※この作品はR-18です。

ファム・ファタール~寝取らせモノが大好きな剣士が異世界転移した場合~   作:幻闇

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19話 逆鱗

「クロトォォォォ!!!いやああああああ!!!!!!」

 

愛しい男の逞しい胸板を貫通する長大な牙、口から溢れ出す鮮血。

自らの油断の果てにそんな光景を見てしまう事になった鱗華。

 

目の前の現実を受け入れる事が出来ずに悲痛な叫びを上げる事しか出来ない彼女の前で、魔竜がのっそりと体を起こしていく。

両眼を潰されたとはいえ魔竜である、魔素を認識することにより周囲の状況は把握されているのだ。

 

「ゴアアアアアアアアア!!!!」

完全に立ち上がり、天高く咆哮を上げる魔竜タイラント。

 

「呆けてんじゃねええええェ!!」

走り込んできたアルフェンが鱗華と黒斗の体を抱え込みそのまま距離を取る、引き付ける為にボルボルは満身創痍で魔竜と一騎打ちを行う。

二人が復帰してくるまでの時間を稼ぐのだと、悲壮な覚悟をもって臨んでいるのだ。

 

ある程度魔竜から離れた場所に二人を下ろしたアルフェン、まずは黒斗の傷を確認していく。

幸い致命傷は免れていたのか微かに息は有る、心臓は無事だ、肺は片方貫通してしまったが手持ちの高級傷薬で時間を掛ければ治癒が可能だろうと判断したアルフェン。

 

黒斗の状態を麟華に伝えようと、血塗れの鱗華を見上げた瞬間……――ゾクリ……全身の体毛が総毛立つ、凄まじい程の冷気……いや殺気が……渦巻いていた。

 

凛とした勝ち気な顔、朗らかな笑顔や色事の際の蕩けた顔、苦痛に喘ぐ顔をみてきたが今の鱗華の表情はそのどれでもなかった。

 

能面の如く無表情であるのに、その瞳だけが果てしなく昏く深い闇を宿している。

魂を焼き焦がす程の憤怒と憎悪、己の半身も同然の愛しい男を失う恐怖と絶望に表情を無にした鱗華はぶつぶつと何やら呟きながら、走るわけでもなく自然な歩みで魔竜に向かっていく。

 

「……ユルサナ………………殺……て…………死ぬ」

 

「リンカ!!クロトは生きてるぞッ!!――だめだ聞いちゃいねェ……チィッ!!クロトの治療をしねぇと……」

 

肺を貫かれた事により喀血はしたが太い血管や心臓はうまく避けて貫通した様だ、牙を引き抜いても大出血の心配は無いだろうと診たアルフェンは素早く牙を引き抜いて傷薬で処置を行う。

 

薬を染み込ませた包帯を綺麗に巻いていき静かに横に寝かせて黒斗の状態が落ち着いたのを確認してほっと安堵の息を吐く。

 

「あいつらどうなった?」

アルフェンが戦場の方に目を向けると魔竜と戦うボルボルの姿が見える、では鱗華は……?

 

――――居た、アルフェンが視線を上方に向けると空中高く舞い上がった鱗華の姿が見える、30メートルは優に飛んでいるだろう、もはや跳躍というレベルでは無い。

 

ボルボルに気を取られて鱗華の存在に気付いていない魔竜の頭部、その直上からまっすぐ槍を立てて彗星のように落ちてくる。――憤怒を滾らせた狂える龍神の化身が……。

 

――ズガア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ン!!!!!!!

轟音と共に魔竜の頭部が地面に叩き付けられて土煙が巻き上がる、龍の怒りの一撃を頭部前面に受けた魔竜は上顎を完全に砕かれてその頭部を地面に縫い付けられていた。

 

「なっ!!なんだ?!……魔竜がいきなり……奥方殿……?」

 

突然、目の前が爆発したかのような衝撃と粉塵に巻き込まれたボルボルは土煙が治まる中で縫い付けられた魔竜の頭部に立つ鱗華の姿を見つける。

 

「なんという凄まじい威力か…………そうだっ!黒斗殿は無事だったのですか?!奥方殿!!」

 

黒斗の名前を聞いた途端にピクリと肩を震わせた鱗華は、返事もせずに全身をぶるぶると怒りに震わせると、躊躇いなくその華奢な両腕を抉られた魔竜の両の眼に突き入れた。

 

「ボクの……ボクのクロトに何してくれてるのかな?……トカゲ如きが……――爆(は)ぜろ」

――ヴォフンッ……バヂャア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!

 

突き穿たれた両眼の内部、そこで両手から同時に火の魔法《焔》を発動した鱗華、頭蓋内部で爆裂した炎は鱗華の両腕と共に魔竜の脳を焼き尽くす。

 

縫い留められた顎の隙間や眼球から、灼かれた脳組織や水晶体が噴出し、断末魔の咆哮すら上げる事も許されないまま、龍神の逆鱗に触れた魔竜はその命を焼滅させられたのであった。

 

「クロト…………うぁぁあああ゛あ゛あ゛あ゛!!…………――ボク……もう生きてても……」

 

そのまま立ち上がる事も出来ずに魔竜の頭の上で泣き崩れ、慟哭する鱗華。

魂を焼き焦がすような憤怒を解き放ち、憎き魔竜を灼き滅ぼした鱗華であったが、後に残ったものは限りない喪失感と果てしない絶望であった。

 

お互いに支え合う比翼の鳥の如き二人は一人だけではもはや生きていく気力すら失くしてしまう程に深い絆で結ばれていたのだから。

 

「なんとも苛烈な……そうだ黒斗殿は!!??」

「ボルボル!!リンカッ!!黒斗は大丈夫だッ!!死んじゃあいねェ!!!ギリギリで生きてるぞッ!!」

 

大声で叫ぶアルフェンの声にハッと我に返った鱗華が黒斗の元へ走り寄る、ボルボルはそれを見届けて念のためにと魔竜の死骸を確認しているようだ。

 

「クロトっ!!生きてるのっ??!!クロトおおおっ!!」

 

両腕の肘から先が炭化してボロボロと崩れていくがそんな事はどうでもよいとばかりに崩れゆく腕で黒斗にしがみついて呼びかける鱗華。

 

「…………ああ……なんとかな……無茶しすぎだろリンカ……腕が……」

 

「腕なんてまた生えてくるよ……良かった……クロトが死んじゃったらボクも死ぬからね……」

 

「ハハッ……こりゃあ死ぬまで……死ねねぇなぁ……流石にキツイ……休ませてくれ……」

 

気絶する様に意識を落とした黒斗の心音を慌てて確かめて、ほっと安堵の溜息をついた鱗華。

そんな彼女の腕に応急処置を施すアルフェンと魔竜が完全に死んだ事を確認したボルボルが話し合い始める。

 

「豚人共はほぼ全滅したようだ、いくつか森に逃げ込んだが魔獣の餌になるであろうな」

 

「まさかタイラントとはなぁ……終わってみりゃギリギリだったぜ……」

 

「妻と女達を避難所から出してくる、後詰の兵や冒険者も間もなく来るだろうからな」

 

「こんだけ騒いでりゃ様子は見に来るだろうしな、黒斗を運ぶ担架も有るだろ」

 

その後、ギルドが万一の為に編成していた部隊が砦に到着し魔竜の死骸に皆、驚愕に目を見開く。

ここまで派遣される程の実力者達である為、すぐに我に返って任務に戻るが、皆の四人に対する視線に強い憧憬と尊敬が宿ったのは言うまでもないだろう。

 

黒斗は担架に乗せられ、鱗華と共に一足先に治療院に向かう為にセーヌの街に戻っていく。

砦には魔竜の査定や解体を行う為の人材と護衛部隊が残り、他の人員はアルフェンやボルボル、女達と共にセーヌの街へ向かう。

故郷に帰るにしろ街で暮らすにしろ一度はギルドへ向かわなければならないからだ。

 

「まずはギルドで報告だなァ、したら見舞に行くとすっかァ」

 

「私は色々と手続きも必要そうだからな、終わり次第、妻と治療院に行こう」

 

古代遺跡を抜けて樹海浅部に出て、樹海浅部を抜けてセーヌの街へ向かう。

囚われていた女達の足に合わせてゆっくりと移動するので半日ほどかかってしまうが安全が最優先である、女達の周囲をボルボルやアルフェン、国軍の兵士たちが囲むように護りながら鉄壁の布陣で街まで無事に女達は送り届けられた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「――――…………知らない天井……と知っている女神だ……」

 

治療院の入院患者用の個室で黒斗が目を覚ます。

ベッドに横になった己の腹の上で、涙の痕を頬に残したまま眠る愛しい妻を眺めながら、テンプレ通りの台詞を呟いてその頭を優しく撫でるのであった。

 

「…………――ぁ……クロトっ!!…………良かった……うっうう……ぐろ゛どお゛ぉぉ……」

 

直ぐに飛び起きた鱗華が穏やかな笑顔を浮かべる黒斗の姿を見て、嬉しさの余り涙を溢れさせて縋り付き嗚咽を漏らしながら愛しい男の名を呼び続ける。

鱗華が落ち着くまでその背中をさすってやりながらもう二度と妻を心配させまいと、もっと強くならなければと決意した黒斗であった。

 

あの後五日間程昏睡状態になっていた黒斗であるが、その間片時も傍から鱗華が離れる事は無かった、ボルボルやアルフェンが毎日訪れて食事や下着類などを用意してくれていたのだ。

黒斗が眠っている間の出来事を嬉しそうに語る鱗華、その話を簡単に要約するとこうなる。

 

深部に発生した高濃度の魔素溜りによって大量の大型魔獣が出現、遂には暴竜タイラントまでもが魔竜化し、比較的近い場所にあった西の砦が襲われたのではないか。

という推測がギルドから鱗華達に説明された。

 

ボルボルとリリアーヌは黒斗達の家の近くに土地と家を貰いそこで暮らす事になった、当面の間はゆっくりと暮らして仕事もおいおい探すつもりらしい。

ギルドと付き合いの有る口の堅い医者がボルボルの牙を綺麗に抜いて、リリアーヌが大事に保管しているとの事である。

 

アルフェンは風来坊が性に合っているがこの街には黒斗達やボルボルもいるとの事で別荘扱いで一軒、こちらもギルドから家を貰ったようだ。

アルフェンがいない間はギルドの職員がハウスキーパーとして管理をしてくれるので安心して放っておけると気楽な当人であった。

 

「成程なぁ……武具とかも貰えるって話だったよな?アルフェンはそっちを選ぶと思ったんだが」

 

「魔竜素材でバルガスさんが凄い武具を作ってくれるんだって、ギルドの保有する武具よりも絶対いいモノが出来るから家を貰ったって、アルフェン言ってたよ」

 

「成程、それなら納得だ。俺達もあの家に愛着があるし、そのまま貰っちまうか?」

 

「うんうん、そうしよう。ボルボルとリリアーヌさんも近くに住むし、この街はいい街だしね」

 

魔竜化した暴竜タイラントを討伐した際に受けた被害は甚大だった。

黒斗は鋭利な牙で胸を貫かれ瀕死の重傷を負い、鱗華は魔竜にトドメを刺した代償に両腕の肘から先を失った、既に半分程再生していたりするのであるが……。

武具に関してもアルフェンの二振りの滑刀は砕ける寸前であったし、鱗華の槍も怒りに任せた一撃で魔竜の顎を砕き貫いた際に穂先も共に砕け散っていたのだ。

 

武具に関してはまるまる素材を受け取れる魔竜素材を用いて、バルガスが腕を振るう事を約束してくれたし、金銭に関しても余った魔竜素材を売る事で大金が手に入るので特に必要は無かった。

消去法の結果でもあるが家と土地を報酬で貰う事に特に異論はなかったので、愛着のある借家をそのまま貰う事にしたようだ。

 

「そうだクロト、ボク達とアルフェンの三人は金級に昇格みたいだよ!!すごいよね!!実質冒険者のトップになっちゃったよ、クロトが治って動ける様になったら手続きをするってさ」

 

「マジかっ!!…………魔竜討伐が深部探索可能な事を示す実績って事か?死にかけてやっと倒したようなモンだけど大丈夫なのか?」

 

「ううん、魔竜化してなくても大型竜種を討伐できる実力が有ればいいんだよ、あのタイラントが魔竜化してなかったら無傷で倒せたと思うよ?あの四人だったらね」

 

「そういう事かぁ……確かにブレスやあの牙を飛ばすヤツがなければ普通に倒せてたかもな……大きさも半分だろうし」

 

一国の王ですらその行動を縛る事は許されない、人類国家群が有する切り札、大樹海を開拓する為の最大戦力にして旗頭。

それが金級の冒険者であった、ちなみに白金級は殉職した金級冒険者や引退して後身の育成に多大な貢献をした金級冒険者が名誉等級として受ける場合が殆どであるので、金級が実質的な最高等級といっても過言ではないのである。

ちなみにボルボルは冒険者ではないし、その複雑な立場の為、公的にはボルボルを抜かした三人で魔竜討伐を行ったという建前になっていた。

 

「鉄級から銀を飛ばしていきなり金かよ……ありなのか?」

 

「一応、今回の任務達成で銀にはなる予定だったらしいよ、それに付け加えて魔竜討伐で金って事だから飛ばしてはいないんだよね」

 

「そういう事か……ところで鱗華……五日ぶりに起きたにしては俺のマイサンが荒ぶっていないんだが……なにか心当たりは?」

 

「ボクがちょくちょく栄養補給してたからね!!一日八回くらい?」

 

「だからそんなにテカテカしてるんだな……もう手首まで再生してるし……まぁ仕方ないか」

 

自分が昏睡してる間に精気を絞り尽くされていたらしい、そのせいで五日も寝込んでいたのでは?と内心で思いつつも鱗華だから仕方ないと諦めの境地に立つ黒斗であった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

黒斗が目を覚ましてからおよそ二週間後、ほぼ完治といってよい程に回復し退院した黒斗の快気祝いと三人の金級昇格を祝って、荒神家にて身内のみのささやかな祝いの席が設けられていた。

 

参加者はホストである黒斗と鱗華の二人に、アルフェン、ボルボルとリリアーヌにバルガスとユニーの鍛冶屋夫妻である。

料理の出来ない鱗華を抜いた女性陣二名による心尽くしの料理が並び、ありとあらゆる種類の銘酒や美酒が用意されたテーブルは正に宴席と呼ぶに相応しいものであった。

 

「今日は俺の回復祝いと俺達の昇格祝いで集まってくれてありがとう!!思う存分楽しんでほしい、後片付けは明日みんなでやるから今日は奥さん達も存分に楽しんでくれ、乾杯!!」

 

皆が席に着いたのを確認した黒斗が感謝と乾杯の挨拶を行うと、皆それぞれにグラスを合わせて乾杯を行い、食事と酒に舌鼓を打ちながら楽しんでいる。

 

「やっぱり俺の眼に狂いはなかったなぁ……四か月前に石級だったクロトがいまや金級だぜ。あの刀を託せて本当に良かったぜ」

 

「バルガスさんの武器が無けりゃ無理だったよ、魔竜にだって通用したんだからな」

しみじみとこぼすバルガスに黒斗が相槌を打ちながらその腕を称える。

 

「バルガスさんに作って貰った槍、壊しちゃったよ……ごめんなさい……」

 

黒斗を殺されたと思い込み、激情の余り全力で硬い顎骨を砕く、その衝撃で壊してしまった槍を思い出して力無く謝る鱗華、そんな鱗華に満面の笑顔でバルガスは言葉を返す。

 

「俺の作った槍で魔竜の頭を貫くなんてよぉ、鍛冶屋冥利に尽きるってもんだぜ!!最後に見せて驚かせてやろうとおもったんだが……まぁでけぇ箱だから察しはついてただろ。開けてみな」

 

バルガスが家に持ってきて運び込んでいた箱を開封する黒斗達、中から槍や刀、双滑刀といった武器が三つの箱からそれぞれ出てくる。

 

「こりゃあ……奴の爪か?すげぇ磨き込まれてるが……」

「刃が黒く輝いてるな……ハガネ断ちを預けてくれっていうから元はハガネ断ちなんだろうけど」

「凄く禍々しい感じがカッコイイね!!ボクの槍も凄いや」

 

それぞれ、己の為に作られたのであろう武器を手に取って目を輝かせながら吟味していく。

 

「アルフェンのは頼まれてた奴をまだ作ってなかったからな、魔竜の爪を研磨して特殊な薬品で硬化させたモンだ、今まで使ってた奴よりも遥かに丈夫で切れ味も高いはずだ」

 

「マジかよ……こいつぁ惚れ惚れするぜぇ、暴竜双爪とでも呼ぶかァ」

細かい装飾の施された白銀の小手から伸びる研ぎ澄まされた黒爪を眺めながらにやにやと笑みを浮かべるアルフェン。

 

「クロトのやつはハガネ断ちを魔竜の純血で焼き入れをして打ち直したもんだ、使い勝手は変わらんが切れ味と頑丈さは跳ね上がってるぜ」

 

「黒い刀身とかカッコ良すぎだろ……黒刀ハガネ断ち改って所だな」

漆黒に輝く刀身に鍔と柄も魔竜素材で作り直されたハガネ断ちを手に取ってこちらも笑みを抑えきれない黒斗。

 

「リンカの嬢ちゃんのは魔竜の牙をアルフェンのと同じように加工したモンだ、思う所はあるだろうがいい素材だからな」

 

「別に気にしてないけどねぇ……ていうかなんで皆名前つけてるの……」

七支刀の様にギザギザとした小さな刃が側面から伸びる禍々しい形状の穂先を持った槍をツンツンとつつきながら疑問を口にする鱗華。

 

「ロマンだろ」「ロマンだなァ」

同時に答える黒斗とアルフェンに、うんうんと頷くバルガスとボルボル、どうやら男達にはなにか通じるものがあったようだ。

 

「リンカのは魔竜牙槍ってとこだな、防具もあるんだっけ?」

 

「流石に大きいからな防具は今度取りに来てくれや、いままで使ってたモンと同じ形で魔竜の皮と鱗を使って四人分作ってあるぜぇ。がはははは」

 

呵々大笑しながら自慢気に告げるバルガスの言葉に盛り上がる四人の戦士達、やはり新たな武具という物は戦士にとっては心が躍る者なのだろう。

作成代金もそれなりに掛かったようだが、余った素材の買取金額が予想ではあるが大金貨100枚は下らないという話であったので気にするものは誰も居ないのであった。

 

宴もたけなわになり、酔いも回ってくると素面では言えぬような言葉も出てくる、今は男達と女達でそれぞれ盛り上がっているようである。

 

「皆はいいよなァ……綺麗な嫁さんがいてよォ……良く考えたら俺だけ一人モンじゃねーかァ」

 

「アルフェン殿であれば必ず良き伴侶を見つけられよう、焦る事はないのである」

「家も貰ったわけだし、良い相手を見つけたらこの街で落ち着くのもいいんじゃないか?」

「まぁ金級ともなれば言い寄る女は多そうだが、うちのユニー位にイイ女は中々いねぇからなぁ」

 

愚痴をこぼすアルフェンをそれぞれ慰めていく男達、一部嫁自慢を行う者もいるようであるが……。

そこからは夫たちによる嫁自慢大会が始まってしまい不貞腐れたアルフェンは一人酒杯を干し続けるのであった。

 

「ねぇねぇ、ユニーさん。今ってどんなヤツ使われてるの?夜の魔道具♡」

ちょくちょく二人で買い物にいったりもする仲でもある鱗華とユニー、お互いの性癖はある程度知っているようだ。

 

「ふふっ、今はねぇ……大きさは前のとあまり変わらないけど先端に二つ棒がついててね♡卵管まで犯されちゃうのよ♡」

「ええっ!?凄そう♡ボクも早く使いたいなぁ♡」

 

「なんとも凄まじい会話なんじゃが…………しかし妾(わらわ)もお二人の様に多少拡がる様にした方がボルボルの大きさには合うのかのぅ」

マゾ嗜好の強い鱗華とユニーの会話に若干引きつつも自らの秘所がやや柔軟性に欠ける事を気にしているリリアーヌがそう零す。

 

「時間かけて最後はちゃんと入るんでしょ?だったら気にしなくてもいいと思うよ、ボルボルさんも今のままの方が好きかもしれないしね♡」

 

「そうですね、私たちは痛いのも拡がるのも好きですけどリリア―ヌさんは違うのでしょ?ならば無理はしない方がよろしいですね」

 

「確かにボルボルの好みをはっきり聞いた事はなかったのう……今度それとなく聞いてみるかの、お二方とも、良い助言を頂いた、感謝するのじゃ」

 

ありのままで良いのだと、夫婦それぞれ様々な愛の形があるのだから自分達にとって最も良いと感じる形を育んでいけばよいと助言する二人にリリアーヌは成程と納得して、今度はそれぞれの事情をより詳しく聞きたいと気品のある顔を赤らめさせながら赤裸々な会話を楽しむ。

 

十代の殆どを苗床として過ごしてきた彼女にとって女友達と下世話な話をする機会など無かったのだ、それを取り戻すかのように女同士で盛り上がりながら自分達夫婦を助けてくれた鱗華達に改めて感謝するリリアーヌであった。

 

皆それぞれ出会いに感謝しながら料理と酒を楽しむ。

己の作った武器が最高峰の冒険者に使われる事になった鍛冶屋。

自分と母、気にかけていた女達も纏めて完璧な形で救われた元将軍。

生涯の友となるであろう男と出会えた風来坊の一匹狼。

失っていた半身と出会えたといっても過言ではない程、深い絆で結ばれた剣士の男と龍人族の女。

 

冒険者は過酷な生業だ、明日の保証も無く実力が無ければ安定して稼ぐことも出来ない。

かといって実力があればより危険な仕事も多くなる、今回の彼らの様に魔竜と戦う様なケースは稀だが、無いわけでは無いのだ。

しかしそれでも彼らは冒険し続けるのだろう。

 

冒険によって得られた得難い友たちと過ごす、この楽しい時間が……古代遺跡の貴重な遺産やどんな財宝よりも遥かに素晴らしい報酬なのだから…………。




夕方に二章最終話を投稿します。
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