※この作品はR-18です。

拍手お礼文(小話集)   作:夢枕 七変化

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目次

ルフィ
ミホーク
マルコ
ロー
ドフラミンゴ
クロコダイル
イゾウ
シャンクス
カタクリ

線で区切ってあるだけです。飛んだりは出来ません。予めご了承ください。


戦闘訓練

【ルフィ】

 

 クリマタクトをクルリと回す。それによりチャージされた電気のそれを纏わせたまま前に突き出し、私は動きを止めて首を傾げた。

 

 「なんか、違うのよね」

 「どうした?」

 

 聞こえて来た声に振り向いて、それを誤魔化そうと曖昧な返事をすると突然拳を向けて来るそれに、慌てて身を翻す。何をするのかと問い掛けるより早く連続して繰り出されるそれを躱し、空を蹴って空中に待機する事で距離を取ればルフィは楽しそうに笑った。

 

 「1人だと物足りないんだろ?付き合ってやるよ!」

 「無理よ!ルフィを攻撃出来ない!」

 「俺、雷も打撃も効かないぞ?」

 

 その言葉にそうだったと思い出して、サニーに降り立つと同時に、ならばとクリマタクトを構える。そんな私に嬉しそうに笑ったルフィは、遠慮の欠片もなく私に攻撃して来た。

 ルフィの攻撃を躱して行くと、次第になんで当たらねェんだと不満そうな様子を見せ始めるから、これが見聞色の覇気よと笑いかける。それによりルフィは、それ使えるようになりたいと言い出して、互いに手合わせに夢中になってしまう。

 ルフィとこうして戦うのは、幼い頃以来かもと思えば楽しくなってきて、ついのめり込んでしまう。いつの間にか集まっていた皆が、おいおいなんて言ってるのを聞きながら、私はルフィに話し掛けた。

 

 「ルフィ、強くなったわね」

 「相変わらず、1発も当てられねェ!!」

 「でも、躱すの大変になってるわよ。速度も威力も上がってて、私としてはもう、ルフィに勝てる気がしないわ」

 「俺も、勝てる気がしねェよ」

 

 私は勝てないけど負けない。ルフィは勝てそうで勝てないと言う状態が続き、次第に私の体力が尽きて来る。

 そろそろ休憩をと言おうとした所で、眼に汗が入りそれに気を取られた為にモロにルフィの拳を受けてしまう。しまったと思った時には吹き飛ばされていて、覇気を纏って吹き飛んだ先でのダメージは無くしたけど、モロに入ったルフィの1撃はしっかりダメージとして受けてしまった。

 その為に少し動けずに居ると、慌てた様子でルフィが駆け寄ってきた。心配掛けたくなくて笑いながら言葉を音にするけど、ルフィは納得してくれない。

 

 「だ、いじょ、ぶ……よ」

 「どこがだよ!チョッパー!」

 「大丈夫。……今回は、ルフィの初勝利ね」

 

 そう言って笑うと、ルフィは眉根を寄せて悲しそうな顔をする。勝てたのにそんな顔しないで欲しい。

 そしてフラリと立ち上がると、サニーの一部が欠損してるのに気付いてフランキーに謝る。そんな私にフランキーは気にするなと言うけど、その時腕から水滴が落ちるとチョッパーとルフィが悲鳴をあげた。

 

 「「腕、怪我してる!!」」

 「舐めときゃ治るわよ、こんなの」

 

 この程度ならいつもの事だったのだから。そう思って笑ったら、ルフィに強く抱きしめられてしまう。

 

 「頼むから、もう、1人で立とうとしないでくれ。今はもう、1人じゃねェんだって、分かってくれ!」

 「ルフィ?」

 

 悲痛な声でそう言われてしまえば、それを否定するつもりのない私は頷くしか出来ない。チョッパーが私の腕をそっと治療してくれて、その間も私を抱き締めたままルフィは離れようとしない。

 ……期待してしまうから、離れて欲しい。声に出せない願いとは裏腹に、抱きしめられている今が幸せにも思えて、私もまた動く事が出来ないでいる。

 

 「好きだ」

 「へ?」

 「女として、好きだ。だから、これからは船長とクルーとしてじゃなくて、恋人として、守らせて欲しい」

 

 真剣な顔で言われたそれに息を飲めば、ルフィは嫌か?と不安そうにその瞳を揺らす。それに対して、拒む言葉なんて言える筈も無かった。

 

 「私も、ルフィの事が好き……!」

 「良かった。もう、怪我させたりしねェから、ごめんな」

 

 謝ってくれるルフィに、私は笑う。幸せだから。

 

 「心配しないで、私は大丈夫」

 

 その瞬間重なる唇。その瞬間上がるブルックの雄叫びは、直後にウソップにより抑えられ、暴れようとしたサンジ君はロビンにより抑えられられた。

 だが、どちらにしろ当人達にはその騒動は伝わってはいない。ただ互いに漸く触れ合えた相手の温もりに、溺れているから。

 そんな騒動があったのも知らずに、ゾロは1人いつものように昼寝をしていた。これは変わらないようで少し変わった、ある日のサニー号の話。

────*

【ミホーク】

 

 無人島にて測量を終えた私は鈍らないようにと鉄扇を取り出して、船からは死角になる場所で1人、舞い始める。舞い散る木の葉が奏でる音楽が、私の舞いを手助けしてくれるから。

 けれども、心が落ち着かない。気を引き締めたいと思ってのそれなのに、心はざわめくばかりで……。

 

 「……美しいものだな」

 「ミホーク!?」

 「舞えるとは、知らなかった」

 「お目汚しを……」

 

 情けない。こんなにも乱れた舞いしか舞えない時に、見られてしまうなんて……。

 

 「……心が、乱れているのか」

 「えぇ……」

 「付き合ってやろう」

 「え?」

 

 顔を上げると、ミホークはその瞳を眇める。それにより咄嗟に鉄扇を綴じて覇気を纏わせれば、何とかその手にしている夜からの攻撃を受け切れた。

 けど……重い……!

 

 「咄嗟の判断で、武器を持ち替えなかった事をまずは褒めよう。持ち替えようとしていれば、その腕、胴体から離れていただろう」

 

 この……クソ親父……!なんだってのよ!

 そう思ってクリマタクトで自身の幻を生み出して短剣を構え、全員で1斉に襲いかかればミホークが嗤う。それはもう、全身が総毛立ちそうな勢い。

 咄嗟にミホークから距離を取れば、幻が1瞬で消し去られて私1人が残される。後半歩、引き返すのが遅ければ私はこの身体を半分にされていたわ……。

 

 「本体が分からぬよう接近戦に持ち込んだのは褒めよう。たが、それならば全員斬れば良いだけの事」

 「……訓練じゃなくて、死にそうなんだけど?」

 「死に直面せねば強くはなれん」

 「心の乱れを落ち着かせたいだけなのよ!私は!」

 

 なんで私、こんな物騒な人を好きになったの?

 趣味が悪いとか、そんなレベルでは既にない。自分の事ながら、自殺願望者としか思えないわ。

 

 「……主だから、夜を用いて本気で相手をしている。失望させてくれるな」

 

 その言葉にピクリと眉間が揺れる。クリマタクトに覇気を纏わせ、短剣を正眼に構え、地を蹴ればミホークは嬉しそうに嗤う。

 この顔が好きだと思う余裕は、既に無い。判断を誤れば、即死ぬのだから。

 そうなればミホークはその程度だったかと失望するだけだろう。そんなのは、耐えられない!

 ミホークの夜を受け止め、その状態から首を狙って回し蹴りを入れようとすればミホークが夜から手を離し、私の足を掴むと森の中へと私を投げ捨てた。覇気を纏い衝撃を消してはみたけど、纏いきれなかった足を多少痛めたのは自覚している。

 情けないわねと思いながら立とうとしたら、ミホークが少し焦った顔で駆け寄って来て私を心配そうに見てくる。失望させたのかな?

 

 「すまぬ。予想外の動きに、咄嗟に本気で投げた。怪我は?」

 「気にしないで、覇気を纏いきれなかった私のミスよ。大した事ないわ」

 「主は、もう少し我が身を大切にするべきだ」

 

 本気で心配そうに言われるそれに、笑ってしまう。それは嬉しかったからだけど、だからこそ誤魔化す為に軽口を返す。

 

 「殺そうとした癖に」

 「主は死なぬ。俺が愛した女がそれ程弱い筈も無い」

 「……え?」

 

 呆けたような顔をしてる自覚はある。だって、今、ミホーク。

 

 「言った事は無かったか?俺は主を愛している。だからこそ、常に全力で相手をしているのだ」

 「ミホーク……」

 「怪我は大した事無かったのだな?」

 「えぇ」

 「ならば、今宵返答を聞かせてもらう。……身体でな」

 

 そう言って去って行くミホークに、怪我が理由では無く、私はその場から動けなくなる。夢か妄想だろうかと思った直後に、ミホークの相手が務まる筈もないと真っ赤になったまま、私はその場で蹲った。

─────☆

【マルコ】

 

 深呼吸して短剣を振り抜く。舞い散る木の葉は4枚。

 その内の3枚を切り、けれども残りの1枚を逃してしまった。腕や剣が動く時に発生する空気圧の変化が風を生むのだから、集中できなければ斬れる筈もない。

 

 「やっぱり、駄目ね……」

 「見事なもんだと思うがねぃ?」

 

 声に反応して振り向けば楽しそうに笑う男がいる。その頭はパイナップルなのか、はたまたナスなのか、問い掛けたら人生が終わる気がして聞けずにいるけど本当に疑問だ。

 

 「妙な事考えてないかぃ?」

 「いつから、見てたのかなと……」

 「1人で河原に座り込んで石を睨み付けてた辺りからかねぃ?」

 

 つまりはモビーを降りた直後からずっと見られていたらしい。新しい研石が欲しくて河原にいたけど、その説明はいらないだろう。

 代わりにまだまだ弱いから強くなりたいのだと呟くように言えば、マルコはそうかと言って頷き、突然膝が飛んで来た。咄嗟に躱して短剣を片付けると溜息1つ。

 

 「そこでどうして武器を片付けるんだよぃ。戦え!」

 「だって、怪我させたくないですし」

 「治るよぃ」

 「海楼石だから、治るのに時間もかかります。……何より、治るのだとしても痛みはありますよね。再生回数にも限りはあると……聞いています」

 

 そう言ってクリマタクトを取り出せば、成程ねぃと笑ってマルコは容赦無く攻撃を仕掛けて来た。跳ねて枝に飛び乗れば、その枝ごと蹴りから放たれる鎌鼬で切られる。

 着地しようとしたその場所に拳を繰り出されて身を捻れば、容赦無く鳥の足が蹴りとして飛んで来た。慌ててガードしたけど空中にいた私は、踏ん張る事が出来なくて飛ばされて行く。

 木々を薙ぎ倒して岩にぶつかって止まったけど、どうしたものかしら。明らかに、覇気を纏うのに失敗したと気付き情けなくなる。

 大した怪我じゃないけど、すぐに動くのは難しいわよね……。そう思って困っていたら文字通り飛んで来たマルコが心配そうな顔をする。

 

 「怪我、してるなぃ」

 「大した事ないわ。この程度、慣れてるもの」

 

 笑う私にマルコは泣きそうな顔をするから、どうしたのかと首を傾げる。直後強く抱き締められて、耳元で少し掠れた声が聞こえた。

 

 「俺は、慣れねェよぃ」

 「それは……」

 「惚れた女が傷つく姿は、慣れねェ!!それも、今回は俺のミスだしなぃ」

 

 何を言われたのか理解が追い付かない。そんな私の様子にマルコはどうやら気付いた様子で、少し困ったように笑う。

 

 「伝えて、無かったかぃ?俺は、ずっと前からお前に惚れてて、愛おしく思ってるよぃ」

 

 驚き硬直する私を見つめて、マルコは笑う。その笑顔に見惚れている隙に重ねられた唇から、逃げようなんて思えなかった時点で……私の心は堕とされていたのだろう。

 重なる唇が、想いを確かに伝えてくれた。私のそれも、だとしたら伝わっているのかな……?

─────*

【ロー】

 

 無人島に到着してすぐ、測量をする為に降りた私につけられた護衛はベポとペンギン。それを終えて戻る頃には、特に問題の無い島だとローが判断していたので、久々に自由行動だと喜び勇んで島の大半を占める森へと分け入る。

 防御にしか使えないと思われがちな鉄扇だけど、捕縛等にも使えるのだ。相手が居ないと少し練習には不向きだけど、やれない事も無い。

 居もしない相手を想定して身体を動かしていたら、人の足音が聞こえて動きを止める。そして、姿を見せたローに視線を向けると薄く笑って私を見詰めてきた。

 

 「受けてやろうか?」

 「……お願い、できる?」

 「あァ、ただし……1度だけだ。その後は普通に相手しろよ」

 

 その言葉に頷き、ローが上段に構えるのを見る。そして正面を切るように動かされるそれに合わせて私も動く。

 鉄扇で右手首を受け止め、右手首の上に鉄扇を移動させると、下から腕を通して鉄扇の先を掴み、その勢いのまま引き落として固めた。そんな私にローは地面に倒れたまま、楽しそうに笑うと空いている手を使い、roomと呟くからサッと離れてサークルから離れる。

 

 「能力者相手じゃなけりゃ、いい技だな」

 「鉄砲捕と呼ばれる技でね、ちゃんとした武術のひとつよ」

 「鉄扇向けの物なんかあるのか」

 「鉄笛でも可能よ」

 

 笑いながらクリマタクトを手にローの剣を受ける。けど何度も受ける事で、腕力の差が大きく体力を奪い、少し体の動きも加えられた打ち込みに耐えきれずに私は後方へと吹き飛んでしまう。

 体力の残りが少なくなっていた為に、上手く覇気を纏え無かった為に、軽く二の腕を岩で切ってしまった。この程度ならと思ったけど、他にも筋肉が衝撃に驚いて萎縮してるのか動けなくなっていると気付く。

 少し休めば問題ないと身体から力を抜いた時、駆け寄って来たローが妙に心配そうにしていて、優しいなと笑ってしまう。けど、ローは私の上着が赤く染っているのを見て即座に手を伸ばして来る。

 

 「大丈夫よ。この程度、舐めときゃ治るわ」

 「医者に向かって民間療法で対決しようとするな。それに、二の腕を自分では舐められねェだろ。……それとも、俺に舐めて欲しいのか?」

 「自分で舐められるけど?肘や脇だと難しいけど、二の腕なら余裕よ」

 

 首を傾げて答えると、ローは何故か苦笑してそのまま有無を言わさずに治療を開始する。その手が優しくて、胸が痛い。

 

 「……悪かったな。力加減を間違えた」

 「私が受身を取り損ねたからい「俺は、惚れてる女を傷付けて喜ぶ趣味はねェ。……よし、終わったが……立てるか?」」

 

 ローの言葉に遮られたからってだけじゃなくて、続いたその言葉に呆然と見上げた。ローはそんな私を見て少し考えるようにしてから、言ってなかったか?と聞いてくる。

 それに繰り返し頷くと、ローは私と視線を合わせる為に座ってくれて、逃げられないように右腕を掴む。ゆっくりと動くその唇から、視線を逸らせない。

 

 「お前は俺の女だと、決めている。……好きだ」

 

 傲慢なその言葉が嬉しくて、私はローに飛び付いた。それを易々と受け止めて、ローが笑う。

 2人の唇がそのまま重なったのは当然の事だろう。

─────☆

【ドフラミンゴ】

 

 短剣が空気を斬り裂く事で、私の心に宿る女々しい感情も共に消えてくれたらいいのに。頭と心が出した答えの違いに戸惑い、それを誤魔化す為に、空気と共に断ち切る為に剣を振り回す。

 とは言えどうしても相手の居ない今、剣舞のような動きになってしまう。その時拍手が聞こえて動きを止めると、ドフラミンゴが私を見ているのに気付いた。

 

 「相変わらず見事だな」

 「ありがとう」

 

 私は今、笑えているかな。笑顔は、引きつっていないかな?

 そう思ってドフラミンゴを見上げていたら、突然付き合ってやろうと言い出して足が飛んでくる。慌ててそれを躱して、剣をふるえば足から出されていた糸が当然のように襲いかかって来た。

 必死になって胴体からの攻撃は躱して、糸は斬り裂いてと行動を繰り返していくけど、地力が違い過ぎて話にならない。その現実が、正直に悔しい。

 

 「まだ、本気は隠しておくつもりか……?」

 「え?」

 「本気のお前を……見せてみろ」

 

 その言葉と共に繰り出された攻撃に慌てたのは、仕方ないだろう。躱す事さえ出来ない至近距離から放たれた蹴りに、慌てて短剣で受け止める形を取ったけど吹き飛ばされて王宮の壁に激突する。

 瓦礫が降ってくるのに気付いて慌てて覇気を纏うけど、その瓦礫の1部が身体を斬り裂き赤い物が流れ落ちれば苦笑してしまう。やはり私はまだまだ弱いのだと。

 慌てた様子で駆け寄って来たドフラミンゴが私の怪我を見て泣きそうな顔をするから、慌ててしまう。どうして妙な所で情緒不安定なのか。

 

 「悪かった。力加減を間違えたようだ」

 「気にしなくて良いわよ。舐めときゃ治るわ」

 

 そう言って立ち上がろうとしたらドフラミンゴが私を強く抱き締めて、その巨体を震わせる。こういう事をされるから、期待してしまう。

 勘違いしてしまうのよ。少しは、想ってくれてるんじゃないかって。

 

 「好きだ」

 「……私もよ」

 「なら!……なら、怪我をするな。惚れてる相手が傷付く姿を見る趣味はねェ」

 「……ほれてる?」

 

 幻聴だろうか、それとも他にその言葉は意味はあったのだろうかと、期待していまう愚かな自分を認識しつつ、思わず顔を上げる。するとそこにはドフラミンゴの素顔があって……。

 まさか、と思う。それにより顔が赤くなるのを自覚した瞬間、ドフラミンゴが少し呆れた顔をした。

 

 「鈍いんだったな。……こう言えば良いのか?」

 「え?」

 「お前を、愛してる。女としても、家族としても。俺の女になれ」

 

 その言葉に対する返事として、私はその体に腕を伸ばして、そっと抱き着いた。そのまま唇が重なり合ったのは、自然な事だろう。

─────*

【クロコダイル】

 

 室内の他に庭等に出ても良いとは言えども、どうしたって身体は鈍る。有事の際、盾になる意味がないと言うのならば……せめて足手纏いにはなりたくなくて、静かに剣を振り抜く。

 風を斬る音が聞こえて、それではダメなのだと、剣を振るっても音がしないくらいでなければ私の腕力や実力では役に立てない。守られるだけなんて、もう嫌なのよ。

 その時背後から足音が聞こえて振り向けば、楽しそうに笑うクロコの姿。それに首を傾げれば、付き合ってやろうかと言う言葉と同時に鉤爪が降って来て、それを思わず短剣で斬ってしまう。

 それにより落ちるのは猛毒。咄嗟に距離を取れば、その隙を突くようにクロコがニヤリと笑いつつ蹴りを繰り出して来る。

 着地の瞬間を狙われた為にバランスが取れないどころか、受身さえまともに取れずに吹き飛ばされれば、水槽の硝子に激突してしまう。それに不味いと思ったのは、クロコが水に弱いから。

 覇気を纏えば水槽が壊れてしまう。そう思ってそのまま激突した為か、軽い怪我をしてしまった。

 それを誤魔化そうとしたのに、クロコから怒りの視線を向けられてしまい気付かれてると認識する。でも、水槽は無事なのにどうして怒るのかな?

 

 「我が身を犠牲にして、水槽を庇う奴があるか!!」

 「……だって、部屋が水没したらクロコ困るでしょ?私は平気よ。この程度、舐めときゃ治るわ」

 「背中を、どうやって舐めるつもりだ」

 「猫だもの、届くわよ」

 

 巫山戯て答えればクロコに腕を掴まれて、そのまま抱きしめられる。その時、怪我に触れないように気を付けてくれてるのが分かれば優しい人よねと思う。

 

 「惚れてる女に、目の前で怪我させてるようじゃ、俺もまだまだだな」

 「え?」

 「おい……まさか、気付いてなかったとか言うつもりなのか。何度も伝えだろ」

 「へ?」

 「……なんで俺がお前を隠してると思ってる。誰にも取られたくねェからだろ。クソッ……1度しか言わねェぞ」

 

 そう言ったと思ったら、言葉ではなく唇が降ってきてその想いを雄弁に伝えて来る。こんなやり方は狡いと思うのに、唇を塞がれている私は何も答えられず……ただ、その背に腕を回す事で応えたのだった。

─────☆

【イゾウ】

 

 停泊しているその場所から、朝の日課を終えた私はそっと降りてモビーからは見えない所へ進む。到着した所で呼吸を整えると、短剣を引き抜きそっと口付けを落とす。

 これは、合図。剣舞を行う時は、いつも宜しくと言う意味を込めてキスをしてから始めるのだ。

 その島ごとに舞い散る物は違って、だから速度も硬さも何もかもが違っている。それをわかっていて、私は到着する島の植物を相手にいつもこうして剣舞をするのだ。

 気持ちを落ち着けて、そうしなければ溢れてしまいそうになる。妹や娘としてしか見てくれてないとわかっているのに、今の関係を壊しそうになるの。

 困ったような笑顔を向けられるのも、突き放されるのも嫌で、私は動けないでいる。なら、動かなくても大丈夫なように、今ある幸福を壊さない為に、私は気持ちを抑え込む必要があるのよ。

 けれども小枝が折れる音が聞こえて振り向けば、そこには想いを消したいと願う相手がいて、楽しそうに笑っている。それに慌てて頭を下げると、その手がそっと髪を弄り始めた。

 

 「舞いの稽古か、武術の稽古か、どちらだね?」

 「両方兼ねてました」

 「付き合うよ。……構えな」

 

 2人だけで会った時、封印した筈のそれを抜いてくれる。その剣舞は美しく靱やか。

 けれどもそれに見惚れていては、命さえ危うくなる。そういう意味では魔性と呼べるかも知れない。

 交わされる刃が、想いを伝えてくれたらいいのに。斬り裂く空気のように、想いを断ち切ってくれたら良いのに。

 互いに次に相手がどう動くのか分かる。短剣と刀であるのにどうしてこう乱れる事無く、打ち合い、躱し、舞うように切り結び続けられるのか。

 けれども足元に散らばっていた小石に足を取られてバランスを崩せば、イゾウさんからのそれを受け止めきれずに吹き飛ばされてしまう。少し離れた所にあった岩に背中を打ち付ける形で止まった私の動きは、けれども呼吸さえ苦しくなるもの。

 少し動くと痛む事から、何処かに怪我をしたらしいと知る。でも心配そうに駆けてくる姿を見れば、そんなの伝えられない。

 いつも余裕の顔で笑ってるのに、こんな時だけ心配そうに顔を歪めるから期待してしまう。怪我したのが私じゃなくても、イゾウさんは同じように反応するとわかってるのに。

 

 「大丈夫かい?」

 「えぇ、問題ありません」

 「……怪我をしたのか。帰るよ。マルコに診て貰い「この程度、怪我のウチに入りません」」

 

 私が咄嗟に言葉を遮ると、イゾウさんは私を強制的に抱き上げて歩き出す。それに抵抗しようとすると、指先から脳天まで突き抜けるような痛みが走り息を飲む事となり、それによりイゾウさんは顔を顰める。

 

 「俺は惚れてる女に怪我させて喜ぶ趣味は無いよ。早く治して貰いな」

 「……はい?」

 「…………まさか、気付いてなかった、のかい?」

 「へ?」

 「鈍いとは思ってたがね。流石に予想を上回る反応だよ」

 

 そう言ってひとしきり笑った後、私を抱き上げたその状態で掠める程度の口付けをしてくる。それに反応出来ずにいる私に、そっと囁きを落として来た。

 

 「続きは、怪我が治ってからな?」

 「私、返事……!して、な「俺を、好きだろ。他の答えは有り得ない事くらいわかってるさね」」

 

 艶やかな笑みを浮かべてそう言ったイゾウさんに何も言えず、私はただモビーまで連れ帰られる事となった。顔を隠す方法が他にないからと理由をつけて、イゾウさんに強く抱きついたままで。

─────*

【シャンクス】

 

 風の音と、自分の呼吸音が混ざる。波の音と、自分の脈音が重なる。

 今だと思って短剣を引き抜き目の前にある大岩を切り刻む。けれども、粉砕する事は出来ずに、己の力不足を思い知らされるばかり。

 まだ足りない……。もっと、強くならなきゃ……。

 サイズの異なる小石が大量にできた、元大岩を見て自らの恋心のようだと思う。ただ、この小石のように恋心を砕く術が見つからないけど……。

 

 「無駄な動きが多いな。どれ、少し相手してやる」

 「シャンクス……いえ、師匠、宜しくお願い致します」

 「名前で呼んでくれて構わねェんだがなァ……」

 

 そんな言葉と力の抜けた笑顔で、けれども地を蹴るそれに迷いは無い。……早い!!

 ギリギリで躱した攻撃は、躱しそこねたら酷い目に合っていたと嫌でも分かる威力。でも、躱した事で必然的に生まれる隙をついて反撃に回ろうとした時、躱した筈の攻撃が向きを変えて襲って来る。

 しまったと思った時にはもうそれを躱すのは不可能で、正面から受けるしかない。それ故に力不足で簡単に弾き飛ばされてしまう。

 それでも踏ん張ろうとしたのが悪かったのか、着地の角度が悪かったのか、ヒールが折れてバランスを崩す。そこを迷い無く狙い、蹴りが飛んでくれば武器で受けてる筈なのに私が力負けして吹き飛ばされた。

 樹を数本薙ぎ倒しながら、その奥にあった岩に背中を打ち付ける形で止まった。覇気を纏っていたから、それ程大きな問題は無いけど、ヒールが1つ戦死して足首を負傷したらしい現実に情けなくなる。

 あー……このヒールお気に入りだったのに。次、いつ人のいる島に降ろして貰えるのかも分からないのにどうしよう。

 

 「悪い、力加減を間違えた!」

 「気にしないで。ありがとうございました、師匠」

 「怪我、させたか」

 「この程度、舐めときゃ治るわ」

 

 心配そうに情けない顔を見せるシャンクスについ笑いながら答えれば、ヒョイっと抱き上げられて顔を覗き込まれる。何をするのかとか、顔が近いんだけどとか、色々思うのに言葉が音にならない。

 

 「俺は愛してる女を傷付けて、気にしないでいられる神経は持ち合わせてねェよ」

 「……へ?」

 「………………まさか、嘘だろ。気付いてなかった、だと!?」

 「え……っと?」

 「毎朝毎晩の熱い口付けと、怯えさせないギリギリの範囲で身体中撫で回してた俺の行動を、ならお前はなんだと思ってたんだ」

 

 その言葉で視線が泳ぐ。だって、キスはシャンクスの挨拶だと思ってたし、撫で回すのは夜だから、ぬいぐるみとかを撫でるのと同じ感覚かなと……。

 それをゴニョニョと伝えたら、降って来た唇。重なるそれに、これ迄ずっと手加減されてたのだと思い知る。

 それが終わった瞬間に名を呼べば、真剣な顔と声に呼吸さえ忘れさせられそうになる。だって、元々ずっと好きな相手なんだもの。

 

 「シャンクス……!?」

 「愛してる、俺の女になれ」

 「あ、わた、し……」

 

 嘘でしょ、だって、片想いだと思ってて。妹とか娘とか、弟子の1人でしかないと……ずっと……。

 

 「まァ、怪我が治ってから続きはするから、それ迄に……心決めとけ。手放すつもりも、逃がすつもりも無いからな」

 

 そんな言葉に私は頷いて、強く強く抱き着いた。そんな私をシャンクスは、そっと船まで連れ帰ってくれたのだった。

─────☆

【カタクリ】

 

 もう、城と呼ぶのが相応しいだろうと言うような家の中で、私は基本的に1人で生活している。それは、カタクリが忙しいから仕方ないんだけどね。

 航海に行く時は連れて行ってくれるけど、敵が近付くと船内に押し込められて出して貰えなくなるし、その後も後片付けが終わるまで出しては貰えない。それは、私が弱いからに他ならないのだろう。

 私は戦えない訳じゃない。戦いたくはないけど、でも、夢を叶える為には戦わなければならない時もあるのは理解してるもの。

 だからこそ、連れて行って貰えるように、共に戦えるようにと1人で剣を奮う。シャンクスのそれを思い出しながら、舞いの型を忘れないように、心の迷いを断ち切るように。

 身体が鈍らない為にしていた筈のそれは、いつの間にか理由を変えていた。愛しい人に……庇われるだけなんて、もう嫌なの。

 いつも残される。1人で居るのは……つらいよ……。

 その時拍手の音が聞こえて視線を向けると、カタクリが立っていた。帰ってくるなら言ってくれたら、何か作っておいたのに。

 

 「お帰りなさい。今何か作「付き合おう」」

 

 何にと問い掛けるより早く構えを取るカタクリに、私も臨戦態勢に入る。私から仕掛けては確実に負けるので距離を取り、攻撃を躱しながら隙を狙う。

 でも、隙が無いのよね。そんな事を考えた時、着地に失敗して身体のバランスを崩した時に来た攻撃。

 当然躱し損ねて、そのまま吹き飛ばされてしまう。覇気を纏っていても、元々の力量が違い過ぎてノーダメージには出来ない。

 背中から何かが流れるのを感じれば、切っちゃったかと思い周りを見れば中庭に用意されていたガーデンセットに突っ込んだのだと分かる。なら、木片が原因ね。

 

 「大丈夫か!?」

 

 駆けて来るカタクリの顔が余りにも必死で、つい笑ってしまう。本当に、優しい人。

 

 「大丈夫よ。こんなの、舐めときゃ治るわ」

 「なら、舐めてやろうか?」

 「……ばっ!馬鹿言わないで!そんなに簡単に肌を見せる訳……!!「俺は、惚れた女を傷付けて、平然といられる精神は持ち合わせていないし、舐めれば治るなら、舐めてやるくらい当然だろう」」

 

 本気で言ってるのが伝わってくれば、なんなのこの人天然なの!?と罵りたくなるけど、その前に……ま、さか?

 

 「今、惚れて……?え?」

 

 幻聴か、聞き間違いよねと頭を振ったらカタクリに抱き上げられていて、わひゃぁ!?という情けない声が出てしまった。そんな私を部屋に運びながらカタクリは言う。

 

 「愛してる。女としてしか、見ていない。……怪我人を襲うつもりは無いから、早く治せ」

 

 そう言って治療をするカタクリに、ちょっと待ってと思うのはおかしくないだろう。だって、今のだと。

 

 「わ、私がカタクリを拒むとか考えないの!?」

 「……考える筈無いだろう。これ程分かりやすく愛されているのに」

 

 そうして手当を終えると同時に重なる唇。驚き反応できない私に、カタクリは笑う。

 

 「続きは治ってからだな」

 

 その言葉に、私は無言で頷く他、選択肢が無かった。夢なら覚めないでと……そんな事を願いながら。

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