※この作品はR-18です。

拍手お礼文(小話集)   作:夢枕 七変化

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目次

ヒロイン視点
ルフィ視点
ミホーク視点
マルコ視点
ロー視点
ドフラミンゴ視点
クロコダイル視点
イゾウ視点
シャンクス視点
カタクリ視点

線で区切ってあるだけです。飛んだりは出来ません。予めご了承ください。


眠らない理由(色々な視点)

【ヒロイン視点】

 

 眠るのが怖いと感じるのは、私が臆病だから。寝たら、何をされるか分からない。

 そんな恐怖と戦いながら常に気を張っていたから、海図を描きながらウトウトすると必ず悪夢に苛まれる。アーロン達にやられた事が、深層心理に深く刻み込まれて、前を見る事も出来なくなる。

 飛び起きた私は脂汗が滲む自らの額をハンカチで拭って、海図が汚れないようにしてから呼吸を整える。

 

 「どうした?」

 

 いつの間に来ていたのか……って、私が寝てる間よねと思えば、声の主に何か返さなければと思うのに、心配そうなその声に答えることも出来ない。荒い呼吸を必死で誤魔化して、立ち上がる。

 

 「ウトウトしてたみたい。少し、シャワーでも浴びて頭スッキリさせてくるわ」

 

 言い訳のようにそう言い残してその場を去ろうとしたのに、伸ばされた腕が私を簡単に抱き込むから、身動きが取れなくなる。

 

 「……離して、くれない?」

 「断る」

 

 直接触れられれば、震えているのなんか簡単にバレてしまうのに、この腕は私の震えが落ち着くまで決して私を離そうとはしなかった。ただ、無言で抱き締めてくれるこの腕に縋ってしまいたいと、私は愚かにも考えてしまっていた。

─────*

【ルフィ視点】

 

 うちの航海士は昼間中何かをしているのに、夜中に目を覚まして寝顔を覗こうとしても大概ベッドは空だ。そんな時は見張りをしてるか、何かを描いてる。

 今日はどっちだろうと部屋を抜け出してみれば、皆の所には明かりが漏れないのを計算して倉庫で何かを描いている背中が見える。それでも近付くと寝ているらしいと気付いて、そっとその明かりを消してみる。

 流石に誰も見てない火は危ない。そう思った直後にビクリと体を揺らしたのがわかる。

 バネ仕掛けの人形のように飛び起きて、どこかから取り出したハンカチで額の汗を拭ってから細く息を吐き出しているのがわかる。だけどそれは、気持ちを切り替える時の癖だと俺は知っている。

 

 「どうした?」

 

 気持ちを切り替えないといけないような、何があった?

 それが、眠らない理由なら……。

 ……アーロンが、原因か。

 突然立ち上がり、気丈に動き出しながら言葉を紡ぐ。

 

 「ウトウトしてたみたい。少し、シャワーでも浴びて頭スッキリさせてくるわ」

 

 夜中なんだ。寝てればいいだろう。

 今、行かせるのは不味い。震えてる事に気付かないほど鈍くは無いつもりだ。

 咄嗟に胸に抱き込めば、その体はやはり震えている。その時返された声は、体と同じように震えている。

 

 「……離して、くれない?」

 「断る」

 

 俺の言葉に何も答えずただ体を震わせていた彼女が、ゆっくりと体から力を抜いて行くのがわかる。そのうちに体の震えがおさまり、それでも腕を離せずにいれば縋るようにその身を俺に預けてくれる。

 愛しい女を2度と手放さないと、抱き締める腕に力を込める。そうして、疲れきっているであろう彼女が眠るまで、ただ抱き締めていた。

─────☆

【ミホーク視点】

 

 次の島へと向かう船の中で、昼食を終えた後はそれぞれが自由時間として過ごしていた。そばに居ると襲ってしまう俺に問題があるのは分かっているが、時折襲って体力を奪わなければならいような焦燥感に苛まれるのだから不思議なもの。

 夕刻となり何時もならば料理の匂いが漂う頃になっても変化の無い船内が心配になり戻れば、案の定苦しそうに脂汗を滲ませた状態で眠っている女がいる。この俺が本気で気付いてないと、この女は考えているのだろう。

 だからこそ飛び起きるのと同時に、汗を拭い呼吸法で感情を逃がしているのだろう。それを幾度と無く繰り返して、それでも悪夢から解放されない事に気付かない。

 

 「どうした?」

 

 声を掛ければ立ち上がり、言い訳を口にして逃げようとする。それをした所で悪夢から逃れられはしない言うのに。

 何故縋らない。何故頼らない。

 何度も体力の追い付かないこの体を抱いてきたのは、悪夢を見させない為だったのかと自分の行動を振り返る。そうと分かれば、今逃がす訳にはいかない。

 腕を伸ばせば簡単に捉えられるその体を、可能な限り優しく抱き締めればその身体は思いの外震えていて、いつもの気丈な姿が思い出せなくなるほどに弱々しい。

 

 「離して、くれない?」

 「断る」

 

 俺が答えれば体をビクリと揺らして、それから縋るように俺の腕を掴む。震えているだけだったその細い体が、静かに涙を流し始めたと気付いた時に、俺はその体を反転させて震えと涙が落ち着くまではと無言で抱き締めていた。

 縋られたことが嬉しかったなんて事は、これからも教えるつもりは無いがな。

─────*

【マルコ視点】

 

 朝目覚めてから夜眠るまでの間で、机の前以外にいる時間は恐らく合計しても1日平均2時間まで無いだろう。起きると書類整理を手伝い、経理や事務を恐ろしい速度で仕上げて行く。

 朝食の時間が過ぎた辺りで漸く食事に向かい、帰り際に海を見詰めてニュースクーが居ないか確認する。帰ると海図を描いて、書類仕事を手伝う。

 その中で暇を見付けては作詞やら何やらを行い、皆が食事の時間に風呂へ、風呂の時間に食事へと向かう。それからまた海を眺めて帰り、海図を描く。

 1日2回しか食事はしないし、机が恋人のような勢いだ。そんな彼女も時折机で船を漕ぐが、それをやると必ず飛び起きてしまう。

 額の汗をハンカチで拭い、深呼吸をすると言う行動付きで。繰り返されるそれをもう黙っていられなくて声を掛ける。

 

 「どうしたよぃ?」

 

 荒い呼吸を整えて何でもないように笑うと、ふらりと立ち上がる。

 

 「ウトウトしてたみたい。少し、シャワーでも浴びて頭スッキリさせてくるわ」

 

 1人で眠ると必ず繰り返すくせに、何故こうも強がるのか。思わず抱き締めれば、微かではない震えを感じてしまう。

 

 「……離して、くれない?」

 「断るよぃ」

 

 強く抱きしめていると、その震えは小さくなり、代わりにとでも言うように縋り付くような、甘えるような仕草をしてくれる。その怯えが消えるまで、いくらでも俺がこうしているから……強がらずに甘えて良いのだと無言で抱き締めたままその頭を撫で続けた。

─────☆

【ロー視点】

 

 カタリと言う音が聞こえた。もう朝日がいつ登り始めてもおかしくない時間だ。

 俺も人の事は言えた義理じゃねェが、ウチの参謀様は本当にいつ寝てるのかと問いたくなる程、寝ている姿を見掛けねェ。航海士も測量士も別にいると言うのに、何だかんだと言って奴等の先生と言った立ち位置で、いつも描くのも何するのも任されてるからってのはあるだろう。

 本を書いているのか、海図等を描いているのか、それともコラさんに任せられねェと航海日誌を奪って書いているのか。覗けば明かりが揺れていた。

 しかし良く見れば眠っているようで、近くにあったショールを手に1歩足を踏み出したところで魘されていると気づく。ショールを元の位置に戻して、その様子を見れば、まだ魚共の夢でも見ているらしいと分かってしまう。

 それから微かな悲鳴を必死に飲み込んで、飛び起きたその姿は憐憫さえ感じられる。それから俺に気付かずに、ハンカチで汗を拭い呼吸を整えている。

 ……この様子ならば確かに、日常的に寝ている姿を見掛けないのも頷ける。

 

 「どうした?」

 

 分かっていて声をかける俺は、性格が歪んでいるのだろうか。それでも、声をかけずにはいられなかった。

 

 「ウトウトしてたみたい。少し、シャワーでも浴びて頭スッキリさせてくるわ」

 

 明らかなる言い訳。恐らくコラさんを喪っていれば、俺も同じようになっていただろう。

 そう分かるから、その体を抱き寄せてそのまま抱き込んでしまう。驚き、そして、隠しきれていない震えを俺に伝える。

 

 「……離して、くれない?」

 「断る」

 

 離せば同じ事の繰り返しなのは分かりきっている。だから、安心して眠るまで、守ってくれる存在が居るのだと分かるまで……こうしていよう。

 抱き締める腕に力を込めると、微かに縋るように手を添えて来た。それに微かな笑みを浮かべたのは、どう言った意味合いなのか自分でも良く分からない。

 ただ、その体から震えが伝わらなくなるまで、柑橘類の香りのする少女を抱き締めていた。

─────*

【ドフラミンゴ視点】

 

 基本的に与えたその部屋から出ようとしないのは、俺から逃げようとしていないと言う意思表示か。それとも、単なるものぐさか。

 判断に困ると思いつつ部屋に入ると、明かりは見えるものの珍しく寝ている様子で、少し驚く。そう言えば、いつ見ても起きてるなと思っていたが……。

 外に出ようとしないのは、俺を煩わせない為とも考えられるかと机で眠るあどけない姿に小さく笑った時、その体がビクリと反応して、飛び起きた。荒い呼吸を即座に収めようとして深く呼吸を繰り返し、ハンカチで汗を拭い、胸を押さえている姿が自分と重なる。

 

 「どうした?」

 

 分かっていて問い掛ける。それは他になんと声を掛ければいいか分からなかったからだが……。

 どうやら共に寝ないと安眠できないのは、俺だけではなかったらしいと気付き、素直に胸に飛び込んで来いとその細く小さな体を見て思う。けれども立ち上がるのと同時に誤魔化そうとするのだから、子猫にも困ったものだ。

 

 「ウトウトしてたみたい。少し、シャワーでも浴びて頭スッキリさせてくるわ」

 

 その体を抱き寄せて閉じ込めれば、震える体を誤魔化すことも出来ずに、声の震えだけはけれども必死で誤魔化そうとして、気丈に言い放つ。

 

 「……離して、くれない?」

 「断る」

 

 俺の言葉に観念したのか、それとも気を張れなくなったのか、縋るように、甘えるようにその体を俺に預ける。だから、震えが落ち着くその時まで、ただ、抱き締めてやろうと思う。

 震えが落ち着いたならば、共に眠ればいい。共に眠るのならば、互いに悪夢を見る事も無いのだから……。

─────☆

【クロコダイル視点】

 

 深夜にまで英雄ごっこかと肩を鳴らしつつ戻れば、いつものように机に向かう後ろ姿に溜息が出る。だがよく見れば寝ている様子で、それに上着を脱いで掛けてやろうとした所で動きを止める。

 魘されているのが分かれば、あの魚共をもう少し痛め付けても良かったかと思う。小さく盛れる舌打ちは、己へ向けたものか、それとも魚へ向けたものか。

 直後に飛び起きて自らの額にある汗を拭き取る姿に、日常的な事なのかと思えばやるせないような気持ちになる。

 

 「どうした?」

 

 俺に視線を向けて無理に微笑みを浮かべた後で、スクリと立ち上がって言い訳を口にする。頭をスッキリさせると言うが、そもそも寝てるべき時間だろう。

 そう思ったのと体が動いたのは同時で、問答無用で抱き締めてやればその微かと言えない震えに胸が痛む。俺がいて、まだ怯えるつもりかと、喉まででかかるが音には出来ない。

 

 「……離して、くれない?」

 「断る」

 

 震えながら気丈に言い切るその姿に、けれども隠し切れないその震えに、愛しさが込み上げる。とりあえず震えが落ち着くまではこうしているかと、無言でただ抱き締めていれば、おずおずとその身を預けてくる様子につい高笑いしそうになるのを耐える。

 これだからお前を手放せねェんだよとは、内心で。

─────*

【イゾウ視点】

 

 隊長なんて役職を貰っていても、結局は数多の息子の1人でしか無く、だからと言ってそれが特別不満でもない。ただ、時折物悲しい気持ちになる夜があるだけだが……。

 気晴らしになればとくすねて来た酒を手に、部屋でいつものように何か書いてるだろう人物を思い浮かべる。いつになれば、この想いは届くのだろうかと詮無いことを考えちまうくらいには、感傷的な気分だ。

 部屋に入れば珍しく机に潰れている姿があり、それならばベッドまで運んでやるかと酒を床に置いて手を伸ばせばビクリと揺れた体。何事かと様子を見れば、バネ仕掛けの人形宜しく飛び起きた少女は、ハンカチで自らの額を拭きつつ呼吸を整え始める。

 明らかに夢見の悪さが原因だとわかるそれに、眠らない理由が見えた気がして深い溜息が落ちる。どうしてこう、強がりなのか。

 

 「どうした?」

 

 声をかければ取り繕った笑顔を俺に向けて、誤魔化すように言葉を口にする。だがね、俺を誤魔化せると思うんじゃねェよ。

 

 「ウトウトしてたみたい。少し、シャワーでも浴びて頭スッキリさせてくるわ」

 

 今は深夜だ。寝ているのが本来の姿だろうと言いかけて辞める。

 眠りたくないのだろう。眠れば、悪夢に襲われるから。

 だが……逃がすつもりは無い。

 抱き締めれば震えているその体。愛しいと思わされるが、同時に気丈なその姿に憐れみに近いものを感じさせられる。

 

 「……離して、くれない?」

 「断る」

 

 鋭く言い切る俺に、ただ震えていた気丈なその心が弛緩するのを確かに感じた。そっと触れて来た指先が、縋るようで……。

 このまま部屋に閉じこめて、グズグズに甘やかしてやりたくなるが今はとりあえず、落ち着くまでこの温もりを抱いていようと思う。そうしているうちにいつの間にか、俺の中の感傷は消滅していた。

─────☆

【シャンクス視点】

 

 俺と同室にしようとしたのをベックに邪魔された俺は、少しの不快感と共にその部屋の前を通る。元々は倉庫だった筈のその場所には、何故か昔からあったかのように窓が付けられており、その窓の所に机が取り付けられている。

 大概いつもその机に座っているので、窓から常にその姿を確認出来るという俺達側の利点は確かにある。だが、本人もどうやら明かりを必要としないからと喜んでいる様子なのは理解に苦しむ。

 ベックは姿が見えれば安心だろうと笑うが、俺が無体を強いることが出来ねェようにと言う対策なのは、分かっている。……信用ねェなァ、まァ……当然だけどよ。

 深い溜息を落として、窓からその様子を見れば珍しく机に伏せているのが分かり、ノックも無しに部屋に入る。時間も時間だ、寝ていてもおかしくは無いかと思った時、その体がビクリと動き飛び起きた。

 それからハンカチを取り出して荒い呼吸を整えつつ額の汗を拭うのが見えれば、成程と思う。寝ないとは思っていたが、気丈に振舞っていただけで本当はトラウマになっていたのかと。

 

 「どうした?」

 

 わかっていて問い掛けた俺に、誤魔化すように微笑みを向けて来る。強がりな子猫。

 

 「ウトウトしてたみたい。少し、シャワーでも浴びて頭スッキリさせてくるわ」

 

 その使うシャワーは、俺に宣言したのならばベックの部屋のを使うつもりなのだろうか。それは看過出来ねェなと、その細い体を抱き寄せる。

 

 「……離して、くれない?」

 「断る」

 

 震える体で、必死に取り繕うそれに、劣情が刺激される。いい加減にしろ、俺に隠せると思うな。

 そう言いたいのを耐えて、ただ抱きしめていれば、縋るようにそっと俺に手を伸ばしてきたので、息を呑む。それが精一杯の甘えなのだと気がついた時には、俺の腕はその抱き締める力を無意識に増していた。

 愛しい温もりが素直になるその時まで、俺も狼にはなれねェなと内心で笑いながら。

─────*

【カタクリ視点】

 

 キィ……と、ドアが音をたてた。弱っているのかと問いかければ、すみませんと謝られる。

 それから囁くようにお1人で寝ると、いつも魘されてるようですと告げられる。名を聞かずともそれが誰を示しているのは分かる。

 幼い少女が1人で家族と村人を抱えていたのだ。トラウマの1つや2つあって当然だろう。

 それでも珍しく机に伏せっている姿を見れば、まともに寝かせてやりたいものだと思わされる。その時びっくり箱の中身のように飛び起きて、体を小刻みに震わせながら息を整える姿を見てしまえば、これがいつもなのかと震える手で額を拭いているそれに声をかける。

 

 「どうした?」

 

 声をかければ振り向くことなく立ち上がり、呼吸の乱れを誤魔化して声の震えまで抑えてみせる。こうやって、独り耐えて来たのか。

 

 「ウトウトしてたみたい。少し、シャワーでも浴びて頭スッキリさせてくるわ」

 

 部屋の奥にそのまま向かおうとするが、膝が震えている。馬鹿な事をと思いながら抱き締めれば、抵抗する気配は無い。

 

 「……離して、くれない?」

 「断る」

 

 震えを隠そうとしているのは分かっているが、強がりで意地張りな想い人を独りにするつもりは無い。これまで、気付けなかった自分が情けない。

 そう思った時、縋るようにそっと俺の手に自らの手を添えて来たのを感じて、泣きたいような気持ちにさせられる。だが今は……少なくとも今だけは、このままこうしていたいと思う。

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