ルフィ
ミホーク
ドフラミンゴ
ロー
マルコ
イゾウ
シャンクス
レイリー
線で区切ってあるだけです。飛んだりは出来ません。予めご了承ください。
【ルフィ】
やる事は終わりが見えない。でも、動いている方が何も考えなくて済むからと駆け回れば、1つずつ確実にやるべき事は終わって行く。
「おーい!サンジがケーキ焼い……」
途中で止まった声を不思議に思って首を傾げると、突然ルフィに抱きしめられる。抱き着いてきたってのとは違う。
幼馴染とか、兄としてしか見てないなら、もう少し距離を取ってくれよと言いたくなる。誰にでも平等に降り注ぐ太陽光みたいに、平等な友愛だとわかってるんだよ。
その時おでことおでこを無造作にくっつけられて、昔俺がやった事でそうやるのを覚えさせたのかと、過去にやっていた己の行動を呪う。そんな俺に、ルフィは眉を寄せて言った。
「部屋行って寝てろ。チョッパー呼んでくるからよ」
「は?……何言ってんだ。やる事もまだあるし、俺は大丈夫だか」
言いながらルフィの腕をすり抜けて進路を確認しようとした時、視界が歪んで平衡感覚を失ってしまう。揺れる視界の中、慌てた様子で抱きとめてくれたのに気付き、優しいなと内心で笑った。
すると、ルフィは俺を甲板に寝かせてどこかへ行こうとするから、思わずその腕を掴んでしまう。その温もりを、手離したくないと、無意識で縋っちまった。
「傍に、いて……くれ……」
「お前な……っ!回復したら、覚悟してろよ。もう、遠慮しねェからな……!!」
「あぁ、わかった」
「絶対っ……わかってねェ……!!」
そう言ってルフィが部屋に俺を運んでくれる腕の中で、甘えるように頭を預けて笑えば小さくない舌打ちが聞こえた。けど、どういう事か理解出来ねぇ。
ベッドに降ろされて、ぎこちなく頭を撫でてくれるその手の感触に幸せだなと思いながら、俺は深く眠りについた。ルフィがいる事が、それだけで俺の幸福なんだと思い知らされながら。
揺れる世界の中で、揺れているのが身体なのか、心なのかも分からない。分かるのはただ、大切な人の温もりに包まれている現実だけだ。
─────❀
【ミホーク】
戦い以外は基本的に何もしてくれない人だから、俺のやる事はいつも多い。それを不満に思った事は無いけど、本来やる気になればやれるのだも知ってるけど、つい全部やっちまうから、やっぱり時間は有限なのだと思わされるのだ。
洗濯をしようとカゴに伸ばした手を握られて、驚き視線を向けるとそのまま腰を抱かれてしまう。額と額をつけるようにして熱をはかるミホークに、俺は呼吸の仕方さえ忘れてしまい、硬直する。
「……寝ていろ」
「なっ!?大丈夫だ!さっさと洗わないと服が腐っちまう」
そう言ってミホークから離れてカゴに手を伸ばし直した時、世界が歪んだ。平衡感覚が失われて視界が揺れる。
それにより倒れて行く自らの身体をどうにも出来ずに、受け身さえ取り損ねて甲板に転がればその物音で戻ってきたらしいミホークの声が微かに聞こえて来た。抱き上げられたのは何となくわかるけど、他がよく分からない。
「聞こえているか!?何故無理ばかりする!!」
「ミホーク……?」
心配してくれてるのだと分かる。だから俺は、嬉しくて、幸せでつい笑ってしまうのだ。
それを確認してか、慌てたように離れていこうとするそれに、手を動かして触れた布を引っ張る。それはマントのように着ているコートだったらしく、動きを止めたミホークがこちらに視線を向けて来ているのが分かった。
「ひとりは……いや、だ……」
「貴様……回復した後、覚えておけ」
よくわかんねぇけど、首でも閉めたかな?そんな事を思いながら頷けば、すぐ側に腰を降ろしたミホークが頭を撫でてくれる。
揺れる世界の先で、ミホークが戸惑いながらも看病してくれるのが分かり、頬が緩む。その幸福の波に攫われるようにしながら、俺の意識は、深く沈んで行った。
─────✿
【ドフラミンゴ】
完成した小説や楽譜を推敲して、小さく頷いてからニュースクーへと託す。そろそろ海図も描きたいと言った俺の為に、俺を連れていけそうな仕事を進めてくれてる若様に、俺は何を返せるだろうか。
とりあえず何か喜びそうな物をと考えて、先日空から眺めさせてもらった島の地図を書こうかなと思った時、ベビー5の悲鳴が聞こえて慌てて駆け出した。でもそんな俺の腰に突然腕が回されて、勢いを押さえられなかった俺の身体が少し浮き上がる。
「様子が変だが、どうした?」
「何も変な所ねェぞ?」
小首を傾げたら、若様は舌打ちして俺を反転させる。これにより、人形かぬいぐるみにでもなったかのような気分にさせられるのは、致し方ないだろう。
額と額を合わせる為に持ち上げられた身体は、不安定さがないという謎現象。すると若様は、突然こめかみに青筋立てて俺をベッド迄運んでしまう。
「寝てろ。今医者を「何も無いよ。俺は大丈夫だから、ベビー5の所へ」」
行って来る……と続く筈だった言葉は空気に溶けた。ベッドから降りようとしていた身体が、落下して行くのを感じる。
視界が歪む不快感に襲われながら、ベッドから転がり落ちるのを受け入れて力を抜いた瞬間、不自然な形で身体が静止した。どうやら若様が、糸で固定する形で助けてくれたらしい。
「動き回るな。熱があるんだと自覚しろ」
そう言って糸で身体を操りベッドに戻すそれに、けれども身体から力を抜くのと同時に去ろうとする背中。ふわりと近くに来たコートの裾を、掴んでしまった理由が自分でもよく分からない。
ガキでもないのに、成人した男がしていい事じゃ無かったと気付くが、しちまった事はどうにもならない。だからと思って慌てて紡いだのは、結局甘えた発言。
「どうし「……こーと、貸して、ください」」
頭が上手く働かないで、最後に敬語のていを示す言葉に直してみるけど、きっと誤魔化されてはくれないだろう。でも、そんな俺に若様は低く唸って小さく震えた。
……寒いのだろうか。なら、コート借りるのやめようかな。
「寒いならコー「寒くねェ。貸してやる。その代わり、回復したら覚えとけ。絶対にドフィと呼ばせてやる」」
「わかった。そう呼ぶ」
甘えた事を叱られなくて良かったと、内心で胸を撫で下ろしてたら、若様は分ってねェと肩を震わせた。そして電伝虫で何処かに連絡して、俺の寝てるベッドに腰を降ろす。
その後は俺が眠るまで、頭を撫でたりしながら若様はずっと傍に居てくれた。それにより、嗅ぎなれたコロンの香りとその手の温かさに涙腺は限界に近くなる。
揺れる世界の中、いつもありがとう、大好きだよと伝えた瞬間、その手が動きを止めたのを微かに不思議に思いながら俺は静かに眠りに落ちていった。きっと俺よりも幸福な存在は、今どこにもいないだろうと思いながら。
─────❀
【ロー】
クルーのカルテ整理は終わった。海図は、今の所描けるだけの距離を移動していない。
他には……あ、そういやベポに海図を見てやるって約束してたな。そう思って、航海日誌を手にして立ち上がる。
すると甲板に出た所で声が掛けられて、首を傾げるのと同時に抱き締められてしまう。その体温が妙に心地好くて、でもまだやる事があるからと離れようとしたら額と額をくっつけられてしまった。
「……寝てろ」
「は?」
「薬を調合して持って行くから、大人しく部屋に戻れ」
「何言ってんだ。俺は大丈……」
言葉が終わる前に地面が歪んだ気がした。平行感覚を失った身体は、重力に逆らえずに落下する。
それにより倒れた俺を心配して駆け付けたローが、俺をサッと抱き上げるから慌てて首を横に振る。俺は大丈夫だから……そう言おうとして、けど無言のまま部屋に運ばれてしまえば抵抗は無意味。
「忙しいだろ。俺もまだやる事あるし」
「……大人しく寝ないなら、強制的に意識刈り取るぞ」
相変わらず甘いんだからと思って小さく笑えば、気分を害したのか傍を離れようとするその背中。俺の所に引き止めておけないと思ってたのに、手は勝手に動いてその服を掴んでしまう。
独りにしないでくれと、言葉よりも雄弁に身体が動き、縋るように見上げてしまえば言葉なんて無くても同じ事だろう。俺のそんな顔を見てローは唸ると、ギロリと睨み付けて来た。
「回復したら覚えてろよ……!!喰らい尽くしてやるからな!!」
「よし、回復したら、好きなもん作ってやるよ……。好きなだけ、食え……。だから、食いたい物考えとけよな……」
「……違ェよ。くそ、本当に覚えとけよ。言質は取ったからな」
「あぁ……」
再び頷けば心細い事を理解してくれたのか、ローはそっとベッドに腰を降ろして頭を撫でてくれる。それにホッとして力を抜くと、ローは今は寝てろと言うので素直に頷いた。
俺が女なら、良かったな……と小さく呟いてその手を握れば、ローは無言で俺の手を強く握り返して来た。だから俺は今だけは性別を忘れて、幸せな夢に浸りながら、眠りに落ちて行く。
─────✿
【マルコ】
積み上げた資料の中から、必要な物を手にして部屋を飛び出す。これがあれば、サッチが後は上手くやってくれるだろう。
これを渡したら次は親父様の所へ行って、書類の最終確認して貰ってからマルコに始動できる事を伝えに行かないとだな。そうしたら少し時間が出来るから、蜜柑の世話をしつつ少し読書でもしようかなとか考えながら駆け抜けていたら、声が掛かった。
何かあったのかと足を止めると、抱き寄せられた身体。その腕は力強いのに、妙に優しいから……抗えない。
そのまままるで当たり前のように額を合わせて来たかと思えば、そのまま眉間に皺を寄せた。どうしたのかと首を傾げるのと同時に紡がれたのは、珍しくも怒りを滲ませた低い声。
「寝てろぃ」
「なんでだよ?俺なら大丈夫だよ、マルコは心配性だな。それに俺は、まだやる事があるんだ」
見て分からないかと言う言葉の代わりに持ってる物を揺らせば、マルコは嫌そうな顔をするけどそんな場合じゃない。まずはサッチの所へ……と歩き出した時モビーが大きく傾いだ気がした。
視界が歪み、足に力が入らなかったのだと気付いたのはマルコに抱き止められた直後。そのまま部屋に運ばれてしまえば、抵抗も何もする暇等無い。
「ごめん」
「ちゃんと寝てろぃ」
そう言って去ろうとする背に無意識で手を伸ばし、腰のサッシュを掴めば驚いた顔で振り向かれた。でも、俺自身にだってなんでそんな事をしたのか分からないのだからどうしようもない。
その瞬間、マルコが呻く。そのままベッドに戻って来て腰を降ろすから、甘えるようにその手に縋ってしまう。
「回復したら、覚えとけよぃ」
「甘えて、ごめん……」
「甘えられるのは……嬉しいんだけどねぃ?」
「よくわかんねぇけど、回復しても、記憶はある筈だから、詳しくはその時に」
答えた俺にマルコは、とりあえず寝ろ……と言うので、揺れる世界から意識を遠ざける為、ゆっくりと目を伏せた。俺の頭を撫でてくれる優しい温もりを感じ、幸福を感じながら落ちるように眠りに入る。
その傍でマルコがもう遠慮はしないと言っていたその意味は、理解できていない。優しい蒼い焔に包まれながら、俺の意識は沈んで行った。
─────❀
【イゾウ】
完成した作品を手にしてニュースクーを呼べば、時を待たずして飛んで来た。それに作品を託せば、背後から喧嘩してるのか怒号が聞こえて来て、俺は慌てて駆け出す。
その時名前を呼ばれた気がして振り向けば、何故か嫌そうに顔を歪めたイゾウに強く抱き締められちまう。何だろうと思った時、綺麗すぎる顔がアップになって目眩がして来た。
「……熱いな。寝てな」
「イゾウの顔が近付きすぎて、驚いただけだよ!ジャれてる場合かよ!?」
全く……と、呆れたように言ってイゾウから離れようとした時、先程よりも強く視界が歪んでその場に倒れ込んでしまう。揺れる視界の中でも、イゾウが心配してくれてるのは伝わってしまい、抱き上げられたそれに抵抗なんて出来なくされる。
部屋で重病人を対応するように布団に埋めて来るイゾウに過保護過ぎると思って笑えば、笑えるなら平気そうだねと呟いて去ろうとする。その動きが止まって訝しく思った時、自分がイゾウの服を掴んでるのだと漸く気付き……言葉を失ってしまう。
動揺してる内心と、止まる思考。なのに、唇は勝手に言葉を紡いでしまう。
「おいて、行かないで……」
その瞬間眉を寄せたイゾウは、深く息を吐き出してからベッドの端に腰を降ろした。そして俺の方を睨むように見てから、ナース達よりも色気のある艶やかな唇がゆっくりと動く。
「回復した後は……覚悟しておきなよ」
「分かった。回復したら、仕事の穴埋めちゃんとする」
「……全くわかっちゃいない様子だが……もう、手加減はしてやらないよ」
そう言ってイゾウは俺の頭を軽く撫でて、クリマタクトを奪い取ると手拭いを器用に濡らしてから額にそれを乗せて来る。いつ扱い方覚えたんだろうとか、そんな事を思いながらも傍から離れないでいてくれるそれが嬉しい。
揺れる世界の中に居ても、1人ではない現実が俺を包む。俺はきっと今誰よりも幸福だと思いながら、服の裾を強く握ったまま眠りに落ちていった。
─────✿
【シャンクス】
ヤソップに届け物を終えて、その代わりに受け取った書類をチェックしつつ向かったルーの所。そこで受け取った飲み物をベックに届けに向かう。
そろそろベックも休憩が必要な時間だな。この書類も、ベックに確認して貰えば対応できるだろ。
けれどもその途中すれ違ったシャンクスに声をかけられて、手招かれるままに近付けば持っていたトレイと書類を奪われてしまう。シャンクスのいた樽にそれが置かれた直後、当然のように抱き締められてしまえばその腕から抜け出す事は難しい。
温かさと安心感から力が抜けそうになれば、顔が近付いてきて……額と額が合わさる。そのまま至近距離で、呆れたように言われてしまう。
「少し寝ろ」
「待てよ、過保護が過ぎるだろ。別に重労働してる訳じゃないんだぞ」
ケラケラと笑いながら樽の上にあるトレイへと手を伸ばし、でもその瞬間身体が傾ぐから、船が荒波によって揺れたのだと思った。それくらい急に、足元が歪んだから。
そのまま倒れた俺を心配する声が聞こえて、どうやら船のせいではないらしいと気付く。揺れる世界の中、心配して抱き上げてくれるシャンクスの存在にホッとして笑ってしまう。
それを余裕と思ったのか、シャンクスは俺をベッドに寝かせると無言のまま立ち上がるから、そのコートを掴もうとして失敗する。離れるその背中に、思わず声が出てしまった。
「っ……シャンクス……置いて行かないで……」
振り向いたシャンクスは俺の顔を見て、何故か天を仰ぐと大股で戻ってきてくれた。それが嬉しくて笑えば、苦虫を噛み潰したような顔をされてしまう。
「回復したら、覚えとけよ」
「ガキみたいな事言って悪い。回復したら、貸ひとつな」
男に言われても嬉しくもないだろう引き止めの言葉だから、ベックからでも助けてやろうと思って言ったのに、シャンクスは違ェよ……と言う。そして疲れた様子ながらもベッドに腰を降ろしてくれた。
そのまま頭を撫でてくれるから、揺れる世界の中でも俺は何も問題無く、静かな幸せに浸りながら眠りに落ちて行く。夢の中では、性別なんて関係無いから。
─────❀
【レイリー】
蜜柑の様子を見に行けば、今日は毛虫も青虫も見当たらなくて気分は最高である。伝手を使って作って貰った二層式の洗濯機が、そろそろ洗濯を終えてくれた頃だろうと様子を見に行く。
今日はいい天気だからシーツもよく渇くだろうと思えば足取りは軽くなるけど、突然伸びて来た腕が俺を捕らえるから驚き動きを止める。すると無駄に整ったその顔が近付いて、額と額を合わせるからそれだけで顔が赤くなってしまう。
「……熱があるね。少し休みなさい」
「レイリーさんが、驚かすからだよ!俺は大丈夫!!」
そう言って腕から離れると、数歩歩いた所で足が泥濘にでもはまったかのように身体が落下して行く。慌てて受身を取ったけど、倒れた所で動けなくなる。
視界が歪んでいて、気持ち悪い。そう思うのと、誰かに抱き上げられるのは同時。
部屋に運び込まれて、優しく泥を落としながら頭を撫でてくれるレイリーさんに、笑みが浮かぶ。心配かけてるのはわかってるのに、嬉しくて。
「余裕そうだね」
そう言って離れようとするから、俺は咄嗟にそのコートを掴む。無言のままレイリーさんを見上げたら、何故が困ったように笑いながら戻って来てくれた。
「小悪魔ちゃん、回復したら覚えておきなさい」
「おれ、なにか、した?」
「あァ……。どうしても食べたいものができてしまった」
「なら、用意するよ。でも今は……」
「わかってるよ。回復したら食べる予定だが、それ迄は気にしなくていい」
怒ってる訳じゃないとわかって、肩から力を抜く。普段は男だからと甘えられないでいるけど、こんな時位は甘えても許されるかな。
報われないとわかっていても、この人の隣は温かいから……。そのまま優しく看病してくれるレイリーさんの温もりに包まれながら、俺は幸福感に浸りつつ深く眠りに落ちて行った。