ルフィ
ミホーク
ドフラミンゴ
ロー
マルコ
イゾウ
シャンクス
レイリー
線で区切ってあるだけです。飛んだりは出来ません。予めご了承ください。
【ルフィ】
冒険が1つ、また終わった。楽しそうに笑う皆を見て、宴の花を添えるように演奏したり歌ったりするのも1応は終えたし、今はブルックも居るのだからとそっと立ち上がる。
いつもどんなに小さな島でも何かしら問題を発生させる天才に、俺の心は侵食されている。兄貴と言うか親代わりと言うか、そんな感じの関係性として接していく事が最近時につらくなるのは何故か。
ずっと子供だと思っていたのに……。時々飢えた雄のような顔をするから、対応に困るんだよな。
どちらかが女であれば結果は違っただろう。だが、どちらも男でしかも幼馴染。
報われる筈も無い。それに俺はアーロンに……。
「どこ行くんだ?」
「ルフィ……?」
「あァ……傍から離れんなって言ってんだろ」
「……酔ったみたいなんだよ。だから、1人になりたくてさ」
暗かったから確証は無かったけど、本当にルフィみたいだな。兄離れしろよと笑う事が、今は出来ない。
離れられたら、きっと……泣いちまう。ルフィの幸せを今は、今だけは……願えない。
「なら、帰るぞ。本当に様子可笑しいしな」
そう言ってルフィは俺を抱き上げるから、その腕力に驚かされる。身長も、体格も、それ程変わらないのに。
広がる差に、焦燥感が募る。俺はもう、ルフィにとって邪魔な存在になろうとしてるんじゃねぇのかな。
部屋に入った所で降ろしてくれたから、ルフィの方を振り向いて笑う。……笑える筈だ、笑え、俺。
「送ってくれて、ありがとう」
そのままドアを閉めようとしたらルフィに抱き締められて、何事かと思っている間に部屋の中に入ったルフィがドアを閉めたのに気付く。そして、そのドアに抑え込まれる形となった俺は、直後に重ねられた唇に息を止めてしまう。
目的が分からない。理由が分からないが、離れたくないと、このまま続けて欲しいと願っちまう。
己の浅ましさが、醜さが苦しくて、勝手に流れ落ちる涙に、ルフィは唇を離すと指先でそれを拭って首を傾げる。それから困ったような、何処か大人びた顔で笑った。
「好きだ。こういう事も、もっと凄ェ事もしたいくらい。……なァ、俺のクルーとか、俺の幼馴染って立場の他に、俺の恋人になれよ」
「ルフィ……」
夢だろうか、それとも願望が聞かせる妄想だろうか。そう思いながらも、夢でも願望でも、幻でも良いからとルフィの首に腕を回す。
「俺も、ルフィが好きだ……ルフィが、欲しい……!」
勝手に震える体をルフィは強く抱き締めて、そのまま俺をベッドへと移動させた。重なった唇が震えていたのは、どちらが震えていたのか。
それさえも分からないまま、2人の影は重なる。だが、やはり怖くなりアーロンを理由に拒もうとした後で、何が待っていたかをここで語るのは……難しいだろう。
─────☆
【ミホーク】
海軍の宴に招待されたミホークに付き合ってその場に居たが、俺には馴染めそうも無い。正直、息苦しい。
海軍の全てが腐ってる訳じゃないと知ってるし、海賊の全てが正義でもない事も知っている。だけどさ、俺が出逢った大半の海軍は腐ってたし、海賊が正義だったのは間違いないんだよ。
「傍を離れるなと、言っておいた筈だが?」
「……悪い。酔ったみたいだ」
「ならば、帰るぞ」
「え、でも……まだ宴は……!!」
「顔さえ出せばよい。義務は果たした」
そのまま抱き上げられてしまえば、俺にはそれ以上何も言えない。船内に戻れば、それだけで呼吸が楽になった気がしたのだから、不思議なものだ。
「部屋まで送ってくれてありがとう。シャワーでも浴びて少し休」
俺はその言葉を、最後まで紡げなかった。船内の、いいや、部屋のドアの内側で身体を抑え込まれるのと同時に唇を奪われてしまったのだから。
何が起きてるのかわからない。俺はただ、保護されて共に過ごしてるだけの……居候で……だと言うのに、なんで突然!?
見た目が女と近くても、俺は男だ。それをミホークが知らないとは思えない。
「ここまでされても伝わらぬか」
「な、にを……?」
「俺は、惚れてもいない男を傍らに置いて守り続ける趣味は無い」
言葉を理解しきれない。頼むから待ってくれ、どういう事だよ?
俺は今、都合のいい夢でも見てるのかな。でも、他にどういう事か分からなくて、でも期待するのが……怖い。
「愛してる。俺のモノになれ。……さァ、頷け」
傲慢過ぎる。そう思うのに、俺はその言葉が嬉しくて、泣きそうになるのを耐えながら頷いた。
ノーが許されないから、そんな言い訳を脳内で繰り返しながら。でも、どうしても怖い……!
「俺も、ミホークが、好きだ……けど、俺は男で……!!」
「男なのは知っている。で?何が問題だ。性別等些細な事だろう」
「些細か!?」
叫ぶように言った俺にミホークはフッと笑う。そして、顎を掴むと顔を覗き込みながら言った。
「性別は些細だが、主からの想いが足りぬな。俺は愛してるのに、好き……程度とは。今宵は眠れぬものと思え」
同等の想いを返すまでは、泣き叫ばれようとも辞めるつもりは無いぞ……と本気の色を宿した声で言われて、思考が止まる。そのまま沈められたベッドで重なった影は、絡み合い離れようとはしなかった。
─────*
【ドフラミンゴ】
花火が爆音を響かせながら打ち上がる。こんな盛大な事をしても捕まる事の無い海賊……か。
多過ぎる呼名は、即ち俺との距離。どうやら俺はドフラミンゴにとって好みのタイプらしいけどよ……俺はお飾りの人形でいるつもりはねぇんだ。
不毛な片想いだと思う。男同士であり、ドフラミンゴにその毛はないと知っているのだから。
俺が女であれば、受け入れただろうが……。まぁ、俺が押し倒すってのは現実的に考えて不可能だしな。
結局諦めるしか、道は無いだろうと思ったら泣きそうになって、慌てて宴の席を抜け出す。こんな所で泣くつもりは無い。
助けて貰えた時点で、原作の流れなんて大きく変わってるのは分かってる。でも……大筋は何も変わってない事にも気付いているんだ。
「傍を離れるなと言った筈だがなァ?」
草を踏み締める音と共に聞こえて来た声に反応して、肩が揺れる。泣きそうな今の顔を、見られたくない。
「酔ったみたいで、風に当たってたんだよ」
「……お前が、酔う?なら、帰るぞ」
驚いている間に抱き上げられてしまい、部屋へと連れ帰られる。その間に言われたのは、体調が悪かったなら言えという言葉。
その言動に焦りが見えるのは、少しは気にしてくれてると思っていいのだろうか。ファミリーの1人としてでも、想われているのだろうかと期待してしまう。
まだ宴は終わってないから、部屋の入口で降ろされると同時に、宴の席へと帰るだろうと思って笑いかける。シャワーでも浴びて寝れば、落ち着くだろう。
「送ってくれてありがとう。俺の分まで、宴楽しんで来てくれよ」
ドアを閉めようと手を伸ばした時、俺を抱えるようにして入室したドフラミンゴがドアを閉めた。鍵をかけながら、俺をそのドアに押し付ける形で唇が重ねられる。
重ねられた唇からワインの味がするから、酔ってるのだろうか?
戦いの後は気が昂るから、発散したいのだろうか。だとしても、俺は……そんな風に使われるのは、もう嫌だ。
そっと離れた唇により浅く呼吸を繰り返せば、ドフラミンゴは困ったような顔をした。苦しそうな、泣き出しそうな顔だ。
「愛してる。いい加減、受け入れろ」
「なに、言って……俺は男で!」
「んな事は知ってる。だが、俺はお前を大切にしてるだろうが。誰がなんと言おうが、お前は俺のモノだ。昔から……な」
その言葉で思い出すのはアーロンの事。俺にドフラミンゴへのそれを口にする権利はない。
だからせめて、自分の傷を小さく終わらせようと口を開く。それが、双方にどれ程の毒となるのかさえ自覚しないままに。
「ドフィは、男に興味無いだろ!スタイル抜群の美女しか傍に置いてねェんだから!!」
「お前が女なら、こんなかと思う奴を選んで来ただけだ。俺は、全ての時代、全ての姿のお前を愛してる。観念して、俺のものになれ」
ドフラミンゴの言葉の意味は半分位しか分からない。分からないけど、俺は酔ってない酒の力を借りて本音を口にする。
「俺、ドフラミンゴを「ドフィ、だろ」」
矯正された言葉を受けて、俺は言い直す。その首に腕を伸ばしながら。
「俺、ドフィの事が好きだ。諦めようと思ったのに、無理だった」
勝手に諦めようとするなと言いながら、ドフィは俺を抱き上げてくれる。だから俺は、漸く届いたその首に腕を回して深く互いの唇を貪り合う。
酔わされたのは、互いの存在だとでも言わんばかりに重なった影。それが離れるのは、随分先になりそうである。
─────☆
【ロー】
宴の席で1人だけ浮いてる気がするのは、俺の精神的なものだろうなと思う。手にしてた酒瓶を空にしてから立ち上がると、宴の会場となっている浜辺を離れる。
助けて貰ってから現在まで、年の差がそれ程ある訳でもないのに、関係性は明らかに過保護な兄と無能な弟。……何も出来ない俺に、そばに居る資格なんてないよな。
宴の喧騒が小さくなって、風が髪の毛を揺らす。波の音が聞こえる中で、このまま海や風に溶けてしまえたら……なんて、そんな事を願ってしまう。
「傍を離れるなと、言った筈だが?」
突然のその声に驚き顔を上げれば、不機嫌そうなローの姿。それに慌てて言い訳するけど、その瞬間に変わる顔色。
「酔った、みたいで……」
「……お前が?検査するから帰るぞ」
抵抗を許さないローのそれにより連れ帰られてしまう。でも、検査される訳にはいかないからと、最近飯食うの忘れてたからかもなんて言えば漸く検査するのは取りやめて貰えた。
その代わり少しではなく説教されちまったが。それでも、なんか嬉しかったんだ、ローの声が、視線が、俺に向けられてるから。
部屋の入口で降ろしてもらえたから、それに対して笑いかける。ローは、皆の所に戻らなくちゃな。
「送ってくれてありがとう」
そのままドアを閉めようとしたら何故か中に押し入ってくるローに首を傾げる。その直後、いつの間にか立ち位置が入れ替わっていて入って来たばかりのドアに押し付けられていた。
片思いの相手から齎される濃厚過ぎる口付けが、思考能力を奪うけど、されてる理由が分からない。俺は女っぽく見えてもれっきとした男だ。
「俺のものになれ」
「そんな、俺、弟みたいなもので「惚れてもいない男に優しくして、手取り足取りなんでもやってやる趣味はねェ。俺は、お前が欲しい」」
遮られた言葉の続きを紡げる筈も無く、俺はただローに両手を伸ばす。抱きつくと同時に、勝手に零れ落ちる涙を拭う余裕もないままに、言葉を口にした。
「俺も、ずっと……」
そのままベッドに重なり合った二人は、ただひたすらに互いを求めて身を寄せ合う。宴の喧騒に紛れた2人が、その後宴の席へと戻る事は無かった。
酔わされたのは酒ではなく、愛しい温もり。望み続けた相手の体温。
─────*
【マルコ】
楽しそうに歌ったり踊ったりしてる仲間達を眺めつつ、今回の戦闘では死人が出なかった事にホッと胸を撫で下ろした。それでも忙しそうに動き回り、時に楽しそうにお酒を口にしては家族にお小言を言って回る、心配症で真面目な皆の兄貴を見詰める。
俺は船縁から立ち上がると、そっと後甲板に移動した。喧騒から遠ざかるだけで、気持ちが随分楽になった気がしたのだから、不思議なものだ。
想われてるのはわかってるけど、同時に弟としてである事、下手をすれば息子としてである事をわかってる。でも、泣く権利さえ俺には無い。
同じ性別だ。それも、俺はアーロンに……。
勝手に震えそうになる身体を強く抱き締めて、軽く頭を振る。その時マルコの声が聞こえて、俺の中にあったアーロンの影が霧散した。
「突然消えるなぃ。目視できる距離にいろと言ってるだろぃ」
「あ、悪い。……少し、酔ったみたいで」
「酔った?……なら、少し検査した方が「大丈夫だよ。寝不足が原因なだけだから」」
俺の言葉で意味を理解したのか、マルコはその表示を緩める。それでもその手は俺をヒョイと抱き上げるのだから、理解に苦しむ。
近くなった顔が心配そうに俺を見ていて、抵抗なんてできる筈がない。部屋に帰る事を告げられて、運ばれたのは俺の部屋。
入口で降ろされたので、俺は不格好にならないように精一杯の笑顔を向ける。触れられていた所が、熱い……。
「送ってくれて、ありがとう」
言葉の直後に、ドアを閉めようと伸ばした手は空をかいた。そして何が起きたのか認識するより早く反転させられた身体は、今まさに閉めようとしていたドアに押し付けられて……。
何故か重なっている唇、先程までマルコが呑んでいたのはラムらしいなんて考えるくらいには現実感がない。え、マルコ、酔ってる?
それとも、誰かと勘違いしてるのかな。マルコ、それともたまってるのか!?
「こういう意味で好きだよぃ。兄としてしか見てないとわかっちゃいるが、こう無防備だと……流石につらい」
「それ、俺、の……台詞……」
「え?」
ああ、そうだ。今の俺はお酒に酔ってる事になってる。
なら、良いかな、伝えてしまっても。この温もりを手離したくないと願っても。
「俺、マルコを……」
その首に腕を回して抱き着きながら、その耳元で想いを吐露すれば強く抱きしめてくれるその腕。それが少し震えていたのは、俺の願望だろうか。
願望でも妄想でも、もう構わない。ただ、今この腕を、身体を離したら後悔するのは間違いないから。
そうして絡み合う二人の身体が離れる事は、暫くなかった。ただ、どちらからともなく重なった唇が、この先の二人の関係を示しているだろう。
酔わされたのは、互いの色香か、体温か。取り敢えず分かるのは、酒にでは無いだろうという事だけ。
─────☆
【イゾウ】
何が理由なのかはわかってるが、認めたくない。認めたくないから、俺には何も分からないんだ。
落ち着かない心を持て余して、サッチの手伝いをしてみたり、マルコに仕事が無いかと聞いて見る。それにより宴の途中で働こうとするなと叱られてしまうけど、じっとしてるのがつらい……心がザワつくんだ。
誰にでも平等に笑いかけて、特別を作ろうとしてないイゾウに、その視線を向けられるだけで舞い上がりそうになる自分を自覚する。情けない自分に溜息落として、俺は1人宴の席から離れて行く。
喧騒から遠ざかれば、漸く呼吸が楽になった気がする。弟でも構わないから、他より少しでいいから強く想って欲しいとか……そんな情けない事を思ってる自分が卑しくて、苦しい。
男同士で恋愛もクソもねぇだろう。そもそも、この想いが不毛なんだ……と考えてから、俺は気付きたくねェんだってば!と、脳内で叫んだ瞬間にかけられた声。
「こんな所で何してるんだね?」
「イゾウ……」
「1人で月見酒……って訳でもなさそうだね。俺は、傍を離れないよう言わなかったかい?」
「悪い。酔ったみたいで……休んでた」
「……酔った?なら、部屋に帰るぞ」
言葉と同時に抱き上げられて、有無を言わさずに部屋に連れ戻される。でも、隊長であるイゾウをこんな所に拘束は出来ない。
「送ってくれて、ありがとう。……皆待ってるから、隊長は戻ってください」
「……本当に、素直じゃないね」
「え?」
ドアを閉めようとした時にかけられた声に驚いて視線を向けるのと、身体が反転させられたのは同時。ドアに押し付けられる形で押さえ込まれて、そのまま重なる唇。
驚きから抵抗しようとすれば、更に深くなるそれに快楽を拾ってしまって、溺れそうになる。そうしてやっと唇が離れる頃には、その美しい顔に見惚れて思考が止まる程度には、その甘やかなキスの余韻に浸っていた。
「俺はこういう意味で好ましく思ってるよ。……諦めて、俺のモノになりな」
「イゾウ……俺」
どうして突然とか、遊び相手が欲しいのかなとか、色々考えてしまう。けど、そうじゃない。
だから俺は、酔ってもいないお酒の力を最大限に利用して言葉を向ける。精一杯の想いを込めて。
「俺……の、方がずっと……!!」
ずっと慕ってたのだと、その言葉は唇により遮られた。酔わされたのは、甘く危険なその香りにか、どちらが酔わされたのかは、永遠の謎だろう。
─────*
【シャンクス】
いつもと変わらない賑やかな光景。1人、俺だけが異質に浮かんでる気がする。
誰かが言っていた言葉を思い出す。この船に女を乗せないのは、シャンクスかベックに惚れていざこざを起こすからだと。
ヤソップの時もあったらしいけど、それに対しては妻帯者であり二言目には息子が妻に似ていて可愛いと繰り返されては、その心も萎み問題にならなかったらしいけどな。つまり、恋愛感情でのイザコザを起こしかねない俺のこの感情は、迷惑でしかないものだ。
こんな想いを抱いてると知られたら、それこそ船に居る事さえ許されはしないだろう。そう思ったら胸が苦しくて、無様に泣く事だけはしたくないとその場を去る。
1人になれば、それだけで随分気持ちが楽になった気がした。この船の幹部から見たら、相手が誰でもそもそも俺は息子が精々なんだし、早くこの気持ちを滅してしまわないとな。
「傍を離れるなって、教えてなかったか?」
「……シャンクス」
「姿が見えなくなったら、心配……するだろう」
「ごめん。少し、酔ったみたいでさ」
「船「大丈夫!休んだら楽になったし、徹夜してたのが悪かっただけだから!!」」
叫ばれるより先に言葉を遮り、その唇を掌で押さえればなんとか騒がれずに済んだ。折角の宴を、俺なんかの為に台無しにしたくない。
そう思ってホッと息を吐き出したら視界が回った。気が付いた時にはシャンクスに抱き上げられていて、見慣れた顔が少し困ったような顔で前を見ている。
その顔に見惚れそうになって小さく頭を振ってから、到着した部屋で下ろしてもらう。心配そうに見てくるシャンクスに、明るく笑った……つもりだけど、どうだろう。
「送ってくれてありがとう。俺はこのまま少し休むよ。シャンクスは皆と宴を楽し」
言葉を告げながらドアノブを握り、そっと閉ざしていたのに、気が付いた時には俺の手は空をかいていたし、ドアは閉められていたけどそのドアに俺の身体は押さえ付けられていた。それと同時に、深く、重ねられている唇。
お休みの挨拶にしては濃厚過ぎるそれに、混乱する。あ……最近陸に行ってないから溜まってるのか?
「こういう意味で、恋愛感情で、愛してる」
「……え?」
「……船長命令だとか言って、襲うのは流石にしたくねェんだ。なァ、俺の事が、嫌いか?」
本当は酔ってなんかいなかった筈なのに、真っ赤になってる自分を自覚する。視線を泳がせて、でも、これで素直になれなかったら死ぬ程後悔するのだけは分かってる。
ただ、俺は男で、女に間違えられる事がいくら多いとは言え、股間にはシャンクスと同じモノがぶら下がってるわけで……!!だから……!
「俺、男だけど」
「あァ、知ってる」
「シャンクスなら、女、入れ食いだろ」
「否定はしねェが……俺はお前がいい。それで、否定する理由は性別だけか?」
性別って結構大きな理由だと思うんだけど。それに俺はアーロンに。
そう思ってシャンクスを見て、けど、音に出来ずに唇だけ動かすと、上書きしてやるさと笑われる。最後の相手が俺なら構わないと。
だから俺は両腕を伸ばして、その首に腕を回す。自ら重ねた唇が、その問い掛けの答えになる事を知っているから。
そのまま離れようとした唇は、シャンクスの掌により妨害される。その唇の甘さに溺れそうになるのを俺は自覚していた。
酔わされたのは、唇の甘さか、シャンクス自身か。どちらにしても、この酔いが醒める頃にはもう、元の関係には戻れないだろう。
─────☆
【レイリー】
突然現れて、そして去って行く人だと思うし、事実そうだ。来てくれた時は驚くけど、そりゃ嬉しい。
でもよ……去られた後どれだけ苦しくなるか。それなら、ずっと1人の方がマシな気がする時があるんだ。
悪意しか知らなければ、優しさに触れなければ、悪意がつらくならないように。その温もりを知らなければ、1人で居ても耐えられるのに……。
森の動物達と酒盛りしてる様子を眺めてたけど、苦しくなってさりげなく席を立つ。適当な木を見付けて登ると、枝に腰掛けて月を眺める。
1人になったら、少しばかり冷静になれた気がする。でもま、勝手に、相手のいる、それも同性を人を想ってるのだから、この苦しみは自業自得だよな。
「傍を離れないように……と、いつも言ってると思うんだがね?」
「いつも独りにする人が、何言ってんだよ」
「珍しい……寂しいのかな?」
「……っ!違うんだ。悪い……。酔ったみたいでさ、風に当たりたかったんだ。八つ当たりして、ごめん」
「酔った?……部屋に戻ろうか」
そう言うと枝ごと切り落とされて落下する身体。それに悲鳴をあげるより早く抱きとめられて、その勢いのまま部屋へと運ばれる。
既に、老人とは思えないというか、人だと信じられない領域。そんな人が心配そうに俺を見てるから、期待したいと浅ましく訴える心を感じて目を伏せると、想いに気付かれないように、部屋の入口で笑顔を作った。
「送ってくれてありがとう。もう、帰るんだろ?また来たら今度は食事でも……」
言葉を最後まで紡ぐ事は出来ないままに、ドアの方を向いていた筈が、ドアに押さえ付けられる形になっていた。そして、唇はレイさんのそれで塞がれている。
なんでこんな事に?俺はシャッキーを、裏切りたくない。
女遊びが激しいと聞いてはいる。だけど、俺は男だ……!!
遅れて抵抗しようとしたら、それより少し早く唇を離されて真剣な眼差しに貫かれる。何事だろうかと顔を見れば、唇が動いた。
「私は、君を愛しく想っているよ。私のモノになりなさい」
「だめ……だよ。シャッキーが……」
「私が外で何をしても、アレは気にしないさ」
「遊ばれるなんて嫌だ!!それに、俺は男で……!」
「知ってるさ。……遊びなら、こんなに耐えたりしなかったよ。私は君を誰にも渡したくない。妻には出来ないが、恋人になら出来る。私の唯一無二の恋人に、なりなさい」
その言葉は使い古された、相手をその気にさせる言葉なのかも知れない。男相手なら孕まないからとか、その可能性のが高い。
都合のいい存在だから、その気にされる為の嘘かも知れない。そうは思うのに、逆らえない。
ここで拒否出来る程、俺も軽い気持ちで好きな訳じゃ無い。だから俺は、酔ってもいない酒の力を借りて、言葉を口にする。
「俺……ずっと、レイさんに……憧れて……!好きだから、レイさんの事……俺は」
言葉の途中で重なった唇は少しばかり乱暴で、けれども驚く程に官能的で……。酔わされたのはどちらが先か、そしていったい2人は何に酔わされたのか……そんな事はもう、些細な事だろう。