ルフィ
ミホーク
マルコ
ロー
ドフラミンゴ
クロコダイル
イゾウ
シャンクス
カタクリ
線で区切ってあるだけです。飛んだりは出来ません。予めご了承ください。
【ルフィ】
私はそんな小競り合いを知らなかったけど、まぁ、海賊なんだから他の海賊との戦いだってあって然るべきだよねとも思ってた。読んでいた頃にその描写が無くても、今ここに生きているのだから、知らない事が起きたって不思議はないのだから。
銃弾も砲弾も弾き返すルフィ、切り刻むゾロ、蹴り飛ばすサンジ君を眺めつつ私も精一杯戦っていた。そんな時に、足に装着している短剣が海楼石で出来てるからか、近くに海楼石の物が来ると揺れて知らせてくれる事があり今回も知らせてくれた。
それにより分かったのは、ルフィに向かう銃弾が海楼石製のものだと言う事で、私は咄嗟にそれを庇っていた。ルフィが受ければ致命傷になるからと飛び出した私に、ルフィの悲鳴のような声が向けられた。
私を抱き留めて泣き出したルフィに、そんなに泣かないでよと思いながら、次第に痛みが薄れて行く現実を何となく受け入れていた。ルフィが無事で良かったと思えば自然と笑えて来て、でも泣かないで欲しくて謝る。
「ごめんね、ルフィ。大丈夫だから」
言葉はそれ以上紡げ無くて、そのまま意識が薄れて行く情けなさに、少し泣きそうになる。次に意識が戻ると船内に居るようで、必死に体を起こすとちょうど部屋に入ってきた所らしいルフィにこれでもかってくらい叱られてしまう。
でも、見た限りルフィには怪我がなくて、元気そうにしている。それが嬉しくて笑ってしまえば、ルフィからのお説教が長引いたけど、それでもやっぱり私は幸せだと思う。
叱られつつも立ち上がり歩き回る私にルフィは反省しろと言うけど、きっと私は何度でも同じ事をするから、反省なんて出来る筈もない。口先だけの謝罪なんて、きっとルフィは望まないから。
「ルフィが無事ならそれで良いの。だから、反省なんて出来ないわ」
「巫山戯るなっ!」
「本気よ。私は、世界中の誰よりも、ルフィの事が愛しいもの」
その瞬間ルフィが絡み付いてきて、ベッドへと強制的に戻されてしまう。何するのかと言おうとしたら、赤くなった顔でルフィは言う。
「俺も、同じ気持ちだから……もう庇わないでくれ」
「それは無「無理なんて言うなら、解らせてやるよ。どれだけ、俺が苦しかったのかも含めてな」」
ルフィはその瞬間男の顔で笑ったので、私は高鳴る心臓を抑えながら、優しくしてねと呟いた。私にルフィを拒むなんて選択肢は、存在しないのだから。
─────*
【ミホーク】
いつもの様に暇潰しにもならないと溜息を落としつつ戦うその姿に、綺麗だなと感心してしまう。それくらい、ミホークの立姿や動作は美しい。
姿勢が良いからだろうか。それとも、武術を極めているからだろうか。
立ち居振る舞いの美しさを脳内で褒め称えていたら、クリマタクトが揺れた。いくつも放たれた弾丸の中に、変色しているものがあるのに気付かされてしまえば、頭で考えるより早く体が動いていた。
他の弾丸全てを弾いて、でも、僅かにそれだけ間に合わない事が動き出していたから分かった。……間に合え!
祈るように願いながら弾丸とミホークの間に入り、痛みと言うより呼吸が出来ないような衝撃を受ける。咄嗟だったから、覇気を纏う事が出来なかった。
衝撃が落ち着いても感じるのはやはり痛みではなくて、熱さ。そして耳鳴りが邪魔して聞き取りにくいけど……ミホークが私を呼んでくれてる。
私を抱き留めてくれるその腕が、震えているのが分かる。その震えと同時に聞こえてくる悲痛な声が、泣いているように感じられて、抱きしめようと思うのに体が動かない。
「ごめんね、ミホーク。私は、大丈夫だから」
だから、そんなに、嘆かないで。貴方が無事なら、私はそれだけでいいの。
そうして私の意識は闇に沈んだ。それからどれくらいの時が流れたのか、目覚めた時にはベッドにいて私の動きに合わせて、手を握ったり頭を撫でたりしてくれるミホークがいる。
それを見て、笑ってしまう。ミホークが、無事で良かったと心から思って言葉を口にしたら、何故か盛大に怒られてしまって反省しろと言われるけど……それは無理。
「ミホークが無事ならそれで良いの。だから、反省なんて出来ないわ」
「巫山戯るなっ!」
「本気よ。私は、世界中の誰よりも、ミホークの事が愛しいもの」
体を起こしてみると起きられたので、放心してるミホークのそばを抜けて水を飲もうと歩き出し、窓から見える外に視線を向ける。とりあえず天候に異変は無さそうだと息を吐き出した時、突然伸びてきた腕が私の腰を強く引き、麝香の香る胸へと抱きすくめられた。
「ミホーク?」
問い掛けても答えは無く、ベッドに押し倒すようにして戻されてしまう。意味が分からなくて、呆然と見上げれば突然降ってくる唇。
「んっ……ふっ……!」
「主は、何を言ったか分かって居らぬようだな。……俺も、主が愛しい。だからこそ、もう俺を庇うな」
「無理よ……何度でも庇うわ。私にはミホークし」
言葉は最後まで紡げなかった。唇を重ねられて、奥まで蹂躙されて、その上でミホークがその隙間で言葉を向けて来るから。
「庇わぬと言うまで、辞めるつもりは無い。抱くぞ」
好きな人にされる事だから、それに否は無いけれど……私もやはりミホークを守る事は譲れないからと戦場に赴く覚悟でミホークを見詰める。
「受けて立つわ」
「良い眼をする……後悔するなよ」
互いの熱を感じながら、恐ろしく脈打つ心臓に少し静まれと願う。それでも、私がミホークを拒むなんて選択肢は、存在しないのだけは間違いようのない現実。
─────☆
【マルコ】
ロギアに程近い性質だからか、どうせ治ると思っているからか、マルコさんはいつも攻撃を避けずに直進して攻撃を仕掛ける。相手の懐に入る為なら平然とそれを行ってしまう。
マルコさんの悪い癖だわと思った直後、足に付けている短剣が揺れて海楼石の存在を知らせて来る。いつもの様に受けたら不味いと思ったのが先か、それとも違う理由なのか、それは私にも分からない。
ただ、体は自然と動いていたし、反省も出来そうにない。だってほら、私の体を撃ち抜いた銃弾は、海楼石だったから。
悲鳴のような声で名を呼ばれて、それに答えようと思うのに上手く声が出せない。痛いより熱い、衝撃が思ったより大きくて、痛みには慣れてる筈なのにと微かに思う。
抱き留めてくれる腕が優しくて、なのに泣きそうな顔で怒ってるそれに無事で良かったと心から思う。でも、悲しませてごめんね。
「マルコさ……ん、ごめんね。私、慣れてるから、大丈夫だか……ら……」
泣かないでと続く筈だった言葉は空気に溶けた。意識を取り戻した時、体を起こそうとしたら鈍痛が走り神経は無事だったらしいと知る。
それと同時に入って来たマルコさんは、私を見るなり怒り出した。それを見てつい笑いながら立ち上がると、スっと細められるその瞳を窓を背にして見詰める。
「反省なんて出来ないわ。マルコさんが無事で良かった」
「巫山戯るなよぃ!俺は怪我なんざ「治るからって無理するマルコさんを、皆がどう思ってるか分かったでしょ?」」
言葉を遮り言えばマルコさんは言葉に詰まったように口を噤む。だから私はそっと微笑む。
「マルコさん、今回は海楼石だったのよ。マルコさんは賞金首でこの船の要よ。……次があれば、また私は同じ事をするわ」
「……辞めて、くれ。俺も、気を付けるからよぃ」
「ごめんなさい。約束出来ないわ」
謝る私に悲しみに表情を染めるマルコさんは、けれども何も言わない。苦しそうな顔をしてるのは、私が言い出したら聞かないのを知ってるからかな。
「私にとってマルコさんは、世界の誰よりも愛しい人だもの、だか」
だから、悲しませても庇うだろうと続ける筈が、突然抱き締められたそれにより声にならない。そのままベッドに縫い付けるように戻されてしまえば、ただ呆然と見上げるしか出来なかった。
そんな私に、マルコさんは確かめるように問い掛けてくる。何処か、怒ってるような声で。
「その言葉の意味は、分かってるのかよぃ?」
「え?」
「どちらにしても、もう逃がしてはやれねェがなぃ」
その言葉と共に降ってきた唇を受け止める。逃げるなんて選択肢は初めから存在しないから。
唇の隙間から、もう庇うなと哀願されても、それは譲れないからと断れば、優しくしてやらねェよいなんて言われる。それと同時に脱がされる衣服を抵抗せずに見ていたら、マルコさんが困ったように笑った。
「愛してる。怪我人だってのは分かってるが、もう耐えられそうに無いよぃ」
「……私も、愛してるわ。ただ、その、初めてだから」
「痛みは与えねェから、あんまり煽るなぃ」
そうして重なった影が離れる事は、大分先まで無かった。生きているから触れ合えるのだと、私もマルコさんも痛い程良く知っているから、刹那の時さえ後悔しないように互いの熱を求め合う。
─────*
【ロー】
潜水艦だからこそ、定期的に浮上してその熱を外へ放出しつつ衛生面を考えて掃除する事が必要とされる。その最中に船が居たからと他所の海賊が攻めてきて、私達はモップを手にしていたのに戦いを強いられる事となった。
それについては敵船の彼等の武器と、私達の掃除道具を入れ替えてもらった事で解決したけど、ローは迷う事無く私の腰を抱くようにして引き寄せると自分の背後に私を立たせる。大人しくしてろよなんて言われて、何度戦えると言っても聞かない船長様に小さく舌を出した。
その直後降り注ぐ銃弾。ローは能力的に問題ないからと、ベポを庇う為に移動して覇気を纏いそれに対応した時、短剣が海楼石の存在を私に告げた。
慌てて振り向くとそれは明らかにローを狙っていて、能力では海楼石をどうにも出来ないからとローと銃弾の間に身を滑り込ませる。剃で移動し、どうにかローを海楼石から守れたけど、速度に集約しすぎて居た意識の為に生身で受けた銃弾により、恐ろしい程の衝撃が身体中を駆け巡る。
既にこれは痛みではない。呼吸が止まりそうな程の衝撃に、けれども衝撃の直後に感じたのもまた痛みではなく、熱さ。
ローが私を呼ぶ声を聞きながら、まだ戦いは終わってないからと笑顔を浮かべて大丈夫と口にする。でも、しんぱいかけてる、わね。
「ごめん、ね」
声が音になったのか確認する余裕も無く、私の意識は暗転しローの慟哭のような悲鳴が聞こえた気がした。その後、意識を取り戻した時には船内にいて、体も動くからと起こしてみるとローに思いっ切り睨まれてしまう。
でも、ローが無事で良かったとお小言の途中で心から思って口に出せば、ローから反省しろと言われるけどそれは無理。だって私は。
「ローが無事ならそれで良いの。だから、反省なんて出来ないわ」
「巫山戯るなっ!」
「本気よ。私は、世界中の誰よりも、ローの事が愛しいもの」
そう言って私はベッドから立ち上がった。今は海上に船があるらしく、窓から空が見える。
その時簡単に腕に閉じ込められて、その勢いのままにベッドへと沈められればそのまま深くキスをされる。抵抗する気になれなくて受け入れると、ふと離れた唇の先に、苦しそうな表情のローが見えた。
「自分が何言ったか、分かってねェだろ。だが俺は、このままお前を貰うぞ」
「私は初めからすべて、ローのものよ」
そうして再び重なる唇。この先、2人に言葉は不要だった。
─────☆
【ドフラミンゴ】
戦う事はどうしたって多い。海賊だから。
でも、国王であるにも関わらず、年がら年中暗殺者に狙われ続けるってのはどうなのか。これで良い意味で働いて逆恨みでもされてるって言うなら守りたいと思えるだろう。
けれど、全てドフィが悪いのに対して更に相手もまた悪人だからなのか、私の心が疲れているような気がする。相手が善人なら、ドフィから庇おうとして叱られるか殺されるだろうから、これで良いのかな。
でもだからこそ結果論として、関わりたくないなんて思ってしまう時もあって、それでも、やっぱり私の心は既にドフィに囚われていたらしい。だってドフィを狙うその銃弾が海楼石だと気付いた時には、何かを考えるより早く庇う為に身を呈していたのだから。
私を抱き留めた大きな手が震えている。私を見て悲しみ、撃った相手に怒りの感情を隠さない姿を見て、私は必死で言葉を伝えようと唇を動かす。
「ドフィ、ケガ、なかった?」
「ある筈がねェだろう!」
「よかった……しんぱい、かけて、ごめ……」
そうして意識が沈み、次に意識を取り戻した時にはベッドの横に点滴が見えて、何だか重病人にでもなった気分だわと思う。体を起こしたタイミングで部屋に入って来たドフィは、私を見るとズカズカと歩み寄り近くで仁王立ちになる。
「何故俺を庇った!死にかけたんだぞお前は!」
「……でも、ドフィが全力で助けてくれたじゃない」
「もう、二度と俺を庇うな!」
「無理よ。私、出来ない約束はしない主義なの」
「巫山戯るなっ!」
「本気よ。私は、世界中の誰よりも、ドフィの事が愛しいもの」
無言で私を見詰めるそれを躱すように立ち上がると、私は少しふらつくのを無視して窓辺に向かう。見える景色はいつもと変わらず、玩具と人が表向き楽しそうに過ごしているのが分かる。
突如腰を抱かれて、抱き上げられたと気付いた時にはドフィと唇が重なっていた。それを拒む事無く受け入れた私に何を思ったのか、ドフィは二度と離さねェと言って私をベッドに沈める。
「ドフィ?」
「愛してる。もう、庇ったりしねェと言うまで、注ぎ込んでやるから覚悟しろ」
「それが、愛情からだって言うなら、喜んで受け入れるわ。私も、愛してるから」
私の返事にドフィは小さく舌打ちすると、壊れてくれるなよと言いながらガラス細工でも扱うように丁寧に優しく、私に触れ始めた。その先2人に、言葉なんて必要はなかった。
─────*
【クロコダイル】
その日は街が見下ろせるバルコニーで2人お茶を飲んでいた。無言で。
それは別に何かがあって無言なのではない。喧嘩したとか、悩みがあるとかそんなんじゃなくて、クロコは新聞を読んでいて、私は新しい作品を書いていただけ。
紙を弄る音と、食器の動く音しかない優しい時間……の、筈だった。今日も紅茶が美味しいなって思っていたのよ。
風を切る音が聞こえて、私がソレを躱せばクロコは砂となり放った相手の元へと飛んで行く。それを綺麗だなと思って眺めている私は、きっと何かが壊れてしまった。
そんな事を考えている間に帰って来たクロコは、視線だけで怪我の有無を確認してくるから大丈夫と言おうとして……クロコに向かう銃弾に気付いてしまう。クロコはいつもの癖か避けようとしないけど、足にある短剣が揺れて報せてくれる。
駄目、これは……!
痛みよりも先に衝撃。熱さよりも先に息が詰まる。
声を出すより先に、平衡感覚が失われる。その代償のように感じなかったそれらが一気に押し寄せて来て、私は跳ね上がる呼吸数と心拍数の中で悲鳴や呻き声だけは出さないと決めていた。
名を呼んでくれて、私の体を支えてくれて。でも、そんな事したらクロコが私の血で砂になれなくなってしまうわ……。
そう思いながらも、名を叫ぶように呼んでくれるその様子に無事で良かったと、音にならない声で言葉を口にしたのを最後に意識が落ちる。悲痛な声が、いつまでも谺してる気がした。
目が覚めると誰もいなくて、けれども直後に部屋に入ってきたのはこの部屋の本当の主。そのまま私を見て、不機嫌さを隠そうともせずに歩み寄って来る。
「二度と俺を庇うな」
「あれは海楼石だったのに?」
「確かにそれは「貴方は躱そうともしなかったわ」」
「次からは躱す。だからもう……辞めろ」
言葉を重ねれば、次第にその瞳が暗くなって行くのが分かる。その中でクロコが私を抱き締めてくれるけど、その腕が小刻みに震えていてそれに驚いてしまう。
「約束、出来ないわ」
「巫山戯るなっ!」
怒号は鋭く響くけれど、何故か私にはそれが泣いているように聞こえた。だからこそ私は、嘘なんて言えない。
そっとその腕から抜け出して、ベッドから逃げるように数歩離れると、クロコに笑いかける。片想いでも構わないの、貴方が無事ならそれだけで良い。
「本気よ。私は、世界中の誰よりも、クロコの事が愛しいもの」
その瞬間、世界が回った。気が付けば離れた筈のベッドに戻されたいて、深く、口付けられていた。
抵抗しようなんて気には、なれない。今はただ、この唇を堪能したい。
「俺も、愛しく思っている。だから、二度と俺を庇おうとはしないと言うまで、泣かれても辞めてやらねェ」
「困ったわ。なら、辞めてもらえないで、私壊れてしまうと思うの」
半ば本気で言った私に、クロコはニヒルな笑みを浮かべると、上等だと囁きながら先程とは違う、少し乱暴なキスを落としてきた。その首に私はそっと腕を回して、夢なら覚めないでと祈るように願って、現実の温もりに溺れていく。
─────☆
【イゾウ】
戦いは意外と少ない。それは、天下の白髭海賊団に喧嘩を売る阿呆が少ないからだ。
でも、全くない訳でも無い。そういう意味では、エースが良い例だと思う。
つまり、それはなんの前触れもなく始まる事がある。その時私はイゾウが見張りで、だからこそ寝付けなくて、甲板に座って借りたお三味を爪弾いていた。
そんな時、何かが飛んでくるのに気付いて躱せば、どうやら銃弾だったらしいと気付く。……厄介ね。
「無事かい?」
「えぇ、皆には?」
「連絡入れてて、反応が遅れた。すまなかったね」
「私も、戦えるもの。気にしないで」
そんな事を言った直後、通達を受けていなかったのか、非戦闘員のナースが船内から出て来てしまったのが見えた。しかも、その方向に銃弾が飛んで行くのが見える。
危ないと駆け出したのは私が先か、イゾウが先か。結果論として、ナースをイゾウが庇い、それを私が庇っていた。
ナースを庇ったイゾウが振り向いた時、丁度私が弾丸に貫かれた所で、貫かれたなら問題無いななんて……そんな事を頭の片隅で思った。直後呼吸が止まるような衝撃が、熱となって全身を駆け巡り、遅れて訪れた痛みに微かに呻く。
「おい!何やって……!」
「ふたりとも、無事で……よかった」
「巫山戯るな!おい、眼を閉じるんじゃねェ!」
珍しく口調が乱れてるのを聴きながら、私の意識は深く沈んで行く。イゾウが無事で、本当に良かった。
悲鳴のような、慟哭のようなイゾウの声が、耳の奥で鳴り響いている。それに、悲しませてごめんと伝えたくて唇を動かしたけど、音になったのかは定かでは無い。
意識を取り戻せば、どうやら船内の様子で……体を起こしてみれば意外と動けたので窓に近付く。時間を知りたかっただけなんだけど……。
その時ドアが開いて、イゾウが姿を見せれば視線は自然と吸い寄せられる。良かった、イゾウは怪我とかして無いみたいね。
「……なんで、俺を庇った!避けられない攻撃じゃ無かった筈だ!」
「家族を庇って、何がおかしいのよ」
「俺は隊長だ。守る側だ。……俺を二度と、守ろうなんてしないでおくれな」
縋るように言われて、でも、私はそれに頷けない。だって、同じような事があれば私は迷わず何度でも同じ事を繰り返す。
「約束……出来ないわ」
「巫山戯るなっ!」
「本気よ。私は、世界中の誰よりも、イゾウの事が愛しいもの」
言葉を失ったように立ち尽くすイゾウの傍を抜けて、私は部屋から出ようとしたけどそこで、腕を掴まれてしまう。何事かと思った直後にイゾウの視線が私を貫く。
「その言葉の持つ意味を、分かってての発言かい?」
「……イゾウ」
「俺は、お前さんが好きだよ。女としてな。さぁ、答えは?」
そんなもの、ひとつしかない。夢ならどうか覚めないでと願いながら、そっと抱きつけばそのままベッドへと運ばれる。
「優しくするつもりはないから、覚悟しときな」
優しく出来ないと言うのではなく、優しくするつもりがない辺りがイゾウだなと思い、私は笑う。そうして……夢だなんて思えないくらいの、濃厚な時間が膜を開けた。
─────*
【シャンクス】
戦う事は好きじゃない。それに、シャンクス達も私が戦う事を望まない。
だけど、だからって引き籠ってて良いなんて事にはならないのだと私は知っているの。だから……戦闘が始まれば私もクリマタクトを手に戦う。
そんな時、足に付けていた短剣が震えた。その理由が海楼石の銃弾だと分かれば、体は勝手に動いてしまう。
だって、海楼石って、覇気も通じないのよ。しかもシャンクスは今、目の前のそこそこ強い敵に対してるから、下手に動けない。
ベックが銃を向けるより、私がシャンクスと銃弾の間に入る方が少しだけ早かったらしい。そして、息が詰まるような衝撃を私は受けた。
思ってたのと違い、痛みは来ないなんて呑気に思った直後、呼吸ができるようになるよりも先に熱さを感じた。その熱が抜けたから、銃弾は貫通したらしいと分かるけど、シャンクスの体にその銃弾がダメージを与えたりはしていないらしい。
痛みはまだ、来ない。でも、何故か平衡感覚が失われて、私の体が傾いで行く。
叫ぶような、悲鳴のような声で、皆が私を呼ぶ。その中でも、シャンクスの声が慟哭のように聞こえたのは、願望かな。
薄れる意識の中で、シャンクスが怒ってるのを肌で感じる。だから必死で言葉を紡いだけど……それが音になったのか、それは分からない。
「シャンクスが、ぶじで、よかった……」
抱き締められているのは分かるのに、その体温を感じられなくて、体が鉛のように重く感じる。ダメだわ、また、心配かけちゃう。
完全に沈んだ筈の意識が浮上した時には、船内に居るらしいと理解出来た。喧騒は止んでるから、戦闘は終わったのだろう。
体を起こしてみると、意外と動けて……船医に心から感謝する。きっとシャンクスが五月蝿かっただろうなぁ。
「起きたのか」
「シャンクス」
「何故、庇ったりした!俺は……そんな事をしていいと言ったか!?」
「船長にクルーが命をかけるのは、当然だと思うけど?」
「俺は、そんな事を許していない。二度と俺を庇うな!」
怒りが空気を震わせる。でも、私はそれが何だかおかしく思えてしまうの。
だって、シャンクスは仲間や友人の為なら、平然とその命さえ投げ捨ててしまうじゃない。私は、そんな貴方だから、愛したのよ。
そっと立ち上がり窓の外を見れば、空は澄み渡っている。この調子なら、今日は天候も安定してるわね。
「無理よ。私は、何度でもシャンクスを庇うわ」
「巫山戯るなっ!」
「本気よ。私は、世界中の誰よりも、シャンクスの事が愛しいもの」
だから、どれ程叱られても、例えば部屋に閉じ込められていても、壁を破壊してでも助けに行くと自分で分かってるの。そんな事を思った直後、シャンクスに抱き上げられた私はそのままベッドに抑え込まれた。
何事かとシャンクスを見つめれば、シャンクスが泣きそうな顔をしていて言葉を失う。そんな顔をさせたい訳じゃないのに。
「その言葉の意味、分かってるか?」
「ええ、愛してるわ。幼い頃からずっと……シャンクスだけを」
「取り消しは、きかねェぞ」
「うん。分かってる」
「……なら、俺が俺を庇うお前を守ればいい訳だな。理解した」
そんな事させないと言おうとした私の言葉は、シャンクスの唇に飲み込まれた。それにより、互いに伝わる想いがある。
その先、言葉は必要無かった。ただ、愛しい人の無事を祈り、愛しい人の熱を感じたいと……願いながらどちらからともなく、その熱を求めて絡み合っていた。
─────☆
【カタクリ】
新たに1つの島が縄張りに加わったので、測量に行くようにと言われて来たけど……。成程、年中狙われる島だから保護をして欲しくて自ら志願したと言う事ね。
測量してる間に島の形が変わって行く。その位戦闘が多い島だった。
私に向けられる攻撃は、1緒に来てくれてたカタクリが全て防いでくれて、私はただ雷を落としながら背後に庇われているばかりだった。でも、次の瞬間に私は無意識で体を動かして、無謀にもカタクリの前に飛び出してしまう。
……仕方ないじゃない。海楼石の銃弾なんて使われたら、覇気も何も役に立たないんだもの。
私はカタクリを、喪いたくなかった。それにより私を襲ったのは、痛みではなく衝撃。
息が詰まるようなそれに、目の前が白くなり平衡感覚が失われる。倒れているのか立ったままなのかさえ、自分では分からない。
そんな私を支える腕があって、漸く呼吸が出来るようになる。そして、声が聞こえて来た。
怒号とも悲鳴ともつかないそれは、私の名を呼んでいてる。涙を流さずに泣いているのが分かり、それでも無事が確認出来てつい笑ってしまう。
「心配かけ、て……ごめんね。でも、カタクリが、無事で……良かった、わ」
そうして私の意識は暗転した。恐らくは、この腕に安心してしまったのもあると思う。
意識を取り戻すとそこは船内で、体を起こしてみたら案外動ける事に驚く。包帯だらけのミイラになってるかと思ったら、それさえ無い。
船医がどれだけ必死で治療してくれたのか、分かろうというものだわ。自嘲するように笑ってベッドから立ち上がった時、部屋のドアが開けられた。
視線を向ければ途端に怒りに震えるカタクリがいて、そんなに怒らなくても良いのにと思う。けれどもそんな願いも船室を響く怒号は、何処か物悲しい。
「何故俺を庇ったりした!」
「海楼石の銃弾だったからよ」
「俺なら躱す事が可能だと分かるだろう!」
「万が一の事態も考えられるわ。その時、私なら能力者でも無いのだから問題無いじゃない」
「……二度と、俺を庇うな!!」
震える体と強く握られた拳を見れば、気持ちは痛い程に分かるなと嘆息する。きっと、逆の立場なら同じように思ったと分かるから。
でもね、私も譲れない。嘘は言いたくないの。
「無理よ。私は何度でも庇うわ。例えそれで死ぬ事になっても、私は後悔なんてしない」
「巫山戯るなっ!」
「本気よ。私は、世界中の誰よりも、カタクリの事が愛しいもの」
伝えるつもりのなかった本音が笑みと共に零れ落ちる。その直後掴まれた腕。
「その言葉の意味は、わかってるのか」
「カタクリ?」
「そういう事なら、もう我慢はしない」
そう言ってカタクリは私をベッドに組み敷くと、耳元で優しく愛を囁いてくれる。それからだからもう庇わないでくれと言われたけれど、それに私はキスをする事で応える。
私、嘘はついてないわ。そう思って微笑んだ私に、いい度胸だと狂暴な視線を向けて来たカタクリを、私は素直に受け入れる事を決めた。
重なった影は、離れる事を知らないかのように1つとなる。僅かな隙間さえ、許さないとでも言うかのように。