※この作品はR-18です。

儚き女神(上)と伴に崩壊世界で…   作:マンションの1室

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お久しぶりです。マンションの1室です。
もはや、崩壊世界シリーズの先駆者様がいつの間にかいなくなって、更新者が私ともう1方になってしまいました。
どうしてこうなったのか私にもわからん。(←無能)

詰め込めるだけ、詰めっ詰めこもうぜとした結果、何がしたいのかわからなくなりましたがそれでも良ければどうぞ↓



呼ばれて飛び出てぽんぽこりん!

前回のあらすじ

 

元凶「もし、成す事がないのならば許しません」

 

ただの人間?「ハイ…」

 

 

あらすじ終わり

 

 

 

「対複数戦ですか?」

 

「ええ、はい…1対1ならなんとかなるとは思うのですが……」

 

「ふむ…本来ならば、人数を揃えて教授するべきなのでするが、いいでしょう。ならば私がほぼ同時に複数方向から同時に矢を放ちます。それを避け続けるように」

 

え?と質問する間も無く、瞬時に目の前からいなくなったケイローン先生。上かと思ったのが遅く、首の後ろへ衝撃が走り、前へ倒れこんでしまう。

 

「戦いはいつ起こるのか、いつ始まるのか。決闘では無いのですから少なくともヨーイドンでは始まりませんよ?ちょうどいい機会です。不意打ち、騙し討ち、詐称、フェイント、その他騙してくる動きや言葉も知っておきましょうか」

 

痛みを堪えつつ、少し離れた距離にいるケイローン先生を見る。しかし、よく見る間も無く姿が消えた。

いや、単純な話である。俺の視野が狭くなっている。集中するという事は、前方ばかりに目線を向けてしまうのは俺の悪い癖だ。絶対この周囲にいる。

矢を放つという事はそれに付随するものが必ずある。弓を引く音、狙う視線。その諸々を感じるようにしなければならない。注意しろ。

弦の弾く音が横から聞こえた。その方向に目線が向くが肝心の矢が無い。なぜと思う間もなく背中に衝撃が走る。

 

「音に頼るのもたまには必要ですが、今回はフェイントです。そら、次をやりますよ」

 

今度は地面を踏む音が複数聞こえる。完全に包囲されているような感じが俺を包む。

今度は目の前から矢が接近している。それを避けようとして横へ移動したまでは良かった。

 

「右からもきますよ?」

 

その言葉を聞こえた。いや聞いてしまったが故に意識が逸れた。左(・)から来た体への衝撃に悶えてしまう。

 

「…とまぁ、個人でやれる事への限界はあるのです。もし、可能性を産むとしたならば、全体を1度に捉えれる技や、相手の行動を制限する立ち回り等が挙げられますね。白島さん、貴方が何を思って聞いたのか分かりかねますが、今の貴方に先程挙げた事が出来る技量は持っていますか?」

 

問われた質問に何も返答できず、押し黙ってしまう。

確かに言われた通りだ。俺が今までしてきた事はほとんどが1対1、もしくはそれに近い形式だ。1人排除してからまた1人と向き合う。そんな形だ。

宮本武蔵のサーヴァントの主従と一緒に戦った時でさえ、最初はほぼ囲まれた状態で絶望的な状況だった。今思うとあれは無謀だった。勝算は無いに等しく、援護がなければ負けていたと思う。かと言って反省するにしたところで、今の俺にはコレと言って手段があるわけでも無い。少し前と今も変わらない。

何か、ケイローン先生が妙案があるかもと思って聞いたのだが……結果はコレだ。擬似とはいえ、数の暴力に手も足も出せず、地面に這いつくばるしかできていない。

これほどまでに差があるとか、どうこうすればとかいうレベルでは無い。模擬でこれなのだ。実践ならば……考えたくない。

 

「人間には動いたとしても、死角というものがどうしても発生します。それは片目でおおよそ180°。そして、向かってくる存在を把握するのに必要な、立体的に見れる所は両目で重なる範囲のみ。この時点で、複数人に囲まれるのが如何に不利か分かりますか?」

 

その質問に対して頷くしかない。

 

「白島さん。……貴方は一体何を焦(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)の(・)で(・)す(・)か(・)?」

 

核心をつく問いに、また沈黙。

 

「まぁ答えにくいならば、答えなくてもいいでしょう。ですが、今やっている事は間違いです。貴方がやるべき、するべき事は他にもあるでしょう?今日はここまでにして、他の事をしてみては?」

 

その問いにただ首を横に振る。まだだ。まだやれるとケイローンを睨みつける。

 

「……聞き分けのない人を相手にするのは久しぶりですね。いいでしょう。教えを乞われて拒否するのは教師の名折れ。ですが、ギアは上げていきますよ」

 

今度は真正面から弓が来たかと思えば、途中で勢いがなくなりる。しかし、その矢が地面にあった石に当たり、その石がかなりの勢いで飛んでくる。

石を叩き落としたまでは良いものの、意識はそこに割いたせいか、ケイローンの姿を見失ってしまった。

そう認識をした途端に背後から衝撃。堪えて踏ん張ってみるも、今度は別方向からの更なる痛みにくぐもった声を出してしまう。

これではダメだ。もっと、何か…やれる事を探せ。

血液と回路を混ぜる。後影響の事は後回しだ。

しかし、いくら反射速度を増やしたところで認識外からくる攻撃は避ける事ができず、都合10回を越えてからは全身の痛みに耐えられず、うつ伏せに倒れてしまった。

 

「おや、もうダウンですか?」

 

その返事の声は出さず、ただ倒れただけだと目で訴えながら立ち上がる。

 

「……まだですか。いいでしょう。貴方が懲りるまでやってみせましょう」

 

正面から来る矢の散弾。背後からの澄ました一撃。頭上からの音によるフェイント。左右からのほぼ同時に着弾する矢。そんな事が続き、終いには直接投げられるようになっていた。

全部が全部。俺を殺すまでには至らないが、それも全てが必殺。本気なら1つまともに当たれば死ぬ。

その全てを受けた俺は、目の前の事もかすんでよく見えず、うつ伏せで呼吸をするしかなくなっていた。血液を混ぜた強化はいつの間にか解除していて、全身を様々な痛みが支配していた。

 

「う……ぁ…」

 

「ふむ、やはり、防御する点においては目を見張るものがありますね。脳震盪にさえ至っていないのが驚きです。意識を刈るつもりで行動しましたが……いくつかをまともに受けたにしてはまだ意識がある。ですが、これで最後です。何を伝えたかったのか、及び反省会は目を覚ました時に」

 

指を動かそうとしても痛みが走り、結果的に動かせない。ケイローンが近寄って来るのを止める事さえ叶わない。地面に這いつくばりながら唇を噛む。

やっぱり、俺は英霊(サーヴァント)には程遠いのだと。いくら自己強化ができるとはいえ、結局の所、それは人間としての延長線上でしかない。そもそもの話として出力できる基礎のしてのパワーが違いすぎる。どうしてある程度は叶うと思ったのか。己の愚考を反省するしかない。

頭の中をよぎるあの時の誓(・)い(・)。それさえ守れないのか。

足音が頭の横で止まる。

おそらくこの1撃で俺の意識は完全に刈り取られる。次に起きる時は日付は跨がないといいな等と半ば現実逃避をしながら目をつぶる。

 

「そこまでです!」

 

声が聞こえたと同時に顔の横に足が見える。少しぼやけ、未だに見えにくいが大まかな姿は顔を上げたら見えた。

 

「馬の賢者ともあろう者が、弱いもの虐めとは感心しませんね。戦いであればこれくらいでいいでしょう。倒れている者は戦意はもうありません」

 

「貴方は……確か牛若丸さんでしたね。いえ、これはただ教授しているだけで」

 

「問答無用!牛若丸、参る!」

 

そうして、顔を上げればどこからか来た牛若丸がケイローンと戦っていた。しばらくして来ると、ぼやけていた視界が少しづつだが治って来て、その展開がわかるようになった。

刀を振ればケイローンが紙一重で躱し、返しで掴もうと手を伸ばす。それを躱し、返す刀で腕をなぎ払おうとさらに刀を振る。

矢を射られれば牛若丸が刀で叩き落とし、瞬足を活かし瞬時にケイローンとの間合いを詰める。それを地面にあった石や岩、矢を使い妨害。更に距離を空ける。

時たまにケイローンが、空中にいた牛若丸を狙おうとして放つ矢が牛若丸に当たらず、外れているのが気になるが拮抗状態とも言える戦いが繰り広げられている。

 

「ええい、逃げてばかりで埒が明きませんね。こうなったら…!」

 

「来ますか、宝具!」

 

牛若丸が立ち止まり、魔力を練り上げる。

風が舞い上がり、魔力の流れが充満する。

 

「遮那王流離譚が四景!壇ノ浦・八艘跳!」

 

瞬間、牛若丸の姿がただ1人見ていたのに増(・)え(・)た(・)。

牛若丸の背後から2つ、3つと増え、ついには出した本体も含めて合計8体のそっくりそのままの牛若丸が姿を現した。

そのそれぞれが緩急を付けてケイローンに襲いかかろうとしたその矢先、急に上空から牛若丸に向かって矢が降り注いだ。

 

「なんと!?」

 

「この私がたかだか上にいる相手に、矢を外すと思っていたのですか?そら、余所見は関心しませんね!」

 

初撃の矢で分身の数体を消し、ケイローン自身から放たれた矢で更に1体消した。しかし、それでも牛若丸の分身はまだ半分は残っている。

その中の1体が背後から強襲、1体が前から突貫して挟み撃ちの形にするが、ケイローンが前から来た分身を勢いをさずに背後の存在へと投げ、その体を蹴り飛ばす。飛ばされた分身の1体が消え、残りは3体。

 

「ッ…!これは予想外。ですがまだまだ!」

 

残り少ない数となった分身で隙を埋めるように連撃を繰り出す牛若丸。人数は少なくなったはずなのに、その攻撃は苛烈。ケイローンが弓を引く動作も許さないほどの連携が取れていた。

しかし、ケイローンもそれに負けじとできる限り死角を潰すように移動し、対処する。

その均衡はしばらく続いたが、終わりは唐突に迎えた。

牛若丸が周りを駆け巡ったせいで土煙が舞い視界が少し悪くなったせいだろうか、ケイローンが牛若丸の分身に、拳で1体を倒した。

だが、貫いた拳が分身の体は消えたが、もう1人の牛若丸が貫いた先で抑えていた。抑えられた拳ではない反対の腕で分身を倒すが、その隙という好機を見逃す牛若丸では無い。振り切った直後で、体制を整えていないケイローンの真正面から牛若丸が飛びかかる。

 

「獲った!その首、御免!」

 

「……知っていますか?星は昼でも動いているそうですよ。私の弓はたとえ地平の先に沈んでいたとしても、当てますよ」

 

その言葉が聞こえたと同時に轟音と共に降り注ぐ一条の光。

土煙が上がり、途中で見えなくなるが、煙の直上から見える光の位置から察するに牛若丸のいたところだろう。

ケイローンの宝具『天蠍一射(アンタレス・スナイプ)』。

それは詳細は伏せるが、特徴としては真名解放の手順をすっ飛ばして起動するという異例の宝具。弓を引くというタイムラグをなくし、狙ったところへ放つ天からの一撃。

その一撃が牛若丸がいたであろう位置へ放たれていた。

土煙が晴れる。そこにいたのは……。

 

「私の負け、ですね」

 

「えぇ、ですが正確な事を言えばア(・)レ(・)がなければ今、私は倒れていたはずです。貴方に感謝を。良い経験になりました。私もまだまだですね」

 

いつの間にかケイローンの背後に立っていた牛若丸が、ケイローンの首筋に刀を添えていた。

 

「お前達、そこまで。よくやった。牛若丸」

 

「主殿!見てくれましたか!あぁいえ、見てくれていたからそれを使わせたのでした。不肖、牛若丸反省」

 

俺の隣から少ししゃがれたような声が聞こえた後に、牛若丸が刀を素早く収め、ホップステップジャンプの3歩で一気にこちらへ来た。

その姿を見ようと何とか立ち上がろうとして、腕に力を入れようとするが自身の体を持ち上げることも叶わず、地面へまた倒れ込んでしまう。

 

「白島さん。意識は…あるようですね。唐突な訪問であり、サーヴァント戦という多数のイレギュラーがある状態ではありましたが、おそらく、貴方が想定していたような状況だったはずです。どうです?何か掴めましたか?」

 

ケイローンが俺の腕を掴み、無理矢理立ち上がらせながら問う。

確かに言われたとおり、状況としては多人数戦。しかも、お互いの切り札を使った全力の戦いではあった。だからこそ焦(・)る(・)。

この記憶を忘れてはならない。

そこまで思考をしたところで、元々限界に近かった俺の意識は唐突に途切れた。

 

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旗艦□□□より随伴艦□□□□へ

作戦名 プラン□□□□□□の進捗報告を。

 

随伴艦□□□□より旗艦□□□へ

進捗報告。現在、□□状態は良好。しかし、懸念点が想定以上に存在。大元の□□□□が以前の想定通り、□□が難しく□□□が多発。

 

旗艦□□□より随伴艦□□□□へ

この回線において艦名及び題名は省略。

『ふむ、やはり難しいか』

 

『はい。□□□□の□□があれど、□□□が□□してしまう事は避けられません』

 

『だが我々には□□が無い。いつまでも待つ事は不可能だ』

 

『お待ちを!□□□□はどうするのです!?これでは彼女を□□した意義が』

 

『アレの□□性はそちらが1番良く知るだろう。残れば□を向ける。そうなれば我々とて無事ではいられん』

 

『………しかし、やはり』

 

『踏ん切りが付かぬか。ならば勅である。現時刻を持ってプラン□□□□□□を廃棄。□□□□□は□□に則り、□□にせよ』

 

『………勅であれば。仰せのままに』

 

 

 

「ごめんなさい……本当にごめんなさい……。私は貴女を□□したのに、役(・)目(・)さえも果たせず□□する事に……!」

 

透明な壁の向こうで女性と思わしき存在が悲痛な声をあげる。

 

ああ、泣かないで。ダメだったのは私が1番良く知っています。

きっと存(・)在(・)が(・)許(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)な(・)い(・)のでしょうね。

だから完成しているはずなのに不完全。完璧なはずなのに欠けている。……いえ、完成はしていないのでしたね。

理論上効果はあるはずなのに、一向に出る兆しは無い。ならば別の道を模索する事は道理です。

だから泣かないで。私を□□□てくれた、愛しい愛しい□□。

 

声をかけようとしても口を動かす事は叶わない。目も何かで覆われており、非常に見えにくい。体も何かで固定されているようで動かせない。

まるで虜囚だ。虚ろな私は容易く□□されるだろう。

 

「でも決して無駄にはさせない……させるものですか。どんな形であっても残す。それが私という□□なんですもの」

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なんだか明るい。

そう認識した途端に、見ていた景色から一気に引き上げられる感覚がする。いや、これは感覚じゃない、錯覚だ。

目を開けると同時に、先程までのは夢だったのだと認識する。

だが、ただの夢と断じるにはか(・)な(・)り(・)異(・)常(・)だ。

前にもこんな夢を見たが、今回は更に違う。

前は、俺のよく知るはずのサーヴァントの記憶だった(はず)が、今回はFate作品であるマスターがみるサーヴァントの夢に近い。そのはずなのだが…明らかに疑問点が多い異常だ。

何だあの空間は?何だあの会話は?そして極めつけは、あの女性と思わしき存在は誰だ?全く、あのような全てが疑問に思うような状況は全く覚えが無い。

そこまで考えたところで頭痛が走る。そして、ここはどこだと思考を切り替える。

天井に見える、家とは違い心もとない程度の灯り。寝ていたベッドは簡素なものであり、固い感触が未だに背中に感じる。かけられていたシーツも薄く、ある程度使い回されている感じだろう。

降りて立ち上がろうとしたが脚に力が入らず、体重をかけようとして、隣の壁へ体ごとぶつかる。

 

「見事に倒れていたわね。おはよう、でいいのかしら?あなた?」

 

その声に、少し場都合が悪くなったような感じを覚え、軽く笑って返事を返す。

目の前には、後ろの光帯を外し、ベッドへ腰をかけているステンノ様。その外した光帯は俺とは反対方向の机に置いてあった。

 

「分かっているかと思うけれど、ここは医務室よ。あなたは倒れてここまで連れて来られたの」

 

「ええ、わかっていますよ、でもそんなことより…」

 

「そ(・)ん(・)な(・)こ(・)と(・)よ(・)り(・)、何かしら?」

 

ふと、疑問点を聞こうとしたが、喉元まで出かかって引っ込めてしまった。確証が無い。もっと決定的な何か…そう、必要な事を見落としている気がする。

それがわからない状態で聞いたところで、誤魔化されるのが目に見えている。

 

「……やっぱりなんでもないです。周りに人は?」

 

「私達だけよ。今は怪我をして寝る必要がある人間はいないようね。だからずっとあなたを見ていても支障は無かったわ」

 

「そうですか…他の人達はどこへ?」

 

「さぁ?知らないわ。時間的には…そうね、食事でもしているんじゃないかしら?でも忙がないと平らげられているかもね」

 

時計を見て返事を返すステンノ様。食事の話を出されて、急に胃の中身が空っぽなのを実感した。

ベッドを支えにして、立つ。その姿を見届けた後、ステンノ様は光帯に触れて背中に光が戻る。

 

「行きましょう。マスター」

 

「……そうですね。ステンノ様」

 

ステンノ様の手握ろうとして、少し躊躇った。

まだ早いかしら…でも…

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食事処に着くと、ある程度片付けている最中であった。きっと大人数であっただろう。しばらく前に、ここにいると言っていたハベトロットの姿も無い事から、どうやらほとんど人数が終えた状態らしい。

しかし、人が全くいないというわけでは無く、そこにはケイローンとそのマスターの松葉さん、そして、牛若丸とその隣にいる、いくらか歳を取っているであろう傍らに杖が置いてある老人がいた。

しばらく呆けていると、ケイローンからこちらですと声をかけられた。その声に軽く返事を返して、その隣に座る。

 

「時間にして…数時間ですか。白島さん。お腹も減っていることでしょう。どうです?食事はいかがですか?」

 

「ええ、いただきます」

 

「女神ステンノ、そちらは?」

 

「ええ、いただくわ」

 

「了解しました。マスター、2名分となりますので、手伝って下さい」

 

「あぁ、わかったよケイローン」

 

そして、牛若丸と、あの時俺の隣に立っていた人と面と向かい合う形になった。

老人がゆっくりとした動作で、湯呑みに入れられた茶を飲み終えると1言。

 

「私は船橋(ふなばし)。気軽にそう呼んで下さいな」

 

「あっどうも、ありがとうございます。俺は白島…白島陸です。そして隣にいるのが、女神ステンノ。サーヴァントです」

 

「そうなると、白島さん。貴方は『えふじーおー』とやらを知っているのだね?」

 

「はい、このスマートフォンでやっていました」

 

そう言って、ポケットから僅かな期間で結構傷が入ったスマートフォンを取り出す。

こうして持ち歩いているのだが、これでもまだまだ現役なのだ。アマゾネス・ドット・コムが利用出来るようになってからは、このスマートフォンでやっていた事をPC等に分割していき、現在は各種連絡などをするくらいに収めている。

 

「ふむ、お嬢さん。ステンノと言ったかしら?貴方はここから出て来たと」

 

「少し語弊があるかしら。出て来たと言うよりかは召喚…ああ、でもこれでは出て来たという表現でも間違いはないのね。似たようなものですし。少し釈然しないけれど、そういうことにしておきましょうか。ところで、なんでそういう事を聞いたのかしら?」

 

「……牛若丸」

 

「はい!分かりました、主殿。仔細は省きますが、この私、牛若丸はいわゆる仮契約の状態にあるのです。それで主殿は個人的にはこのまま契約していいと思ってはいるのですが…」

 

「ダメよ。貴方みたいな活気ある若者が、私みたいな、いつ死ぬかもわからない者に付き合わせる道理は無いわ」

 

「……主殿、以前申し上げましたが。サーヴァントとは本来、いてはならぬ者。人類史における影法師なのです。そも、私は既に死んでいる身。第二の生と呼べば聞こえはよいですが、その実、マスターという楔がなければ存在さえできない儚き存在。異物と認識されれば、世界から消されるでしょう。その点、言ってしまえば、目の前の女神も同じでしょう。見てくれだけは若いままですが」

 

「あぁ、そういえばそんな事言っていたわね。嫌ねぇ、歳を重ねると忘れっぽくて……何の話だったかしら?」

 

「なぜ携帯から出てきたか。といった質問に対してですね。主殿」

 

「ああそうそう。そうだったわね。私はね、未だに信じられないのよ。こんな子が人間じゃないだなんて。直接出てくる所なんて見たわけでもないから」

 

「直接見たわけでもない…ということは」

 

「えぇ不肖この牛若丸。元は野良サーヴァントです。あてもなく彷徨っていたらただならぬ怒号や喧騒が聞こえて来まして、何事かと赴いてみたらですね。集落が魔物に襲われていたのです。その時ですね。マスターがいない、魔力も限界が近い状態だった私は主殿に拾われたのです!」

 

「やりすぎです。お止めなさい。あの時は私もいっぱいいっぱいだったのよ。暮らしていたあの所が襲われて、魔物が入って来て……あぁ思い出したくも無い」

 

「藪蛇だったかしら。申し訳ありません」

 

「いいえ、いいのです。もう過ぎた事ですから」

 

一通り言葉を交わした後、また湯呑みに口を付ける船橋さん。こころなしか湯呑みを握る手が少し強まった気がする。

この反応から察するに、まだそう時間は経っていないのだろう。それがここ最近なのか、それとも1月は経っているのかは定かでは無いが、まだ記憶としては新しいのだろう。

それでも、心の中で折り合いはつけているのだろう。勢いが強かった牛若丸を一喝できるくらいにまでは落ち着いている。

その記憶に対して、俺は肯定も、同情も、何かをすることはしてはいけない。ただ、黙る事しかできない。ただ、その巻き込まれた他の人間には冥福を祈るくらいには罰は当たらないだろう。目を閉じて少し祈る。……まぁお門違いだろうが(サーヴァントとはいえ)神は隣にはいるのだが。

しばらくすると、焼けた匂いをただよわせながら歩く音が聞こえ、テーブルの上に魚を載せた皿を乗せた。

 

「失礼、会話の途中でしたか?」

 

「いいえ、大丈夫です。それよりも魚を出すのは珍しいですね?いつもなら他との貿易で手に入れたものなのに」

 

「あぁ、つい最近の事ですが、養殖場だった所に安定して人材を送りこめるようになりましてね。いつの間にか溢れるくらいに増えすぎた魚を間引く目的で、こうして持って帰って来ていたのです。あと、湖の方面で取れたものも合わせて、今は在庫はそこそこあるのです。遠慮なく食べてください」

 

松葉さんが隣に座る音を聞きながら、箸を握り、手を合わせる。塩気がよく効いた魚をつつきながら、船橋さんの所には湯呑み以外何も置かれていないのを聞くと、もう既に食べていたとの事。ならば遠慮はする事は無いと塊で取れてしまった身を口にほうばる。

ステンノ様も長い間に慣れた箸使いで魚をつついていた。

 

「さて、それでは突然ですが、反省会としましょうか」

 

ケイローンからの声を認識した時に、飲み込もうとした魚肉が気管に入ってしまい、むせた。しばらくむせこんだあと、慌てて松葉さんが水を出してくれ、一気に飲み干す。

喉の痛みを咳が止まってしばらく耐えたあと、松葉さんに一言礼を言い、ケイローンに後ではダメかとを投げた。返答は鉄は熱いうちに打てという言葉知っていますか?と言われてしまい、しぶしぶ魚をつつきながら了承の返事をするしかなかった。

 

「私がやった方法は、いわゆる擬似というものです。それを踏まえて結論から。何の方法(武器)も無いままに、個人が勝つ方法は無い。それほどまでに、数という有利は絶対的なのです。私がそこの牛若丸さんにあれだけ善戦できたのは、先を読んで矢を置いておいたから。もし、それができなければあっという間に討ち取られていましたね」

 

「いやいや、結局の所、私も主殿の令呪がなければ最後の一撃で屠られていましたとも。貴殿の卓越した弓の技術に圧倒されたのもそうですが、やはり決定的なのはそこですね。なんですかあの宝具、ずるすぎませんか?」

 

「ははは、企業秘密というものです。ところで牛若丸さんと船橋さんのこの後のご予定は?」

 

「特にはないですよ。馬の賢者様」

 

「それでは少し時間と魔力を貰えますか?ちょうどいいところに分身を使える人が来たので」

 

「……もしかしてケイローン殿は、私を忍者か何かだと勘違いしてなさる?」

 

「いえ、違いますよ?ただ分身を使っていただいて、特別講習としたいだけなので」

 

「やはり勘違いしてますよ!この人(?)!そも、あくまで分身は私の宝具によるものです。どこぞの忍者のように技術ではないので魔力消費が」

 

「あら、私は一向に構わないわよ?」

 

「主殿!?」

 

「女神様も、そちらのマスターをまたお借りしますがよろしいですか?」

 

「お好きなように」

 

「ステンノ様!?」

 

静観していたら、いつの間にかこの後の特訓の予定までするすると決まってしまった。

食後の後、すぐに始まり、また手も足も出ない状態になったのは言うまでもない。

一通り終了した後、夜も遅くなり、帰るのは危険だと言う事でシェルターの寝床を借りて、朝まで寝る事にした。

 

しかし何故か眠れない。仕方がないので、シェルターの入口まで赴き、入口近くにある川の近くで水面に映った月をぼんやり見つめる。すると、後ろから突然に声をかけられた。

 

「おや、誰かと思えば女神の主殿」

 

後ろを振り向くと、入口に寄りかかっていた牛若丸がいた。

お隣よろしいかとの質問が口から出てきたので、頷くだけで返す。

静かに隣に座った牛若丸とまたぼんやりと月を見つめる。

 

「……なぜ外に?」

 

「単に眠れないから。たぶん、さっきまで戦っていたからまだ気が昂っているんだと思う」

 

「なら、もう1戦ほどやりますかな?」

 

「いや、結構。体がダメなだけで、今そんなにやる気は無いんだ」

 

「そうですか」

 

また訪れた静寂。しばらく見ていると、川から魚が見え、泳いだ波で水面の月が揺れた。

 

「そういえば、聞いていませんでしたね。貴方は何故こんな辺鄙なところにいるのですか?利便性などを考えると、ここから離れ、より物が通う道の近くにいるのがいいとは思うのですが」

 

ふと出た、牛若丸からの質問にしばらく考えこんでしまう。

そんなこと考えた事も無かった。それでも答えるとするならば…

 

「そうだなぁ…あえて答えるとするなら……。ステンノ様が人間をあまり好きじゃないから…かな?」

 

「ああ、いえ、質問が悪かったですかね。私は貴(・)方(・)の意見が聞きたいのです。サーヴァントとは本来、マスター(契約者)に従うもの。しかし、主従の形はそれぞれでもある。それは承知の上です。だからと言ってサーヴァントを優(・)先(・)させる理由にはなりません。あらためて問います。何故ここにいて、何(・)を(・)思(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)の(・)で(・)す(・)か(・)?」

 

「それ…は…」

 

こちらを見つめる目は、しっかりとこちらを見つめ、答えを待っている。答えにくくて逸らした視界の端に映った水面の月が更に揺れた。

 

「こんな涼しい月夜ですもの。たまには思ってもないことを言う。そんなこともあるんじゃないかしら?」

 

「……失礼。戯れが過ぎましたかね。誰かがいる気配はしていましたが異国の女神。まさか貴女とは」

 

「当然よ。こんな良い夜ですもの、夜空を見上げるのも悪くはないわ。でも、もう良い時間ね。寝床に戻るわよ。マスター?」

 

その質問に軽く返事を返し、立ち上がる。しかし、隣にいた牛若丸は立ち上がる素振りを見せない。質問するとまだここにいるとの事で、手を振ってきたので振り返し、シェルターの出た所からステンノ様と一緒に戻る。道中、ステンノ様に牛若丸と一緒いた事に関して詰められたが、何もなかった(事実)事を必死に説明して事無きを得た。

 

 

 

「行きました……かね?」

 

夜空に向かって独り軽くごちる。

誰かがいる気配はしたと言ったのは嘘だった。つい、あの瞬間まで誰もいないと思っていた。

あの女神の気配遮断の位(ランク)はいくつだったかとか、いつから気がついていたのかなどなど、空を見上げながらぼうと考える。

立ち会いの際にうっかりしないよう、ある程度は手は抜いていたが、サーヴァント相手に刀と拳を合わせれる等その時点でちゃんちゃらおかしい。本人はただの強化だと言ってはいたが、あれは別(・)種(・)のものだ。ただの強化のみで、魔を切る神秘を纏うこの『薄緑(刀)』とサーヴァントほどの神秘が乗りずらい拳で打ち合える……前提が違うのではないか?つまり、ただの強化なんかではなく……。

そして、戦う際に見えた事(・)。あれは迷いがある目だ。戦場においては迷いを抱える者は死に近づく。それが敵であれ味方であれ、変わらない。単純に動きが鈍(にぶ)るからだ。それならばと聞き出そうとしたのだが、あの女神に妨害されてしまった。いや、そのつもりだったのではないか?つまり、迷(・)う(・)事(・)を(・)良(・)し(・)としているような…?

そこまで考えて首を横に振る。情報が少なすぎる。これ以上の思案は推測の域を出ない。考えるだけ無駄というものだ。

 

「待たせたね。牛若丸」

 

「主殿」

 

後ろから声をかけられ、夜空から目を離し、振り返る。

そこにいたのは恩を返した我が主殿(マスター)。

よろしいのですかと問うと、もういいとの返事が返って来た。荷物もしっかりと背負っている。

そこまでしなくても呼べば取りに行きますのにと声をかけつつ、主殿を背負う。

とりあえず、これで1宿の恩は返したものとしていいだろう。

夜空に向かって飛び上がる。

次は何処へ向かおうか?気の向くままに。

 

 

翌朝、牛若丸が買って出た深夜の警備から交代しようと、とある人がシェルターから出た際。入口の隣にズラリと並べられたいくつもの魔物の首が並べられており、頭部を無くした死体が雑に積まれている光景を目にした人が腰を抜かしてしまったらしい。

いちおう毛皮や鱗等の再利用できる部分は多いらしく、ある程度はなんとかなるらしい。

そして牛若丸とそのマスターはいつの間にかいなくなっていた。置き手紙はあったらしいが、中身は簡素な礼か記されていたのみらしい。

きっと、もう会う事は無いだろうが、もし会えたのならば礼を伝える事にしよう。そうメモに記した。




今回は12042文字でした。どんどん長くなっていく…呪いかな?(適当)

今回で色々と大きく動きましたね。動いたと言っても心情方面ですが。
え?途中なにか変だった?何言ってるのかさっぱりですね(棒読み)


(*´ω`*)キットマタハヤル

リクエスト箱いる?

  • いる(鋼の意思)
  • (いら)ないです
  • そんな事よりおうどん食べたい
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