ファム・ファタール~寝取らせモノが大好きな剣士が異世界転移した場合~ 作:幻闇
69話 帰りきたる
本体である巨竜の頭上に乗ってぶんぶんと手を振る幻体のビューネに見送られて温泉を後にした黒斗と鱗華、近いうちに再度来訪する事を約束した二人は足取りも軽くセーヌへと向かっていた。
今の二人にとっては深部といえど危険な場所や魔素溜まりを避けて移動に徹すればそれほど時間もかからずに抜ける事が可能なのだ。美しく雄大な自然を鑑賞し、朽ち果てた遺跡に寂寥の念を抱きつつ大樹海を踏破していく二人、間もなく中部へ差し掛かろうかという当たりでふと、何かに気付いたかのように鱗華が黒斗に声を掛けた。
「そういえばさー、豚人の大集落ってこのあたりだったよね?」
「ん? ああ、ボルボル達が居た所か。ギルドが接収したって話だったが、どうなってんだろうな」
「ちょっと様子見に行ってみない?」
「流石に半年程度じゃ変わってないんじゃないか? まぁ大した寄り道じゃないし、行ってみるか」
半年ほど前にボルボルと出会った場所であり、魔竜との決戦の場となった豚人達の大集落であった場所。冒険者ギルドが接収した後は深部開拓への足掛かりとなる前線基地へと生まれ変わる予定の重要な場所である。二人が今いる地点からそれほど離れていない為、セーヌに帰る前についでに寄る事に決めた二人はやや方向を変えて樹海の中をひた走る。
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すでに深部を抜けている為、特に周りを警戒する必要もない二人はほぼ全力を出して樹々の間を駆け抜けていく。肉食性の生物は、より上位の捕食者である二人の前に出る事は無いし、単体で活動し襲ってくる魔獣は二人にとっては美味しい食材でしかない。鴨が葱を背負ってやってくるも同然といった扱いである。
やがて二人の前に人口の建造物が見えてくる。魔竜タイラントによって半分程が更地にされた大集落の面影はなく、鋼の光沢も冷やかな厳然たる威容を誇る城壁が元大集落であった場所を囲むように20メートル程の高さにまで聳え立っていた。
「すげぇな……半年でこんだけ作れるなんて流石ルーシャさん率いるセーヌのギルドだぜ」
「すごいねぇ。あの鈍く光る色合いはデュラム鋼かな? これならタイラントがきてもビクともしなさそう」
鉄壁の要塞の如き外壁に感嘆の声を漏らす二人。そのまま歩みを進めていくと、これもまた頑丈そうな門が姿を現した。飛び道具用の狭間が高所に作られた重厚な門に近付いていくとそこで作業を行っていた一人の偉丈夫が声を掛けてくる。
「冒険者か? すまないがまだこの施設は冒険者には解放しておらんの――っ! 黒斗殿! 鱗華殿! お帰りになられたのか!!おおっ……なんという僥倖であるか。このボルボル一日千秋の想いで待ち焦がれていたのである」
作業をしていた偉丈夫、有り得ない程の白皙の美貌と均整の取れた彫刻の様な肉体を持つ男が他にいるわけも無い。ニメートル程の巨躯に鋼の筋肉、一見すると酷薄そうにもみえる冷たい美貌であるが、その心は赤熱した溶鉄の様に熱く滾る漢――ボルボルであった。
「ボルボルじゃないか! なんでこんな所に?」
「ギルドに職を得ましてな、学術研究員兼ギルド専属冒険者という肩書を頂いておる。今はここの基地の建設に携わっておりますな」
「凄いじゃないか! 街中の仕事が多いならリリアーヌさんと居られる時間も取れるしな、強くて博識なボルボルには天職だな」
「いやははは、有難い事である、立ち話もなんであるし中で休まれていかれよ。食堂酒場は完成しておるのだ」
「一般にはまだ解放してないって言ってたが、俺達が入っちまってもいいのか?」
「金級冒険者は一般の冒険者ではないだろう……。それでなくともこの基地の最大の功労者なのだからな」
ボルボルに案内されて建設中の基地内に入った黒斗と鱗華、半年前に見た豚人達の集落の面影などどこにもない景色が二人の前に広がる。
「これは……すごいな、もう殆ど出来てるじゃないか」
「すっごーい! 地面もちゃんと舗装されてるんだね! あそこの蒸気が上がってるおっきな建物は何だろう?」
しっかりと整地された地面と堅い石畳によって舗装された、大きな建物が立ち並んでいる大通り。左側に見える巨大な建物はその造りから、恐らく食堂を兼ねた酒場だろう。その向かいにあるこれもまた大きな建物、屋根から飛び出した幾つもの煙突からは上記や黒煙が上がっている。
「酒場の向かいは素材の加工所であるな、樹海で取れた素材を加工して街に運ぶための設備である。どの建物もガワはほぼ出来あがっているのだが肝心の中身はまだまだといった感じだ」
酒場に入った三人は酒杯を酌み交わしながら互いの近況を報告し合う、黒斗達は深部での発見やリルの事、ボルボルは就職の話や黒斗達に先んじてセーヌに戻ってきたアルフェン達の事等だ。
「深部にそんな場所が……それに会話可能な魔竜だと? 歴史の生き証人ではないか! 是非話を伺ってみたいものだ。湯治に向かう際は私も同行させて頂きたいが、良いだろうか?」
「勿論構わない、というかむしろお願いしようと思ってたくらいだ、リルさんの護衛は何人いても良いからな。それにしてもそっちはめでたい事が続いたみたいだなぁ、帰ったらすぐに祝いに行かないとだな」
「アルフェンとリルちゃんが結婚したってのは予想通りだったけどユニーさんが妊娠したってのは予想外だったね!! 凄く子供を欲しがってたからなぁ……良かった良かった」
ボルボルの話ではアルフェンとリルが去年の年末にギルドに婚姻の届を出して正式に夫婦となっているとの事で、その後年が明けて暫くしてから鍛冶屋夫婦の妻であるユニーが妊娠している事が判明したようだ。勿論狂喜乱舞したバルガスであったが初めての子という事もあり相当に慌ててもいた様である。
「あー、目に浮かぶなあ……、バルガスさんの事だから無茶苦茶過保護になってんじゃないか?」
「その通りである、母……リリアがその辺りは経験豊富なのでな、バルガス殿に一喝して大人しくさせる様子は流石であったぞ、昔は私もリリアを手伝って産婆まがいの事をした事もあったしな」
「リリアーヌさんに任せておけば安心だね! ――うーんでもそうするとユニーさんたちの子供の誕生はすぐ祝えなさそうだね……ボクの母さんも丁度同じくらいに出産予定だから……」
「流石にそれは仕方ないであろう、めでたき事が重なるのは佳き事であるし贅沢な悩みというものであるな」
どうやらほぼ同時期に妊娠したらしい火憐とユニー、遺伝子上の父親である黒斗が居ないわけにはいかないので勿論そちらを優先するつもりであるが親友夫婦の初めての出産を近くで応援できないというのも遺憾なのだ。せめて妊娠中は色々と世話を焼きに行こうと考える二人であった。
「妊娠中は味覚も変わるみたいだし、自分で料理を作ると臭いだけで気持ち悪くなったりする場合もある様だ。義父さんに教わった俺の料理が役に立てそうだな、ちょくちょくバルガスさん所にメシを作りに行くとするよ、義父さんに妊娠中におすすめの料理も仕込まれてるしな」
「なんと、黒斗殿は料理まで習得されたのか! リリアは自分の役目だと私には作らせてくれぬのであるが、子を孕んだ時の為に私も習得しておくべきであろうな……そのうち暇な時で良いので教授願いたい、勿論対価は支払うぞ」
「いらんいらん、友に料理を教えるのに金なんかとるかよ。材料費くらいは出して貰うがな、旨いモン作れる様になったらご馳走してくれればいいぜ」
「有難い……しかし甘えるだけではいかんな、まずはリル殿の護衛役で報いるとしよう」
「もっと気楽でいいとおもうけどねぇ、でもボルボルのそういう真面目な所好きだよ♡ボク達にはあんまり無い所だし。リリアさんがOKなら食べちゃいたいくらい♡」
鱗華がからかう様に声を掛けると途端に赤面したボルボルが慌てだす。その様子を夫婦二人で笑いながら酒杯を干して、酒場のスタッフに会計を聞き黒斗がさっと支払いを行う。
「とりあえずアルフェンの所とバルガスさんとこでお祝いとご祝儀渡してくるかぁ」
「うんうん、ボルボルは泊まり込み?」
「いや夜は家に帰っておるぞ、走れば一時間もかからんしな。週末は休みだ」
「じゃあ週末辺りで皆で集まってボク達の家でご飯食べよう! 今日は火曜だったっけ……これから帰ってお祝いして土曜までに美味しい食材を用意しないとだね!」
方針が決まった所で砦の門まで二人を見送りに出たボルボル、黒斗達は目前に迫ったセーヌへと自慢の健脚で凄まじい速さで樹海に駆け出していく。
二人を苦笑しつつ見送ったボルボルは今日の仕事を全力で終わらせ、こちらも愛しい母にして妻のリリアーヌが待っている自宅に先程の二人にも負けぬスピードで街へと帰っていくのであった。
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「アルフェンいるかっ?!」
ゴンゴンとアルフェンの自宅に着いた黒斗が逸る気持ちを抑えられないのか、勢いよくドアをノックする。
「うるせぇ! ……常識ねぇのかよ――って黒斗じゃねぇかァ!! 帰ってきたのか!」
無駄にテンションの高いアルフェンに引っ張られるように家に連れ込まれた黒斗と鱗華、ダイニングキッチンの極上のソファーに座らされて目の前に酒が積み上がっていく。
「まぁ呑め呑め、バルガスさんとこも明日いくんだろ? 今日は俺が離さないぜェ……くはははは」
「アルフェン凄く嬉しそう! メチャクチャハイになってるね。リルちゃんは?」
二人掛けのソファーが向かい合わせに二つ、間には大理石のテーブルが鎮座して様々な銘酒やワイン、ウィスキー、焼酎すら並んでいる。二人の向かいの席にはアルフェン一人だけが座っており、鱗華にとっての大事な妹であるリルの姿は見えなかった。
「こっち……です……お姉様達に料理を……少し待ってて下さい……頑張ります」
どうやらキッチンの方で調理中の様だ、察した黒斗が手伝いに行くと言ってキッチンに向かいリルの手助けを行う。
「まじかよ! 黒斗料理できたっけェ? スゲェなァ」
「鱗華の義父さんにみっちり仕込まれてな、まだまだ未熟だが基礎はマスターしたぞ」
黒斗の協力の甲斐もあり、それから十分と掛からずに美味しそうな料理が並んでいく。黒斗は主に片づけや皿洗い、下拵えを担当し味付け作り方は全てリルの手によるものだ。
「うわぁ! 美味しそう! シンプルだけどバランスも考えてあるし、いいお嫁さんになれる! っていうかなってた!!――頂きます!」
「……嬉しい……どうぞ……沢山食べて……ほしい……」
鶏肉や野菜などを丁寧に下処理してトマトソースや大蒜で煮込んだ山の幸煮込み、骨付きの分厚い魔牛肉をローストして作ったスペアリブ、そして丼にこれでもかと盛りに盛られた雪の様に白く輝く銀シャリ、どれも尋常な量では無い。
煮込みはテーブルの真ん中に巨大な鍋ごと置かれているし、スペアリブは30本ちかく大皿に積み上げられている、丼メシはそれだけで優に五キロはあるだろう。一人分、これはリルの分であろう小さく可愛らしいお茶碗がちょこんとアルフェンの隣の席に置かれている。
「なにはともあれメシと酒だぜェ! 頂きます!」
「頂きます」
「頂きます♡」
「頂き……ます……」
食前の挨拶をを終えて四人、そのうちの三人が猛然とおかずを自らのどんぶりに引き寄せて味の濃いおかずと共に白米をかっ込んでいく。凄まじい速さと量である、暴食の魔人たる三人の前ではこれほどの量であっても風前の灯火であろう……そんな嵐の中。別の皿にリルの食べる分を取り分けてリルの前においてやるアルフェン、小食で大人しい妻の為に必要な分を確保しているのだ、リルに対するアルフェンの深い愛情が垣間見える。
大いに呑み、喰らう。見る見るうちに空になった大皿や大鍋が片付けてられてゆく、次の料理は黒斗が用意しておいたつまみ料理各種である。凍らせていた生魚をソルベにしたり冷凍していた餃子を焼いたり、家に来る前に購入して来た大量の新鮮な卵を使い、カニ玉を作ったりとここらでは珍しいであろう和食や中華を披露した黒斗、空腹感も鳴りを潜めていた頃合いなのでこれらの料理と美味い数多の酒を愉しみつつ一番の肴である皆での雑談タイムが始まった。
「リルちゃんの傷はどうだ? 全快したか?」
「こまけぇのはほぼ治った、ガキも産めるって話だ。だが無くなっちまった所は……まだだなぁ、可愛い乳首一個とクリちゃんがそうだ。オマンコはまあガバガバだがこっちは俺には丁度いいサイズでなぁ! くははは、毎晩啼かしまくってるぜェ」
「むぅぅ……恥ずかしい……アル兄の意地悪」
「うおっとすまん、こいつら相手だと今更でなぁ……どうでぇリル、治ったら皆で四Pと洒落込まねぇか? 鱗華に抱かれたいんだろ?」
デリカシーのデの字もしらないアルフェンの物言いに最初こそ赤面していたものの黒斗と鱗華の二人がまったく動じず、自然体のままであったので段々気にならなくなってきたリル、順調に彼等の色に染まってきたようである。
「お姉様はいいけど……黒斗さんの事はよく知らないし……ちょっと怖い……けど頑張る」
過去の凄惨な記憶をほぼ克服したといっても過言ではないリル。黒斗に関しては自分を助けてくれた恩人という事もあり嫌悪感等は無いのであるが、その巨体とアルフェンよりも巨根で乱暴なプレイが好きという話を兄貴分から聞いていた為、やや不安感がある様だ。
「リルさん、別に無理はしなくていいんだよ、俺はリンカとリルさんが絡んでるのを眺めてるだけでも丼メシ五杯は食えるしな!! なんなら鱗華を三人掛りで嬲ってもいいし、俺の事は気にしなくても良いぞ」
「ありがとう……でも……ホントに治るのかな……」
途中で下ネタトークに脱線した為、肝心の事を伝え忘れていた黒斗達。あわてて二人に悠大から聞いた話を簡略化して伝える。
「――ってわけで深部の温泉にいけば治る可能性は高い! んでここに返ってくる途中で俺とリンカの二人で既に見つけてあるんだ、しかも話に出てきたアロケン王の使っていた温泉だ」
「そいつぁすげぇ! 予定を立てて湯治に行かないとだな」
「しかもかのアロケン王の友だったっていう会話が出来る魔竜もいてな? その温泉の魔素で生きてて、そこらは彼女の縄張りなんだが、いつでも誰でも連れてきて良いって言ってくれてさ」
「凄く仲良くなっちゃったんだ♡ビューネっていうんだけど良い……人? 良い魔竜だったよ」
「ちょっと何言ってンのかわかんねぇ……会話できる魔竜? そんなのもいるのかよ……深部やべぇな、リルも大分鍛えたから一般的な鉄級程度くらいの強さにゃあなってるが、まだ厳しいかぁ」
「着いちゃえば安全な場所なんだけどね、皆で護衛してさ、着いたら湯治しながら修行しよう!」
リルを鍛え上げて一緒に冒険に出掛けたい鱗華としてはなるべく早く大好きな妹分の傷を完治されてやりたいのだ、無茶な提案にも聞こえる為アルフェンはやや渋面を作って返答を濁す。リルに何かあればと考えるとつい過保護になってしまうのは仕方の無い事だろう。一度は失ったと勘違いし、己が胸をその爪で抉る程に追い込まれていた時もあったのだから。
「アルフェン、大丈夫だ。問題ない」
「なぜ言い切れる? いくら俺達が一騎当千の三人とはいえ深部の竜種や他の魔竜に襲われた時に100%守り切れるかァ?」
「三人じゃなければ? どうだ?」
「…………ボルボルか? 確かに心強いが……せめて後一人」
「心当たりがある、下手したら俺らよりも強い超級の
黒斗の言葉にぽんと手を打って得心した鱗華、あの人が来るならなんの問題も無い、五人で安全に連れて行けると確信できたのだ。
「ジェノガルドの王様の話したよね、炙り出す目的でわざと恋人の亜人を虐げて差別主義の奴等を特定して処理した王の事」
「ああ、王様が悪くねェてのは聞いた、逆恨みはしねぇよ」
「その王様の、今はフィアンセかな? 虎人族の人なんだけどなんと白銀級で、
その名を聞いたアルフェンの顔が驚愕に固まる、獣人系人類種の間では超が付く程の有名人だからだ。大樹海を荒らしまわった有り得ない程に強い美女。或る時金級昇格の要請を蹴って国許へ帰っていった伝説の冒険者――まさかジェノガルド王の婚約者になっているとは思いもよらなかったと、アルフェンは強力な援軍に破顔して喜んだ。その布陣であればまったくなんの心配もなくリルを温泉まで送り届けられるだろう。
「明日にでもギルド経由で連絡してみよう、リルの件に関しては最優先で対応してくれるっていってたし、問題ないだろう」
「来るとしても暫く掛かるだろうからその間にお祝いのプレゼント用意してバルガスさんとユニーさん所にも行かないとだしね」
「ああ、そうしたら久しぶりの街だ、美味いメシと酒と世界最高の美女だな!!」
「早く犯されたいよぉ……もう疼いちゃって疼いちゃって……クロトじゃない男達に肉便器として扱われたいよぉ……♡」
「おっいいねぇ……ちょっといい場所の情報を仕入れてな、アルフェンとリルも一緒に行こう、二人は見てるだけでいいから大丈夫だ」
蕩けた表情で喘ぎ始めた欲求不満の鱗華。その様子をとろんとした瞳で息も荒く見つめているリル、興奮している様だ。尊敬する女性が野獣達に蹂躙される場面を想像して疼きが止まらないのであろう。明日の予定をサクサクと決めた一行は深夜まで尽きぬ話を語り合い続け、適当にお開きにするとそのままアルフェンの家に泊まって男女で分かれて床に付き、眠りに落ちた。
誤解の無いように記しておくが、黒斗とアルフェンの止まった部屋はツインの部屋である。鱗華とリルの部屋はダブルベッドであったのだが――まぁ些細な事だろう。