※この作品はR-18です。

ファム・ファタール~寝取らせモノが大好きな剣士が異世界転移した場合~   作:幻闇

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6話 陥穽

 鱗華が男達に自ら弄ばれ、黒斗があえて知らない振りをしてその様子を愉しんだ日の翌日。

二人の朝はいつも通りであった。

 

「おはようリンカ」

 

「クロトおはよう、今日はボクの方が早かったね」

 

「ちょっと疲れが溜まってたのかもなぁ……」

 

「まだお金は余裕あるし今日はゆっくり休む?」

 

 鱗華の提案に乗って今日は休養日とする事にした。

狩場ではなにが起こるか分からない、コンディションは常に整えておくべきなのである。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 私服を着て、リビングのソファーに座り、まったりと過ごす二人、相変わらず露出は多い。

 

「ねぇクロト」

 

「なんだ?リンカ」

 

「溜まってるんでしょ?下半身の……」

 

「ぶほっ!!――ごほっごほ……一体何を……」

 

飲んでいたお茶を吹き出してしまう黒斗、あまりにも直球であった。

 

「クロトにみられてると思ってすごい感じちゃった……でもクロト全然触ってくれないんだもん……知らない男達に汚されたボクのカラダは触りたくないの?」

 

「違うッ!!凄く触りたい、同じようにやりたい!!でも……もし俺が満足させてあげられなかったら……と思うと……怖くてな」

 

「ばかクロト……でも童貞だもんね……ごめんね……教えてあげるよ……ねぇ服の下に手を入れて揉みしだいてみて……生で……」

黒斗の大きな膝の上に座り、シャツは着たままブラを外す鱗華。上目遣いで懇願する様に頼み込む。

 

「わかった……――素肌の感触が……ここかっ。揉むぞ!」

 

「ひああッ♡♡♡クロトの手すごく硬いよぉ♡♡優しい手♡♡アンっ♡あんっあんッああんッ♡♡♡気持ちいいよぉ♡♡ちくびもぉ摘まんでぇ♡コリコリしてぇ♡」

 

「凄く感じてるんだな……リンカ……乳首も触るぞ」

 

「だめぇんアッ♡♡♡クロトに弄られてるぅンアッ♡♡ボクのちくびぃ♡♡なんかきちゃうよぉ♡♡あの人達より何十倍もきもちいいのぉ♡♡あっあっアッ♡だめ♡イクっ♡イクゥ♡」

 

シャツの裾から手を潜り込ませ、双丘を優しく揉みしだき撫でまわし、乳首を軽く摘まんだ指を擦り合わせてコリコリと刺激する。たったそれたけで鱗華は絶頂してしまった様だ。

 

「俺だからか?」

 

「そうだよぉ、ボクのカラダホントに気持ち良くしてくれるのはクロトだけなんだから……愛情たっぷりのクロトの手ですぐイカされちゃった……」

 

「昨日のはあんまり気持ち良くなかったのか?」

 

「ううん、クロトに見られてるって思うとね凄く気持ち良くてずっとイキっぱなしだったんだ……クロトがいなかったら嫌だけど」

 

「俺もリンカが嬲られてるのを見て凄く興奮したんだ……でもリンカに触れるのも凄く興奮する……どっちも凄い気持ち良い」

 

 黒斗の言葉に嬉しそうに微笑むと、その手をとり、自らの秘所に導く鱗華。

 

「ふふっ♡ボク達相性も性癖もぴったりみたいだね……ねぇアソコも触ってみてよ、いまパンティー履いてないんだ……」

 

「――ッ!!わかった指は入れないから…………ここかな?」

 

「ひきゅ!!そこ良いよぉ♡♡割れ目に沿って下から撫で上げてぇ♡♡あんあんッ♡♡ふふっここはあんまり触られてないよぉ♡この奥はクロトに最初に使ってほしいんだもん♡♡」

 

「わかった……俺が奪ってやる。ここがクリってやつかな?」

 

「きひいぃぃぃぃい♡♡♡♡イクっ♡♡♡クロトに触られるとホントにすごいよぉ♡あっあっあっ♡♡あんっあんッあんッ♡イクっ♡イッちゃうよおおお♡イクゥうううう♡♡♡」

 

 割れ目の周囲とクリトリスを優しく撫で擦られただけで、鱗華は凄まじい快感に襲われ絶頂に達する。

 

「毛は生えてないんだな……所々に暖かくて硬い鱗の感触がある」

 

「龍人族は髪の毛以外は体毛は少ないんだ鱗で体温調節をしてるからね」

 

「すべすべしてて触り心地が最高だ」

 

「ふふっありがと……――っとこうして」

 

 鱗華が体勢を変えて後ろ向きになり、黒斗と正面から向かい合う様に膝の上に座る。

潤んだ瞳と艶めかしい唇を切なげに震わせながら黒斗に顔を近づけて目を閉じた。

 

流石に童貞の黒斗にも解る。

両手を鱗華の背中に回し抱きしめる様に引き寄せると、その唇に優しく己の唇を重ね合わせた。

 

「んっ……ちゅ…………ぷはぁ♡……ふふ黒斗のアソコ凄く硬くてびくんびくんしてる♡」

 

「そりゃそうだろ……こんなんで反応すんなってのが無理だ」

 

 密着して抱き合った為、ズボンとショートパンツ越しにお互いの一番敏感な部分が触れ合いその興奮の度合いが互いに伝わり合う。

 

「ふふっ♡お風呂に入って…………――あっ!!、ごめんクロト。ちょっと席を外すね」

 

「んっ?ああ、大丈夫だ」

 

 急に立ち上がり慌てた様子でトイレにむかう鱗華。

暫らくすると浮かない顔で戻り黒斗に説明する。

 

「ごめんね……忘れてたけどそろそろだったんだ。」

 

「?……なんの話だ?」

 

「男の人には分からないか。月に一回、女には……――その……」

 

「ああっ!大丈夫だ、学校で習った。人によっては凄く辛くて痛いとか……」

 

 授業は真面目に聞いていた黒斗は保健体育の時間に習った事を思い出して、心配そうに鱗華に聞く。

 

「女冒険者は避妊薬を飲むからね。避妊以外にも月のモノの痛みや量がかなり軽くなる効果があって、むしろこっちが目的で使ってる人が多いよ。依頼中に来たら死活問題だからね」

 

「成程なぁ……女性も大変なんだな……」

 

 魔素を用いて作られる避妊薬だが、効果に関しては地球の物とほぼ同じ理屈だ。排卵を抑制する事で生理の痛みや出血量も低く抑えられる。依頼や冒険中に来たとしても行動に支障が出ない様に、女性の冒険者にとっては必須アイテムとなっていた。薬に使われる薬草は街中で栽培できるのと、一般の女性や娼婦にも需要が高い為、ほぼ全ての街で作られている。

 

「ほんとはクロトにこのまま最後までしてもらいたかったんだけど……」

 

「うえっ?!……――大丈夫だ。お互い初めてだし、ゆっくりでも良いんじゃないか?」

 

「でもクロトのココすごく辛そうだよ……私が散々期待させちゃったから……」

 

「まぁちょっと……俺もトイレに……――ってリンカ?!」

 

 黒斗の横に座った鱗華が白魚の様な手で、黒斗の股間の膨らみを撫で上げる。

それだけで暴発しそうになり、慌てて右手で己自身を掴み、耐える黒斗。

 

「いいよ……ボクが出させてあげる……ボクのせいだからね……」

 

「ちょっ?!……リンカそれは……――あっ」

 

 黒斗の膝の間に来て、座り込んだ鱗華の手が動揺する黒斗のズボンの留め金を外し、ジッパーを引き下げた瞬間。

ズボンによって押さえつけられていた黒斗自身が下着の隙間から勢いよく飛び出した。

 

「わっ!!クロトの……凄い……お父さんのは見た事あるけど、興奮すると男の人のってこんなになっちゃうんだ……」

 

「人のはあんまり見ないからなぁ……って凄い恥ずかしいんだが……」

 

「ボクの恥ずかしい所いっぱい見られちゃったからね♡おあいこだよ♡……でもこれ凄いね……こんな大きいの入らないかも♡」

 

 平均的な男よりもかなり体格の良い黒斗はその部分も比例して大きかった。

なにせ解放されたその黒斗自身は臍の辺りまで屹立していたのだから。

 

「凄くびくんびくんしてる……辛いんだね……こうかな……優しく触って……」

 

「くおっ!!ダメだリンカっ!!刺激が強すぎる!出ちまう!!ウっ……」

 

「あッ♡熱いよぉ♡凄い量……顔に沢山かかっちゃった……」

 

 童貞の黒斗が、大好きな鱗華の手で直接、己自身に触れられて我慢できるはずも無く。

あっけなく暴発し滾った精はそのまま鱗華の美しい顔を直撃する。

 

「すまんっ!!すぐ風呂に……」

 

「ンっ♡……ぺろっ♡……少し苦いけど濃厚……これがクロトの味なんだね♡あっ!またガチガチになっちゃったね♡」

 

 唇に着いた白濁の体液を艶めかしく赤い舌で舐め取る鱗華、己の欲望で汚したそのかんばせと共に黒斗の本能を激しく刺激する、射精直後だというのに瞬く間に復活したそれをみて、鱗華が妖しく微笑む。

 

「たしかこうすると男の人は気持ちいいんだよね……ぺろっ♡ちゅ……はむ……」

 

「――ぅくっ!!リンカそんな……それはダメだ……我慢なんて出来ない……」

 

「……ぷはっ♡……我慢させたくないからしてるんだよ?遠慮しないで出して♡ちゅ……はむ♡」

 

「エロすぎるぞ……リンカ……口の中があったかくて舌が……ウッ……出るっ!!」

 

 黒斗自身の先端部を口に入れて鈴口を優しく舌で舐め上げる鱗華、当然耐えきれる筈も無く、二回目の精をビュルビュルと口内に放出してしまう。

 

「んぐッ♡…………んく♡んく♡ぷはぁ…………美味しいよ♡半分くらい零れちゃったけど……」

 

「リンカ……手で撫で擦りながら口でしてもらってもいいか?」

 

「全然治まらないんだね♡うん、やってみるよ♡」

 

 さらに二回ほど鱗華の口内に精を放って、やっと治まりを見せた黒斗であった。

 

その後一人で風呂に入った鱗華は体を洗って湯にゆっくりと体を沈め、先程の事を思い返す。

 

(月のモノが来ちゃったのは残念だったけど……ふふっ♡クロトに触って貰ったら凄く良かったなぁ♡……ボクが他の男に嬲られてるのを見て貰うのも凄くいいけど、クロトにしてもらうのが一番気持ちいいな)

 

黒斗の手と指の感触を思い出して恍惚とした表情を浮かべる鱗華だったが、ややその表情が曇る。

 

(でもあんなにおっきぃなんて……量も回数も凄かったし……ボクのアソコ、大丈夫かな……壊れないよね……?)

 

膣口を指先で軽く触りながら、黒斗自身の大きさを思い出して心配する鱗華だった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「くそっ!!急に降ってきやがったなぁ……」

 

「街まで少し距離があるし、ここで少し雨宿りして行こうか」

 

 月のモノも明けて、体調の戻った鱗華と共に魔獣の討伐を行っていた黒斗。手頃な獲物が見つからず普段来ない場所まで来た辺りで急に大雨に見舞われてしまった。近くにあった洞窟に避難したものの、暫らくはここで休む事になるだろう。不利な条件で狩猟を行う冒険者などいないのだから。

 

「スコールってやつかな?すぐ止むといいんだが……」

 

「恐らくすぐ止むと思うんだけど……――でもここに洞窟なんてあったんだねぇ、場所覚えておくと便利そうだね」

 

「そうだな……一応洞窟の奥も調べておこう、気配は感じないから魔獣の寝床ってわけでも無さそうだし」

 

 魔素を利用したカンテラを点けて奥を確認していく二人、なかなか深い洞窟の様だ。

所々を冷たい水の流れが通り、小さな蟲が這いまわっている。

 

「行き止まり……か?」

 

「そうだね、小さい動物くらいしかこの先は進めないんじゃないかな」

 

「自然の洞窟だし、崩落したら大変だからな……壁の感じは……――むっ!」

 

 先に進めない程狭くなってきた洞窟の奥で、壁の強度を確認しようと拳で軽く壁を叩いた瞬間、ぼこりと壁が崩れ落ちる。

 

「脆い……いや内部に空洞があるのか」

 

「中の様子はわかるの?獣の巣穴かな?」

 

カンテラをかざして内部の空洞を照らした黒斗はごくりと唾を飲み込むと鱗華に告げる。

 

「広い……これは……通路だ!!明らかに人の手で作られた通路が見える」

 

「古代遺跡!!こんな所から繋がってるんだ!!」

 

「未発見のモノなのか、既に探索済みの遺跡に繋がったのかはわからないが……遺跡なのは間違いなさそうだ」

 

「未発見だったら凄いことだよ。ギルドの貢献度だって間違いなく一階級は上がるね」

 

 カンテラに照らされた人工的な通路をみて盛り上がる二人、未発見の遺跡には手付かずの古代の魔道具等が遺されている事も多い為、冒険者たちにとっては宝の山なのだ。

 

「慎重に崩して内部をすこし探索してみるか……迷宮化していたら今の装備では厳しいが、それなら一度戻ればいいしな」

 

「そうだね、中は狭い空間も多そうだからショートスピアに持ち替えるよ」

 

「ああ俺が前に立つから、リンカは後ろを警戒しててくれ」

 

 屋内戦闘では長柄の武器は取り回しづらい為、近くの地面に埋めて隠しておく。

予備武器の組み立て式のショートスピアに持ち替える鱗華、長さの調節も可能な為、こういう時は役に立つのだ。

更に投擲用のジャベリンも幾つか携帯している。

 

「一人分くらいの穴を開けて……っと、カンテラは腰に付けるか。リンカ、予備のカンテラは持ってるよな?」

 

「あるよ~、もし壊れちゃったら出すね」

 

「ああ、頼む。迷宮化していたら魔獣も出るかも知れない、慎重に進もう」

 

 二人が通路に入り、慎重に進んでいく。

通路は長年封じ込められていたせいかそれほど汚れたりはしていないようだ。

壁は継ぎ目などは見えない、滑らかで白っぽい骨の様なすべすべとした質感の不思議な素材であった。地球で言えば超硬度のセラミックが近いのかもしれない。

 

「どうやら崩れた所は窓の様な箇所だったみたいだな……もしくは壊れた扉か……壁は自然に壊れるようなモノじゃないな」

 

「古代遺跡はこんな感じの所が多いんだ。壁を削って調べた研究者によると現代の技術では再現不可能な事以外まったく解らないって」

 

「すげぇな……こんな技術があったのに今に残されていないって……なにかあったんだろうな……良くある、行き過ぎた文明で自滅とかってパターンとか」

 

「年代はわかってるんだ、およそ一万年程前のものらしいよ。なのに使える状態の魔道具があったりするんだから凄いよね」

 

「ロマンだなあ……っと部屋があるな、確認しよう」

 

部屋のドアはスライド式の様だ、半分だけ開いた扉の部屋を覗き込んで慎重に調べ始める二人。

 

「真ん中に壁と同じ材質のおおきなテーブルがあるが、椅子なんかは残ってないな。普通の材質の物は風化してしまったか」

 

「朽ち果てた残骸みたいなものが転がってるからそれかもね、特にめぼしいモノはなさそうだよ」

 

「――いやまってくれ、これは……収納スペースか?」

 

 部屋の奥のやや壁から突き出したスペースを調べていた黒斗は継ぎ目がない為に分かりづらかったが、そこに小さな扉がある事に気付いた。

 

「こうして……――開いたな。これは魔道具か?」

 

「どれどれ?……なんだろう手鏡みたいに見えるけど。鏡の所はなにも映ってないよね」

 

「魔素を通せば起動できそうだけど今は止めといた方がいいな。罠とかだったら困るし」

 

「布とかに包んで仕舞って、帰ったら確かめてみよう」

 

 黒斗は荷物の中から脆い素材を持ち帰る為の、梱包用の布を取り出して魔道具をしっかり仕舞いこむ。通路に戻り、更に奥へと探索を続ける二人だったが途中の区画から急に周囲が明るくなり始める事に気付く。

 

「ここはまだ照明魔道具が生きてるんだね……これは助かるなあ」

 

「よくある事なのか?」

 

「保存状態の良い遺跡はそうだね、さっきの所は外部に近かったから、損傷しちゃってたのかも」

 

「成程な。一応カンテラは点けておくよ、急に暗くなっても困るからな」

 

 明るくなった通路を慎重に進んでいくと、広くなった広場の様な場所に白く清浄な雰囲気の遺跡に似つかわしくないモノがそびえている。

 

「これは……なにかの骨か?小山みたいになってるな……骨塚のような……」

 

「上の方のはまだ新しいね……間違いない、蛮族が住み着いてるよ」

 

「奥の方で中部あたりと繋がってるのかもな。一度戻るべきか……むっ!気配が近づいてくるぞ」

 

「物陰に隠れて様子を見よう、種族が解らないと対策が取れないし」

 

 手前の通路に戻り広場の様子を伺う二人、やがて遺跡に住み着いた蛮族が広場に姿を見せる。

身長は170cm程だろうか、引き締まった筋肉の鎧に覆われた肉体と簡素な腰巻、手にはなにかの動物の骨が握られている。顔は豚に似ているが、下顎から突き出した牙がどちらかというと猪を連想させた。

 

「豚人族だね……力が強くて繁殖力も高いんだ、私たちなら一対一であれば大したことはないけど……大体は群れで活動してるよ」

 

「いわゆるオークって奴か……物語だと太ったイメージだけど……ありゃ豚人ってより猪人じゃないか、俺の筋肉の方が凄いけどな」

 

「ふふっ、そうだね。食べ残しを捨てに来たみたいだけど、他の気配はないし、殺っちゃう?」

 

「蛮族とはまだ戦ってないしな、俺から仕掛けてもいいか?」

 

「先手は譲るよ。大丈夫だと思うけど。一応他のが来ないか警戒しておくね」

 

 ゆらりと奥の通路の暗がりから現れた人種の男に、一瞬硬直する豚人だったが、理性よりも本能で動く蛮族らしく即座に戦闘態勢を取る。

抜き身の刀をだらりと地面に擦る程に下げながら、黒斗は自然体で近寄っていく。

一見隙だらけのようでその実まったく隙が無い黒斗の様子に気圧されたのか、豚人が一歩あとずさったその刹那――――黒斗の姿が掻き消える様に加速し下段に構えた刀を上方に斬り上げる。

 

――ヒュパッ

閃いた白刃が豚人の腹と骨を構えた腕を断ち斬る、斬られた腕が宙を舞いぼとりと床に転がった。

 

「ちっ。浅かったか……人型を斬るのは初めてだからな……試合なら経験はあるんだが……」

 

 三寸斬り込めば人は死ぬ、逆に言えば三寸斬り込まねば死なぬのだ。

初めての命の奪り合いでやや慎重になり過ぎたのか、踏み込みがやや足りずその刃は内臓にまでは達していなかった。

 

「それでも凄いけどねぇ、内臓零れてるし。すぐ死ぬん――あっ!逃げた!」

 

「あー……魔獣は逃げたりしないからなぁ、そうか蛮族は魔獣とは違うもんな。ヤバくなれば逃げるよな」

 

 魔素によって変異した魔獣は一部例外もいるがあまり逃走行動などは起さない、蛮族は知性は低いもののあくまで亜人種である為、仲間の所に逃げたり、物陰に隠れたりするのだ。

 

「即座に死なないとはいえ、あの怪我だ、すぐに力尽きるだろうが。仲間を呼ばれても厄介だし、追いかけて止めを刺すか」

 

「この通路なら同時に二体くらいしか戦えないし、きても大丈夫だと思うけどね。先手は譲ったけど止めはもらおうかな?ボクの方が早いしね」

 

 追撃を仕掛けようと二人が矢の様に走り出す。

速度では分の有る鱗華が風のような速さで手負いの豚人に追いすがっていく。

ちらりと後ろを振り返った豚人は追いすがる鱗華を認めると焦った様に近くの部屋に飛び込んだ。

 

「部屋に逃げ込んだ?仲間でもいるのかな?……――あいつだけみたいだね」

 

 不意打ちに注意しつつ部屋に入った鱗華の目に、部屋の奥で必死に内臓を腹に戻そうとしている豚人が映る。

追いついてきた黒斗が室内を見て疑問を漏らした。

 

「なんで仲間の所に戻らないでこんな部屋に逃げ込んだんだ?」

 

「そこまで保たないと思ったんじゃない?頭悪いよね、追いつかれたら確実に死ぬのに」

 

 ショートスピアを軽く振り回し、前方に構えて弾丸の様な速度で突進を仕掛ける鱗華。

一瞬後には間違いなく、心臓を貫かれて事切れる豚人が見られるだろう。そう思った黒斗の目の前で――フッと鱗華の姿が霞の様に消失した。

 

がらぁん――ズザザザザザザアアア……

 

「は?」

 

 余りの出来事に一瞬自失しかけるが、すぐに冷静な思考を取り戻し床を凝視する黒斗。

一瞬だけ空いた床の穴に吸い込まれて滑り落ちていったのだろう、幅が大きくは無かったためショートスピアだけが弾かれて残されている。

 

(落とし穴?ダストシュートか?いやそんな事はどうでもいい早く合流しないと!!)

 

 ちらりと死にかけのオークに目を向けると荒い息をつきながら満足気に顔を歪め、嗤っていた。

頭が白熱したように怒りに染まった黒斗は、穴が開いていた床を跳躍で飛び越えながら上段に構えた刀で豚人を斬り下ろす。

頭部から股間まで唐竹割に断ち割られた豚人が左右に分かれて倒れ伏した。

 

「床は…………開かないな。重さに反応?それとも作動後は一定時間ロックされるのか?」

 

 鱗華が落ちて行った辺りの床を丹念に調べる黒斗、うっすらと継ぎ目が見えるのは解るがなにをしても開く様子はなかった。

 

「リンカの武装はあとはジャベリンが三本だったか……こいつ一人の骨塚の量じゃない。群れの住んでる辺りに落ちていたら……」

 

 凌辱され、苗床にされる鱗華、あの日以降もまだ手は出せてない鱗華が……。一瞬、昏い期待が頭に浮かんだが、かぶりを振って振り払う黒斗。

 

「犯されようが汚されようがリンカはリンカだ、関係ない……でも死んでしまったら……」

 

 豚人族は他種族の女は比較的大事に扱う、食べ物を優先的に与えるし怪我を負わせたりもしない。ただ拘束されて死ぬまで苗床とされるだけだ。かなりの勢いで落ちて行ったであろう鱗華、幼い頃に事故死した両親が脳裏をよぎる。落下場所によっては致命傷を負うかもしれない。再生力強化の能力が有るとはいえ致命傷を負えばそれまでなのだ。

 

「下に降りるルートを探すしか無さそうだ。生きててくれよ……リンカ……」

 

 そう呟きながら刀を手に、未知の通路の奥に独り、進んでいく黒斗。

世界を超えて出会えた、最愛の恋人を助け出す為に……。

 

 

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tips

 

古代遺跡

 

かつて大陸中央部に栄えたといわれる古代文明の遺跡。

殆ど全てが大樹海に呑み込まれた、浅部には地表に露出した遺跡も多いが中部以降になると完全に木々に侵食されている。

現代を凌駕する魔導文明を誇ったとされているが滅亡した理由ははっきりとは解っていない、ただ大樹海と関連がある事は間違いない模様。

現在のゴルディオス大陸は中央の大樹海以外に東西南北のそれぞれに国が栄えているが、元を辿れば全ての国はこの古代文明がルーツなのではないかとの仮説もある。

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