ファム・ファタール~寝取らせモノが大好きな剣士が異世界転移した場合~ 作:幻闇
前回のあらすじ
作戦決行までの数日間をそれぞれに過ごす黒斗たち、鱗華は特に公衆トイレでの肉便器輪姦や黒斗、アルフェンコンビによる乳虐リョナプレイを楽しんでいたようである。
決行の当日、予定通り朝に砦に到着した黒斗達は大型魔獣を多数含んだ雲霞の如き魔獣の群れに襲われる砦を目にしたのであった。
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作戦決行日の朝、黒斗達が街を出る頃合い。
西の砦のボルボルの自室では、親子にして夫婦たるボルボルとリリアーヌがいつも通り穏やかな朝食の時間を楽しんでいた。
「いよいよじゃ、
「まだ上手くいくと決まったわけではありませんが……まぁ彼らと私であれば問題はないでしょう、リリアかあさまにはやっと楽をさせてあげられますよ」
「むぅ……その言い方だと
まだまだ女盛りの24歳であるリリアーヌはボルボルの物言いに不満げな顔をして唇を尖らせる。
「はははっ、勿論です。かあさまのモチモチの肌と瑞々しい肢体は私が一番よく知っております故……昨夜も堪能させて頂きました」
「坊やが意地悪じゃ……しかし人の街でゆっくり暮らせるとなると……どんどんふしだらな女になってしまいそうで怖いのう……気にする事が無くなれば坊やに溺れてしまいそうじゃ……」
「それは重畳!!最高の御褒美ですな!!今日は私の全力全霊をもって事の成就を為さねば!!」
世界で一番愛する母にして妻の可愛らしい言葉に、己の魂が燃え上がる程の気合を漲らせ、改めて決意するボルボル。
「やる気を出すのは良い事じゃがのう……そうじゃ、人の街で暮らすなら母上に坊やはまずいかのう、人前では気をつけなければじゃな、貴方様」
「むう……なんだかこそばゆいですな、わかりました。リリアか妻と人前では呼びましょう」
「うむうむ、良いではないか。二人きりの時はいつも通りかあさまと呼ぶのじゃぞ」
「坊やはそろそろ卒業したいのですがね……」
複雑そうな表情でそう呟くボルボルであった。
「さて、黒斗殿達が来られる前にある程度流れを確認しておきますか」
「姿を隠した黒斗殿と共に産女屋敷に向かい女達を集めておく、豚人達を坊やが招集して訓示を行う隙に脱出させる じゃな?」
「ええ、産女屋敷の者も呼ぶと不自然ですのでそちらは黒斗殿に処理を頼みましょう、あと――」
――ドンドンッ!!
【将軍っ!!ボルボル将軍!!おられるか??!!】
打合せを行っていた二人の部屋が乱暴に叩かれて緊迫した豚人の声が室内に届く。
【何事であるか!!朝食中であるぞ!!】
【魔獣ですっ!!数えきれない程の群れが深部方面から砦にきていますっ!!】
【なんだとっ!!…………兵士たちを叩き起こして出撃させろっ!!砦内に侵入させることは許さぬ!!】
【はっ!!了解しました!!】
ドア越しに指示を行ったボルボルは直ぐに自らも防具を身に纏っていく、ただ事ではない事を察したリリアーヌもボルボルの防具の着用を手伝う。
「かあさま、大量の魔獣の群れが深部からきているそうです……なぜこのタイミングで……私は部下を取り纏めて指示を出しますのでかあさまは産女屋敷で待機していてください」
「なんと…………解ったのじゃ。黒斗殿であれば乱戦中であっても産女屋敷まできてくれるじゃろう、合流するまで頑張って女達を励ましておくのじゃ」
「なに、問題はありませんよ。魔獣達と豚人達をぶつけ合わせて漁夫の利を狙います。大筋はかわりません、行ってまいります」
「
豚人の本国にて王から下賜された
愛する男を戦場に送り出すリリアーヌは火打石をとりだしてカチカチと打ち合わせ、厄除けの祈りを行う。
「おおっ!!勝利の女神の祝福を受けた気分ですぞ!!ではかあさま!!また後程!!」
颯爽と部屋から出ていくボルボルを見送るリリアーヌ、なにも心配はない、無双の戦士が四人もいるのだ、しかし何故これほど不安なのだろうか……。
思わず実家で昔習った古の戦勝祈願まで行ってしまう程に、彼女の心は言い知れぬ不安を拭い去る事が出来なかった。
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白刃が閃く、双牙が踊る、龍爪が貫く。
叫喚の戦場をそれぞれに駆け抜けていく三人が得物を振るう、その度に、魔に冒されし獣の命が消えていく。
一般の人間が束になって襲い掛かっても、その巨体の突進一つで薙ぎ払われるであろう巨大な大牙猪が頭蓋を叩き割られて死ぬ。
熟練した猟師が安全な木の上から、猛毒の矢を何十本と放って狩る大熊魔獣が四肢をバラバラに切断されて、蠢く達磨と化す。
節くれだち、鋭利に研ぎ澄まされて絡まりあった刃そのものたる大角で熟練冒険者を何人も血祭りにあげて来た大鹿魔獣が流星に貫かれた様に上空から心臓を穿たれて即死する。
狂奔するかのように砦に襲い掛かり、その内部の魔素を持った生き物を喰らおうとする魔獣達が弱肉強食の掟に従い、より上位の強者に狩られてゆく。
大型ではないとはいえ、そもそもが元の生物の数倍にもなる巨躯を誇る大量の魔獣達がすり抜けざまに、ついでとばかりに切り裂かれ、貫かれる。
これほどなのだ、冒険者の上位者たる存在とは。
一般人とは隔絶した戦闘力を持って魔獣を屠る者達、人に在って人に在らざる者達、――――――まさに人外の修羅であった。
「大分減らしたか?」
「そうだなァ……でけぇのはリンカが一撃で殺し尽してもういねぇし……バケモンかよ……」
「無茶苦茶つええからなぁ……対魔獣だと追いつける気がしないぜ……怒ったところなんて見たことが無いけど、本気で怒らせない様に気を付けよう……」
男二人が鱗華の戦いに慄きながら話していると粗方大物を斃してしまった鱗華が合流してくる。
「もう大物はいなくなっちゃった、あとは雑魚ばっかだけど豚人といい勝負してるみたいだからほっといた方がいいよね?あとで皆殺しにする手間が省けるし♡」
「あっああ……そうだな……そろそろ姿隠しでボルボルかリリアーヌさんの所に行ってくる、想定外の事態だがボルボルの事だからこのまま騒ぎに乗じて作戦は進めるだろうしな」
「俺とリンカで適当に間引いとくぜェ……なんかあったら適当に動くからまかせとけェ」
多少の変更はあるだろうが予定通り作戦は行われるだろうと考えた黒斗は当初の予定通り、ボルボルとリリアーヌの元へ姿を隠して向かうのであった。
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(まずは……産女屋敷だな、最優先目標だし当初の予定ならリリアーヌさんがいるはずだ)
魔獣達を迎撃している豚人達を横目に、するりと門の内側へと侵入した黒斗は計画通りに産女屋敷へと向かう。
当初の予定では見張り番も招集して、中に居る管理人の豚人だけを最後に始末すれば問題ない筈であった。
(見張り番は……いないようだな、中には管理人だけか、おっリリアーヌさんがいるな)
産女屋敷に入った黒斗の目に女達を纏めて話をしているリリアーヌが映る、黒斗に気付いたリリアーヌは一つ頷くと二階の方へ階段を上がっていく、後をついて上がった黒斗は適当な部屋でリリアーヌと再会するのであった。
「五日ぶりです、リリアーヌさん。早速ですがこの状況は?」
「ご機嫌よう黒斗殿、今朝方急に、深部方面から大量の群れが押し寄せてきてな、夫は中央本部で指揮を執っておる。漁夫の利を狙って双方が疲弊したところを一気呵成に叩くとの事じゃ、黒斗殿にはこの部屋で待機して頂きたい。戦況が落ち着き次第、夫もこちらにくるじゃろう」
「了解です、こちらで待機してますのでなにかあったら大声で呼ぶか直接きてください」
「あい分かった、
部屋から出ていくリリアーヌを見送ると、気を利かせて用意してくれていたのであろうお茶と菓子を摘まみながら部屋で待機する黒斗。
一時間程待っていると階下から強者の気配が上がってくるのを感じ取る、間違いなくボルボルであろう。
「黒斗殿!!お待たせ致した!!間もなく魔獣どもの掃討も終わる、豚人はまだ三割ほど残っているが、なに、問題は無かろう。黒斗殿には予定通りこちらで女達と妻の護衛を頼みたい、私が討って出て残りのお二人と合流し豚人達を駆逐しよう」
部屋に入ってきたボルボルが開口一番に現状の説明と今後の予定を語る、黒斗は前回あった時にも確認した事を改めて尋ねる。
「本当にいいのか?ボルボルが護衛について俺が豚人達を殺戮してもいいんじゃないか?いくら出来損ないとはいえ半分は同族で一緒に暮らしてきたんだろう?」
「良いのだ。己の手を汚さずしてなにが将軍か……本来なら全て私の手で殺すべきなのだ。例え罪の血に塗れようと私は母を救うと己の魂に誓ったのだから」
「解った、男の覚悟に口を挟んで済まなかったな。俺も全身全霊をもってリリアーヌさんと女性達を守ると誓うよ、ここの事は気にせずに行ってくれ」
「黒斗殿…………なんとありがたい事か……このボルボル、貴公と縁を持てた事、改めて天に感謝するぞ……うっぐぅ……ううっ」
黒斗の言葉に感激の余り嗚咽を漏らし始めてしまうボルボル、彼にとって対等な関係で理解しあえる同性の男など今迄存在しなかったのだ。
自らの覚悟を認め、支えてくれるという男の言葉はあまりに深く彼の心に突き刺さる、感動の余り泣くのも仕方の無い事である。
「ほらほらまだ終わったわけじゃないんだから、泣くのはまだ止めとけ。これか――――っ!!なんだっ!!」
――ズ……ズウウゥゥン…………
突如凄まじい振動が大地を震わせた、重く鈍い衝撃音が黒斗の耳に届く、みればボルボルも顔を厳しく豹変させて油断なく周囲の様子を伺っている。
「なにか途轍もなく巨大なモノがぶつかった様な……」
先程の衝撃を表現するならまさにそのような感じであろう、黒斗が呟いていると窓から身を乗り出して表を確認していたボルボルが緊迫した声で叫ぶ。
「アレは…………まさかっ!!暴竜!!だとっ!!!なぜ竜種がこんな所にっ!!いやあの大きさは……魔竜化して魔素に引き付けられているのか……」
ボルボルの叫びに黒斗もボルボルの後ろから窓の外を確認すると砦の外壁に向かって突進している途轍もない大きさの生物を見つける。
「アレが竜種……ティラノサウルスじゃねーか!!竜種って恐竜の事かよ!!つかデカすぎだろ……」
テレビの公共放送のドキュメンタリーなどで見ていた再現CGによく似た、ただしサイズは二倍ほどだが……そのシルエットは紛れもなく白亜紀に地球を支配していた肉食恐竜そのままであった。
10メートルはあるだろう外壁よりもさらに高い位置にある頭、すくなく見積もっても全長30メートルはあるだろうその巨体がぶつかる度に凄まじい振動と轟音が砦を襲う。
「女達を万一の為に作っておいた地下に匿う!!アレをなんとかしなければ脱出など到底不可能だ!!」
「わかった!!豚人なんてアレの前ではゴミみたいなもんだ、混乱してるしな。仲間達をここまで連れてくる!!」
二人はすぐにでも破られそうな外壁をみて即座に決断を下す、ボルボルは女達を産女屋敷の地下に作られた避難所に誘導し、黒斗は鱗華とアルフェンの元に急いで駆け付ける。
事態をある程度、察していた二人を連れて産女屋敷まで戻るとすでに避難を終えたボルボルが外壁に突撃し続ける魔竜を睨みつつ待機していた。
「待たせた!!何体か邪魔だったから斬り捨てたが二人ともつれてきたぞ」
「こちらも地下に女達を隠した、少なくとも豚人共と我々が喰われるまでは無事だろうな」
魔素を探知して襲ってくる魔獣は一度認識されてしまえば逃げるのは困難だ、ただ隠された者達よりは近くにいる喰らいやすい存在から襲い掛かるので女達は当面の間、安全と言えるだろう。
ボルボルと同じように外壁の魔竜を見ていた鱗華が口を開く。
「タイラントだね。魔獣化した竜種は魔竜っていうんだけど、出会った者は皆喰われてるからギルドでも正確には確認されてないんだ。暴竜タイラントなんて魔竜化してなくても脅威なのに……」
「小型の爪竜種なら何体か狩った事はあるがなァ……魔竜なんて初めてみたぜェ……」
暴竜タイラント、体格に比してもなお巨大な頭部をもった肉食の竜種、大型の者は20メートル近くにもなって付近の生物を喰らい尽くす暴食と暴力の化身、ギルドで正式に確認された討伐報告も数える程しかない。
恐ろしい牙の一噛みは板金鎧さえ容易く貫通するという正に竜種の頂点に近い存在である。
そんな個体が魔竜化しているのだ、悪夢どころの騒ぎではない、こんな存在が樹海の外に出れば、それは国家規模の災厄となるのは間違いなかった。
「竜種っていうからファンタジーのドラゴンみたいなのを想像してたけど、まさかの恐竜かよ……そら魔竜化してなくても魔獣なんて餌だよなぁ……斃せると思うか?」
「斃さねば喰われるだけだ、我らも、妻も、女達もな」
「新婚旅行の前に死ぬのはやだねぇ……魔竜とはいえ生き物なんだし、殺せるでしょ?」
「四人ならイケるんじゃねぇかぁ?つーかそろそろ破られるぞアレ」
会話の間も巨体の突進は止む事はなく、硬く大きな丸太を組んで作られた外壁は間もなくその役目を終えようとしていた。
ここに留まっていては女達が危ないと気づいた黒斗達は、戦いやすい砦前庭部分、広場に移動して魔竜を待ち受ける。
慌てふためいて慄くばかりの豚人達は突如現れた人族など気にせずに怯え震えて縮こまるだけであった。
――ドゴオ゛オ゛オ゛オ゛!!!ばぎばぎばぎぃ!!
「ゴアアアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!!!!」
度重なる巨大質量の突進に耐えきれなくなった外壁が轟音と共に砕け散る、砦内に侵入を果たした魔竜は耳を聾する程の大音量で咆哮を上げると、ようやく硬い殻に守られた美味を愉しめるとでも言いたげにべろりと舌なめずりをして、近くで腰を抜かしていた豚人達を一口で捕食し始めるのであった。
「来やがった……なんか気を付ける事とかあるかっ?!」
「通常の暴竜なら尻尾が危険だ!!あとは言うまでも無く噛みつきと巨体の癖に敏捷性が高い!!」
「あの頭部……タイラントにしても大きいし牙が顔の表面にまで突き出してる!!魔竜化してるから未知の攻撃をしてきてもおかしくないよ!!気をつけよう!!」
顎から口の中に突き出した乱杭歯は一部が顎を貫通して顔にまで飛び出している、頭部は体と比してもかなりの大きさで、体色は黒に近い茶色のその姿はまさに魔竜という名にふさわしき禍々しさであった。
「餌にありつけて夢中になってるね、いまがチャンスだと思うよ?ちょっと一発大きいヤツをぶち込んでくるね♡」
そう宣言すると稲妻の様な速度で魔竜に向かって飛び出していく鱗華、止める間もない早業であった。
呆れつつも追従する三人、どのみち殺るか殺られるかならば、こちらから仕掛けた方が有利なのだ、こちらに注意を払っていない今こそが最大の好機であるのは間違いないのだから。
「はぁぁぁああああッイヤアアアァァァ!!!!」
「片眼貰ったああああああああ!!!!」
――ドボッ!!ずぐりっ!!
夢中になって豚人達を喰らっていた魔竜の右眼に向かい空を突き抜けていく鱗華、空中でうまく引き戻した槍の穂先が巨大な瞳の中心に突き刺さり柄の中ほどまで埋め込まれた。
「グゥギィアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
そのまま反動を利用して魔竜の顔を両足で蹴り飛ばし槍を引き抜きつつ着地する鱗華、片眼を抉られた魔竜が長大な尻尾で周囲の建物を薙ぎ払いながら暴れ出す。
「マジかよ……なんだ今の技……意味わかんねェ……」
「大丈夫だアルフェン、皆そう思ってる」
「暴れすぎて近づけんな……すこし落ち着くのを待つしかないか……」
何しろ30メートル級の巨体である、無作為に暴れまわられては動きを読む云々ではないのだ、何気ない尻尾の一撃が致命傷に成りえるのだから……。
遠まきに魔竜の様子をうかがう三人の元に大殊勲を上げた鱗華が戻ってくる、ニコニコとよい笑顔であった。
「右眼潰したから右側が死角になるよ、魔素で探知されるけど視覚よりは反応が遅れるから戦いやすくなるね!!流石に警戒されちゃうからもう片方潰すのに今の技は使えないけどね」
流石にぽんぽんと繰り出せる技ではない様だ、技を出す際の溜めも必要なので、あとはヒットアンドアウェイで安全に戦うのが良いだろうとの鱗華の意見であった。
「そろそろこっちに来るぞ、今までみたいに話す余裕は無さそうだ」
黒斗がそういうと、暴れ狂っていた魔竜がしっかりと鱗華とその仲間三人を残った瞳で睨みつけて怒りの咆哮を上げて襲い掛かってきた。
「ゴヴァアアアアアアアアア!!!!!」
重量級の戦車の優に三倍はあろう巨体が、軽自動車の様な急加速で突進を仕掛けてくる、運悪く進路上で蹲って震えていた豚人が踏みつぶされて潰れたカエルのように地面と同化していた。
それぞれ違う方向へ散らばる様に避けた四人はすれ違いざまに各々武器を振るっていくが魔竜の分厚い皮と鱗に阻まれて傷は与えられないようだ、唯一ボルボルの大剣だけが鱗を一枚削り取る事に成功しているのみであった。
「クッソかてぇ!!俺の滑刀が保たねぇな……バルガスの親父サンの武器が間に合ってりゃあなァ……」
すれ違いざまの斬撃を軽く弾かれて愚痴るアルフェン、気合を入れ直すと周囲の建物の壁を蹴りつけて利用し勢いそのままに柔らかそうな部位を狙って攻撃を仕掛けていく。
「アオオオオオオオーーーーーン!!!!」
遠吠えの様な叫びをあげながら目にも止まらぬ速さで縦横無尽に跳び廻り斬撃を重ね続ける、斬りつけた上から更に反対の滑刀で斬りつけて傷を深めるように、絶え間ない連続攻撃の嵐を魔竜に見舞う。
「デカすぎて柔らかそうな腹は狙えんな……脚は硬そうだが……いやここだ!!」
紙一重の回避で外では無く内側、両足の間をすり抜けざまに大きな爪の生え際、指と爪の間に差し込むように刀を突き立てて斬り抉る。
僅かな傷ではあるがかなりの痛みは与えたのだろう、怒りの咆哮を上げて踏み付けてくる足元から、素早く退避して距離を取る黒斗。
「むぅん!ぐぅ……浅いか……、邪魔な尻尾であるな……攻めるならばここか」
巨大な大剣、それですら魔竜の巨躯の前では小さな短剣のようにしか見えないが……その刃で脚を斬りつけるも鱗一枚剥ぎ取るのが精いっぱいのボルボル。
そのまま走り抜けざまに大剣を立てて構え、高い位置の尻尾の柔らかい腹側を斬りつけながら走り抜ける、柔らかい肉質の為か剣先が皮を切り裂いて、浅くではあるが強靭な筋肉を抉っていく。
一番活躍しているのはなんといっても鱗華であろう、いかに巨躯を誇る魔竜といえど脳は一つしかないのだ、他の者に注意を反らした瞬間に天高く跳躍し他の者では届かない高所を攻撃していく。
威力を一点に集中した刺突の威力は凄まじく、鱗や甲殻を的確に貫いて傷を与えていく、出血を強いる事で僅かずつでも体力を消耗させる作戦であろう。
歴戦の猛者たちの攻撃にさしもの魔竜と言えどじわじわと生命力を削られていくばかり、このまま凌遅刑の如くじわじわと嬲り殺されてしまうのであろうか?
「グルルルル……ガアアアアアアアアア!!!!!」
戦闘中にも関わらず突如動きを止めて天高く咆哮を発する魔竜タイラント。
全身の筋肉が膨張して、更に一回り大きさを増していく、そのまま巨大な頭部を仰け反らせて大きく息を吸い込む動作を始めたのをみて四人の戦士たちの生存本能が最大限の危険信号を鳴らす。
「なにかヤバい!!距離をとれっ!!!」
黒斗が叫ぶとほぼ同時に全力で距離をとる四人、その瞬間に耳をつんざく様な大音量の咆哮が炸裂して衝撃波が周囲を薙ぎ払った。
「ゴガア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!!」
魔竜が頭部を地面と水平に薙ぎ払いながら衝撃波と超音量のブレスを放つ、ブレスの直線状の建物や豚人達がバラバラに砕け散りながら消し飛ばされていく。
回避が間に合わないと悟ったボルボルは大剣を地面に突き立てて盾とし、その他のメンバーはギリギリで回避を成功させて魔竜の背後に回り込みつつ避ける。
「ぐおおおおおおおおおお!!」
全身を襲うすさまじい衝撃を持ち前の恵まれた体躯と古の大剣、硬き竜鱗の鎧で凌いでいくボルボル、全身に傷を負いながらも魔竜のブレスを耐えきっている。
「くそっ!!ボルボルが耐えてる今がチャンスだ、大技で動けない内にダメージを与えるぞっ!!」
「全身が下がってっからなァ!!チャンスだぜェ!!」
「あはぁ♡首狙えそう♡」
そう長時間は放射できないであろうブレス、回避さえしてしまえば攻撃の通りやすい部位も狙う事が可能なようだ。
のこり僅かであろう時間に己が持てる最大限の攻撃を重ねていく三人、腹部には刀による強力な刺突と二刀の滑刀による斬撃が、ブレスを放つために地面すれすれまで下がってきた首筋には一条の閃光のような槍の一撃がそれぞれ叩き込まれて血飛沫を撒き散らす。
それでもその巨躯に対しては致命傷にはほど遠く、内臓どころか皮下脂肪すら貫けているのかも怪しい有様であった……。
ブレスの放射も終わり魔竜は自分にたかるハエの如き煩わしい生き物たちを屠るべく、長大な尻尾を振り回しては薙ぎ払い、跳躍しては踏みつぶさんとその巨躯を暴れさせていく。
全身の筋肉を震わせた激昂状態では攻撃をあてるチャンスなどなく、ひたすら回避に専念するほかないのだ、万一当たってしまえばどんな攻撃であっても致命傷となるのは明白であったのだから。
「なんとも凄まじい息吹よ……このボルボル、いささか肝を冷やしたわ……」
「つーかもう、ブレス吐くとかドラゴンだろこれ……」
ボルボルの元に駆け寄った黒斗は無事を確かめるとボルボルの呟きに併せて一人ごちる、魔竜化した恐竜はただのトカゲの親玉では無いのだと……正に幻獣の王ドラゴンそのものであったのだ。
その後も回避に専念しつつ、痺れを切らした魔竜がブレスを放つ度に散会してそれぞれに攻撃を加えていく四人、ブレスを吐く軌道等は毎回違うのだが予備動作だけは同じであった為、避けるのはそこまで難しくはなかった。
砦に残っていた豚人達は絶対強者に対する原始の本能を呼び起こされて恐怖に震えるばかりであり、わずかに生き残っていた魔獣達によって喰われていきその数を減らしていく。
時折なにか勘違いをしたのか黒斗達に襲い掛かる魔獣もいたようだが一瞥すらされずに屠られるか、魔竜に対する盾替わりにされている有様であった。
執拗に潰れた右眼側から足先の爪や鱗の隙間を攻撃していく黒斗とアルフェン、同じように尻尾を斬り落とさんと狙い続けるボルボル、攻撃後や仲間たちへ注意が向かう瞬間を狙って跳躍し、様々な場所を貫いて出血を強いる鱗華。
勿論彼らも無傷ではない、ボルボルはブレスを避けきれずに何度か武器と防具で凌いでいる為に竜鱗の鎧は半壊してその全身に裂傷を負っていたし、アルフェンの武器は今にも折れて砕けてしまいそうな有様であった。
黒斗と鱗華の二人も直撃こそ受けてはいないものの飛び散る破片や小石、金属片などで全身に無数の傷を受けていた。
体力にも限界はある、魔竜の体力より先に四人の体力が尽きてしまうのは明白だったので、彼らはその前に魔竜の生命力を削りきらねばならないのだ。
「おらああああ!!!!ぶった斬る!!!」
「アオオオオオオオオオオーーン!!」
――ズシャ!!ズパッ!!……ザグゥ!!!
「グギャアアアアアアアア!!!!」
遂に黒斗とアルフェンのコンビの執念が実り、魔竜の一際大きな蹴爪が根元から斬り落とされる、余りの激痛と巨躯を支える蹴爪が捥ぎ取られた事で魔竜は苦痛の色濃い咆哮をあげて横倒しに倒れこんだ。
「美事なり!!私も負けてはいられぬ!!ぐおおおおおおお!!!」
――ぞぶりっ!!ぞぶぞぶっ……ガギイ゛ィン………ブヅリッ!!
「ゲギャアアアアアアア!!!」
魔竜が倒れ込んだことで腰を入れて溜めを作ることが出来たボルボルは、三割ほど切れ込みが入っていた尻尾の中ほどの傷口に狙いすました大剣の一撃を叩き込む。
骨に弾かれかけた大剣の刃に、ガントレットによる渾身の振り下ろしの打撃を叩き込んで尾骨を粉砕して尻尾を切断したボルボル。
自慢の尻尾を半ば程で断ち斬られた魔竜は悲痛な咆哮と共に全身を痙攣させてのたうち回る。
「皆すっごいねぇ!!この状態なら溜めなくても狙えるね、左眼も貰っちゃおう♡」
――ずぶり……ぐじゃ……ばぢゅ!!
地面に頭部を付けてのた打ち回っていた魔竜の左眼に鱗華の稲妻の様な突きが抉り込まれる、両眼を潰されて視界を闇に閉ざされた魔竜は、それでもなお魔素によって書き換えられた本能に従い、魔素を持つ生物を捕食せんと足掻き続ける。
魔竜が急速に息を吸い込み始めてその喉を大きく膨らませていく、口では無く、鼻腔を大きく拡げて鼻から周囲の空気を凄まじい勢いで吸い込んでいる。
咄嗟に退避しようとした鱗華であったが鼻腔からの強烈な吸い込みに煽られてバランスを崩してしまい、魔竜の眼前で倒れ込んでしまった。
「リンカっ!!危ない!!」
刹那のミスが命取りとなるこの状況で、余りにも大きな隙を晒してしまった鱗華を見た黒斗は、ハガネ断ちすら投げ捨てて鱗華と魔竜の間に飛び込んでいく。
鱗華の体を横抱きにしてそのまま走り抜ける様に魔竜の眼前から退避する黒斗、直線状でなければブレスは怖くないのだ、顔の真横であれば安全だと思った黒斗は魔竜に背を向けたまま鱗華を下ろして立たせようとした。
――ごぐん゛っ!!バスッ…バスバスッ……
「あぐっ!!……がぁ……ごぶっ……」
顎門を閉じたまま口腔内で衝撃波を炸裂させた魔竜、その破壊的な圧力によって元々顎から飛び出していた乱杭歯が四方八方に射出される、鱗華を庇うように立っていた黒斗の背中に突き刺さった長大な牙は、その逞しく分厚い胸板を突き破り、愛しい男を見上げる鱗華の眼にもくっきりと映し出されていた。
一拍遅れて大量の鮮血を口から噴き出す黒斗、座りこんでいた鱗華の顔や上半身が生暖かい血でまだらに染め上げられていく。
「くろと……?……えっ?……あっあっあっああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」
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tips
竜種
大樹海の深部に生息する生物群。
他の動物とは一線を画する巨体と戦闘力を誇る大樹海の支配者たち。
人類の開拓を阻む最も大きな要因でもある。
小型の爪竜種ですら人種の数倍の体躯を誇り、その爪の一撃は鋼鉄の鎧を紙のように切り裂く。
暴食と暴力の化身、暴竜タイラント。
盾のような襟飾りと何者をも貫く角を備えた、騎士竜トライホーン。
成体になると30メートルを越す四足の超大型竜、王竜ブラキオス。
どれも数える程しか討伐例が無い正真正銘の化け物達である。
高濃度の魔素に侵食されることで起こる魔獣化(竜種の場合は魔竜化)であるがその巨体に応じた魔素が必要な為、竜種が変成する事は稀。