※この作品はR-18です。

拍手お礼文(小話集)   作:夢枕 七変化

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目次

ヒロイン視点
ルフィ視点
ミホーク視点
マルコ視点
ロー視点
ドフラミンゴ視点
クロコダイル視点
イゾウ視点
シャンクス視点
カタクリ視点

線で区切ってあるだけです。飛んだりは出来ません。予めご了承ください。


海になりたい(色々な視点)

【ヒロイン】

 

 海になりたい。そんな事を考える。

 浜辺でビキニ姿になっている私に見向きもせず、他に気を取られてる。私が能力者じゃ無いからかな?

 ……妙な事を考えたものね。視線さえ向けてくれないのは、私が片想いしてるだけだからだって分かってるのに。

 乙女な自分を振り払うように海水に身を沈めて、浅い所にある海底から空を見上げる。水を、波を通して水中から見る空は、乱反射してとてつもなく美しい。

 息が続く限りそうしていて、このままだと危ないかなって思ってから海面に顔を出してみる。そうしたら、こちらを刺すような視線が1つ。

 自然と首を傾げつつ、そっと歩き出せば浅瀬に向かうにつれて海水が体から落ちて、流れて行く。そんな私に来るようにと1言声が掛かるけど……。

 

 「私、濡れてる」

 

 そんな言葉に笑って、構わないと言うから素直に従いそっと抱き着いて見れば満足そうに笑われた。それに甘えるように擦り寄ってしまうのは、寂しかったのかも知れない。

 

 「海になるのは、辞めておくわ」

 

 私の言葉に意味が分からないと呟く声に、やっぱり好きだなって思って顔を上げたらまるで当然のように唇が重なった。驚いて着き飛ばそうとした私の体を強く抱き締めて、そっと耳元で囁く言葉は……妙に色気を含んでいる。

 それに混乱した私が火事場の馬鹿力でその場から逃げ出したら、背後から声だけが追いかけて来た。それに振り向く余裕さえなく、私は海へと逃げ込んだ。

 ……やっぱり私、海になりたい。

─────*

【ルフィ】

 

 俺には近付く事ができない場所で人魚のように泳ぎ回る女が居る。扇情的な姿を惜しげも無く晒して、世界を魅了する。どうしてその瞳に俺は映らないんだろうかと考えちまう。

 視線を向けていた事がバレないようにそっと視線を反らすと、ウソップやチョッパーが楽しそうにしている。だからそれに手を振ってみた。

 そんな俺にサンジが飲み物を差し出すから、ありがとうと喜んで受け取ると海から1際大きな音が聞こえて来た。それに飲み物を口にしながら視線を向けると、愛しいオレンジの姿が見えなくなっていて慌てて立ち上がる。

 

 「泡になる前に、拾ってやれよ」

 

 突然聞こえて来たゾロの言葉に視線を向けると、人魚姫は泡となって消えるんだろと言って笑う。それにロビンが揶揄いの色を乗せて、言葉を続けて来た。

 

 「でも今の所、王子が誰なのか分からないわね。私は、彼女が愛している男の味方しかしないわよ」

 

 愛している男なんかいるのかよと、慌てて海に視線を向けると水滴を弾き飛ばすように姿を見せた愛しい女。太陽の光を受けて、透けて消えそうにさえ見える。

 俺の睨むような視線を受けて、小首を傾げつつ歩き出したその身体を海水が落ちて行く。隠されている僅かなその場所さえ海水は当然のように通りながら、流れて行く。

 その姿に、喉が鳴る。心が渇く。

 

 「こっちに来いよ」

 「私、濡れてる」

 「構わねェよ。ンなもん!」

 

 言って両手を広げてみれば、綻ぶように笑って駆け出す姿は人魚ではなくて、やはり蜜柑かも知れない。当然のように抱き着いてきたその細い身体を強く抱き締めると甘えたように擦り寄られる。

 

 「海になるのは、辞めておくわ」

 「意味が分からねェ……」

 

 海になろうとして、潜ってたのか?無理だろ、お前蜜柑だから、海水で弱るだろ。

 そう思って居たら、俺を無防備に見てくる瞳に吸い寄せられる。海になられたら、俺は二度と触れられないから駄目だと思ったのもあっただろうか。

 重ねた唇は微かに塩っぽくて、渇いていた心が少しだけ潤った気がした。なのに抵抗するように俺を押すから、拘束する力を強めて余計に貪る。

 そしてその耳元で囁く。微かに、自分の声が掠れた気がした。

 

 「今夜、部屋で待ってろ」

 

 その瞬間俺を振り切って逃げ出した蜜柑は、海へと駆け出す。真っ赤になった耳が、きっと答えだと知りながらその背に声をかける。

 

 「船長命令だ!」

 

 海の中へと消えたその姿に、小さく笑いながら、俺は勝利を確信する。海水が触れた全ての場所に、俺の愛を刻んでやると見えない姿に誓いながら、そっとロビンに視線を向けた。

 

 「どうやら、俺が王子らしい」

 「泣かせたら、許さないわよ」

 「にししっ!許されなくても、泣かせるつもりだ」

 

 泣く事を我慢する女だから、泣かせてやりたい。その為なら、少しくらい怒られても俺は構わないと思ってると笑えば、フランキーがロビンの肩を抱いて、お前の負けだなと笑った。

 そんな姿を見ながらブルックが明るい歌を演奏してくれるから、夜になる迄もう少し……いつものように過ごしながら待とうと思う。今夜はきっと、忘れられない時になる。

─────☆

【ミホーク】

 

 人の居ない場所を選んで船を進めているが故に、どのような姿であれ見る者は己だけだ。それでも、露出が多過ぎるとは思わなくも無い。

 アレでは即座に好きにできるな。裸体と何が違うと言うのか。

 そんな思考を振り払う為に帽子を目深く被り、木に寄りかかったまま仮眠を取り始めればパシャンと水音が聞こえた。波の音とは違うそれに視線を向ければ、その姿が完全に見えなくなっている。

 それに覇気で居場所を探ったのは、喪失を恐れたからか。海底で動かぬそれに、立ち上がり迎えに行くかと逡巡した時、水飛沫を飛ばしながら姿を見せたそれにホッと息を吐く。

 無駄に心配をかけるなと睨めば、小首を傾げつつ歩いて来る無垢な姿。その身体を流れ落ちる海水が劣情を刺激する。

 

 「来い」

 「私、濡れてる」

 「構わぬ」

 

 肢体を流れる海水に、煽られる。そんな俺の感情に気付かずに、無邪気な様子で擦り寄る子猫をどうしてやろうか。

 

 「海になるのは、辞めておくわ」

 「意味が分からぬ」

 

 俺の返事に嬉しそうに顔を上げたそれに、俺は想いの丈をぶつけるように唇を重ねる。そんな俺を着き飛ばそうとでもしたらしいと分かれば、抵抗はさせぬと身体を強く拘束してしまう。

 微かに漏れる甘い声に、理性が焼き切れそうだと思う。こういう事だけいつまでも幼いのは、俺に対する拷問か。

 

 「今宵、眠れぬものと覚悟しろ」

 

 俺からの直接的なそれに、何処から出したのかと言いたくなるような力で拘束を解いて、逃げて行く。すばしっこいその動きのまま、海へと逃げ込むからその背に言葉を向ける。

 

 「女として、好いている。返事はどうあれ、やる事は変わらぬがな」

 

 またも海底に潜った兎に、兎も猫も泳げぬ筈だがなと小さく笑う。さて、今宵は楽しくなりそうだと内心で笑いつつ、俺は仮眠を再開した。

─────*

【マルコ】

 

 常夏の島である為か、やたらとビーチ付近が充実している為に、能力者以外はモビー付近または浜辺で海水浴を楽しんでいる。その楽しんでいるメンバーに、想い人が混ざっていればその扇情的なビキニ姿に釘付けにもなろうと言うものだ。

 直後近くで騒ぎが聞こえれば視線はそちらに向く。隊長職についてそれなりであるが故に、私よりも公を優先する癖がついている為だ。

 波そのものがたてるのとはまた異なる水の音に導かれて視線を戻せば、人魚だと言われたら納得できそうな様子で海の中を泳ぐ姿を見付ける。水が澄んでいるからか、入っていない俺からもその様子が良く見えた。

 少しすると海底でその身体を反転させ空を眺めているのが確認できて、少し羨ましくなる。そうしてさらに眺めていれば海から顔を出して、立ち上がったその身体を海水が伝い落ちていく。

 流れる海水が、俺が触れたくて触れられないその素肌を伝っている。その余りのなめまかしい姿に、他の兄弟も視線を奪われているのが分かり、苛立つ。

 そんな俺に小首を傾げて、ゆっくりと歩み寄るその姿。その度に揺れるたわわな果実が、俺の理性を試している気がしてならない。

 

 「こっちに来いよぃ」

 「私、濡れてる」

 

 見りゃわかると思えば笑えて、少し困った様子のそれに苛立ちが霧散する。だからこそ、静かな気持ちで構わないと告げたが、それにより甘えたように抱き着き擦り寄るその姿は少し頂けない。

 誰にでもこうなのかよぃ?

 下着姿と変わらないそれで、身を簡単に預けて……。無防備過ぎるだろぃ。

 

 「海になるのは、辞めておくわ」

 「意味が分からねェよぃ」

 

 俺の言葉に反応して上げられたその顔が、余りに無防備で、それでいて信頼だけを宿している瞳がその姿とそぐわない。そう思った直後、無意識で重ねていた唇。

 暫し呆然としていた間に離れようかとも思ったが、離れられずに深く合わせようとした所で抵抗を見せるから、思わずその身体を強く抱きしめる。逃げられなくしてから離した唇を耳元に寄せて、囁く。

 

 「このまま……最後までするか?」

 

 俺の言葉にいつもの数倍はあるだろう力で抜け出して、逃げて行く。背中に真っ白の羽根でもあるかのように。

 

 「今夜、ドアの鍵開けとけよぃ」

 

 それでも逃がしてやるつもりは無い為に口にした言葉に、返事をしないままに海に飛び込み膝を抱えたその姿に、今夜が楽しみだと小さく笑う。それから今も尚騒ぐ弟達に鉄拳を落とす為に立ち上がった。

─────☆

【ロー】

 

 泳げるクルーはクソ暑い常夏の島である為なのか、好んで海水に飛び込んで行く。泳げない筈のクルーは浮輪を使っているから、まァ大丈夫だろうか。

 念の為にと近くに小石を幾つか用意して、何かの時の為に待機している。いつもはそれでもある程度隠されているその素肌を惜しげも無く晒して、うちの参謀殿は平然としているのだけは頂けないが。

 その素肌を晒すなと言ってやりたいのを抑えて、必死で視線を逸らしていれば、大きな水の音と共にその姿が消える。海底に潜ったのだろうと分かるが、俺の行けない場所である為、どうしても不快に思う。

 暫くたっても顔を見せないそれに、何かあったかと思い誰かに様子を見に行かせようかと考えた時、海水を振りまきながらその姿を見せる。その美しい肢体を伝い流れ落ちる海水が俺の劣情を刺激し、俺は自分の喉が鳴るのを自覚した。

 

 「来い」

 「私、濡れてる」

 

 戸惑った様子で言うその表情は幼く、その肉体は蠱惑的。倒錯するようなそれに翻弄される。

 

 「構わねェよ」

 

 俺の言葉に戸惑いを残しつつ、甘えたように抱き着いてきたから少しばかり気持ちが落ち着いた。だが、何も着ていないのと殆ど変わらないそれに、身体が落ち着かなくなる。

 

 「海になるのは、辞めておくわ」

 「意味が、分からねェが……?」

 

 俺の声に嬉しそうに、信頼の滲んだ顔を上げるから……そんなに信用するなとの思いからその唇を奪えば、遅れて逃げようとする細い身体。逃がすかと強く抱き締めれば、微かに震えているのが分かり、耳元で囁く。

 

 「俺は、海賊だ。今夜……奪いに行く」

 

 その瞬間俺の手を必死に逃げ出すその身体に、けれども拒絶の言葉は無かった事に内心でホッと息を吐き出す。その背に声をかければ後ろ姿でもわかる程に、赤くなったまま海へと逃げて行った。

 今夜、欲望を解放できそうだと口角が自然と上がるのを自覚して、俺はクルーが遊ぶ事に満足するまでその場で身体を休ませる事にした。

─────*

【ドフラミンゴ】

 

 海岸で遊ぶファミリーの姿を眺めて、弟や右腕にする予定だった奴が居ない現実に少し苦い気持ちを抱く。本来ならば、この場に奴等も居た筈だった。

 それでも、今居ない事には変わりがねェ。そう思って、惜しげも無く素肌を晒す幼い頃からの想い人に小さく舌打ちする。

 本当は人魚なんだと言われたら、納得しちまえそうなその姿。噂に名高い人魚姫の姿とも、よく似ているらしい。

 人魚姫は絶世の美少女だと聞いているが……まぁ、確かに可愛いよなと目の前にある凶悪な肢体に視線を向けながら思う。だが、顔そのものはファミリーの方を向けているからか、寂しそうに瞳を揺らして海へと潜って行く。

 ……そんな顔、するんじゃねェよ。期待しちまうだろうが。

 ザバッという音が聞こえて視線を戻せば、艶めかしい姿をしたいい女が居た。その姿に、性別の壁を超えてファミリーが見蕩れるてるのが分かり、つい睨みつける。

 そんな俺に小首を傾げて歩み寄る姿は少し気怠げで、無駄に色気を振り撒いてる。だから自然と喉が鳴り、心が渇くのを自覚させられちまう。

 

 「そんな所にいないで、こっち来い」

 「私、濡れてる」

 

 俺を濡らす事を嫌がるのは、俺の服が海水で駄目になるのを気にしているのだろうか。だが……服なんざいくらでも変えれば良いだけだ。

 

 「構わねェ」

 

 俺のそれに嬉しそうに笑って、トテトテと歩み寄ったと思ったら、躊躇いなく抱き着いてきた小さな身体。その身体に見合わねェ巨大な物に、俺の巨大なものが反応する。

 

 「海になるのは、辞めておくわ」

 「……俺でも海を捕らえるのは難しいから、そうして貰えると助かるが……比喩だとしたら、意味が分からねェな」

 

 思わず口にしたそれに、愛らしい表情で俺を見上げてきたから……理性が切れた。気付いたらその唇を堪能していて、泣きそうな顔になってるそれに、そっと囁く。

 

 「もう、我慢なんて俺に似合いもしねェ事は辞めるつもりだ。……このまま、ここで抱かれるか?」

 

 そんな俺の言葉に顔を真っ赤にして逃げ出したその姿は、俺が嫌だという拒絶を含んでいない。もう、無理だな。

 海へと逃げ込むその背に、俺は言葉を向ける。俺はお前を抱くぞと、ただそれだけを。

「海から出たら、楽しみにしてろ」

海へと沈み込んだその姿を眺め、即座にこの島にある1番上等なホテルを貸し切れと命じれば、女達が黄色い歓声を上げて、男達は漸くかと笑った。どうやら筒抜けだったらしいとファミリーの反応に少し照れつつ、海に沈んで上がろうとしない女に視線を向けた。

海になんか、お前をやるつもりはねェぞ。

─────☆

【クロコダイル】

 

 少し遠出になるのが分かり、それにより少し長引くと分かっていたから連れ出した。そのついでに、行きたい所を聞いたらビーチだと言い出すとは誰が思う。

 どうやら本気で楽しんでる様子に、とりあえずは仕方ないかとそれを眺める。その時海兵共が俺の気に入ってる女に、邪な視線を向けているのに気付けば葉巻から灰を落とすフリをして、何処かへ吹き飛ばしてやりたくなったのも仕方ないだろう。

 そもそもあんな、何も着てないのと近い姿を平然と晒しているのが悪いとも言える。俺と2人の時ならば構わねェが、羽虫の多い所で下着以下の布地しか身に纏わねェとはどう言う了見なのか。

 海に潜ったまま暫く姿を見せない事も、余計に俺に不快な気持ちを抱かせる。そろそろ我慢も限界かと思った時、海面に姿を見せたそれは、酷く艶めかしい。

 髪が肌に張り付き、肌を伝う海水が触れる事を躊躇わせる。俺に触れられたくなくて、ここを選んだのだとしたら、甘く見られたものだ。

 

 「こっちに来い」

 「私、濡れてる」

 「構わねェ」

 

 俺の言葉に素直に頷き近寄るものの、後1歩のところで足を止める。だから妙な気遣いするなとの言葉の代わりに、その手首を掴み引き寄せれば落ちて来た肢体。

 何時もは蜜柑の香りがするのに、今日は潮の匂いが鼻腔を擽る。それはそれで、違和感が無いのは人魚を思わせる容姿の為か。

 1度濡らしたから同じだと思っているのか、甘えるように擦り寄るその体は女に育っている。中身はまだまだガキの様子だが……そろそろ、似合わねェ我慢なんざ辞めても構わねェだろ?

 

 「海になるのは、辞めておくわ」

 「意味が分からねェが、何かの隠語か?」

 

 説明する為か、上げられたその顔を見て、唇から視線が離れなくなる。もう、良いだろう。

 そう思うのと同時に貪るように唇を重ねれば、妙に甘い。そう言えば、最近女はご無沙汰だったなと気付く。

 腕の中で微かに抗う様子を見せたそれを軽く抑え込み、唇を静かに離せば赤い顔が俺に向けられている。その耳元で、我慢なんぞするもんじゃねェなとの思いを込めてそっと囁く。

 

 「今夜は俺の望みを叶えさせてもらう」

 

 昼間は行きたいと言った海に連れて来た。ならば夜は、俺の願いを叶える番だろ。

 万が一にも意味が通じないと不味いかと、その体を分かりやすく撫でてやれば身体をビクリと揺らしてから、大慌てで逃げ出す。その姿は無垢な少女でしかない。

 海に逃げ込む背中に、海兵達にも聞こえるように言葉を向ける。

 

 「今夜は寝られると思うなよ」

 

 海の中へと逃げ込んだのを確認してから、濡れた自身を能力で乾かして立ち上がる。……さて、俺が満足出来るような、いい部屋を用意してもらおうか。

─────*

【イゾウ】

 

 誰が言い出したのか、ほぼ無人島に近いこの島で海水浴を始めた家族に溜息の1つも落としたくはなる。ナースに渡されたであろう着てる意味を見い出せないような虎柄の紐ビキニで、無邪気に遊ぶ想い人が居るのだから。

 視線を向ければそのまま襲い掛かりそうで、だが、想いも伝えていないのにそれは不味いだろうと息を吐き出す。海の中へと潜って行くその姿を横目に確認しつつ、ハルタとサッチが当然のようにエースにちょっかいを出して、マルコがそれを叱っている様子に肩を落とした。

 そうして過ごしていると、何時までも浮上してこない人魚姫が心配になり、海に視線を向ける。能力者ではなくとも、海とは危険な場所だ。

 様子を見に行くかと思った時、水飛沫を上げながら姿を見せたそれは、光を反射してこの世のものとは思えない美しさを醸し出す。身体を伝い流れ落ちる海水に、思わず息を飲む。

 小首を傾げつつ浅瀬に向かい歩くその姿は、肌に髪が張り付いているのもあり扇情的で……。この動悸は、暑さの為だけだと本当に言えるのかと己に問い掛けたくなる。

 

 「こっちへ来な」

 「私、濡れてる」

 「構わねェさ」

 

 着物が濡れる事を気にしているらしいと分かるが、俺は今すぐその身体に触れたい。そう思って手招けば、素直に近寄り抱き着いてきた無防備な様子が愛しい。

 甘えるように擦り寄るそれは正しく猫だ。そっとその頭を撫でようとした時、妙な言葉が聞こえて来た。

 

 「海になるのは、辞めておくわ」

 「……意味が、分からねェが?」

 

 俺の言葉に何故か嬉しそうに笑っているその顔に、少しは意識しろと思う。その為か身体は自然と動き、その唇を奪っていた。

 遅れて抵抗を見せるその細い身体を強く抱き締めると、甘い吐息が肌を掠める。これは、もう我慢出来そうに無いな。

 

 「今宵は満月。忍んで行くよ」

 

 俺の言葉に顔を瞬時に赤く染めて、まるで椛の君だ。そんな事を思う間に、逃げ行く背中にそっと言葉を向ける。

 

 「鍵をかけても、無駄だよ。俺のお姫さん」

 

 海の中へと逃げ帰った人魚姫が戻るまで、騒がしいサッチを黙らせにでも行こうかね。そう思い、俺は上機嫌でサッチのフランスパンに鉛玉を撃ち込んだ。

─────☆

【シャンクス】

 

 クルー達の中で、悪魔の実を食ってるのは案外少ない。だからこそ、ビーチでそれぞれが海水浴を楽しんでいる。

 俺はそんな中昨日の宴もあり二日酔いで転がってる訳だが、どうしたって他のクルーではなく1人の女に視線は吸い寄せられる。それを誤魔化そうとでっぷりとしたルーに視線を向け、少しゲンナリとした気持ちになっていた。

 その時水の音が大きく聞こえて視線を向けると、愛しい女の姿が消えていた。潜ったらしいと気付くが、姿が見えないと落ち着かない。

 

 「お頭、どうした?」

 「人魚姫をどうしたら手に入れられるか考えていた」

 「……素直に言ってみれば良い」

 

 素直に何度か言ったが通じなかったんだよとの言葉の代わりに溜息を落とす俺に、ベックは喉で笑うとまたなと言って去って行く。そのまま視線を動かせばヤソップがルーの腹を揉んでいて、何してんだと苦笑しちまう。

 それにしても潜水時間長過ぎるだろうと視線を海に戻せば、海水を撒き散らすようにして姿を見せたそれに息を飲む。その身体を流れ、四肢を伝い落ちる海水は、俺の理性を遠い所へと追いやろうとしているようにしか思えない。

 なのに当人は首を傾げるばかりだ。思わず低く来いと命じれば、戸惑ったような様子を見せる。

 

 「私、濡れてる」

 「構わないから、来い」

 

 俺の言葉に少しはにかんだ笑みを浮かべ、近寄って来たと思ったらそのまま抱き着かれる。それに満足して笑えば、甘えたように擦り寄られ……密着する果実に喉がなるのを自覚した。

 

 「海になるのは、辞めておくわ」

 「……意味が分からねェが、まァ、ここにいてくれると嬉しいな」

 

 俺の言葉に顔を上げた瞬間、言葉で通じないのならばと重ねた唇。いつものそれと違うのを感じ取ってか、即座に逃げようとするそれを強く抱きしめる事で抑えれば、抵抗は弱まる。

 

 「俺の女になれ」

 

 その瞬間に力を緩めていもいないのにするりと逃げ出した俺の猫は、海へ向かって駆け出していく。だが俺はその背に向かって言葉を告げた。

 

 「今夜は、逃がしてやらねェぞ」

 

 海へと逃げ込むその姿に、逃がしてやれるのは今だけだと小さく笑う。そして俺は、二日酔いをさます為に迎え酒だと言って酒を手にした。

─────*

【カタクリ】

 

 悪魔の実の能力者が大半をしめるのに、何故か海水浴をしたいとママが言い出した為に楽しげに遊び始める家族の姿を眺める。寧ろ悪魔の実の能力者では無い兄弟を探す方が難しい家族で、何故海水浴何だと思わなくも無い。

 それでもプリンやブリュレの為にと浮輪を作り、共にはしゃいだりする想い人を思えば、たまには良いかと思うのも確かだ。シフォン達にブリュレ達を任せてからのんびり海で泳ぎ始めた姿は、既に人魚にしか思えない。

 あまり見ていては襲い掛かりそうで、何も着てないのと変わらないようなそれに目眩さえ感じて、そっと視線を外す。すると1際大きな水音が聞こえて視線を向けた時にはその姿は海の中へと消えていた。

 いつ出てくるのかと眺めていても1向に姿を見せないそれに、僅かではない焦りが産まれるのは海の中が必ずしも安全では無いからだ。悪魔の実の能力者ではなくとも、海で人が死ぬ事は多いのだから。

 腰をあげようとしたその時、海面に姿を見せたそれは女神のように美しく、身体を伝い流れ落ちるそれは瑞々しい果実を思わせる。しかし体格差を考えろと己に言い聞かせ、耐えようとするも小首を傾げるあどけないそれに、声は自然と低くなってしまう。

 

 「戻って来い」

 「私、濡れてる」

 「……構わないから、来い」

 

 俺の服が濡れた所で特に問題は無い。そう思って笑いかけると、迷子の子供が親を見つけたかのような勢いでかけてくる。

 そのまま抱きつかれれば、やはり愛しさが募る。このまま連れ去りたいと思う程に。

 

 「海になるのは、辞めておくわ」

 「意味が、分からねェ」

 

 もし本当に海になられたら、俺はきっと船から降りる事なく生き続けるだろう。そんな事を思うくらいには、俺はこの小さな生き物に心奪われている。

 その時、そっと上げられた顔が余りにも愛らしくて、唇が艶めいていて……。強く抱き締めそっと唇を重ねていた。

 抵抗しようとしているらしい小さな手を、自分の身体に押し付けさせるように強さを増して抱き締めると、漸く唇を離す。その耳元で、もう耐えられないと叫ぶ身体と心が勝手に言葉を紡ぎ出していた。

 

 「痛みは与えないから、今夜……俺のものになれ」

 

 その刹那、するりと腕から抜けて行くそれを少しばかり忌々しく思いながらも、その背に向けて言葉を放つ。もう、抑えはきかねェらしい。

 

 「どこに居ても、抱くからな」

 

 妹達の部屋に逃げられないように告げれば、海の中へと逃げ込むそれは、確かに唯一の逃げ場かも知れないなと思う。さて、今夜の為にも部屋にはバラの花でも散らしておくように命じるかと、俺は静かに立ち上がった。

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