ファム・ファタール~寝取らせモノが大好きな剣士が異世界転移した場合~ 作:幻闇
辺境伯領へと入る関所を越えた二人、その日は野外で夜まで励んでいたようだ。
渓流でそのまま魔導テントを出した二人は朝までぐっすりと眠りにつく、関所から出た伝令の存在を知らぬまま……。
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「ふぁー、寝た寝た、流石に昨日は頑張り過ぎたな……筋肉痛がまだ残ってるぜ……」
「ボクはもう回復したけどね♡ 大声でイクのは気持ち良かったよ!! 次は山の上でやろうよ♡」
「回復力が羨ましい……山頂セックスは気持ちよさそうだな、高山トレーニングにもなるぞ、セックスで肉体も鍛えられるとか最高だな」
「呼吸器系が鍛えられるね! 筋肉ばかりじゃなくて色んなところを鍛えないとだし、丁度いいね」
メシと酒、セックスと筋肉、基本的に二人の会話はこの辺りの話題が多いのである、なんとも分かり易い夫婦であった。
起き抜けの1ラウンドを軽く済ませた二人はシャワーと朝食を摂ってテントの外に出た。
爽やかな秋の風が吹き抜ける渓流、陽光をきらりと反射する小川のせせらぎが心地よい音色となって二人の耳朶を打つ。
どのような国であろうとも自然の美しさは変わらない、雄大な森羅万象の前では人の営みも蟻の営みもなんら違いはないのだ、そんな思いを抱きながら旅を再開する黒斗と鱗華であった。
「一旦領都にいくんだよね? 魔結晶とかも買い足さないとだし」
「暫らくマトモなメシを食ってないからなぁ……解体して新鮮な肉とモツも悪くないが、毎日続くとな」
「片付けもしないとだしねー……上げ膳下げ膳してくれる、お店で食べたいよね」
街道に戻り領都へと向かって疾走する二人、いつもの如く当人達にとっては軽く流す程度であるが、その時速は
行きかう行商人や冒険者達が呆然と見送る中、二人はその日の夕刻には領都の街門に辿り着いていた。関所から領都までのおよそ300㎞を半日で踏破していたのである。
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魔道具店で魔結晶を買い込み、幾つかの消耗品や避妊薬、傷薬の類を補充した二人は久しぶりのまともな料理と酒を愉しむべく飲食街に足を延ばしていた。
「どこが当たりかねぇ……前情報無しで探すのも乙なモンだが、リンカは何系がいい?」
「うーん、たまには魚も食べたいけど、この辺りは海も遠いしね……ナマで食べたいんだよねぇ……肉も魚もチンポもナマが一番だよね」
「さり気なく淫語をまぜるのやめてもらえます? ……ムラムラしちまうだろ……」
「公衆トイレいく?」
「…………最初の頃の恥じらいは……何処に……――行くか」
出会った頃も積極的だったとはいえ多少の恥じらいは有った鱗華であったが、今では立派な肉便器妻である。気配を消してサッと公衆トイレの個室に入った二人。
「アルフェンみたいにこうしたかったんでしょ? ふふ♡ 声出ちゃうから口を手で押さえつけて、後ろから犯してぇ……無理矢理されてるみたいで興奮するの♡♡」
「仰せのままに……ってね、サクッと済ませるぜ、只の性処理だからな」
「うんうん♡ ボクを使ってぇ……――むぐッ…………ンー!! ……んっ♡……ンクぅ…………ンーッッッ!!……んぅ♡♡♡……ンッ!ンくっ♡♡♡♡」
恐らく元々そのつもりだったのであろう、アルフェンとの友達デートの時にも使われていた布地の割れたパンティを穿いていた鱗華。
後ろから回した右手で妻の口許を押さえつけた黒斗は左手でしっかりと華奢な腰を掴んで固定し後ろから秘所を貫く、右手で押さえた口許からくぐもった嬌声が漏れ聞こえると、まるでリンカを強姦しているかの様に感じ、より興奮が高まっていく。
「くうっ……ホントにレイプして犯してるみたいで興奮するな……今度レイプごっこも試してみるか…………きっと燃えるぞ」
「ンッ!!…………ンウウッ!! ……ンッ! ンッ! ンッー! ンッーーー!!!!!!!! 」
夫の言葉にノリの良い妻が期待に応える、頭をいやいやをするように振って抵抗する様にして、押さえつけられた口許から悲鳴の様な呻きを漏らす鱗華、その如何にも被害者然とした姿に、激しく興奮した黒斗は高まる射精感のままに逸物から精を放ち妻の子宮に注ぎ込んでいく。
「ンッッッッ!! んぐっ……んうう………………――ぷはっ……嫌ぁ……妊娠しちゃうよぉ……うっうっ……ボク……レイプされちゃった……ぐすっ……――って感じかな? それっぽかった?」
「イイねぇ……演技と解っていてもソソるぜ……また今度頼む、リンカは女優としてもやっていけるな!! ……いや待てよ……顔を隠してエロ専門の
「凄く面白そうだけど、とりあえず出ようよ……落ち着かないし」
まさかの鱗華
トイレから出た二人はとりあえず飲食街を端まで歩いて店を吟味しようという考えに落ち着いた様だ。AB女優計画は旅行が終わってセーヌに帰ったら、色々考えてみるという事になった。
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「うーんだいぶ端まできたけどどうだ? 良さそうな店は有ったか?」
「分かんないねぇ…………――あっ! あそこの店はどうかな? スイングドアの店なんて大当たりか大外れしかないよね、ここはギャンブルと行こうよ」
「時の運も大事だからな、行ってみるか」
飲食店街の通りの端、そこに在ったスイングドアの酒場、さて吉と出るか凶と出るか……二人はスイングドアの前に立って、店内に入ろうとしたその時。
――サッ、シュッ……ドゴバギィィィ……ずざざざあああ……
何かを察知した二人はそれぞれ左右に分かれて扉の横に立つ、その瞬間、凄まじい勢いでスイングドアを破壊しながら外に飛び出してきた大きな物体。
その物体、よく見れば人間のようであった、というか狼人族であった。
純白の体毛は所々血や土に塗れ汚れており、大分酔っているのだろう、瞳は焦点が合わずにとろりとして、ドアをぶち破って飛び出してきたというのに何の反応も示さず、抱えた酒瓶の口をちびちびと倒れたまま舐めている。
「アルフェンっ!!! どうしたんだ?! ってアルコール臭が凄いな、呑みすぎだぞ……」
酔っ払いはアルフェンであった、鱗華と黒斗が事情を聴こうと立たせていた時、酒場の壊れた扉から三人の男達が出てくる。
「なんでぇ……仲間かよ、そいつが酒呑んでるとグチグチしてうぜぇし、めそめそ泣き出して鬱陶しいんだよ!! てめぇら仲間なら責任取ってどっか連れていきなぁ! 」
こちらの男達も酔っている様だ、アルフェンを叩き出した犯人と見て間違いないだろう、目配せし合った黒斗と鱗華は殺気を抑えて彼らに話しかける。
「うちのヤツが迷惑をかけたようだが……どう呑もうと自由だろう、叩き出すのはやり過ぎじゃないか? それとも亜人だからか?」
「あったりめぇだろうが!! 亜人風情がよぉ……人種族様の気分を害したらダメなんだぜぇ……いい女連れてるじゃねーか、亜人の癖にいいカラダしてやがる、その女よこしたら許してやるよ!!!」
――ビキッ
黒斗の全身から鬼気が男達に向けて放たれる、一瞬にして全身を硬直させ立ったまま失神する男達、周囲に満ち始めたアンモニア臭……失禁もしているのだろう、棒立ちの無礼な男を鱗華が片手で軽々と掴み上げ、近くのゴミ捨て場にぶん投げる。
残り二人の仲間も容赦なく投げ込み、目障りな男達を片付ける、ケンカを売る相手を完全に間違えた三人であった。
ゴミ捨て場に頭から突き刺さって痙攣している男達を尻目にアルフェンに肩を貸して店内に入っていく二人、ややざわついていたが不機嫌な空気を隠そうともしない二人に絡んでくるものなどいない、奥まったボックス席にアルフェンを押し込んで席に座る黒斗と鱗華は、びくびくした顔つきで注文を取りに来た給仕に適当に注文をしてアルフェンに話しかけた。
「アルフェン、らしくないぞ? ここまで泥酔するなんて……俺が解るか?」
「…………あん? ……あー……くろとがぁ……みえるなぁ……あれぇ……ここはどこだぁ? ……なんら……ゆめか……むにゃ………………――――」
「ダメそうだな……寝ちまった……まぁ暫らく寝かしといてやろう、俺らが食い終わる頃には起きるだろ」
「珍しいね……アルフェンが一人酒でここまで酔うのは、何かあったのかな……もしかしてリルちゃんに振られたかな……」
「あー……――でもこの国にはいないだろ、亜人なんだろ? リルって娘は」
「魔人族っていってたからね、確かにいなさそうだねぇ……まぁ起きたら聞いてみようよ」
テーブルにつっぷして鼾をかきはじめたアルフェン、隣に座っていた鱗華がその背中にマントを掛けてやり、久しぶりに逢った友の寝顔を見て優しく微笑むのだった。
「おぅ……あの話を聞いた後だとアレだな……アルフェンに優しくするリンカをみてると興奮と嫉妬がないまぜになった感情が去来するな」
「ピトってくっ付いてほっぺにチューもしちゃおう、チュッ♡ にひひ……」
「はぅあっ! なんか凄くドキドキしてきたぞ……胸が苦しいのに心地よい……良い気分だ」
二人がイチャイチャ? を楽しんでいると注文した料理や酒が並び始める、セーヌの街の本格的なテキサススタイルの店には及ばないものの十分なボリュームの料理に満足しながら舌鼓をうつ黒斗と鱗華。
久し振りの料理らしい料理に健啖ぶりを如何なく発揮して次々に料理を片付ける二人、勿論頼んだ酒もボトルごと飲み干していく。
「でもちょっと心配だなぁ……呑みすぎもそうだけどお風呂も入ってないみたいだね、血もこれ、返り血じゃなくて自分のみたいだよ」
「アルフェンを傷付けられるヤツがそうそういるとも思えんが……確かに洗ってない犬の匂いがするな、俺は嫌いじゃないが」
「ボクも好き、アルフェンのは特に好きだよ♡ 雄の匂いって感じで……どうしよう……ムラムラしてきちゃうよ……さすがにこの状態のアルフェンはほっとけないし、我慢我慢」
「リンカが我慢するなんて……成長したな……偉いぞ……」
「どういう意味かな? かな? また管理して強制的に我慢させようか?」
「許してクレメンス…………――おっ? 起きたみたいだぞ」
笑うという行為は本来攻撃的なモノであり、獣が牙を剥く云々……という話を脳裏に過らせながら妻の恐ろしい笑顔に反射的に謝ってしまった黒斗、ふとその隣に座る友人が体を震わせて目を覚ました事に気付く。
「起きたかアルフェン、酔いは抜けたか? 久し……――」
目を覚ましたらしきアルフェンに声を掛ける黒斗であったが返事もせずにテーブルに突っ伏したまま肩を震わせ続ける友の姿に、途中で言葉を切って心配そうにその姿を見守る。
「泣いてるのか? 一体何が有ったんだ? 聞かせてくれないか?」
「そうだよアルフェン、リルちゃんに振られでもしたの?」
鱗華の口から出たリルという名前を聞いた瞬間にビクリと大きく体を震わせて動きを止めるアルフェン。
押し殺した様な、かすかな嗚咽を漏らすと涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を上げて二人を見つめ呟いた。
「ぐろどぉ……りんがぁ……オレは……お゛れわ゛ぁ……おおばか野郎だァ……わら゛っでぐれ…………どうしよ゛うもね゛ェ……救いようがね゛ェ……ま゛ぬげだ……」
涙声で自分を罵り続ける友の姿に、ただ事ではないと感じた二人は、お互いに無言で頷き合う。
テーブルの上のおしぼりを使って鱗華が甲斐甲斐しくアルフェンの顔を拭ってやりながら黒斗が真剣な顔で、友に問い返す。
「お前ほどの男がそこまで取り乱すなんてな……詳しく教えてくれ……流石に放ってはおけん」
「ぐうっ……すまねェ……すまねェ……取り乱しちまった……リンカには話したよな、クロトも聞いてるだろ? 俺の妹分の事をよ……」
「ああ、なんでも三年前に冒険者になるって孤児院を出て、会っていないとか……その足取りを探すための旅でもあったんだろ?」
「そうだァ……この街で最後の依頼を受けたって解ってよォ……ここに来て詳しいデータを見たらよォ……一年前に受けた依頼中に死んだってよぉ……リルが…………死んだって……ふぐぅ……うっぐっ……」
「マジか…………そんな……いや……冒険者だもんな……そうか……すまん……」
自身も幼い頃に両親を亡くしている黒斗には、今の友の心の内が痛い程に解ってしまう、ましてや……この様子を見るにそういう事だったのであろう……、いつも明るい鱗華でさえ声を掛ける事すら出来ずに俯いて肩を震わせていた。
「リンカの……言った通りだったんだなァ…………俺はリルに惚れてた……死んだって解った時によ……魂が半分欠けちまったような音が……聞こえたんだァ……バカ野郎だろ? ……妹分としてだけじゃねェ……女としてのアイツも好きだったんだなぁ……アイツが死んでから惚れてた事に気付くなんてよォ……好きだって解った時にはもうアイツはいねぇんだ……とんだ大まぬけだよ……くははっ……」
「アルフェン…………お墓とかあるのかな……せめて弔いたいよ……」
「…………無ぇんだ……街中で死ねば身寄りが無くても共同墓地に埋葬されるけどよォ……依頼中に魔獣に殺られてそのまま……死体がなきゃ埋葬は出来ねぇからなァ…………――酒を呑んでよ…………酔っぱらってねぇと死にたくなるんだ……何回自分の爪で心臓を抉りかけたかわかんねェ……なんで俺はアイツの傍に居れなかったんだってな……魔竜にクロトを殺されたと思い込んだ時のリンカの気持ちが解ったぜェ……何もかもどうでも良くなっちまうんだなァ…………」
友の体毛に残る血の跡、恐らく何度も自らの胸に爪を突き立てたのだろう、どす黒く染まった胸元を痛々しそうに見つめた二人、どんな言葉も今の友には届かないだろう。
せめて一緒に居てやりたい、そう思った二人は給仕を呼び出し会計を済ませるとアルフェンの力の抜けた肉体を支えながら店の外に出る。
「今夜は……――いや暫くは一緒にいるぞ、文句はいわせん。今のアルフェンを一人にはしておけないからな」
「うん、ボク達じゃアルフェンの傷は癒してあげられないけど……これ以上傷が広がらないようには出来ると思うんだ……迷惑かもしれないけど何と言おうと離れないからね」
「ぐううっ……こんな……クソみてぇな男に……ふぐぅ……そこ゛まで……あ゛りがとう……あ゛いがどう…………ぐろど……りんがぁ……すま゛ね゛ぇ……」
予め予約していた宿に向かい、追加の一人分の宿代を支払って部屋に入った三人、そこまで上等な宿では無かった為、室内に魔導テントを設置してその中にアルフェンを連れて入っていく。
「まぁまずは風呂だな、久しぶりに皆で入ろう、つってもアルフェンはそんな気分にゃなれねぇだろうから普通に入るだけだぞ? リンカ」
「そこまでデリカシーの無い女じゃないからね?! まったくボクを何だと思ってるのかな……」
「……くはっ……変わんねぇな……お前らはよォ……ちっとは気が楽になったぜ……やっぱ一人じゃ駄目だなァ……際限なく落っこちちまう……」
別れた時と変わらない二人のやり取りに思わず笑みを零してしまうアルフェン、自分を思いやってくれる大事な友人の存在に、少しだけ気力を取り戻すのであった。
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湯気の立つ浴室でアルフェンの背中をゴシゴシと洗ってやる黒斗、そんな男同士の裸の付き合いを湯船から顔を出した鱗華がにんまりとした表情で見守っている。
「んー……いいねぇ……男同士の洗いっこなんて中々見れないからね……眼福だよ」
「そういう言い方やめてもらえます? 普通に背中流してるだけだぞ……」
「くはは、まぁ女同士が洗い合ってるのを見てェってのと同じだろ、サンキューなクロト、次は俺が背中を流してやる」
洗い終わったアルフェンの背中にたっぷりの湯を掛ける黒斗、汚れていた体毛が元の純白を取り戻す様子に満足気な顔である。
交代して腰掛けに座った黒斗の、鍛え上げられた鬼のような貌付きの背中を洗っていくアルフェン、泡立てた手拭で背を擦りながらぽつぽつと話し始める。
「ギルドに行ってよ……記録を見せて貰って……見つけたんだ……リルって名前の16歳の魔人族の女が、領主の出した討伐依頼で死んだってよ……何人かと合同で受けたみてェなんだがその場限りのパーティだったらしくてなァ……そいつらがリルが死ぬ所をみたらしいんだ、沢山の魔獣に襲われて逃げて、死体どころかギルドカードすら持ち帰れなかったって話だァ……」
「そうか……自分の命が一番だからな……仕方ないよな……冒険者やってりゃそういう事もあるんだろうが……ショックだよなぁ……」
「街の近くの森で……って聞いてよ……ギルドを飛び出して行ってきたんだァ……せめてなんか形見でも拾えりゃあと思ってなァ……なんも見付かんなかったけどよォ…………何も見つかんねぇし死体もみてねぇからかな……まだ生きてるんじゃないかって……そんなありもしねぇ希望に縋っちまってよ……死にきれなかったァ……」
「…………そうか…………俺達にとっては生きててくれて良かったとしか言えんが……」
アルフェンの話を聞きながら相槌をうつ黒斗、下手な言葉は慰めにもならない事を実体験で知っているのだ。ただ話を聞いてやり、心に溜まった澱みを吐き出させてやるくらいしか出来ない、しかしそれこそが最も救いとなるという事も彼は知っていた。
かつて両親を同時に失った時に祖父がしてくれた様に……息子夫婦を失った立場であるというのにその辛さを表には出さず、幼い黒斗の哀しみを受け止めてくれた祖父の様に……。
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「どうした? リンカ、黙りこくっちまって……のぼせたか?」
「ふぇ?! ああ、いや大丈夫だよ。んー……ボクも二人に洗って貰えば良かったな……」
「また今度な、洗い過ぎても肌に良くないしな、さて風呂に浸かってあったまろうぜ」
体を洗い終えた男二人が湯船につかるとその体躯によって押し出された湯が一気に溢れ出す、スペース的には問題ないのだが、なんだか少し勿体無いと思ってしまう黒斗であった。
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風呂で体を洗い温め、心の澱を多少でも吐き出せたアルフェン、ややスッキリとした顔つきで魔導テント内にあるゲストルームに入っていく、流石に寝る時は一人が良いだろうという事で、半分荷物置き場と化していたゲストルームを黒斗が片付けたのだ。
黒斗と鱗華の二人も寝室へ入っていきベッドの中に潜り込む、仰向けに寝転がった黒斗の腹の上に座り込んでくる鱗華。
そのまま夫と顔を突き合わせるように圧し掛かってくると、張りのある豊かな双丘が逞しい胸板に押し付けられて潰れ、唇と唇が重なり合っていく。
只のお休みのキスであった…………。
そのまま夫の上から転がる様にベッドに寝そべる鱗華、そのまま休む……かと思いきや頭の横に痛い程に妻の視線を感じた黒斗。
「どうした? リンカ、シたくなったか? 流石に今日は……」
「おかしいよ」
妻の真剣な声色に天井をぼんやりと見つめていた黒斗がハッとしたように顔を横に向ける。
眦を決した、凛とした顔付きの鱗華が其処には居た。
「さっきのアルフェンの話……おかしいんだ……アルフェンの前で不確定な事は言えないから黙ってたんだけど……クロト、もう一度思い出してみて……」
「一年前に領主の依頼を受けて魔獣にやられたって…………いやまてよ…………臨時パーティ?」
「危険な魔獣討伐、通常依頼じゃなくてわざわざ依頼を出す程の仕事で、臨時なんて組むと思う? 全員女の人だったのかな? あり得るかな……?」
「確かに……男女混成パーティを臨時で組んで危険な依頼なんて……しかも領主? 亜人嫌いなのによく直々の依頼を受けさせたな……確かにおかしい……」
「アルフェンは基本的にソロだし、男だからそこまで気付かなかったのか、もしくはリルちゃんが死んだって聞いて動転して気が廻らなかったのかもしれないね……」
よく考えてみれば確かにおかしいのだ、亜人差別の激しい領地の領主が直々に出した依頼に、亜人が参加する、危険であろう魔獣討伐に年若い女性が一人で臨時パーティに参加する、どちらも有り得ない事では無いのかも知れない、だが同時に重なるとなると……明らかに異常であった。
「ボクの考えすぎだったら……アルフェンに変に期待させても嫌だし黙ってたけど……ねぇクロト……調べてみようよ……ギルドマスターなら何か知ってる筈だよね、もし裏があるんなら……」
「ああ……明日はリンカがアルフェンに付いてやっててくれ、俺がギルドマスターに聞きに行くよ……アルフェンの聞き間違いかもしれないし、その辺も含めて確認してくる」
「わかった、アルフェンの事は任せてね、今までの事を考えると……もしかしたら……って考えが抜けなくて……」
この国、特にこの領地に入ってからの自分達の体験、アルフェンが話した内容の違和感、もし友の話が本当の事であればそれは只の、何処にでもある一つの小さな悲劇でしかない、一人の女冒険者が依頼中に命を落とし、その身内である男が嘆き悲しみ、やがて克服し、年老いた時にときたま小さな胸の痛みと共に感傷に浸る、そういったありふれた悲劇でしかないのだ。
だが……もしも鱗華の想像した通りの事であったならば………………。
「ああ……もしもリンカの思った通りだったら…………――国が一つ、消えるかもな……」
自分を真っすぐに見つめる妻の決意の籠った瞳を、同じ色の輝きを宿した瞳で見つめ返しながら、そう呟く黒斗であった。