様な幸福感に包まれる黒斗。
こんな可愛い娘が俺に惚れたなんて言ってくれるなんて……異世界万歳!! と心の中で万歳三唱の黒斗であった。
「まぁ一緒に冒険者をやるっていうのは良いよね。明日はクロトの装備を整えてギルドに登録をしよう。登録すれば訓練場も使えるから立ち合い稽古で実力を測ってみたいし」
「ああ、望むところだ。刀があれば良いが、直剣や曲刀、槍や投擲も使える」
「へえぇ、すごいや。昔の日ノ本の人は武芸百般に通ずるって書いてあったけど。ほんとなんだね」
過去に何人か迷い込んだ、日ノ本の漂流者たちが残した書物や口伝にあった事を思い出すリンカ。
「そこまで大層なものではないけど……アレはだいぶ盛ってたみたいだしなぁ……。ちなみに刀はあるのか?」
「魔獣にも通用するレベルのモノとなるとかなり値が張るけど、あるにはあるよ。丈夫な金属で肉厚に作るから、普通の刀とはまた違うかもしれないけど」
「斬馬刀みたいなものか? 扱えなくはないな」
「ああ、極まれに魔法の掛かった武器が迷宮から出たりするんだけど、レアなものだと不滅とか耐久強化なんて魔導付与がかかった刀もあるからそれなら魔獣にも通用するんじゃないかな」
迷宮とは、古代文明のガーディアンが守護する遺跡や、異なる次元と繋がった天然の大空洞の事だ。そこでは現代では再現不可能な武具や、異界のアイテムなどが眠っているのである。
「迷宮もあるのか……そのうち行ってみたいけど、まずは戦えるかどうかだな」
「ギルドに行けば魔法適性や能力もわかるよ、そうすれば戦闘の幅も広がるね」
「魔法は教えて貰ったけど、能力ってのは? 超能力でもつかえるのか?」
超能力ってなんだろう? と首を傾げつつも黒斗に語っていく鱗華。
この世界の人種は皆、生まれながらにある種の特質を備えて産まれるのだ。それらは主に身体能力面での強化能力であり、一例として筋力や敏捷性、学習能力の高さなどがある。遺伝子レベルで決定されているらしい事は判明しているものの、詳しい事は解明されていない。
「ボクの場合は再生力強化だね。命に係わる怪我でなければ凄く早く治るんだ。沢山食べないとダメなんだけど」
「すごいな! それに安心だ。綺麗なリンカさんに傷でもついたら大変だし」
「ちょ?! ……もうキミは……あと、さんはいらないよ。同じパーティメンバーだし、一応、恋人になるんじゃないのかな?」
「こいびっ!? ――ってまあそういう事になるのか。わかったリンカ。これからよろしく頼む」
「ふふっまぁまだ実感も無いし、出会ったばかりだけどね。キミと話してると凄く楽しいよ。よろしくねクロト」
楽しく談笑しながら、黒斗の異世界生活一日目の夜はこうして幸せに過ぎていくのだった。
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チュンチュンと小鳥が泣き交わす朝であるが、別に朝チュンしたわけでは無い、そんな翌日。
(……結局全然寝れなかったぜ……二時間くらいは寝たけどよ……隣のベッドでリンカが寝てるって思うと緊張しすぎて寝れやしないぜ……)
やや疲れたような顔を、湯で洗い流しながら、黒斗は心の中で寝入る前の事を思い出していた。
鱗華が時折り寝返りをうつ音や、寝言で艶めかしい声が聞こえる度に心臓が破裂しそうになっていた黒斗は、健康な若い男らしく下半身に血液が行き過ぎて困った為に、こっそりトイレにいっては処理をしていたのである。何度も。
「おはよう!クロト。いい朝だね」
起きてきたリンカが、やや着崩れた夜着のまま洗面所に顔を出す。
「おはよう、リンカ――って服! 服! ちゃんと着ないと!」
「ここにはクロトしかいないんだし、別にいいんじゃない?」
「俺のメンタルが死ぬわっ! 刺激が強すぎます!」
今まで、女っ気の一切ない人生を歩んできた黒斗にとっては試練の連続である、頑張れ。黒斗。
その後、着替えを済ませた二人は黒斗の装備を整える為に、腕の良い鍛冶職人がいるという武具店に出向く。
「ここかな? バルガスの武具屋……と間違いないみたい」
「リンカの装備も点検してもらうんだったか?」
「この街に来たばかりだしね~。命を預けるものだから、依頼を受ける前に済ませておかないと」
リンカの装備は若草色に染められたハードレザーの軽鎧一式に、胸部の部分だけが金属プレートで補強されているものだ。
武器は槍で、穂先に刃のついた斬る突く払う事が出来る和風の槍である。予備に組み立て式のショートスピアも携帯しており、ベテランの冒険者という事が伺えた。
二人が店内に入ると、やや無愛想だが実直そうなドワーフの店主がカウンターに腰掛け、恐らく商品であろう武器の手入れを行っていた。
「すいません、この人に軽めで動きやすい防具を見繕って頂けませんか? ボクと同じような装備がいいんですけど」
リンカが黒斗の希望通りの要望を伝えると、ドワーフの店主は無言で頷き、黒斗に近寄って声を掛ける。
「おぅ、あんちゃん中々いい体してんじゃねぇか! 服の上からでもわかるぜ、良く鍛えてんな!」
「筋肉は全ての基本だからな。筋肉があれば大体なんとかなる」
「わかってんじゃねぇか! 気に入ったぜ! ちょいと測らせてもらうぜっと……――少し打ち直せば問題なさそうだな。ハードレザーでプレートの補強入りのもんだな? 見繕って調整してくっからよ! そのへんの武器でも見ててくれや」
そういって店の奥に向かった店主を見送ると、黒斗は早速まわりに置いてある武器を見分し始める。
「気のいいドワーフの人だな。やっぱり鍛冶屋といえばドワーフでないとな」
「そっちの世界は肌の色と体格の違い位しかないんだよね? こっちは亜人にも沢山いるからねぇ」
「刀は……あったけどやはり高いな」
棚や壁に陳列された武具の一角、刀が並ぶコーナーを見てため息をつく黒斗。
「どれどれ……うーん刀は鍛造品だからね。どうしても手間がかかるから高いんだよね」
「直剣や曲刀もあるけど、刀があるならやはり刀が使いたい所だが……」
「……――よし! 刀を買おう!」
他の武器とは桁の違う刀の値札を眺めて悩んでいた黒斗に、リンカがきっぱりと言い放つ。
「命を預けるものだし、使い慣れた武器が一番だよ。同じパーティーメンバーなんだからそこは妥協してほしくないや」
「お金は大丈夫なのか? リンカがそこそこの冒険者ってのは聞いたけど余裕はあるのか?」
「これを買うと今夜は野宿になってしまう感じかなっ!」
「無一文になるって事じゃないか!」
流石に自分はともかく、うら若い女性であるリンカを野宿させるわけにはいかないと黒斗は慌てる。
「クロトと二人なら大丈夫だよ。くっついて寝ればあったかいでしょ?」
「いやいやいやいや落ち着こう、それは死ぬ。いろんな意味で俺が死ぬ」
(隣のベッドで寝るだけでアレだったんだぞ! そんな事したら正気度が0になるわっ!)
ぎゃあぎゃあと二人が騒いでいる間に調整が終わったのか、いつの間にか戻ってきていたドワーフの店主が二人に声を掛ける。
「あー……仲の良い所すまんが、調整がおわったぞ。試着してみてほしいんだが……」
「「あっ、すいません!」」
仲良く同時に謝り、いそいそと試着を始める黒斗。リンカはその間に店主に刀の事について尋ねる。
「ねぇおじさん。この人、刀使いなんだけど、もうちょっと安くて丈夫なやつって他にないかなぁ?」
「ほぉ、刀使いは珍しいな。あんまこねぇから陳列品も少なめでな。ちょっと待ってな」
そういうとドワーフの店主はまた店の奥に戻り、幾つかの刀を持ってきて二人の前に並べる。
「まぁ安いっつっても鍛造品だ。俺でも一本仕上げるのは時間がかかってな。これなんか悪くねぇぞ、切れ味は普通だがとにかく頑丈よ」
「わっ! すごく分厚いね。着替え終わったら黒斗にみてもらおう」
店主おすすめの一品は、黒塗りの鞘に飾り気の無い無骨な柄、刃は肉厚でまるで鉈のようであった。
防具を着け終えた黒斗が、確かめる様に軽く無手の型の動きを行い、納得したかのように頷き、二人のもとに歩み寄ってくる。
「軽くて動きやすい、うちにあった甲冑よりも遥かに良いな……っと、それは?」
表の陳列品よりやや値の下がる刀だと教えられた黒斗は、お勧めの刀をじっくり見定め手に取る。
「厚重ねの刀か、同田貫みたいだな。無骨だけどしっくりくる。これならクマの頭でも叩き切れるな」
二人と距離をとり、刀を抜くと正眼から大上段に構え、正面に向けて斬り下ろす。薩摩示現流、二ノ太刀要らずのような気迫のこもった一撃に、切り裂かれた空気が悲鳴を上げる。
「すげぇな……あんちゃん達人じゃねぇか! こりゃ武器が足りてねぇ」
「凄い剣速……」
(強そうだと思ってたけど、こんな一撃が放てるなんて……ボクもう完璧に惚れ込んじゃった)
黒斗の素振りを見た二人は、それぞれに凄いと頷き合う。リンカは素直で逞しく、さらに強いとわかった黒斗に改めて惚れ直すのだった。
「これは中々の業物だと思うが……これで安物なら店主さんの職人技術は本当に凄いんだな」
「いやぁ、あんちゃんの技がすげぇ……――わかったちょっと待ってろ、すまねえな、待たせてばっかでよ」
店主は再度、店の奥に向かっていったが、今度はすぐに長い箱をもって現れる。
「これは俺の打った厚重ねの刀の中でも自信作でな、切れ味と頑丈さはなかなか両立できないんだが。たまたまいいハガネが手に入ってよ、作ったモンなんだ。試してみてくれ」
そう言うと店主は、箱の中から同じく黒塗りだが華美ではない程度に装飾がされた鞘に入った刀を取り出して黒斗に渡した。
「これは――っ!!凄い……なんて美しい刃紋だ。厚みはさっきの物と変わらないが刃の艶が違う、切れ味も凄そうだ」
黒斗の反応を満足そうに見た店主は、二人を試し切りのスペースに案内すると据え物として鉄の兜を設置した。
「その刀とあんちゃんの技なら出来る筈だ。斬鉄が」
据え物切りである。
藁束や竹、過去には処刑される囚人の体で試されていたが、鉄兜を斬れる者は少ない。
黒斗はゆっくりと構え、大上段から裂帛の気合を込めて刀を斬り下ろす。
「ちぇすとおおおおッ!!」
――ヒュパッ
――がらぁぁん!
置いた台座ごと断ち斬られた鉄兜が左右に転がる。美事な技前であった。
「クロトすごいっ! 斬鉄なんて銀級冒険者クラスだよ! さすがボクの恋人だねっ!」
「ちょっ! リンカ恥ずかしいだろ! この刀が凄いんだよ」
「ガハハハハハ、似合いのカップルじゃねぇか! 俺がクソ美人の嫁さん持ちじゃなかったら嫉妬してるとこだぜ。ガハハハハ」
ひとしきり呵々大笑すると、店主は真面目な顔で黒斗に話しかける。
「さっきのやつと同じ値段でいい、持って行ってくれ。俺の打った刀がこんな達人に使われるなんて鍛冶屋の本懐だ。もし気後れするってんなら銘を付けて宣伝してくれや。あんちゃん達なら絶対、上級冒険者に成る。そのあんちゃん達の御用達の店ってんならこれが最高の報酬だ。……――つーかもう銘入れてくれたらタダでいいぞ」
店主の言葉に驚きつつも、職人としての本懐とまで言われては断れない。銘を入れる事を条件に刀を譲り受ける事にした黒斗であった。
「店主さん、名前を教えてくれないか」
「俺はバルガスだ。鍛冶職人バルガス。ちなみに最愛の嫁さんはユニーだ、近所で針仕事をしとる。滅茶苦茶別嬪だぞ! ガハハハハ」
「いやそんな事教えられても……俺は荒神黒斗だ。黒斗と呼んでくれ、こっちはリンカだ。……そうだな――ハガネ断ちバルガス……この刀なら鉄どころか鋼も断ち斬れる筈だ。間違いない。ハガネ断ちバルガスがこの刀の銘だ」
「あんちゃん……グスッ……職人冥利に尽きるとはこの事だぜ。あんちゃん達ならすぐ稼げるようになるだろ、いいもん作ってやるから武器防具はオレにまかせな!」
「いい名前だね。タダにしてもらえたし、これで野宿は回避できたよっ! ボクはクロトと二人で野宿もしてみたかったけどね」
「それは死んでしまいます……」
「なんだあんちゃん達まだヤってねぇのかよ? そんな仲いいのによ」
まだ付き合い始めたばかりという話を聞いたバルガスは驚いた顔をして問う。
「一日でこんな息があって仲が良いとかすげぇな……運命のなんちゃらって奴かねぇ。二人とも互いを大事にしろよ。冒険者は危険が多いからな、無茶すんじゃねーぞ」
バルガスは己の見てきた事を、二人に語って聞かせた。
新人の冒険者が何人も店に来て冒険や魔獣退治に向かい、必ず戻ってこない奴がいる事を。
死なずとも、亜人の中でも意思の疎通が出来ない蛮族と呼ばれる豚人や鬼人、こいつらに負ければ男は死ぬだけだが、女はより悲惨だ。子供を孕む苗床として大事にはされるが尊厳などは何もなく、ただ犯され、孕まされるだけの存在になり果てる。
バルガスも何人かそんな者達を見てきたのだ、蛮族に攫われて犯され、助け出されはしたものの、蛮族の種を付けられた女というだけで捨てられる女達。
冒険者ならまだ一人でも生きていける。だが普通の女にはそんな事は出来ない、娼婦として身を堕とすしかないのだ。
赤面しつつもバルガスの真面目な忠告を聞き頷く二人。
黒斗は思う、強敵と戦い自分が負けたら……リンカは犯され、弄ばれ、蛮族の子を産む苗床になるのだと。
カッと頭に血が上る感覚ともう一つ……なぜか下半身にも血が集まる。
(まさか……いや俺は、リンカが凌辱されている所を想像すると……――凄く興奮してしまう……そりゃ寝取らせモノは大好きだが……現実は別だろっ!)
「――ッ! ああ良く気を付けるよ、そんな事にはなりたくないからな、稽古と魔獣退治で強くなろう!」
同じく話を聞いていたリンカも思っていた。
(私、犯されちゃうのかなぁ……三日以内なら避妊治療も出来るし、長期間捕まらなければ大丈夫だけど……今までは魔獣しか狩れなかったからねぇ、蛮族相手だとそれもありえるよね……捨てられちゃうのは絶対いやだなぁ……気を付けよう…………でもクロトの目の前で凌辱されたら……なんだろうカラダが熱くなってきちゃった……)
医療に関してもこの世界はある程度進んでおり、ピルのような避妊薬や、都市部であれば行為後の緊急避妊治療も三日以内であれば確実に行うことが出来る。
逆に言えば辺境や三日以上にわたり捕えられたりしていた場合は難しいのだが……。
その後リンカの装備の点検や刀の銘入れの後、武具屋で装備を整えた二人は冒険者ギルドに向かった。
黒斗の装備は森や夜に溶け込みやすい黒色に染められたハードレザー、漆黒のブレストプレートに、譲り受けたハガネ断ちバルガス。
予備と投擲用に小太刀とくない、解体用のナイフをバルガスから購入し店を後にするのだった。
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tips
龍人族の里
古代より少数が、深山幽谷に隠れ住んでいたが珍しい種族の為、今は違法とされている奴隷狩りに遭う事や魔物と思われ迫害される事も珍しくなかった。
ある時、戦国の日本より転移してきた漂流者の男が奴隷狩りに遭った龍人族を助けた事を切っ掛けに、各地の奴隷にされた者や迫害された者を集めて作られた里。
男の名は本人の希望により残されてはいない様だが、刀一本で傭兵30人を斬り殺し、その首を里を囲む柵に晒して敵対する者達を威嚇したという逸話が遺されている。