ルフィ
ミホーク
マルコ
ロー
ドフラミンゴ
クロコダイル
イゾウ
線で区切ってあるだけです。飛んだりは出来ません。予めご了承ください。
【ルフィ】
俺はそんな小競り合いがあるなんて知らなかったけど、まぁ、海賊なんだから他の海賊との戦いだってあって然るべきだよなと思えば気にならない。読んでいた頃にその描写が無くても、今ここに生きているのだから、知らない事が起きたって不思議はない。
銃弾も砲弾も弾き返すルフィ、切り刻むゾロ、蹴り飛ばすサンジを眺めつつ俺も精一杯戦っていた。そんな時に、足に装着している短剣が海楼石で出来てるからか、近くに海楼石の物が来ると揺れて知らせてくれる事があり今回も知らせてくれた。
それにより分かったのは、ルフィに向かう銃弾が海楼石製のものだと言う事で、俺は咄嗟にそれを庇っていた。ルフィが受ければ致命傷になるからと飛び出した俺に、ルフィの悲鳴のような声が向けられた事には気付くがどうにもならねェ。
俺を抱き留めて泣き出したルフィに、そんなに泣くなよと思いながら、次第に痛みが薄れて行く現実を何となく受け入れる。ルフィが無事で良かったと思えば自然と笑えて来て、でも泣かないで欲しくて無意識で謝る。
「ごめんな、ルフィ。大丈夫だから」
言葉はそれ以上紡げ無くて、そのまま意識が薄れて行く情けなさに、少し泣きそうになる。次に意識が戻ると船内に居るようで、必死に体を起こすとちょうど部屋に入ってきた所らしいルフィにこれでもかってくらい叱られてしまう。
でも、見た限りルフィには怪我がなくて、元気そうにしている。それが嬉しくて笑ってしまえば、ルフィからのお説教が長引いたけど、それでもやっぱり俺は幸せだと思う。
叱られつつも立ち上がり歩き回る俺にルフィは反省しろと言うけど、きっと俺は何度でも同じ事をするから、反省なんて出来る筈もない。
「ルフィが無事ならそれで良い。だから、反省なんて出来ねェよ」
「巫山戯んなっ!」
「本気だ。俺は、世界中の誰よりも、ルフィの事が愛しいからな」
その瞬間ルフィが絡み付いてきて、ベッドへと強制的に戻されてしまう。何するのかと言おうとしたら、赤くなった顔でルフィは言う。
「俺も、同じ気持ちだから……もう庇わないでくれ」
「それは……」
「無理なんて言うなら、解らせてやるよ。どれだけ、俺が苦しかったのかも含めてな」
ルフィがその瞬間雄の顔で笑ったので、俺はそれにより勝手に高鳴る心臓を抑えながら、優しくしてくれよなと呟いた。俺にルフィを拒むなんて選択肢は、存在しない。
─────☆
【ミホーク】
いつもの様に暇潰しにもならないと溜息を落としつつ戦うその姿に、綺麗だなと感心してしまう。それくらい、ミホークの立姿や動作は美しい。
姿勢が良いからだろうか。それとも、武術を極めているからだろうか。
立ち居振る舞いの美しさを脳内で褒め称えていたら、クリマタクトが揺れた。その揺れでいくつも放たれた弾丸の中に、変色しているものがあるのに気付かされてしまえば、頭で考えるより早く体が動いていた。
他の弾丸全てを弾いて、でも、僅かにそれだけ間に合わない事が動き出していたから分かった。……間に合え!
弾丸とミホークの間に入り、痛みと言うより呼吸が出来ないような衝撃を受ける。咄嗟だったから、覇気を纏う事が出来なかった。
衝撃が落ち着いても感じるのはやはり痛みではなくて、熱さ。そして耳鳴りが邪魔して聞き取りにくいけど……ミホークが俺を呼んでくれてる。
俺を片手で軽々と抱き留めてくれるその腕が、震えているのが分かる。その震えと同時に聞こえてくる悲痛な声が、泣いているように感じられて、無事を伝えようと手を動かそうとしたのに体は動かない。
「ごめんな、ミホーク。俺は、大丈夫だから」
だから、そんなに、嘆かないでくれよ。お前が無事なら、俺はそれだけでいいんだからさ。
そうして俺の意識は闇に沈んだ。それからどれくらいの時が流れたのか、目覚めた時にはベッドにいて俺の動きに合わせて、手を握ったり頭を撫でたりしてくれるミホークがいる。
それを見て、笑ってしまう。ミホークが、無事で良かったと心から思ってそれを言葉にしたら、何故か盛大に怒られてしまって反省しろと言われるけど……それは無理な相談だ。
「ミホークが無事ならそれで良いさ。だから、反省なんて出来ねェよ」
「巫山戯るなっ!」
「本気だよ。俺は、世界中の誰よりも、ミホークの事が愛しいから」
体を起こしてみると起きられたので、放心してるミホークのそばを抜けて水を飲もうと歩き出し、窓から見える外に視線を向ける。とりあえず天候に異変は無さそうだと息を吐き出した時、突然伸びてきた腕が俺の腰を強く引き、麝香の香る胸へと抱きすくめられた。
「ミホーク?」
問い掛けても答えは無く、ベッドに押し倒すようにして戻されてしまう。意味が分からなくて、呆然と見上げれば突然降ってくる唇。
「んっ……ふっ……!」
「主は、何を言ったか分かって居らぬようだな。……俺も、主が愛しい。だからこそ、もう俺を庇うな」
「嫌だね。俺は……何度でも庇う。俺にはミホークし」
言葉は最後まで紡げなかった。唇を重ねられて、奥まで蹂躙されて、その上でミホークがその隙間で言葉を向けて来るから。
「庇わぬと言うまで、辞めるつもりは無い。抱くぞ」
好きな人にされる事だから、それに否は無いけれど……俺もやはりミホークを守る事は譲れないからと戦場に赴く覚悟でミホークを見詰める。
「受けて立とう」
「良い眼をする……後悔するなよ」
互いの熱を感じながら、恐ろしく脈打つ心臓に少し静まれと願う。それでも、俺がミホークを拒むなんて選択肢は、存在しないのだけは間違いようのない現実。
─────*
【マルコ】
ロギアに程近い性質だからか、どうせ治ると思っているからか、マルコはいつも攻撃を避けずに直進して攻撃を仕掛ける。相手の懐に入る為なら、平然とそれを行ってしまう。
悪い癖だよなと思った直後、足に付けている短剣が揺れて危険を知らせて来る。いつもの様にそれ受けたら不味いと思ったのが先か、それとも違う理由なのか、それは俺にも分からない。
ただ、体は自然と動いていたし、今後も反省は出来そうにない。だってほら、俺の体を撃ち抜いた銃弾は、海楼石だったから。
悲鳴のような声で名を呼ばれて、それに答えようと思うのに上手く声が出せない。痛いより熱い、衝撃が思ったより大きくて、痛みには慣れてる筈なのになと微かに思う。
抱き留めてくれる腕が優しくて、なのに泣きそうな顔で怒ってるそれに無事で良かったと心から思う。でも、悲しませてごめんな。
「マル……コ、ごめんな。大丈夫だか……ら……」
泣かないでくれと続く筈だった言葉は空気に溶けた。意識を取り戻した時、体を起こそうとしたら鈍痛が走り神経は無事だったらしいと知る。
それと同時に入って来たマルコは俺を見るなり怒り出した。それを見てつい笑いながら立ち上がると、スっと細められるその瞳を窓を背にして見詰める。
「反省なんて出来ない。マルコが無事で良かったよ」
「巫山戯るなよぃ!俺は怪我なんざ「治るからって無理するマルコを、皆がどう思ってるか分かっただろ?」」
言葉を遮り言えばマルコは言葉に詰まったように口を噤む。だから俺はそっと微笑む。
「マルコ、今回は海楼石だったんだ。その上マルコは賞金首。……次があればまた俺は同じ事をするよ」
「……辞めて、くれ。俺も、気を付けるからよぃ」
「ごめん。約束出来ない」
謝る俺に悲しみに表情を染めるマルコは、けれども何も言わない。苦しそうな顔をしてるのは、俺が言い出したら聞かないのを知ってるからかな。
「俺にとってマルコは、世界の誰よりも愛しい相手なんだよ。だか」
だから、悲しませても庇うだろうと続ける筈が、突然抱き締められたそれにより声にならない。そのままベッドに縫い付けるように戻されてしまえば、ただ呆然と見上げるしか出来なかった。
そんな俺にマルコは確かめるように問い掛けてくる。何処か、怒ってるような声で。
「その言葉の意味は、分かってるのかよぃ?」
「へ?」
「どちらにしても、もう逃がしてはやれねェがなぃ」
その言葉と共に降ってきた唇を受け止める。逃げるなんて選択肢は初めから存在しないから。
唇の隙間から、もう庇うなと哀願されても、それは譲れないからと断れば、優しくしてやらねェよいなんて言われる。それと同時に脱がされる衣服を抵抗せずに見ていたら、マルコが困ったように笑った。
「愛してる。怪我人だってのは分かってるが、もう耐えられそうに無いよぃ」
「……俺も、愛してる。ただ、その、俺男なんだけど」
「ンな事、知ってる。知ってて求めてんだよぃ」
そうして重なった影が離れる事は、大分先まで無かった。生きているから触れ合えるのだと、俺もマルコも痛い程良く知っているから、刹那の時さえ後悔しないように互いの熱を求め合う。
─────☆
【ロー】
潜水艦だからこそ、定期的に浮上してその熱を外へ放出しつつ衛生面を考えて掃除する事が必要とされる。その最中に船が居たからと他所の海賊が攻めてきて、俺達はモップを手にしていたのに戦いを強いられる事となった。
それについては敵船の彼等の武器と、俺達の掃除道具を入れ替えてもらった事で解決したが、ローは迷う事無く俺の腰を抱くようにして引き寄せると自分の背後に俺を立たせる。大人しくしてろよなんて言われて、何度戦えると言っても聞かない船長様に小さく舌打ちした。
その直後降り注ぐ銃弾。ローは能力的に問題ないからと、ベポを庇う為に移動して覇気を纏いそれに対応した時、短剣が海楼石の存在を俺に告げた。
慌てて振り向くとそれは明らかにローを狙っていて、能力では海楼石をどうにも出来ないからとローと銃弾の間に身を滑り込ませる。剃で移動し、どうにかローを海楼石から守れたけど、速度に集約しすぎて居た意識の為に生身で受けた銃弾により、恐ろしい程の衝撃が身体中を駆け巡る。
既にこれは痛みではない。呼吸が止まりそうな程の衝撃に、けれども衝撃の直後に感じたのもまた痛みではなく、熱さ。
ローが俺の名を呼ぶ声を聞きながら、まだ戦いは終わってないからと笑顔を浮かべて大丈夫と口にする。でも、しんぱいかけてる、よな。
「ごめん、な」
声が音になったのか確認する余裕も無く、俺の意識は暗転しローの慟哭のような悲鳴が聞こえた気がした。その後、意識を取り戻した時には船内にいて、体も動くからと起こしてみるとローに思いっ切り睨まれてしまう。
でも、ローが無事で良かったとお小言の途中で心から思って笑顔で口に出せば、ローから反省しろと言われるけどそれは無理。だって俺は……。
「ローが無事ならそれで良いんだよ。だから、反省なんて出来ねェさ」
「巫山戯るなっ!」
「本気だよ。俺は、世界中の誰よりも、ローの事が愛しいからな」
そう言って俺はベッドから立ち上がる。今は海上に船があるらしく、窓から空が見えた。
その時簡単に腕に閉じ込められて、その勢いのままにベッドへと沈められればそのまま深くキスをされる。抵抗する気になれなくて受け入れると、ふと離れた唇の先に、苦しそうな表情のローが見えた。
「自分が何言ったか、分かってねェだろ。だが俺は、このままお前を貰うぞ」
「俺は初めからすべて、ローのものだ」
そうして再び重なる唇。この先、2人に言葉は不要だった。
─────*
【ドフラミンゴ】
戦う事はどうしたって多い。海賊である以上そればかりは仕方ない。
だが国王であるにも関わらず、年がら年中暗殺者に狙われ続けるってのはどうなのか。これで良い意味で働いて逆恨みでもされてるって言うなら守りたくもなるが、ドフィが悪人で更に相手もまた悪人なのだから関わりたくないと思っちまうのも致し方無いだろう。
そう思っているのに、結局俺の心は既にドフィに囚われていたらしい。だってよ、ドフィを狙うその銃弾が海楼石だと気付いた時には、何かを考えるより早く庇う為に身を呈していたのだから。
倒れる俺を抱き留めた大きな手が震えている。俺を見て悲しみ、撃った相手に怒りの感情を隠さない姿を見て、俺は必死で言葉を伝えようと唇を動かす。
「ドフィ……ケガ、ないか?」
「ある筈がねェだろう!」
「よかった……すこし、やすむな。ごめ……」
そうして意識が沈み、次に意識を取り戻した時にはベッドの横に点滴が見えて、何だか重病人にでもなった気分だなと思う。体を起こしたタイミングで部屋に入って来たドフィは、俺を見るとズカズカと歩み寄り近くで仁王立ちになる。
「何故庇った!死にかけたんだぞお前は!」
「……ドフィが助けてくれたんだな。ありがとう」
「もう、二度と俺を庇うな!」
「無理だよ。俺は出来ない約束はしない主義だ」
「巫山戯るなっ!」
「本気だよ。俺は、世界中の誰よりも、ドフィの事が愛しいからさ」
無言で俺を見詰めるそれを躱すように立ち上がると、俺は少しふらつくのを無視して窓辺に向かう。見える景色はいつもと変わらず、玩具と人が表向き楽しそうに過ごしているのが分かる。
突如腰を抱かれて、抱き上げられたと気付いた時にはドフィと唇が重なっていた。それを拒む事無く受け入れた俺に何を思ったのか、ドフィは二度と離さねェと言って俺をベッドに沈める。
「ドフィ?」
「愛してる。もう、庇ったりしねェと言うまで、注ぎ込んでやるから覚悟しろ」
「それが、愛情からだって言うなら、喜んで受け入れるぜ?俺も愛してるみたいだから」
俺の返事にドフィは小さく舌打ちすると、壊れてくれるなよと言いながらガラス細工でも扱うように丁寧に優しく、俺に触れ始めた。その先2人に、言葉なんてものは必要はなかった。
─────☆
【クロコダイル】
その日は街が見下ろせるバルコニーで2人、お茶を飲んでいた。無言で。
喧嘩したとか、悩みがあるとかそんなんじゃない。クロコは新聞を読んでいて、俺は新しい作品を書いていただけだ。
紙を弄る音と、食器の動く音しかない優しい時間……。それはけれども突然壊されちまう。
風を切る音が聞こえて、俺がソレを躱せばクロコは砂となり放った相手の元へと飛んで行く。それを綺麗だなと思って眺めている俺は、きっと何かが壊れてしまったんだろう。
そんな事を考えている間に帰って来たクロコは、視線だけで俺に怪我の有無を確認してくるから大丈夫と言おうとした所で、俺はクロコに向かう銃弾に気付いてしまう。クロコはいつもの癖か避けようとしねェが、足にある短剣が揺れて報せてくれる。
駄目だ、これは海楼石……!
痛みよりも先に衝撃。熱さよりも先に息が詰まる。
声を出すより先に、平衡感覚が失われる。その代償のように感じなかったそれらが1気に押し寄せて来て、俺は跳ね上がる呼吸数と心拍数の中でも、悲鳴や呻き声だけは出さないと決めていた。
名を呼んでくれて、俺の体を支えてくれた。でも、そんな事したらクロコが俺の血が理由で砂になれなくなっちまう……。
そう思いながらも、名を叫ぶように呼んでくれるその様子に無事で良かったと、音にならない声で言葉を口にしたのを最後に意識が落ちる。悲痛な声が、いつまでも谺してる気がした。
目が覚めると誰もいなくて、けれども直後に部屋に入ってきたのはこの部屋の本当の主。そのまま俺を見て、不機嫌さを隠そうともせずに歩み寄って来る。
「二度と俺を庇うな」
「海楼石だったのに?」
「確かにそれは「サーは躱そうともしなかった」」
「次からは躱す。だからもう……辞めろ」
言葉を重ねれば、次第にその瞳が暗くなって行くのが分かる。その中でクロコが俺を抱き締めてくれるけど、その腕が小刻みに震えていてそれに驚いてしまう。
「約束、出来ねェよ」
「巫山戯るなっ!」
怒号は鋭く、けれども何故か泣いているように聞こえた。だからこそ俺には、嘘なんて言えない。
そっとその腕から抜け出して、ベッドから逃げるように数歩離れると、クロコに笑いかける。片想いなのは分かっているから、告げた所でどうにもならないと分かってるのにな。
俺は男で、クロコも男で……だから、叶う筈もない。それでもせめて、クロコには無事で居てもらいたいから、その為なら多少気色悪いと思われても構わねぇ。
届かないと分かっていて、それでも言葉は紡がれる。軽口だと思われるだろうと言うのもあるんだけど、クロコが無事だった事が嬉しくて、想いを抑えきれなかったのもあったんだ。
「本気だよ。俺は、世界中の誰よりも、クロコの事が愛しいからな」
その瞬間、世界が回った。気が付けば離れた筈のベッドに戻されたいて、深く、口付けられている。
抵抗しようなんて気には、なれない。今はただ、この唇を堪能したい。
「俺も、愛しく思っている。だから、二度と俺を庇おうとはしないと言うまで、泣かれても辞めてやらねェ」
「困ったな。なら、辞めてもらえないで、俺は壊れちまいそうだ」
半ば本気で言った俺に、クロコはニヒルな笑みを浮かべると、上等だと囁きながら先程とは違う、少し乱暴なキスを落としてきた。その首に俺はそっと腕を回して、夢なら覚めないでくれと祈るように願って、想像さえしていなかった愛しい温もりに溺れていく。
─────*
【イゾウ】
星が綺麗な夜だからか、物思いに耽りそうになる。ここは戦いが意外と少ないが、それは天下の白髭海賊団に喧嘩を売る阿呆が少ないからだ。
でも、全くない訳でも無い。そういう意味では、エースが良い例だと思う。
つまり、それはなんの前触れもなく始まる事があるという事だ。俺はその日イゾウが見張りで、だから寝付けなくて、甲板に座って借りたお三味を爪弾いていた。
その時、何かが飛んでくるのに気付いて躱せば、どうやら銃弾だったらしいと気付く。……面倒だな。
「無事かい?」
「あぁ、皆には?」
「連絡入れてて、反応が遅れた。すまなかったね」
「俺も、戦える。気にしないでくれ」
そんな事を言った直後、通達を受けていなかったのか、非戦闘員のナースが船内から出て来てしまったのが見えた。しかも、その方向に銃弾が飛んで行くのが見える。
危ないと駆け出したのは俺が先か、イゾウが先か。結果論として、ナースをイゾウが庇い、それを俺が庇っていた。
ナースを庇ったイゾウが振り向いた時、丁度俺が弾丸に貫かれた所で、貫かれたなら問題無いななんて……そんな事を頭の片隅で思った。直後呼吸が止まるような衝撃が、熱となって全身を駆け巡り、遅れて訪れた痛みに微かに呻く。
「おい!何やって……!」
「ふたりとも、無事で……よかった」
「巫山戯るな!おい、眼を閉じるんじゃねェ!」
珍しく口調が乱れてるのを聴きながら、俺の意識は深く沈んで行く。イゾウが無事で、本当に良かった。
悲鳴のような、慟哭のようなイゾウの声が、耳の奥で鳴り響いている。それに、悲しませてごめんと伝えたくて唇を動かしたけど、音になったのかは定かでは無い。
意識を取り戻せば、どうやら船内の様子で……体を起こしてみれば意外と動けたので窓に近付く。時間を知りたかっただけなんだけどさ……。
その時ドアが開いて、イゾウが姿を見せれば視線は自然と吸い寄せられる。良かった、イゾウは怪我とかして無いみたいだ。
「……なんで、俺を庇った!避けられない攻撃じゃ無かった筈だ!」
「家族を庇って、何がおかしいんだよ」
「俺は隊長だ。守る側だ。……俺を二度と、守ろうなんてしないでおくれな」
縋るように言われて、でも、俺はそれに頷けない。だって、同じような事があれば俺は迷わず何度でも同じ事を繰り返す。
「約束……出来ねぇよ」
「巫山戯るなっ!」
「本気だよ。俺は、世界中の誰よりも、イゾウの事が愛しいからさ」
言葉を失ったように立ち尽くすイゾウの傍を抜けて、俺は部屋から出ようとしたけどそこで、腕を掴まれてしまう。何事かと思った直後にイゾウの視線が俺を貫いた。
「その言葉の持つ意味を、分かってての発言かい?」
「……イゾウ」
「俺は、お前さんが好きだよ。性的な意味合いも含めてな。さァ、答えは?」
そんなもの、ひとつしかない。夢ならどうか覚めないでと願いながら、そっと抱きつけばそのままベッドへと運ばれた。
「優しくするつもりはないから、覚悟しときな」
優しく出来ないと言うのではなく、優しくするつもりがない辺りがイゾウだなと思い、俺は笑う。そうして……夢だなんて思えないくらいの、濃厚な時間が膜を開けた。