※この作品はR-18です。

拍手お礼文(小話集)   作:夢枕 七変化

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目次

ルフィ
ミホーク
ドフラミンゴ
ロー
マルコ
イゾウ
シャンクス
レイリー
クロコダイル
ベックマン

線で区切ってあるだけです。飛んだりは出来ません。予めご了承ください。


手料理

【ルフィ】

 

 新しい島に到着してすぐ、それぞれが元気に飛び出して行った。残ったのはジンベエと私だけで、互いに顔を見合せて笑ってしまう。

 買物は皆がそれぞれの分野で必要な物を買って来てくれるだろうし、この島には海軍が居ない。見張り室に登りそこから測量するだけで何とかなりそうな小さな島だからと、胸元から取り出した手帳にそれを記載していく。

 

 「腹減ったァ……!メシィ~……」

 

 突然聞こえて来た情けない声に吹き出した私は、手帳を片付けて下に降りる。同時にその声を聞いたらしいジンベエが海に潜って魚を数匹文字通り打ち上げてくれたから、それを手にしてキッチンへと向かう。

 

 「適当に作るから、いい子にしててね」

 「すぐ、子供扱いすんの辞めろよな」

 

 膨れるルフィにハイハイと適当に返事をしながら、私はルフィが好みそうなものを作って行く。とはいえ、材料が肉ではなく魚なので、やれる事と言えばフライにする事くらいだけれど。

 天麩羅は、素早くけれども適度に混ぜる必要がある。混ぜが足りないと粉っぽくなるし、混ぜすぎるとサクサク感が消えるし、冷たい水で素早く作る事で温度差を出して美味しく作るのだから、時間との勝負。

 そうして完成させた天麩羅を含むフライを盛り付けて、ご飯をよそっていたらいつの間にか様子を見に来たジンベエが味見していた。

 

 「ああ、美味「あー!何食ってんだよ!ジンベエ!それ俺のなのに!」」

 「もう、少しくらい良いでしょ?それに、皆の分もちゃんとあるから騒がないの!」

 「俺が惚れてる女が作ったんだから、俺が全部食いたいって思って何が悪いんだよ!」

 

 言われた言葉に思考が止まる。怒った顔してるルフィは、自分が何を言ったのかわかってないのだろうか。

 

 「ルフィ?」

 「ん?」

 「今……」

 「おう、だからよ、俺の女になれよ!」

 

 その言葉に小さく頷いて、その瞬間食べられたのは私の心か、それとも全てか。とりあえず折角作った食事が冷める前に食べてしまえと、遠くで誰かの声が聞こえていたのは、気の所為じゃないと思われる。

━━━━━✿

【ミホーク】

 

 ずっと同じフレーズから先に進めなくなってる。譜面に起こそうとした曲が何なのかさえ、分からなくなる位には……寂しさと切なさと、何より苛立ちを抱えているのよ。

 

 「帰った。……何か作れ」

 「なっ!?航海に行く時は連れて行ってくれる約束破ったくせに、良くもそんな事が言えたわね!!」

 「……主が悪い」

 「は、い……?」

 「ヒヒに弁当を作ってやっていたな。俺は、手料理なぞ食した記憶が無い。不快だ」

 

 そんな理由で置いていかれたと誰が思うのか。でも、そういう事ならここで作らないとまた置いていかれてしまうと判断して頷いた。

 

 「何が食べたいの?」

 「主の手料理」

 「そりゃ、私が作「ヒヒに作っていない物にしろ」」

 

 ヒヒ達に作ったのは、嫌いなものだったのかな?

 そう思いつつも頷けば、ミホークは満足そうに去って行った。その背を見送ってから、よしっと気合を入れて作り始めたのはお稲荷さん。

 皮が甘いし、外で暴れ……いやいや、剣を振り回すのが大好きなミホークだからこそ、片手間で食べられるようにしてあげたい。お握りはミホークが案外拘って作るから、今回はお稲荷さんにしておいた。

 お稲荷さんにハサミで切り込み入れて、海苔で目とか髭を付ければ狐型のお稲荷さんの完成である。それだけだとつまらないので、お稲荷さんの口を上にした状態で、しらすを乗せた物や、錦糸卵を乗せた物、更にオクラを乗せた物を用意した。

 白、黄色、緑と、狐型お稲荷さんである。それをお弁当箱に入れていると、狐が1匹消えた。

 

 「え?」

 「ん。美味いな。見た目が可愛いだけじゃないんだ「シャンクス!?」」

 

 驚いて声を上げた直後、私とシャンクスの隙間を斬撃が通り抜けた。髪の毛先が少し切れたけど、まるまる事しかできない髪の毛にそこまでの思い入れはないから問題にならない。

 

 「何故、貴様がここにいる?その上、俺の愛する女の手料理を勝手に食すとは……」

 「え?ミホーク?いま、なんて……?」

 「……よもや、気付いていなかったのか?俺は、主を女として愛している。ヒヒにばかり優しくせず、俺を甘やかせ」

 

 傲慢なその言葉に、どうやら妬いていたらしい事を知り、何より想像もしてなかった想いを知らされて真っ赤になった私は、シャンクスの存在を忘れてミホークの胸へと飛び込んだ。それを力強く受けとめてくれたミホークは、蕩けるような笑顔で私の額にそっと唇を落としてから、その場を静かに後にした。

 その後の事は、推して知るべしである。……この時二人から忘れられた存在が、お稲荷さんを食べ尽くした事だけはここに残して置くが。

━━━━━❀

【ドフラミンゴ】

 

 最近流行りの恋愛小説だと言って、私が喜ぶと信じて連続小説を買ってきてくれたのはベビー5だった。でもこれ……私が書いたやつ、なのよね。

 ドフィに作家である事を人に知られると危険だからと言われて、隠していた事が仇になったのは間違いない。今いるこの国がどうしても最初の発売国となるけど、それはドフィの権力故と思われて誰も気にしてないから……うん。

 その時は咄嗟に本を受け取ってありがとうと笑ったけど、さて……どうしようかしら?

 

 「どうした?辛気臭い顔して」

 「ベビーに、貰ったの」

 

 本を見せれば苦笑するドフィ。こんな時、父親みたいな顔をするのがなんか可愛い。

 

 「……折を見てファミリーには話しておく。悪かったな。だがとりあえず……なんか、腹減ったな」

 「んー。分かった」

 

 ドフィの今の言い方だと、普通の人の食事量が必要よね。……これで案外食べるのよね、ドフィって。

 ドフィの小腹が空いたは、普通の人のお食事量である。まぁ、身体も大きいから仕方ないけど。

 中心にロブスターの姿揚げが来る形でパエリアを用意して、海の幸たっぷりのブイヨンスープを仕上げていく。するとそっと伸びて来た手が、パエリアの端を捉えて消えた。

 パエリアの隅っこが明らかに消えてしまった事で、犯人にそのお皿は食べて貰おうと口を開いた瞬間、室内に重圧がかかった。ドフィはどうやら空腹の為に、覇王色の覇気を撒き散らしているらしい。

 

 「バッファロー……何してんだ?」

 「わっ……若!すまぬだすやん!良い匂いがして」

 「そりゃそうだ。俺が溺れる程に愛してる女が作った物だからなァ?」

 「え?……ドフィ、今……?」

 

 聞き間違いかな?

 そう思いながら予備も含めて用意していた三皿目のパエリアの完成品を目の前にして、硬直する。だって、今、ドフィが……。

 

 「……俺は今までに、何度も伝えて来たつもりなんだがなァ?」

 「え?」

 「昔も今も、俺はお前しか見てねェよ」

 「ドフィ……?」

 

 言葉と共に頬に触れるドフィの指先。それが本当に優しくて、そして、狭まる距離に呼吸も思考も止まりそうになるのを自覚する。

 

 「恋愛感情で、愛してる。いい加減、俺を男として、認識しろ」

 「ドフィは、男の人よ。初めて会った時から、今も変わらずに」

 「馬鹿、そうじゃねェ。だが……料理もだが、何よりも今、食いたいもんがある」

 

 その言葉に頬が熱を持つ。ここで頷かなければ、きっと私は後悔する。

 分かるのはそれだけで、でも、この人は悪い男で……。なのに。

 

 「……悪い男に惹かれるなんて、私、駄目な女ね」

 「もう、手放す気はねェぞ」

 

 そのまま重なり合う二人の影を見て、幹部の青年は溜息と共にそっと部屋を出て行く。部屋の入口には〝死にたくなければ開けないように〟と、看板をひとつ立て掛けて。

━━━━━✿

【ロー】

 

 潜水艦は寒い海底を進むから、艦内が寒いと言う勘違いをしている人が多い。けれども実際は、平気で50度を超える事が多々ある灼熱地獄。

 その為に定期的に海面に浮上して、ハッチを開けて艦内の熱気を放出する必要が出て来る。そうして浮上した時、ついでにやるべき事が多々あり、その際に役割の定まってない人達が釣りと掃除を行うのが当然の流れ。

 そんな中で、針路を確認していたローが突然溜息をついた。その様子が珍しくて首を傾げれば、困った様子で私を見る。

 

 「……何か食いたいな」

 「コックに頼「何か、作って来てくれ。作業効率を下げない物で頼む」」

 

 そう言われてしまえば作らない訳にもいかなくて、ローが好む物を脳内で考える。結果論にはなるけど、ローが好きな物は仕事効率的にも良い物が多いので、その中からお握りを作る事にした。

 このお握りという食べ物は、案外恐ろしい。炊かれた米を固めているので、水分無しで摂取すると窒息するリスクが高くなるのだ。それと同時に、炭水化物と塩分、食物繊維を確保できて、中に入れる物により味を変えて楽しむ事も可能と言う利点も併せ持つ。

 そんな訳で用意したのは、コッソリ作っていた沢庵と人参の酢の物。そして魚のほぐし身を入れたお握りと、ワカメのお味噌汁。

 魚のほぐし身なのと、ワカメの味噌汁なのは、海にいる為に簡単に手に入るという事が理由。エンジン部分の熱を利用して、塩と蒸留水を海水から手に入れられるので健康的で美味しい食事が確保出来ているのである。

 

 「あ、スゲェ美味い!でも船長は鰹節を使ったお握りのほ「シャチ……何食ってんだ?」」

 「あ!キャプテン!これ美味し「何を、食ってるんだ?」」

 「……見ての通り、お握りで「〝room〟」」

 

 そのやり取りから嫌な予感がして間に入ると、ローは分かりやすく顔を顰める。どうやら、本気でお怒りらしい。

 

 「俺の女と昔から決めてる奴が、久々に作ってくれた手料理を先に食われたんだ。不愉快になるのは当然だろう」

 「え?……ロー、ちゃん?今、なん、て?」

 

 声が、震える。情けない程に分かりやすく。

 なのに、ローちゃんはそんな私を見て優しく微笑んだ。本当に幸せそうに、蕩けるように。

 

 「その、ローちゃん呼びを変えたら……答えてやるよ」

 「……船長?」

 「違うだろ、ほら、名を呼べよ」

 「ロー……」

 

 名を呼んだ瞬間、抱き締めて来る優しい腕。距離の無くなった二人は、互いの瞳を見つめ合うようにして動きを止める。

 その瞬間、いたたまれなさを感じてお握り泥棒はそっと船室から姿を消すと、そのドアの入口に手書きの看板をぶら下げた。それを見たクルー達は、静かに微笑みそっと部屋から遠ざかってくれている。

 

『この部屋、ただ今熱愛使用中』

━━━━━❀

【マルコ】

 

 島の下見に行ったマルコが帰って来るのを甲板で待っていたら、帰ると同時に抱きしめてくれた。暖かいのは、その身体か、心なのか。

 

 「こんなに冷えて……風邪ひくよぃ?」

 「そしたら、マルコに治してもらうわ」

 

 軽口を言う私に、仕事をわざと増やすなと笑うマルコは、それと同時にお腹を大きく鳴らした。それに私が笑ってしまえば、食べるの忘れてたなんて事を言い出すので、サッチに声をかけに行こうとして腕を掴まれる。

 

 「……どうしたの?」

 「手料理を、食べたいよぃ」

 「えっと?ちゃんといつもサッチは手り「サッチじゃなくて……よい」」

 

 不思議だけど、この〝よい〟で、私に作って欲しいのだと分かってしまい、サッチと比べないでよ?と小さく呟く。それに頷かれたので、私もそれに無言で頷いた。

 そのままマルコの好きな物を考慮して食事を作っていれば、どうしても甘い香りが漂ってしまう。ただ、意外と知られてないけどパイナップルはダイエット効果も高く、豚肉との相性が良いのだ。

 なので、パイナップルと豚コマとか、パイナップルを豚バラで包むとかするのは案外美味しい。その関係か、酢豚にもパイナップルが入ってたりするのである。

 デザート用にフルーツポンチを作って、その仕上げにミントを添えようとしたらエースが豚肉を指で摘んでた。衛生面とか色々あるので叱ろうとしたら、それより早く鳥の足がエースの頭を捕らえて床に叩き付けてしまう。

 

 「エース……お前ェ……」

 「マルコッ!?」

 「よくも、手料理を……」

 「ガキの頃以来で、懐かしかったんだよ!マルコの好物だとは知らなかっ「俺がやっとの思いで、手料理作ってくれと頼んで作って貰ったんだぞ!惚れてる女の手料理食われて冷静でいられるかよぃ!!」」

 「……まる、こ?今の、言葉……」

 

 エースを許してあげて欲しいとか、足りなければ作り足すわとか、色々言おうとしてたのに全て消えた。思考が停止して、顔が熱を持ち、鼓動が五月蝿いくらい脈打つ。

 そっと視線を逸らして、照れた少年のような顔をされては、呼吸さえ止まりそう。でも、その唇は明確に言葉を音にする。

 

 「……そういう、事、だよぃ」

 「そんな、私……知らなくて……」

 「何度も伝えたと、思ってたんだがねぃ?」

 

 そうして視線を私に戻すと、躊躇いなく歩み寄りそっと私の頬に触れて優しく微笑むから……。私はそっと瞳を閉じた。

 二人の唇が触れ合う直前、床に頭を押し付けられたままになっていたエースが騒いで、マルコが怒り狂ったのは当然の未来。それでも二人の世界に入ってる為に、そんな事も予測する事はできなかった。

━━━━━✿

【イゾウ】

 

 久々の陸地に喜ぶ兄達を眺めていたら、何処か切なそうに見知らぬ親子を眺めているイゾウに気付く。両親が揃って歩くすぐ側でどこかへ走って行こうとする少年と、母親の腕に抱かれている幼い生命。

 極有り触れた光景を見詰め、何故か泣いているように見えてしまう。声を掛けるか戸惑う私に、イゾウは振り返らずに言った。

 

 「……久々に、おでんでも食いたいな。おでんって食い物を知ってるかい?」

 「知ってるわ。私で良ければ作るけど……どうする?」

 「知ってたか!なら、頼むよ」

 

 妙に切なそうな顔をするイゾウが心配で離れたくはなかったけど、おでんは案外面倒なので急いで準備に取り掛かる。まずは卵を茹でて、ゆで卵を作る所から。

 卵を冷やしてる間に大根を下茹でして、その後ゆで卵と大根を強火で煮込み始める。その時にこんにゃくなども入れて、味の染み込みにくい物はじっくり時間をかけて煮込んでいく。

 その後練り物系を加えて中火にして、魚河岸揚げを入れて、もう少し追加で煮込んだら仕上げにはんぺん。完成かなと大根などの様子を見て、器を用意しようと背を向ける。

 

 「あっつ!……でも、うんまいなァ!」

 

 その声に驚いて振り向くと、エースが幸せそうに食べ始めていて、試食用に置いてあった箸と小皿を使ってると気付く。それにより注意しようとした私の目の前で、その身体が吹き飛んだ。

 

 「エース……誰の許可得て、勝手に食ってんだ?ん?」

 「だって、すんげェ美味そうな匂いがしてよ」

 「思い出の料理を惚れてる女に頼んで作って貰ったってのに!それを横取りとは……いい度胸して「惚れてる女?」」

 

 まさか……と、エースを殴り飛ばしたイゾウを見れば、イゾウはその目元を僅かに赤く染めて視線を逸らす。でも、私はちゃんと聞きたくてその服の袖に手を伸ばした。

 ギュッと掴んで顔を見上げれば、困ったように笑うイゾウ。それからそっと私の髪を梳くようにして撫でる。

 

 「ずっと長い事、俺はお姫さんに惚れてる。俺の隣に、並び立っておくれだね?」

 「……嬉しい……」

 

 そのままイゾウに抱きつけば、イゾウも優しく抱き締め返してくれる。そっと顔を上げれば、そのまま二人の顔は接近していくのも当然の事だろう。

 二人の世界に入ってる姿に、そっと火を止めてそそくさとその場から逃げた男がいた。だが、その事を咎める者は今、誰もいない。

━━━━━❀

【シャンクス】

 

 キムチ炒飯を食べている姿を眺めながら、真っ赤な毛糸で編物を続ける。マフラーが欲しいと言われたから、買いに行っても気に入るのがあるとも限らないので編んであげる事にしただけだけど。

 

 「もう、できそうか?」

 「うん、後小一時間あれば完成よ」

 

 無地の赤との指定で作ってたけど、端の所に赤髪のマークを黒と白の毛糸を使い入れているので少し時間がかかってしまっているのだ。単色で長いだけのマフラーなんぞは編むのにそんなに時間もかからない。

 

 「……ありがとな」

 「え?」

 「俺の色のマフラーって案外無くてよ。赤なら何でもいいって訳でもねェからさ。……所で」

 「なぁに?」

 「甘いもん食いたい。……いいか?」

 

 そっとその手を伸ばしたと思ったら、私の髪を軽く引っ張る。そのままキスをして流し目で見詰めてくるから、うんと言って頷く。

 

 「何か作って貰ってく「違う!色んな意味で違う!」」

 「シャンクス?」

 「……お前が、欲しい」

 「分かった。何を使っていいかルーに確認するわね」

 

 手料理を食べたいと言う事は案外あるので頷いたら、何故かシャンクスが崩れ落ちた。それに小首を傾げてから、キッチンに向かう。

 シャンクスは基本的に赤いものが好きだから、ベリー系の物を作ろうと決めた。シンプルなワッフルを焼いてイチゴとバニラのアイスをその端に添えて、ベリーのジャムを上からかけると、仕上げにミントを飾って砂糖をふりかける。

 皆も食べるかなと残ってる材料を見て思った時、二枚あった筈のワッフルが一枚目の前で消滅した。蒸発する勢いで。

 

 「うん、これなら少しヨーグルトをジャムに加えて酸味を抑えても良いと思「ルー?お前、何してんだ……?」」

 

 驚きはしたものの、味見してくれたらしいルーに色々聞こうと思ったのに、それより先にシャンクスか現れて怒りを滾らせる。でも、中途半端な物を出すよりは良かったと思うのよ。

 

 「シャ「俺が惚れてる女に作って貰った物を何故お前が先に食ってんだ!」……え?」

 「……えっ?って、まさか、俺の想いにすら、気付いてなかったのかよ?」

 「うん」

 「馬鹿だろ」

 「私、ずっと、妹とか、娘とかの枠だと思ってて」

 「俺は恋愛感情で愛して来た。俺のものになれ」

 「シャンクス……」

 

 そのまま互いに歩み寄り、抱きしめ合いながら瞳を見詰め合う。その姿を眺めてから、後で使えるように残りの食材を片付けてワッフルを片手にルーは静かにその場を後にしたのだが、二人の世界に入っていた為にそれに気付くのはもう少し先のお話。

━━━━━✿

【レイリー】

 

 珍しくシャッキーが来ると言うので、私は部屋の掃除に専念していた。大抵いつも、この島では入手の難しい食材や、シャッキーが食べて美味しかった物を買ってきてくれるから。

 森の中から音が聞こえて、鈴の音が響く。来たのねと小屋を出れば、荷物持ちをさせられているレイさんと手ぶらで森を闊歩しているシャッキーが見えて来た。

 

 「久しぶりね!」

 

 そう言って煙草を手にしたままその手を振るシャッキーへと駆け出せば、抱きとめてくれる優しい腕。優しく頭を撫でて、そっと微笑みを浮かべるシャッキー。

 

 「可愛い子……ねェ、私と二人で住まな「シャッキー、いい加減にしなさい。この子は私のものだよ」」

 

 レイさんはいつの間に小屋の中に荷物を置いて来たのか、早業で私とシャッキーを引き離す。奪い合うように腕から腕へと私を移動させる二人に、この二人はこういうじゃれ合いが好きなのよねと笑ってしまう。

 でも、遠い二人。だからこそ、そっと離れて小屋に戻ろうとしたところで腕を掴まれた。

 

 「今日は、君を食べたいのだが……どうだろう」

 「そうなの?……いつもシャッキーが持ってきた物を食べてたから、用意がないのよね」

 「……ん?」

 「急いで作るわ!」

 「……ああ、そうだね。楽しみにしているよ」

 

 何かを察した様子で頷くレイさんに笑ってから、シャッキーに持ってきた物を確認する。見れば豆類が結構あったので、まずは黒豆を煮つつトマトと数種類の豆を鍋の中に纏めて入れてを無水調理して行く。

 それぞれを煮ている間にご飯を炊いて、スパイスを調合したりしていけば、箸休めの黒豆と、トマトベースの豆カレーになるのはわかると思う。今回は挽肉を使用しております。

 挽肉を炒めるのに使ったフライパンで、具無しオムレツを焼いておけば、カレーの上に乗せる彩りとしては整った。後は緑の物が欲しいわねと、ほうれん草を刻んでカレーの中に入れてしまう。

 サラダはレタスにポテサラを乗せた物を用意。ポテサラに世に言うミックスベジタブルを入れてあるので、色鮮やかというか……可愛い感じに仕上がった。

 完成した物を器に盛り付けていけば、後はテーブルに運んで呼ぶだけとなる。その時、サラダとカレーが一皿ずつ消えた。

 驚いて辺りを見れば、シャッキーが頷きながら先にテーブルで食べ始めているのに気付く。それならと煮豆も持って行こうとした時、低い声がシャッキーを呼んだ。

 

 「シャッキー?……何故、私より先に食べているんだね?」

 「全員分あるんだから良いじゃない」

 「それは、私がこの子を口説いて、食べたいと言ったのが何故か通じずに代わりにと作って貰っていた物なのだよ。分かるね?私が、愛しいこの子を食す前に味見として食べる為の物なのだから、この場合「レイ、さん?」」

 

 思わず口を挟んでしまえば、レイさんはしまったと言う顔で振り向いた。その様子にシャッキーは笑うと立ち上がり、またねと言って去って行く。

 浮気推奨とか、そんなレベルの話ではない。でも、それが無ければ憧れている人であるとは言え、私は今の言葉に返事なんてできなかった。

 そっとレイさんが抱き締めてくれる。優しく頭を撫でて、それにより顔を上げれば絡み合う視線。

 

 「シャッキー……」

 「そこは、私の名だろう?」

 「でも……」

 「私のものに、なってくれ」

 「シャッキーに、悪いし……」

 「シャッキーは認めてくれてるよ」

 「……っ!でも、シャッキー「目の前にいるのは、誰かな?」」

 

 その言葉に私は、言葉を失う。だって、呼んでしまえば引き返せない。

 そっと目を閉じれば、涙が伝う。罪悪感と幸福が綯い交ぜになって、感情がよく分からなくなってしまって……。

 

 「レイリー……大好き……」

 「私は、愛しているよ。……大切に、慈しんであげよう」

 

 そう言われた瞬間に、無意識で頷けば、唇が重なったのは必然だろう。日の当たる事がない二人の時間は、始まったばかり。

━━━━━❀

【クロコダイル】

 

 突然、料理はできるのかと問われて頷いたら、作れと命じられたのは昨日。何か作れとだけ言われた私は、飼育してるワニが単なるペットでは無く食料でもあると知ってる。

 だからって殺すのはなぁと水槽の中で泳ぐバナナワニを見詰める。いつも見ていたからか、可愛く思えてきているのだ。

 ……仕方ない、ロビンに言って肉だけ仕入れて貰おう。と、考えて行動に移したのは当然の流れ。

 そうして揃った食材で作ったのは、ワニ肉のハンバーグとワニ肉団子の入ったミネストローネと、刻んだトマトをふんだんに使ったトマトサラダ。ハンバーグはトマトベースのソースをと思ったけど、何故かトマトケチャップが嫌いだからそれはやめて醤油ベースの和風な味付けにしておいた。

 そうして盛り付けていくと、思いの外美味しそうに出来上がった。ハンバーグをワニの形になるように、蒸し焼きにしたのできっと喜んで貰えるだろう。

 完成した物をテーブルに運んで、クロコダイルを呼ぼうと電伝虫に触れた時、背後から何かを破壊するような音が聞こえて振り向く。そこには扉を破壊したらしいクロコダイルと、悪戯に笑うロビンがいた。

 

 「何を、している?」

 「味見よ?毒があったらいけないでしょう?」

 「もう……ロビンも食べたかったなら言っ「俺が、俺の女に手料理を作れと言ったんだ。勝手な事をするな!」俺の、女?」

 

 宥めるとか色々しなきゃいけないのは分かるのに、ただ見つめてしまう。だって今……。

 そんな私を見て、溜息を落とすと困ったような顔をした。それからそっと足を動かしたと思ったら、その腕に囚われてしまう。

 顎を掴んで、強制的に視線を合わせたと思ったら、怒ってるみたいな顔で、呆れきった声を出す。なのに、その言葉は妙に甘く聞こえた。

 

 「何度も、俺の想いは伝えた筈だが……伝わってなかったか」

 「クロコ……?」

 「お前の作り出す全てが、俺のものだ。異論は認めねェ」

 

 その言葉と共に近付く顔に、そっと目を閉じて待つ。唇が触れ合った時、そっと部屋を出る人の気配を感じた気はしたけど、気にする余裕はどこにも無かった。

━━━━━✿

【ベックマン】

 

 忙しそうにしていて食事を取るのも難しそうなベックが心配で、何か食べてよと声を掛けたら半分揶揄うような響きで持って私に言う。それは、邪魔するなって意味なのかもしれないけど。

 

 「手料理を用意してくれるなら、食べてもいい」

 「……分かったわ。待っててちょうだい!」

 

 そう言ってルーを押し退けて、冷蔵庫からカマボコとチーズを取り出す。乳製品は基本的にバランス栄養食だから、使えたら手軽に栄養を取れるのだ。

  まずは赤のカマボコを少し厚めに切って、白と赤を分けるように1/3位残して切目を入れる。それの赤の部分だけ縦に切ってふたつに別れるようにしたら、先っぽを根元に折り込み挟む。

 即席のウサギさんだ。癒し効果もあって良いだろう。

 続いて普通の厚みに切った白かまぼこの間にチーズを挟んで、フライパンで両面を炙る。チーズが落ちない程度でやめておけば、接着剤の役割を果たすからこれも食べやすい筈。

 そうしてカマボコを使った料理を幾つか作ってお皿に盛り付けていたら、箸よりフォークが食べやすいと遅れて気付いて取りに向かう。そうして料理の所へ戻ったら、ルーがウサギを摘んでいて、試食にもならないだろうそれに笑った時壁がミシッと音を立てたのを聞いた。

 

 「ルー……何してる?」

 「……悪かった。落ち着けよ」

 「俺が惚れてるのは、分かってるよな?それなのに、誘導して作らせた料理の中からよりにもよってウサギを食うとは……ライバル宣言なら「違う!落ち着け!」」

 「……ベック?」

 

 私の呼び掛けに動きを止めて、視線を私に移動させる。そこで優しく目元を緩めるから、勘違いしそうになるけど、もしかして今……。

 いやでもまさかね。自意識過剰も甚だしいとは思うけど、でも、確認したくて声を出す。

 

 「ベックって、私を、その、好き……とか?」

 「やっと伝わったか。……恋愛感情で、愛してるよ」

 「なん、で?」

 「後で、じっくり聞かせてやるから……今は返事をくれないか?」

 

 優し過ぎる声に、甘過ぎる空気に顔を熱させて、そのままベックに味見されてしまった。この味見が、料理なのか私なのか、それとも両方なのかは極秘としておきたい。

 二人の世界に入ったのと同時に逃げ出したルーが、キッチンへの立ち入りを禁止して二人の事を出口を塞いで守っていたのは、仲間意識か罪悪感か。お皿からチーズが挟まったカマボコも結局一つ減っていたが、それは許容されて然るべきだろう。

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