ヒロイン視点
ルフィ視点
ミホーク視点
マルコ視点
ロー視点
ドフラミンゴ視点
クロコダイル視点
イゾウ視点
シャンクス視点
カタクリ視点
線で区切ってあるだけです。飛んだりは出来ません。予めご了承ください。
【ヒロイン】
素直に、好きだなと思う。何をしている訳でもないその姿でさえ、愛しいと思うのだから重症だろう。
そんな私に体調でも悪いのかと問い掛けながら手を伸ばしてくれるその温もりに、微かに瞳を閉ざして……諦めの溜息を落とす。女としては、見て貰えないのだろうなと。
だから私は少しの悪戯のつもりで言葉を口にする。少しは……慌てたりしてくれるかな、なんて甘い事を考えて。
「私ね、好きな人がいるの」
相手が誰なのかと、間髪入れずに返された言葉に笑いそうになる。家族枠で、愛される自覚はあるのよ。
「……関係無いでしょ。体調が悪いんじゃなくて、それで少し考え事してただけだって伝えたかったのよ」
そう言って側を離れようとしたら、腕を痛い程に掴まれて……このままだと骨が砕けるかななんて妙に冷静に思う。そうされたら、少しは嫌えるのかな。
少しは……諦められるかな。そんな事を考えても、諦められるくらいなら初めから好きになんてならなかったと分かってるから、勝手に涙が落ちる。
その瞬間息を飲み、痛みを与えた事を即座に謝ってから諭すように、縋るように、私を抱き締めるその腕に……その胸に、大丈夫とだけ答える。だって、このまま想いを伝えたら家族みたいなこの関係さえ、終わってしまうのでしょう?
「泣いたりして、ごめんなさい。でも、離して」
それに対して勘違いされたくないのかと聞いてくるその声は、表情は悲しみと怒りが綯い交ぜになったかのようで……。怖いと思ってしまった。
だから思わず、笑って誤魔化そうとする自分を自覚する。保身だと分かっていて、それでも臆病な私は逃げたいと思ってしまうの。
「……冗談よ。好きな人なんて居ないわ。暇でね、どんな反応するかなって思って言ってみただけよ」
その瞬間、唇が重なった。激しいそれに抵抗出来ないのは、好きな人だからなのか、それとも……体が怒りに当てられて竦んでいるからなのか。
僅かに離れた唇の隙間で、俺にしとけと囁かれて、意味が分からなくて見詰めれば愛していると、願望からの幻聴が聞こえてきて、幻聴だと分かっていながら嬉しくて笑ってしまうのを抑えられない。
「慰めでも、嘘でも、嬉しい。でも、それならこのまま……私を、貰ってくれる?」
それにYESの返答をしてくれた彼は、私の頬を伝う涙を拭いながら、私を優しく抱き締めてくれた。夢ならどうか醒めないでと願いながら、視線を絡めれば……もう、その先言葉は必要無かった。
─────*
【ルフィ】
俺をじっと見詰めて動かない様子に、また熱でも出したのだろうかと思えば心配になる。俺の最愛の幼馴染であり優秀な仲間でもある航海士のコイツは、いつも自分の限界超えて無理するから俺は気が気じゃねェんだよ。
「体調でも悪いのか?」
心配して近付くと、無防備に閉ざされた瞳がまるでキスをせがんでる様に見えて、高鳴る心臓に落ち着けと言い聞かせる。そんな俺の目の前で、疲れたような諦めたような溜息を落としてからその瞳を開いたけど、なんでかその瞳は切なさを称えて揺れている。
「私ね、好きな人がいるの」
「相手は誰だよ!?」
自嘲するような笑みを浮かべて告げられた言葉に、何も考えられずにその肩を掴む。シャンクスか、ゾロか、サンジか、それとも別な誰かだろうか。
誰にしても、渡すつもりなんてねェ。お前は俺の……!
「……関係無いでしょ。体調が悪いんじゃなくて、それで少し考え事してただけって伝えたかったのよ」
薄く笑って去ろうとする細い腕を思わず本気で掴む。ミシミシとその腕から音がするのに、表情を歪めもしねェで俺を切なそうに見詰めて来る。
……何で、お前がそんな顔するんだよ……。そう思った直後に流れ落ちた涙に息を呑む。
慌ててその腕を離して、胸に抱き締めれば同じくらいに思えていたその体が細いのだと知る。この細い肩で、皆を守り、支えて居るのかと思えば俺がちゃんと守らないとって思わされる。
「痛かったよな。ごめん。もう、傷付けねェから、ごめんな……」
俺の肩口で首を横に振り、そっと俺を押す。腕には俺の手形が残っているのが、妙に痛々しい。
「泣いたりして、ごめんなさい。でも、離して」
好きな人ってのに、勘違いされたくねェのかな。俺じゃ駄目なのかよ?
どうしてだよ。ずっと、俺は想い続けて居るってのに。
悪戯した俺に困った様子で笑いかけてくる時と同じような笑顔で、軽い様子で言葉を告げて来る。だけど、その声が微かに震えている事に、お前自分で気付いていねェのかよ?
「……冗談よ。好きな人なんて居ないわ。暇でね、ルフィがどんな反応するかなって思って言ってみただけよ」
言葉を口にしながら勝手に傷ついて行くその様子に、俺は衝動的にその唇を塞いでいた。自らの言葉で傷付くなら、その言葉を口に出させたくないと思って何がおかしいのか。
微かに離した唇の隙間で、俺は想いを口にする。抑えきれなかった、本音を。
「俺にしとけ」
「え?」
「愛してる。ガキの頃からずっと……」
「慰めでも、嘘でも、嬉しい。でも、もしその言葉が本当なら、このまま……私を、貰ってくれる?」
俺の言葉を全然信じてねェのが分かる。でも、俺を揶揄ってるとかじゃねェとも分かるから、そっと流れる涙を拭いながら答えを返す。
「優しくは、出来ねェと思うけど、辞めてもやれねェ」
ずっと、欲しかったんだ。俺はずっと……。
俺の言葉に合わせるように見つめられれば、自然と視線は絡まる。この先、言葉は必要無かった。
─────☆
【ミホーク】
視線が俺を捕らえる。いつもの事だ。
何か別な事をしているので無ければ、俺を見ている事が基本なのだからな。……だからこそ、期待してしまう己に愚かしいなと思い溜息を落とす。
視線を俺からも向けてみれば少し熱っぽい顔をしているのが分かり、心に反して弱過ぎる肉体にそっと手を伸ばす。無意識に体調を気遣うように言葉を向けていたと知るのは、無防備にも瞳を閉ざした姿を見たからに他ならぬ。
額に触れると微かに熱があるとわかり、どうしたものかと思った時、その唇から溜息が落ちてその直後に言葉が紡ぎ出された。困ったような笑みを浮かべて……。
「私ね、好きな人がいるの」
「相手は誰だ」
自然と低くなる己の声に余裕が無いと思い知らされる。そんな俺に冷たい視線を投げ付けて、直後にふっとその視線を逸らされてしまう。
「……関係無いでしょ。体調が悪いんじゃなくて、それで少し考え事してただけだって伝えたかったのよ」
抜き身の刀を思わせるような硬く冷たいその声だけを残して、俺の脇をすり抜けて何処かへ行こうとする。その腕を掴めば、それ程力を入れたつもりもないのに骨の軋む音が聞こえた。
それにより痛みもある筈なのに、まるでそんな事を感じさせない。虚ろな表情で俺を見て、静かにその瞳から涙を落とされれば何かあるのはわかる。
「……!すまぬ。痛みを与えるつもりではなかったのだ」
何処へも行くなと、そのまま消えそうにさえ思えるその体を強く抱き締めれば、静かに諦めたような瞳で微笑む。その姿に、何を隠しているのかと思わされる。
俺には、話せぬのか?
「泣いたりして、ごめんなさい。でも、離して」
「好いた相手に、誤解されたくないと言うのか。相手は、赤髪か?それともその副官か?」
俺の問い掛けにビクリと体を震わせてから、対人用の笑顔の仮面を浮かべたのを見れば怒りが爆発しそうになる。俺に、その顔を向けるな!
「……冗談よ。好きな人なんて居ないわ。暇でね、どんな反応するかなって思って言ってみただけよ」
俺に偽りを告げる唇を塞げば、何故か抵抗も無く受け入れてくれる。それにより深くまで口内を蹂躙していけば、苦しそうに喘ぐもやはり抵抗は無い。
……好きな人とは、まさか。だが……そんな都合の良い事が……。
「俺にしておけ」
唇を僅かに離して告げれば、意味を理解していないとわかる顔で俺を見詰めてくるから、鈍すぎる想い人に想いを告げる。俺は、主を手放しはせぬ。
「愛している」
その瞬間、幸せそうに微笑まれて、通じたかと思うのと同時に得られた返事。言葉でなく伝えられるその想いに喜んだのも束の間、返された言葉に溜息が落ちる。
「慰めでも、嘘でも、嬉しい。でも、それならこのまま……私を、貰ってくれる?」
「偽り等、告げぬ。もう2度と、離さぬ」
俺の言葉に涙を落とすその姿が美しく、愛しい。絡まる視線が互いの想いを雄弁に伝え……もう、その先言葉は必要無かった。
─────*
【マルコ】
いつも忙しそうに何かを描いたり、書いたり、海を見ていたりする女が、楽器片手に動きを止めている。作曲をしようとしていたんじゃねェのかとその様子を眺めていたら、その顔が僅かに火照って見えた。
「体調でも悪いのかよぃ?」
思わず手を伸ばせば、珍しくその瞳を閉ざして好きに触れさせて来る。……眼を、閉じるなよぃ、Kissしたくなるだろぃとは、流石に言えねェか。
溜息を落として、何処か寂しげに笑ってから悪戯な笑みにそれを変えた。そして紡がれた言葉。
「私ね、好きな人がいるの」
「相手は誰だよぃ!?」
「……関係無いでしょ。体調が悪いんじゃなくて、それで少し考え事してただけだって伝えたかったのよ」
視線を合わせようともせずに立ち去ろうとするその腕を掴めば、恐ろしく細い。そう思ったのにも関わらず、ここで離せば二度と触れられない気がして掴む手に力が入る。
その時静かに涙を落とすのが見えて、痛みを与えたのかと慌てて手の力を抜いて、それでも逃がしたくなくて往生際悪くその体を抱き締めた。
「悪かった。怪我をさせたりするつもりは無かったんだがなぃ」
「大丈夫よ。泣いたりして、ごめんなさい。でも、離して」
「そんなに、勘違いされるのが怖いのかよぃ?」
想い人とやらが誰とは知らねェが、憎いなと思う。そんな俺に誤魔化すように笑って言葉を紡ぐ姿に、殺意に似たものを感じてしまう。
「……冗談よ。好きな人なんて居ないわ。暇でね、どんな反応するかなって思って言ってみただけよ」
その瞬間、何も考えられずにその唇を奪っていた。誤魔化すように笑うそれが、許せなかった。
そんな俺に何故か抵抗の1つも見せないから、微かに期待しちまいそうになる。だからと思い、言葉を告げる俺は卑怯者だろうか。
「俺にしとけよぃ」
「え?」
小首を傾げたその様子はあどけなく、良心を刺激する。どうしてこう、無防備なのか。
「愛してる」
「慰めでも、嘘でも、嬉しい。でも、それならこのまま……私を、貰ってくれる?」
「今更、取り消しは聞かねェよぃ。本気だと、ちゃんと解らせてやる」
どうやら想い人ってのは俺だったらしいと分かれば、その体を抱く腕も優しくなろうというものだ。視線を向ければ自然と絡み合う。
その先2人に言葉は不要だった。
─────☆
【ロー】
俺を見詰めるその眼差しはいつも優しい。忙しそうに何かをしている時を除けば、大概俺に視線を向けているのは、俺が船長だからだろうとは理解している。
それでも期待したくなるのは、俺が惚れてるからってだけじゃなくてその表情にもあるだろう。その期待を隠して、少しでも触れたくて問い掛ける。
「体調でも悪いのか」
俺の手を当然のように受け入れて微笑むと、そのまま瞳を閉ざす。このまま唇を奪ってやりたい衝動を抑えつつ、様子を見ていれば深く溜息を落とされる。
どうしたのか。そう思って様子を見れば、その唇が言葉を紡いだ。
「私ね、好きな人がいるの」
「相手は誰だ」
低くなる声を自覚しても、止められない。それなのに嘲笑うような表情で、切なそうにその瞳を揺らしながら残酷な言葉を紡ぐ。
「……関係無いでしょ。体調が悪いんじゃなくて、それで少し考え事してただけだって伝えたかったのよ」
言い捨てるように言って立ち去ろうとするその腕を本気で掴み、その動きを阻害する。それに静かに涙を落とされてハッとした。
しまった、痛みを与えるつもりは無かったが、骨は大丈夫だろうか。内出血は起こしただろうな……。
「悪い。怪我をさせるつもりは無かった」
そう言いながらもその体を解放出来ずに抱き締めている己の浅ましさ。俺の腕の中で、胸の中で大丈夫と答える声が震えている。
「泣いたりして、ごめんなさい。でも、離して」
「……惚れた相手に勘違いされたく無いから、か?」
俺じゃ、駄目なのか。相手は誰だ?
コラさんか、ペンギンか。それとも子供の頃に世話になったと言っていた赤髪か?
その時下手くそに笑って、誤魔化そうとするのを見聞きすれば憎しみに近い感情が渦巻く。それで、騙せると思うのか。
「……冗談よ。好きな人なんて居ないわ。暇でね、どんな反応するかなって思って言ってみただけよ」
衝動的にその唇を奪うが、何故か抵抗もせずに受け入れる。船長だからとか、そんな理由なら体から籠絡してやればなんて凶暴な俺が囁く。
唇を離して、結局縋るしか出来ない己に気付かされる。俺は、昔からお前だけなんだよ。
「俺にしとけよ。愛してる」
その瞬間嬉しそうに微笑み、泣きそうにその瞳を揺らした。そして……。
「慰めでも、嘘でも、嬉しい。でも、それならこのまま……私を、貰ってくれる?」
「……本気だと伝わるように、可愛がってやる。数日は、動けると思うなよ」
俺の言葉を少しも信じていない様子で頷いたその瞳から、涙が零れ落ちる。それをそっと拭いながら、抱き締めた。
そのまま視線を絡めれば、遠回りした想いが漸く繋がったと理解出来る。後は、信じるしかない程に、愛してやると心で呟いてそっとその身をベッドに沈み込ませた。
─────*
【ドフラミンゴ】
じっと俺を見詰めるあどけない眼差し。そして、ふと慈愛に満ちた瞳を細めて笑う。
それに、心が乱される。そんな、無防備な顔してんじゃねェよ、犯すぞと内心でいくら募っても、言葉にさえ出来ない己の愚かさ。
ただ、あまりにも熱っぽいその様子に多少心配になる。こいつは、弱過ぎるんだ。
「体調でも悪ぃのか?」
理由が無ければ触れる事も躊躇わされるだなんて、JOKERが聞いて呆れる。額に触れると、警戒心の欠片もなく伏せられる瞳。
このまま奪い尽くしてやりたいと凶悪に思った直後、静かに落とされた溜息。そして、妙な言葉が発せられた。
「私ね、好きな人がいるの」
「相手は誰だ。どこのどいつだ。誰の許可を得てそいつはお前に近付いた!?」
「……関係無いでしょ。体調が悪いんじゃなくて、それで少し考え事してただけだって伝えたかったのよ」
それだけ言って離れようとするその腕を掴めば、ミシリと嫌な音が聞こえた。掴んだだけで砕けそうな細い腕で、この俺から離れようとするのか。
俺の庇護無しで生きられる筈もねェのに……?
その時涙を落とすのを確認しちまえば、慌ててその手を離すしか無くなる。だが、逃がしてはやれねェ。
殺してでも、俺の傍から離れさせねェと決めている。俺には、お前が必要なんだ。
「大丈夫。泣いたりして、ごめんなさい。でも、離して」
「想い人に、勘違いされたくないってか……?」
なら、勘違いじゃすまねェ位に犯してやれば、俺の傍から離れなくなるのか。諦めて、俺のものになるのか。
「……冗談よ。好きな人なんて居ないわ。暇でね、どんな反応するかなって思って言ってみただけよ」
その言葉を聞いた瞬間、想い人がいないなんてのは大嘘だと分かり、衝動的にその唇を奪う。だと言うのに、抵抗さえしないのは……信頼からか……?
「俺にしとけ」
唇の隙間で囁けば、じっと見詰めてくる無垢な瞳。それに拒絶の色はない。
「愛してる」
その瞬間、涙を零した。苦しそうな、切なそうな顔で。
「慰めでも、嘘でも、嬉しい。でも、それならこのまま……私を、貰ってくれる?」
「当然だ。慰めや嘘を俺がお前に言うはずはないと、その身に刻んでやる」
涙をそっと拭いながら、俺のものになれば他の男の相手なんか出来ねェぞと内心で嗤う。だが、視線が絡めばその想いが伝わって来て……凶悪な感情が凪いでいく。
そこからはもう、言葉は必要無かった。その先はただ、想いを体で伝え合うのみ。
─────☆
【クロコダイル】
穏やかで優しい眼差しが俺を捕らえて離さなくなったのは何時からだろうか。それがあまつさえ〝心地好い〟等と、感じるようになったのは……。
だが、今日のそれには少しばかり陰鬱とした何かを感じてしまい眉が寄るのを自覚する。体調でも崩したか?
「どうした。薬草くらいなら取り寄せてやるぞ?」
そっと手を伸ばすが、誰かに会わせたくないが為に医者に診せるのも嫌でそう言う俺に、そっとその瞳を閉ざす。俺に触れられれば、枯れ尽くされる可能性もあるというのに、無防備にも程があるだろう。
そう思った俺に呼応するように落とされた溜息。何だとその様子を伺えば、自嘲的な笑みを浮かべて言葉を口にする。
「私ね、好きな人がいるの」
「相手は誰だ」
誰にも会わせた記憶はねェが。だとするなら、俺がここに閉じ込めるより以前からの事か。
「……関係無いでしょ。体調が悪いんじゃなくて、それで少し考え事してただけだって伝えたかったのよ」
そんな生意気な言葉を残して離れようとした細い腕を掴めば、ミシリとその骨が軋む音が聞こえた。このまま力を入れれば砕けるだろう。
能力なんぞ使わなくとも簡単に御せるか弱い女。それでも、傷つける事は本意ではなく、その頬を涙が伝うのを見てしまえば1瞬呼吸を忘れてしまう。
「悪かった……」
言葉と共に今度は傷付けないよう気を付けつつその細い体を抱き締めれば、大丈夫だと告げられる。そして生きる事さえ諦めたような瞳で、俺を見て唇を動かす。
「泣いたりして、ごめんなさい。でも、離して」
「想い人とヤラに勘違いされるのが怖いか」
無性に苛立つ。コレは俺の持ち物だと思っていたが故のものか、それとも認めたくもない別な感情故か。
「……冗談よ。好きな人なんて居ないわ。暇でね、どんな反応するかなって思って言ってみただけよ」
好きな人が居ないと言う言葉に偽りの色を感じ取り、衝動的にその唇を奪う。それに抵抗しないから、まさかと思う。
期待する気持ちに気付き、そういう事かと自分の感情を理解する。だからなのか、言葉は勝手に音となって紡がれていた。
「俺にしとけ……」
俺が好きなんだろう。そんな想いを込めて囁けば嬉しそうに笑い、妙な言葉を口にする。
「慰めでも、嘘でも、嬉しい。でも、それならこのまま……私を、貰ってくれる?」
「当然だ。元々お前は俺のモノだ」
この状態で嘘だと思える鈍さは天下に誇れそうだなと思いつつ、その体を最大限の優しさで抱き締めてやる。縋るような視線を向けられれば、解らせてやるよと思いながらその視線を受け止めるように絡めて……その先言葉なんて不要だった。
─────*
【イゾウ】
いつも何かをしていなければ気が済まないのか、1時もその手が、瞳が、活動を辞める時を見た記憶が無い。無論、眠っている時は別ではあるが……。
そんな少女が熱っぽい視線を俺に向けて来るのだから、気にするなと言う方が無理な話だろう。ただ、この場合は心配と言う思いが大半を占めるのだが。
「体調でも悪いのかい?」
問い掛けながらその額に手を伸ばすと、無防備に閉ざされた瞳。そして、重い溜息を1つこれみよがしに落とされる。
本当にどうしたというのか。だが……熱は無さそうだがね?
「私ね、好きな人がいるの」
「相手は?」
突然どうしたとか、質問の返事になってないとか、そんな事を言う余裕さえない。俺の傍に居るのが当然だと思っていた、庇護対象の筈の少女が言ったそれに叫びそうになるのを抑えるので精一杯だ。
結果口に出せたのはその1言だけ。けれども震えそうになる声や身体を抑え込む俺の苦労を知らず、冷たい声で返事をされては目の前が赤く染まりそうになる。
「……関係無いでしょ。体調が悪いんじゃなくて、それで少し考え事してただけだって伝えたかったのよ」
そう言って俺から距離を取ろうとするのを、その細腕を掴む事で止めれば骨が軋む音が確かに聞こえた。……このまま四肢全てを砕いて、閉じ込めちまえば俺だけのものでいてくれるのかい?
そんな事が脳裏を掠めた直後、涙を零す姿を見れば冷静な自分が帰ってくる。……傷付けるのは、本意じゃねェな。
「済まなかったね。痛かったかい?」
謝罪の言葉は迷い無く口から放たれるのに、身体は正直でその小さな身体を抱き締め離そうとはしない。胸に抱き締め、何処にも行かないでおくれなと言いそうになるのを耐える。
腕の中の温もりも何故か小刻みに震えていて、甘えるように微かに胸に擦り寄るそれは甘美に思える。だがその直後、その唇は謝罪の言葉を告げた後に偽りの言葉を音にした。
微笑みさえ浮かべ、恋を諦めようとする大人のフリをする子供のような表情で。……誰を、それ程に想っているのか。
「……冗談よ。好きな人なんて居ないわ。暇でね、どんな反応するかなって思って言ってみただけよ」
偽りの微笑みを見たくない。偽りの言葉等聞きたくはない。
その思いで唇を重ねれば、素直に受け入れる甘やかな……まさか?
怒りが急激に萎えていく。それ故に誘惑するつもりで、囁きを落とせば嬉しそうに、涙の滲む顔で笑った。
「俺にしとけよ」
「慰めでも、嘘でも、嬉しい。でも、それならこのまま……私を、貰ってくれる?」
「貰ったら最後、二度と離すつもりはねェから、覚悟しときなよ」
俺の言葉に視線を絡めて来たそれは、紛れも無く女の顔で……自然と重なる影。もう、その先言葉は必要無かった。
─────☆
【シャンクス】
【好きな人sideシャンクス】
俺が甲板にいて、それを眺めつつ書類と戦うのがいつもなのに、今日は朝から何だか怠そうにしているのが気になる。だから俺は特にやる事も無いのに、同じ室内に居るように心掛けていた。
……だが、俺の動きに合わせるように動くその視線が少し気恥ずかしくなるのは仕方ないだろう。それでも、どうしたって嬉しい。
ただ……その熱っぽい視線が先程からどうも可笑しい気もする。動きを止めれば、視線も固定された。
……そうか、俺しか見てないんだ。仕事を蔑ろにするとか、普段なら有り得ねェよな。
「体調でも悪いのか?」
そっと手を伸ばしてみれば、警戒心の欠片もなく閉ざされる瞳。そして、落とされた溜息。
多少ではなくそれに色気が含まれて居るように感じたのは、俺が惚れてるからか。だが、蜜柑の香りを漂わせる女はそんな俺の心を知らずに、妖艶な笑みを浮かべて悪戯な言葉を口にした。
「私ね、好きな人がいるの」
「相手は誰だ」
ベックか、ヤソップか、はたまたルーか。いや……ルフィやエースだったりするのだろうか。
知らない奴ならば、まだ耐えられるのかと自分に問い掛けて、誰であっても耐えられないと気付く。だが残酷にも冷たい笑みに変えて、諦めの色を宿した瞳で言葉を投げ捨てるように放たれる。
「……関係無いでしょ。体調が悪いんじゃなくて、それで少し考え事してただけだって伝えたかったのよ」
俺の傍を当然のように離れようとするそれに、待てよとの言葉より先に手が出る。掴んだ腕は細く、力をそれ程入れたつもりもないのにミシリという音が聞こえた。
その時、いつもは気丈なその瞳から、涙が1筋流れ落ちた。それに息を飲まされ、即座に謝罪するもその腕を離せない。
それどころかそっとその身を抱き寄せて、胸に閉じ込めてしまえば、そっと頭を預けて甘えたような仕草を返す。そして紡がれたのは〝優しい嘘〟の言葉。
「泣いたりして、ごめんなさい。でも、離して」
「勘違いされたくないのか」
そんなに、そいつが好きなのか。俺の何が気に入らない?
そう思って見れば、へにゃりと笑って誤魔化そうとするのが見えた。長年共に居て、その偽りに気付けない筈があってたまるか。
「……冗談よ。好きな人なんて居ないわ。暇でね、どんな反応するかなって思って言ってみただけよ」
それ以上、偽りの言葉を聞きたくなかった。だからと思って重ねた唇は、抵抗される事無く、甘やかに受け入れられる。
「俺にしとけ」
囁いた俺の言葉に首を傾げる姿は、少し幼い。見詰め合う形になった状態で、思わず愛していると言葉を紡げば、泣きそうな顔で、けれども嬉しそうな笑みを浮かべた。
「慰めでも、嘘でも、嬉しい。でも、それならこのまま……私を、貰ってくれる?」
「勘違いだった、冗談だと思った。そんな言葉を言っても二度と手放さねェぞ」
涙が頬を伝うのを見てそう言いながら、そっとその涙を拭えばぎこち無い動きで頷くそれに、ちゃんと理解させてやると心に誓って強く抱き締める。お前が想ってる相手が俺だとわかった今、手加減するつもりはねェよ。
視線を絡めれば……もう、その先言葉は必要無かった。
─────*
【カタクリ】
当然のようにいつも俺に向けられているその視線に、俺は何を返せるだろうか。信頼を隠さないその眼差しに、俺の抱く想いは邪過ぎる。
だが今日のその眼差しには何処か諦めにも似た物が感じられて、何かあったのかと心配になる。それでも、問い掛けたところで答えはしないのだろうがな。
「体調でも悪いのか?」
理由が無ければ触れる事さえ恐ろしい。拒絶されたら、きっと俺はこの儚い生き物を壊してしまう。
伸ばした指先を見て、そっと閉ざされた瞳。その直前に揺れたそれの意味が、俺には分からなかった。
ただ、落とされた溜息が妙に色気を含んでいて、それに息を呑まされる。子供のままでいてくれと、祈るように願う程に、その容姿は大人になってしまった。
「私ね、好きな人がいるの」
突然の言葉に反射的に相手を尋ねたが、聞いてどうなると言うのか。そう己に問いかけた時、泣きそうに瞳を揺らしながら冷たく装って声を響かせたそれに、何を隠しているのかと眉根が寄る。
「……関係無いでしょ。体調が悪いんじゃなくて、それで少し考え事してただけだって伝えたかったのよ」
俺に何かを隠せると思うなと、逃げるように立ち去ろうとしたその腕を掴む。俺に、背を向けるな……。
その時頬を伝う涙に気が付けば、そこに来て漸くその腕を砕きそうな状態にあったと気付く。それでもその手を離せず、俺は謝罪の言葉と共に細く頼りないその身体を抱き締める事で腕を解放してやる。
俺が抱き上げた事で足は地から浮いているのに、気にした様子もなく、それどころか甘えたように擦り寄る。そして、作った笑顔を俺に向けて来た。
「泣いたりして、ごめんなさい。でも、離して」
「勘違いされたくないのか」
そんなにも、好きな奴に……?
俺を誤魔化して逃げようとするのか。俺から離れようと言うのか。
「……冗談よ。好きな人なんて居ないわ。暇でね、どんな反応するかなって思って言ってみただけよ」
どんな顔でそれを言っているのか分からないのか。もう……黙れ。
嘘を付けないのは、俺が大切な相手だという何よりの証拠。それが分かるからこそ、我慢できずに奪った唇。
それに対して抵抗のひとつも見せないその姿に、泣きたいような気持ちにさせられる。俺の事も、大切で愛しいんだな。
「俺にしとけ」
他の男と俺で揺れているのならば、俺にしておけとその顔を覗き込めば、その瞳に宿る熱に勘違いだと気付く。お前の好きな相手は、1人なのか……。
「愛してる……」
確証を得てから伝えるのは卑怯だろうか。それでも、俺はお前が欲しいんだ。
そんな俺の言葉に微笑みを浮かべて、俺の言葉を信じていないと瞳で伝えて来る。疑心暗鬼にさせたのは、臆病だった俺の心が原因か。
「慰めでも、嘘でも、嬉しい。でも、それならこのまま……私を、貰ってくれる?」
それでも、その言葉を向けて来たお前を今更手放すつもりは無い。信じるまで何度でも、いくらでも伝えてやろう。
「当然だ。俺は、お前が愛しい」
俺は餓えている。お前が欲しくて……苦しいんだ。
真実を隠さないと決めた直後、強く抱き締め直してそっとその顔を見詰める。そこにあった泣きそうに揺れるその瞳と、俺の瞳が視線を絡めてしまえば……その先言葉は必要無かった。