※この作品はR-18です。

拍手お礼文(小話集)   作:夢枕 七変化

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目次

ルフィ視点
ミホーク視点
ドフラミンゴ視点
ロー視点
ニューゲート視点
マルコ視点
イゾウ視点
シャンクス視点
レイリー視点
クロコダイル視点
クルーダ・モブ男視点(ベックマンの話)

線で区切ってあるだけです。飛んだりは出来ません。予めご了承ください。
私の手違いで、今回は登場キャラクターに通常とは差異がございます。
登場キャラクターの差異につきましては、アンケートにて決定させて頂きました。悪しからずご了承ください。


戻らない気持ち(色々な視点)

【ルフィ視点】

 

 朝見掛けた時に声を掛けたら、本の整理をしていると言っていた。夕方になり見に行くと、何故か飛び出してる本が増えているのに気付く。

 本で作られた壁の中、真剣な顔で本を読んでるその姿に、本の整理なんてできる筈が無かったのだと否応なしに気付かされる。本好きの言う本の整理は、永遠に終わらないのだ……と言ったのはウソップだったかな。

 仕方ないと思ってサンジに声をかけると、少し前に立ち寄った島にあった村で貰ったと言う木の実で簡単にパイを作ってくれた。それに合いそうなミルクティーを用意して俺にトレイを突き出して来る。

 首を傾げる俺に、嫌そうに俺からなら食べるだろと言われれば確かにと頷き、それを受け取り礼を言って図書室に戻る。すると本を読み終わったその手で、次の本に手を伸ばそうとしているのを見て慌ててその手を掴む。

 

 「飯、そろそろ食わないと駄目だろ。チョッパーに泣かれるぞ」

 

 言葉と同時に差し出したトレイに、ありがとうと笑ってくれたからそれを食べたりするのを眺める。小動物みたいで可愛いと思っていたけど……その直後突然縮むその姿に焦って駆け寄った。

 抱き上げたその姿は妙に見覚えがあって、だけど良く知る理知的な態度が欠片も見えない。今にも泣き出しそうな顔で、洋服の中で溺れているその姿は凶悪に可愛いだけだ。

 

 「る、ふぃ?」

 「あ……。記憶はあるんだな」

 「ん……。でも、なんかヘン。るふぃ……おっきい……」

 

 違う意味で取れそうなそれに、その後精神的にも縮んでると気付いて俺が皆を呼んだのは当然だろう。俺には何もできないし分からないからな。

 調べて貰い、原因はパイに使われた木の実らしいと分かる。だから数日で治る筈だと、チョッパーとロビンに言われた。

 その間も、ずっと俺から離れない様子に顔がニヤけてる自覚はある。だってよ、甘えてくれてるんだもんよ。

 1段落ついた時、ふと視線を向ければ何やら目を擦っていて……眠いのかと気付けばソファに腰を降ろしてそっとその身体を抱き寄せていた。俺に頭を預けて、でも起きてようとしてる様子が本当に愛しい。

 

 「寝ていいぞ」

 

 頭を撫でながら言えば、嬉しそうに笑うそれに、本日何度目か分からない動悸が俺を支配する。流石に、この姿の時に何かしたら不味い。

 

 「ね、るふぃ」

 「ん?」

 「おっきくなったら、ケッコンしてね。だいすき……だ、よ」

 

 そう言って、言うだけ言って眠る生き物に、元に戻った時も戻らない気持ちでいてくれるならと強く思う。そっと眠るその頬にキスをして、落とさないように抱きしめ直したら……とりあえず、他の誰にも触らせないぞと決意した。

 俺はずっと、小さなお前と同じ気持ちなんだ。俺に向けられたそれが、戻らない気持ちである事を望んで何が罪だろう。

─────✿

【ミホーク視点】

 

 会議だと言われて参加したその場から帰れば、出発前と同じ様子で机に向かう馬鹿猫が1匹。帰りに土産として持たされたパイを見て、とりあえずこれを食わせるかと鍋に牛乳を入れて火にかけた。

 俺の分も今回はこれでいいだろう。吹き零さない為に弱火にしてから、そのペンを奪い取れば驚いた顔で俺を見て来る幼い顔。

 

 「あれ?会議は?」

 「終わって帰ってきた。……パイを貰った。それならば食すだろう」

 「別に、私、好き嫌いしてないと思うんだけど……?」

 

 そう言ってから立ち上がり、けれどもよろめくその身体を支えてやる。そんな些細な事でも己の状態を確認したらしく頬を染める姿は、愛らしい。

 ありがとう、お帰りなさいと続く言葉にソファ迄運んでから、大人しくしていろと命じ背を向けたのは、己の顔を見られたくなかったからだ。ホットミルクに蜂蜜を落として運んでやれば、嬉しそうに笑うそれに絆される。

 飲物を飲んで落ち着こうとしていた俺の目の前で、パイを口にした瞬間に嬉しそうに美味しいと笑って……そのまま身体が縮んで行くのを見た。服の中で藻掻く姿に慌てて抱き上げると、幼い姿で、つぶらな瞳で俺を見上げて来る。

 不安なのだと訴えるその瞳はけれども必死で泣くのを耐えている様子が見て取れて……。海軍は、何を持たせたのかと殺気立つ。

 電伝虫越しに荒れ狂う俺に海兵達は青ざめるが、知った事か。原因究明と元に戻す方法を知らせねば、七武海を辞めて近隣諸国を滅ぼして回るぞと脅しをかけたのも当然だろう。

 

 「大丈夫だ。必ず元に戻してやる」

 「みほーく、ありがと」

 

 頭を撫でてやりながら言えば、にぱっと笑う小さく愛しき生き物。どうやら記憶はあるのに、精神までも子供になってるらしい。

 普段より高いその体温に、子供の扱い等知らぬと思いつつもそっと抱き締めてやれば、腕の中で眠気と戦い始めた。どうやら俺を本気で信頼しているらしい。

 俺程危険な存在も無いだろうに。いつも狙っている男に、心を許し過ぎだ。

 その時八割寝ている状態で、へにゃりと笑って服を掴まれれば甘えられてるのが分かる。顔を覗き込めば、蕩けたような顔と声で紡がれる甘い願い。

 

 「みほー、く……おっきくなったら、ケッコンしてね。だいすき」

 「すぐにでも式場を手配してやる」

 

 俺の言葉は届かなかったのか、寝てしまったそれにそっとキスをして、落とさぬように抱き締め直す。元の姿に戻った時、その気持ちが変わっていなければ良いのだがな。

 戻らぬ気持ちに期待しつつ、身体が戻り次第喰い散らかそうと決意する。俺を翻弄する小さな生き物を、今はただ守ってやろうと心の中で囁いて。

─────❀

【ドフラミンゴ視点】

 

 帰りが遅くなり、深夜というか明け方と言うかの時間帯に漸く帰り着けた俺には、確かに文句を言う権利は無いのかも知れない。だが……やはり苛立つものはある。

 僅かに漏れる明かりが、まだうちのお姫様が起きてる事を示す。カリカリと止まる事の無いペンを動かす音が、天才と呼ばれる所以だと何故分からないのか。

 話し掛けても反応しない様子に、俺が離れてから何日こうしていたのかと思えば溜息も落ちる。途中寄った島で手に入れた果物を眺めて、これで何か作らせるかと部屋を出た俺はパイになったそれと、飲み物を用意して部屋に戻った。

 ドアを開けたタイミングで意識がこちらに戻った所だったらしく、俺を見て嬉しそうに笑うそれをこそばゆく思いながらも食えとパイを差し出した。それを戸惑いつつも受け取り、ありがとうと笑ったから、食う姿を眺めながら頭を撫でる。

 そろそろ俺の想いを受け入れてくれてもいいと思うんだがなと内心で溜息をついた時、目の前で縮むその身体に慌てて手を伸ばすが間に合わず服の中で藻掻く小さな生き物がいるだけ。普段はキリッとしているのに、怯えた様子で潤んだ眼差しを向けて来るそれに息を飲まされちまう。

 

 「どふぃ……」

 「大丈夫だ。今、原因調べてすぐ治してやるからな!!」

 

 即座に立ち上がる俺のコートを掴む小さな手は、まるで縋るようで……。俺は置いて行くのを諦めて、その小さ過ぎる身体を抱き締めた。

 そのまま電伝虫で指示を出して、中身まで幼くなっているのに俺から離れない小さな生き物を、あやすように頭を撫でる。すると少し眠そうにしながらも、俺に向けてにぱっと笑顔を見せて来た。

 

 「どふぃ!」

 「ん?」

 「おっきくなったら、ケッコンしてね。だいすき」

 

 その言葉に動揺して動きを止めた俺に抱き着いて、そのまま眠る罪深きお姫様に、俺は赤くなる顔を抑える事も出来ずに唸る事となる。元の姿に戻っても、この想いを抱いていてくれるなら、誰よりも幸せにしてみせると誓ってその旋毛にそっとキスを落とした。

 とりあえず今は、少しでもゆっくり眠れるようにとその身体を抱き締めて、早く原因究明と治す手段をと叫びたくなるのを抑えながら愛しい温もりに癒される。戻らない気持ちが宿っていてくれる事を願いながら、大昔からお前1筋な俺に早く振り向いてくれよと苦笑した。

─────✿

【ロー視点】

 

 医学書の整理を始めたのは気付いていた。そのまま編纂に入ったのだろうと言うのもまた、分かってはいる。

 それでもそれならば仕方ないとして……認めてやる事は出来そうにない。放置すると何日でも食事をしないのだから、頃合を見て飲食をさせたり点滴をするのは必要な処置だ。

 俺も少しばかりやる事があって、2日程放置したが……部屋の1角が本で結界でも作られたかのようになっていては、溜息くらい出ようと言うものだ。先程ベポが二人で食べてと言って持たせて来たパイに視線を向けて、これなら必要最低限のエネルギーは補給出来るかと小さく笑う。

 簡単にビーカーでお湯を沸かしてお茶を入れると、ピクリと反応した背中に今回はまだ軽い方だったかと思う。ペンを取り上げても気付かずに、作業を続けようとした事も1度や2度じゃねェからな。

 

 「ほら、意識戻ったなら食え」

 「あ……ロー?」

 「声も掠れてるな。……飲み物も飲んでなかったのか」

 「ごめんなさい」

 「ベポからだ。果物のパイだと聞いてる」

 

 そう言ってメスで切り分けたパイを差し出せば、困ったように笑いながらも受け取ってくれた。それに内心でホッとしたのは、放置すると食べないでぶっ倒れるからだ。

 ……誰だって、惚れてる相手には笑っていて欲しいもんだろ。パイを口にして美味しいと呟く様子を眺めて、喉痛めてるならミルクでも飲み物に足しといてやるかと動こうとした時、目の前で縮むその身体。

 元々小さいのに、更に縮むから……慌てて抱きとめようとしてもすり抜けちまう。床にペタンと座ったその様子が、妙にあどけない。

 そっと抱き上げると不安そうに俺を見詰めて、今にも泣き出しそうな顔でそれを耐える。何故こんな事になったのかを調べるように、ペンギンへと指示を飛ばしてから抱き締める腕に力を込めれば、俺に甘えて来る暖かな温もり。

 

 「ロー……ずっと、そばにいてね」

 「あァ……当然だろ。今のお前を1人にできるか」

 

 言いながら頭を撫でれば眠いのか目を擦り始めるから、寝ていいぞと抱え直してやる。それにより嬉しそうに笑ったと思ったら、妙な事を言い出した。

 

 「おっきくなったら、ケッコンしてね、ロー!だいすき」

 

 その言葉と想いが、元の姿に戻っても戻らない気持ちであってくれたならばと思う。それを願うくらいは許されるだろ。

 そっとその額にキスをして、小さい姿で言われたから理性が保ててるんだぞと内心で笑う。元に戻るその時まで、確実に守り抜いてやると、眠りを邪魔しないようにそっと腕に力を込めた。

─────❀

【ニューゲート視点】

 

 少し忙しくて部屋に戻らないでいた間、馬鹿猫が1睡もせずに机に向かい続けていたと聞かされた俺の気持ちを考えやがれ。そう思いながら、持たされたパイを見て溜息を落とすが、さてあの馬鹿猫は食うだろうか。

 部屋に入り、小さなその背を見れば心配にもなる。元々小さなその背中が、僅か数日で更にひと回り縮んでいるのだから。

 

 「休憩するぞ」

 

 声を掛ければ僅かにその手が動きを緩めたので、ペンごとその手を握り閉めればゆっくりとあげられる顔。それにより帰って来た事が分かり、パイを見せれば驚きに染ったその表情。

 

 「……サッチから貰って来た。食えそうか?」

 「うん、ありがとう」

 

 俺が用意してる間に机の上を片付けて近寄って来たので、膝に座らせて餌付け宜しく口元に運べば恥ずかしそうにしながらも食べ始める。その姿が可愛くて、頬を緩ませた直後……縮むその身体に慌てて手を伸ばす。

 服の中で泳ぐようにしている姿に、息を飲む。あどけないその姿で、何時も理性的な瞳は不安に彩られている。

 自身の姿を確認して、泣きそうになって耐えている様子が明らかに幼く、精神まで幼くなっていると気付く。原因究明を急がせ、その間も俺から離れようとしない小さな温もりを守る為に力を入れる。

 その後少し調べてみて、果物の効果だと分かった事でホッと息を吐き出した時、腕の中で頭を支えきれずに揺らす存在に気付く。そっと頭を撫でれば、眠そうな顔で俺を見るから極力優しく声をかけた。

 

 「寝てて良いぞ」

 「あのね」

 「ん?」

 「にゅーげーとには、おくさんいないよね」

 「ああ、いねェな」

 「ちょっとまっててね、おっきくなったらケッコンしてあげるから!だいすき!!」

 

 声を無くしてその顔を見ていたら、そのままスっと眠りに落ちた柔らかな生き物。元に戻っても元の年齢と体格に差がありすぎるだろと思うが、向けられる純粋な好意を振り払える筈もない。

 ……気付かないフリしてやり過ごしてきたってのに、元に戻っても変わらない気持ちでいろよ。元に戻り次第、全力で口説いてやると心に誓いつつ、俺は愛しい存在の額にそっと唇を落とした。

 安眠を守るのが、今俺に出来る唯一の事だと笑い、腕に力を込める。今の俺は、きっと誰にも倒せないだろう。

─────✿

【マルコ視点】

 

 それとなく口説いても通じない鈍い女は、それでも俺に依存してるのには気が付いていた。もし、その依存が恋心故ならば最高に嬉しいんだがねぃ……。

 そんな事を思いながら部屋に向かおうとした時、サッチから差し出されたパイに首を傾げる。けれども直後に理由に思い至り、頷く事で応えるとその場を後にした。

 食い物を渡されたって事は、少なくとも丸一日は何も食ってねェなぃ。そう思って吐いた溜息には、自嘲も含まれている。

 部屋に入ると干された海図が存在を主張していて、これは寝てすら居ないなと気が付く。その肩を掴むとビクリと震えたので、どうやら意識はこちらに戻っていたらしい。

 

 「サッチからだよぃ。食うまで見張るからな」

 「マルコは過保護過ぎると思う」

 「心配されたくないなら、人として最低限、飲む、食う、寝るはして貰いたいもんだよぃ」

 

 そんな事を言いながら差し出したパイを、それでもありがとうと言いながら食べ始めた。その姿が小動物を思わせるから、少しばかり心が和む。

 けれども直後に身体が縮むのを見れば、慌てて手を伸ばす。だが元々小柄なその身体を更に小さくされては、伸ばした手をすり抜けたのも当然で……服の中で藻掻居ていたかと思ったら、不安そうに俺を見上げて……泣くのを耐えてるのが分かった。

 どうやら精神まで幼くなってるらしいと気付いて、サッチに状況報告をしてから原因究明を急がせるが、小さくなった当人は俺から離れようとしない。懐かれて嫌な気持ちにはならないが、壊しそうで少し怖いよぃ。

 俺にずっと張り付いていたからか、疲れたようでそのうちにウトウトし始めた。なので、そっと抱き上げてその身体が楽になるようにしてやる。

 すると即座に力を抜いて、擦り寄ってくるからそれに笑みが浮かんだ。それ故か、自分でも驚く程に優しい声が出た。

 

 「寝てて良いよぃ」

 「まだ、ねないもん」

 「眠いだろ?」

 

 問い掛けにんー……と答えて、目を擦りながら俺を見た。そして、にぱっと笑いながら爆弾投下して来る。

 

 「ねるから、おっきくなったら、ケッコンしてね。だいすき……」

 

 言い終えると同時に眠った生き物に、寝る交換条件が少しばかり大きくは無いかと思う。だが……元の姿に戻っても、戻らない気持ちであれば良い。

 それならば、俺はその願いを叶えたい。そっと罪深き眠姫の頬にキスをして、その安眠を守る為ソファに腰を降ろした。

─────❀

【イゾウ視点】

 

 俺の愛しいお姫さんは、我が道を突き進む。その結果どうなろうと自業自得、好きにしたらいいさね……と突き放したら、倒れちまった事がある。

 見捨てる事も、諦める事もさせてくれず……俺の気持ちに気付かない残酷なお姫さん。目を離せばそれだけで永遠に喪いかねないと、深い溜息を落とせばサッチから手渡されたトレイ。

 見ればパイと飲み物があり、まさかと思って見れば頷かれちまう。食事を終えたら説教してやろうと意気込んで足を進めるが、その後ろ姿を見ただけで怒りが霧散しちまった。

 干されている海図を見た時、その美しさと正確さに惚れ惚れとしちまう。だが、そろそろ食事はして貰おうと声をかければ飛び上がって驚くから、やはり怒りは持続しない。

 パイを差し出して二日顔を見てないと言われたと伝えれば、モゴモゴ言いつつパイを食べ始めたので良しとする。だがその直後に突如身体が縮み始めれば慌てて手を伸ばすのは当然の事だ。

 抱き上げてみればふにゃりと顔を歪ませて、でも、泣くのを耐えようと努力してる姿に……どうやら心まで幼くなっているらしいと気付く。そのまま不安そうに見詰めて、俺から離れなくなった小さな温もりに他への指示を出したり、報告したりしつつサッチに親父の元へと走らせたりした。

 慌ただしくしている俺から離れずにいた小さな温もりが、ウトウトとし始めたのを見て声をかける。怯えさせないように、その頭を撫でながら。

 

 「寝て構わないよ」

 「やぁ!いぞうと、いる」

 「寝ても何処にも行きやしないさね」

 「なら、トクベツにねてあげてもいーよ。だからね、おっきくなったらケッコンしてね。だぁいすき」

 

 言い逃げのようにして寝てしまうそれに、その気持ちが元の姿に戻っても変わらなければ良いと思う。その願いを込めてそっとキスをしてから、小さな身体を抱き締めて、早く戻れと祈るように願った。

─────✿

【シャンクス視点】

 

 甲板で寝ていたら突然腹部に衝撃を受けて飛び起きた。何しやがる!?と思い犯人を見れば、ほらよと渡されたのはトレイ。

 そのトレイには暖かな紅茶とパイが乗っていて、目的はわかったが……。なァ知ってる?俺、この船の船長なんだぞ?

 

 「ルー……」

 「さっさと持ってけ馬鹿野郎!俺はこの三日、食事してる姿を見てねェぞ」

 「直ちに向かいます!」

 「うむ、宜しい」

 

 巫山戯て敬礼すれば、ルーもそれにノル。ノリの良さは最高であるが、さて……あの馬鹿猫は何してるだろうか?

 ドアを開ければ小さく何かを口吟んでいたから、新曲でも描いてるのだと気付く。だが、それは飯を食わない理由にはならないからと名を呼べば、ビクリと反応したその身体。

 

 「飯だぞ。ルーが心配して、俺の腹部を虐めてきたから早く安心させてやってくれ」

 「あら、なんか……ごめんね?」

 

 そう言ってクスクス笑いつつ、素直に渡されたパイを食べ始めたから、俺はそれを眺めていた。俺は酒が良いな……と、そんな事を思った時、突然縮むその姿に慌てて手を伸ばす。

 服の中で藻掻く姿に体調を案じながら抱き上げれば、小さいだけでなく妙に幼い反応が返る。まさかと思い、顔を覗き込めば不安を隠せずに泣くのを耐える様子を見せたので精神まで幼くなっていると気付く。

 

 「大丈夫だ。必ず元に戻してやるからな」

 

 実際にガキの頃でも大人だったのに、現在心が幼いとかどう対応したらいいのか。ベックに状況説明して調べて貰うようにした後、静かにしている腕の中の温もりに視線を向ける。

 静かなのは眠かったからか。頭を撫でつつ、そっと声をかければトロンとした顔で俺を見るから、つい笑っちまう。

 

 「寝ていいぞ」

 「まだ、ねないもん……」

 「眠いだろ」

 「んー……しゃんくすと、こうしていたいの」

 

 それ、大人の時に言ってくれよ。そしたら、ちゃんと俺も伝えるから。

 愛してると、伝わる迄何度でも。そんな言い訳じみた事を脳内で呟いていれば、幼い声が生意気な言葉を向けて来る。

 

 「でも、ねてあげてもいーよ?」

 「ならベッド行くか」

 「やっ!はなしちゃ、やだ……」

 

 ウルッとした眼差しを向けて、可愛い事を言われる。これ、子供だから襲わないだけだな。

 

 「ねてあげるから、わたしがおっきくなったら、しゃんくすはわたしとケッコンしてね。だぁいすき」

 

 そう言って言い逃げるように寝たそれに、俺はどうしたらいいのかと天を仰いだ。とりあえず落とさないように、ゆっくりと眠れるように抱き直して、その想いを大人になっても戻らない気持ちである事を願う。

 祈りを込めて額にしたキスは、どうやら目覚めを誘いはしなかったらしい。元の姿に戻ったら覚悟しておけよ……と内心で呟き、俺は解決を早める為に立ち上がった。

─────❀

【レイリー視点】

 

 転寝をしていると聞こえて来る生活音。当たり前のように洗濯や掃除をして、植物や動物の世話をしているのが聞こえて来る。

 私がこの島に顔を出した時は徹夜で何かを書いていて、いつ寝てるのかと思わされる。その時ふと、私には食事を提供したのに自分はそのまま再び働き出していた事を思い出す。

 ……この子は、放置すると何も食べないのだから困ったものだ。その時凍らせてあるから、着いたら焼いてあげてとシャッキーから託されていた物を思い出した。

 何が入っているのかと思えばパイだったので、オーブンに入れてから働き続ける少女を呼びに向かう。シャッキーが作った物ならば食べるのを知っているから、そこは心配していない。

 

 「少しばかり共にティータイムと洒落こまないかい?」

 「なら、お茶を入れるわね」

 

 そう言って戻って来たと思うと、即座にお茶を入れ始めたから少しばかり呆れてしまう。お茶のお供は用意してある事を伝えれば、嬉しそうに微笑むからその笑顔ひとつで絆されたのは言うまでもないが。

 そうして共にティータイムを楽しみ始めれば、突然縮むその身体。慌てて手を伸ばしてみても、腕の隙間をすり抜けて洋服の中で足掻く姿しか見えはしない。

 見れば不安そうに私を見上げる姿があり、いつもとは違い幼い行動からどうやら中身まで幼くなっていると気付く。即座にシャッキーに確認を取れば、パイに使った木の実の特性でたまにその現象が起きるとの話だ。

 害はなく数日で戻ると言うが、さて……それ迄私の理性は仕事をしてくれるだろうか。腕の中で眠そうにしている姿にさえ、庇護欲と共に独占欲等も発生してしまうのだから困ったものだ。

 

 「れいしゃ……?」

 「ん?眠いなら、寝て構わないよ」

 「やぁ!おきてりゅのっ!!」

 「だが、眠いんだろう?」

 

 頭を支えている事も出来ずに、こくこくと船を漕いでいると言うのに強がる姿は愛らしい。本当にこんな時代があったのかは不明だが、ずっとこうしているのも彼女の安全には良いのかもしれない。

 

 「しかたないから、ねてあげりゅけど、かわりにね」

 「うん?」

 「おっきくなったら、ケッコンしてね!だいすき!!」

 

 そう言って寝てしまう無垢な心に、目覚めた時も、戻った時も戻らない気持ちであれと願うとは、なんと傲慢なのか。もし本気で求められようとも、それは叶えてやれない願いだと知っているのに、それが泣きたくなる程に嬉しく感じてしまうのだ。

 せめて今だけは、誰からも、私からさえも害されないように守ろう。だからゆっくり休んでくれと願いながら、その頬にそっとキスを落とした。

─────✿

【クロコダイル視点】

 

 突然呼び止められたかと思うと、視線を向けるのと同時に差し出されたトレイ。上には果物で作られたらしいパイと、胃に優しそうな飲み物が鎮座している。

 数日ぶりに帰って来てこれと言う事は、またあの馬鹿猫は声も届かない状態にあるらしい。前回は粥だったから、今回は日数が少ないのか。

 

 「おい」

 「二日よ。原材料は政府から届いた定期便。私が作った物だから、食べると思うわ」

 

 過不足なく伝えられた言葉に溜息を落として、俺は仕方なく部屋へと向かう。優秀過ぎるニコ・ロビンだが……裏切るまでは可愛がってやるさ。

 部屋に入れば譜面が数枚散らかっているのが見えた他に、小説の原稿らしき物が見える。困った奴だと思いながら声をかければ、肩が大きく震えた。

 

 「意識がこっちに戻ってんなら、とりあえず食え。オールサンデーが嘆くぞ」

 「酷いわ、そんな脅迫」

 「使えるもんはなんでも使う。ほら、果物なら食うだろ」

 

 そう言って出したパイを見て、ありがとうと言うそれに溜息を落としながらソファへと腰を下ろす。目の前で手を合わせて食べ始めたのを確認し、少し休もうかと考えた時その身体が不思議な揺れ方をしたのに気付く。

 嫌なものを感じて手を伸ばすが、目の前でその身体はすり抜けるように縮み、そこに残されたのは布の塊。よく見れば、その中で足掻く生き物が居る。

 まさかと思い手を伸ばせば、不安に瞳を揺らす幼女が居て……即座に抱き上げ中身まで幼くなっている様子のそれに内心で舌打ちする。そしてニコ・ロビンを呼び付けると、原因究明と作為のある物なら始末するよう命じてからどかりとベッドに腰を降ろした。

 

 「おこってりゅ?」

 「……怒ってねェ。心配なだけだ」

 「くろこだぁる、つかれてるのに、ごめんね」

 

 舌っ足らずにそんな事を言われて、誰が責められるというのか。そのまま宥めるように言葉を紡いで、甘い飲み物を与えて落ち着かせる。

 政府の奴等を何人か干からびさせてもいいだろうと1人納得した時、腕の中の温もりがウトウトと頭を動かし始めた。それを見れば、やはりこの部屋から出してはやれねェなと独りごちたのも当然だろう。

 

 「……そのまま寝ちまえ」

 「やっ!」

 「何故だ」

 「ねたら、いなくなっちゃう」

 

 拗ねたように、甘えたように言われちまえば、普段は何も言わない癖にこんな時ばかり……と思っちまう。大人の姿で、言ってくれたら……なんでも叶えてやるのに。

 

 「……何処にも、行かねェから寝ろ」

 「しょーがないな、ねてあげてもいーけど、じょーけんがあります!」

 「ん?」

 

 普段なら絶対言わない言葉に楽しくなる。元に戻った時、覚えていたら揶揄ってやろう。

 

 「わたしがおっきくなったら、ケッコンしてね!だぁいすき!」

 「おい……」

 

 言い逃げよろしく寝ちまったそれに、俺は思わず天を仰ぐ。……元に戻った時、覚えてなかったら容赦しねェぞ。

 だがまァ、元に戻ってもその気持ちが戻らない事を切に願っちまう位には、溺れてるんだよな。そう思いながらその頬に軽くキスをして、ベッドに寝かせるのは辞めて腕の中に捕らえておく事にした。

 その方が守りやすいと、誰にともなく言い訳をしながら。俺はこの温もりを、誰にも触れさせないと決めている。

─────❀

【モブ男視点(ベックマンの話)】

 

 今日も我等が航海士は机と熱愛中。そうなるとウチのツートップを筆頭に幹部達が右往左往するんだから、いい加減自覚して欲しいところだよなァ……と、机の上にある紙しか見ない女の後姿に溜息が落ちる。

 あ、俺はクルーダ・モブ男ってんだ、よろしく。結構な古株だから幼い頃の〝女神〟も見守ってたぞ!

 そんな訳で、幹部の中で、ある意味わかり易過ぎる特別扱いをするのはルーさんだ。果物のパイを特別に作ってトレイに乗せたのを見れば、それが誰の為に作られたのかなんて聞く方が馬鹿らしい程だからな。

 そうして準備ができたタイミングをわかっていたかのように、ベックマンさんがそのトレイを受け取る。この人程わかり易く、そして分かりにくい人は居ないだろうなと俺は思う。

 誰がどう見ても〝兄バカ〟なのに、それが本当に〝妹〟として愛してるのか、それとも〝女〟として愛してるのか……誰にも分からないのだ。そして、誰よりもわかりやすいのは我等が船長。

 

 「俺が持って行くから、それ寄越せ!!」

 「無視された時、口の中に押し込む覚悟があるなら渡すが……無視されたからと、いじけて持って行った筈の物を食ったお頭に託せるかよ」

 「そんな事言っても、何しても気付かないんだぞ!?既に俺は、空気以下だからな!?」

 「今更何言ってんだ」

 

 そんな事を言いながらも、上手く食事をさせられる唯一の存在は机と熱愛中の航海士の元へと向かう。それから数分後、珍しく怒号が響き渡り俺達は地獄を見た。

 幹部達が全員殺気立ち、果物について調べろと命じるのだから俺達に妥協は許されなかった。それはウチの女神が、初めてこの船に乗った時よりも幼くもあどけない姿になったからだろうが……。

 ……幹部達だけ、デレデレとしながら傍に張り付いてる気がするのは気のせいだろうか。その中でもベックマンさんにだけ分かりやすく甘えるウチの女神は、その幼さの中で恐怖の爆弾を投下してくれた。

 

 「ねぇ、べっく。……わたしがおっきくなったら、ケッコンしてね!だいす……き」

 

 言葉を言い終えると同時に寝たその姿に、空気が凍る。船長がこの世の終わりのような顔で崩れ落ち、ベックマンさんが赤面して掌で目元を覆い隠す。

 他の幹部達はニヤニヤしながら、ベックマンさんの肩を叩いて言う。異口同音に。

 

 「「その想いが、元の姿に戻っても変わらないと良いな、ベック?」」

 「……そうだな。俺も、そう願うさ」

 

 そう答えたベックマンさんに皆が驚愕の眼差しを向けた時、俺達は灰になった。だってよ、幼女の体を優しく支えてその額にキスを落とすその姿……神々しい以外になんて表現すんだよ?

 こうして赤髪海賊団は今日も波乱万丈な航海を続ける。早く航海士が、この事態を収拾してくれる事を願いながら。

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