「安心してください。はいてますよ」
テレビのお笑い芸人を真似たお道化た言葉が、くすくすという笑い声とともに耳に入ってきた。
そして、気がついた。
玲子は公園のベンチに座っていて、横にはにやにや笑っている秀也がいたのだ。
裸でもなければ、ここは男子トイレでもない。
最初からいた公園のベンチだ。
しかも、ちゃんとスーツを身に着けている。
白昼夢……?
いや、秀也の操心術だ。
どうやら、秀也の力によって、玲子はベンチにすわったまま、幻想を見させられたようだ。
しかし、どこからが現実で、どこからが幻想……?
玲子は慌てて、スーツの上から身体を触った。
服を脱がされて、改めて着せられたという感じではない……。
服は一度も脱がなかった……?
ただ、あの革の下着は外されている。
スカートの下はガーターストッキングだけで、なにもはいていない。
また、まるで絶頂した直後のような気だるさと、身体の火照りは残っている。
だが、あの三人組の姿はない。
周りにいるのは、横に座っている秀也だけだ。
どう考えればいいんだろう……?
玲子は混乱した。
「くくく……。大丈夫だよ。まだ、なんにもしてねえよ。ただ、肝が冷えたろう? 俺を敵に回せば、どうなるかを教えてやっただけだよ」
「操心?」
呟いた。
だが、実際のところ、なにが操心術による幻想で、なにが現実なのかわからない。
それが、秀也の操心術なのだ。
「だが、もうわかっただろうけど、お前には俺に従うしか道はないんだ。学園に閉じこもって、覗き趣味しか愉しみがねえ龍蔵の伯父貴には頼れねえぞ。いまや、伯父貴は学園の外のことはあんたに任せっぱなしで、玲子が報告しなけりゃあ、なにもわからねえ。だが、その玲子は、俺の操心術で、俺に関わることが報告できねえように心が縛られている。伯父貴には頼れねえんだよ」
秀也が言った。
事実だと思った。
あの理事長は、怖ろしい権力者ではあるものの、確かにいまはほとんど隠居の身の上であり、大抵のことは部下に任せっきりで、各所からやってくる報告を玲子を通じて接し、特に必要なことだけを玲子に伝えさせるだけだ。
その玲子が、秀也の操心術で情報制御されている可能性は考えていない気がする。
龍蔵は、秀也が自分を裏切るという可能性など、皆無だと思っている気配だ。
しかし……。
「ましてや、真夫とかいう男は無理だ。龍蔵の伯父貴の血を引くとしても、操心術が活性化するのは、後々のことだ。もしも、その真夫が本当の伯父貴の直系で嫡子だとしても、真夫がお前を俺から守れるようになる前に、お前が真夫のものになった時点で、俺は玲子を破滅させる。いとも簡単にな……。それがわかっただろう、玲子?」
秀也が喉の奥で鬼畜に笑った。
玲子は、秀也に見えない側の拳をぐっと握った。
「わたしになにをさせたいのですか、秀也様?」
玲子は、できる限り平静を装いながら訊ねた。
「スマホの待ち受け画面を見てみな」
秀也が言った。
玲子のバッグは身体の横にある。
言われたとおりに、携帯を見た。
「あっ」
思わず声をあげた。
そこには、学園の制服を身に着けたさっきの不良生徒のひとりの股間を頬張っている玲子の顔の写真が待ち受けに張りつけられていた。
「な、なんですか、こんなの──」
自分の顔が真っ赤になるのをなるのを感じながら、とりあえず、待ち受けからその写真を削除する。
すると、横で秀也が大笑いした。
「わかっていると思うが、あいつらは全員一年坊主。つまり、まだ、誕生日を迎えてねえ十五歳だ。その十五歳の股間をちゃんと成人しているあんたがこんな破廉恥な行為をしちゃあいけねえんじゃねえか? 淫行条例とかいうんだっけ? もしも、お前が俺を裏切れば、その写真があんたの名前付きでネットに出回ることになる。女弁護士の資格なんて、なくなるだろうなあ……」
秀也がけらけらと笑い続ける。
玲子は呆然としてしまった。
「ばかなことを……」
「龍蔵の伯父貴は手遅れになったときに、やっと事態に気がつくかもしれないけど、おそらく、俺の勘じゃあ、俺は軽くお叱りを受けて終わりさ。だが、役立たずのあんたは、お払い箱だ。龍蔵の伯父貴にとっちゃあ、あんたなんて、ただの玩具だ。肉親の俺をどうにかしてまで、守っちゃくれねえよ」
秀也は言った。
玲子は歯噛みした。
だが、秀也は正しいと思う。
秀也が龍蔵を裏切るという行為であれば、龍蔵は秀也を許さないかもしれないが、拉致して調教した女を破滅させたということだけであれば、不愉快な気持ちにはなるだろうが、それで秀也をどうにかしようとまでは考えないと思う。
龍蔵にとって、玲子はその程度の存在だ。
「……で、でも、わたしには、龍蔵様を裏切る勇気はありません」
玲子はそれだけを言った。
「わかっているよ。俺も龍蔵伯父貴を裏切るつもりはない。ただ、お前が真夫のものになるのが許せんだけだ」
「でも、真夫殿の奴婢になるのが、龍蔵様の命令なのです」
真夫に従えという命令に背くことが、裏切りそのものなのだ。
玲子はそう伝えたつもりだ。
それに、玲子は龍蔵を見限るつもりもないし、いまさら、逃げたいとも思わない。
龍蔵は、隠居の身とはいえ、魔王と称されるほどの絶対的な権力者であり、その専属として仕えるというのは、玲子のキャリアや年齢ではありえないほどの職務だ。
やりがいのある仕事として、これ以上望めることはないだろう。
それに、報酬も悪くない。
意思を許されない「奴隷」だとしても、龍蔵は学園の専属弁護士で、秘書的な仕事をしている玲子に、十分すぎる報酬を支払っている。
また、学園から出ることのない龍蔵の代わりに、直接的な伝言を運ぶ役割をしている玲子は、ある意味で、龍蔵が握っている巨大な豊藤財閥の権力の一端を握っているともいえるのだ。
拉致されて完全に調教されたのは、悪いことばかりでない。
そう考えてもいる。
「ああ、その通りなんだろう。わかっているよ。俺は伯父貴を裏切れと言っているわけじゃねえよ。もう一度言うが、真夫のものになるなと命令しているだけだ」
「その違いは、わたしにはわかりません」
玲子はきっぱりと言った。
すると、秀也がこれまでのにやついたような微笑みを消して真顔になる。
「……玲子には、俺たち一族の秘密に関しては、俺と伯父貴の両方の口封じの暗示がかかっている。だから、教えてやる。実は豊藤一族の不思議な血には秘密がある……。まずひとつは、操心の術は同じ血を持つ同族にはかからないということだ。これは知っているな?」
玲子は頷いた。
それは教えられたことがある。
だから、龍蔵の操心術は秀也にはかからず、もちろん、秀也の操心術は龍蔵には影響することはない。
そのはずだ。
「……もうひとつは、女に関することだ。豊藤一族の強い操心術は、関係を持った女の心を次々に縛ってしまう。その男を裏切れなくなるんだ。ただ、最初の一族のひとりの男だけだ。一族のうち、最初にその女の子宮に精を注いだ男の心だけに、その女は縛られる。後から精を受けてもだめだ。一度、精を受ければ、“刷り込み”が消失することはない。その女は、最初に結んだ豊藤一族の男の忠実なしもべになる」
秀也は言った。
だが、玲子は眉をひそめた。
精を受ければ、心が縛られる……?
そんな馬鹿げた話が……。
一瞬、そう考えかけたが、相手の心を操ってしまうという操心術そのものが、信じられないような馬鹿げた話なのだ。
あるいは、本当なのだろうか……?
しかし……。
「だから、伯父貴の命令で真夫という男の奴婢になるとしても、絶対に子宮に精を受けるな。つまりは、生出しさせるなということだ。そうすれば、心は縛られないはずだ。俺の女であることが保たれる。別に難しいことじゃない。普通に避妊具を使えばいいことだ。つまりは、子宮に精が届かなけりゃいいんだ」
秀也は言った。
どうやら、それが秀也の言いたいことの核心のようだが、玲子は首を傾げざるを得なかった。
秀也の言葉が、偽りでないとしても、なぜ、秀也が真夫の精を受けるなと告げるのかが理解できなかったのだ。
「わかりません。精で心を縛る云々の話は正直半信半疑ですが、だったら、わたしは、すでに龍蔵様に心を捉われているはずでしょう。真夫殿の精を受けても、わたしが、真夫殿に心を縛られるはずがありません」
玲子は言った。
だが、秀也は爆笑した。
「……あんたは、伯父貴と関係を結んだことがあるつもりだったのかい──? 伯父貴はもうあの歳だ。すっかりと精力は衰えちまって、実は五年くらい前から、あれが勃起しねえんだ」
「えっ?」
勃起しない?
そんな、馬鹿なことが……。
「あんたは、伯父貴の操心術でまるで犯されたような気分になっていただけだ。実際のところ、伯父貴は淫具しか使っちゃいねえよ。さもなきゃ、あんなに、学園内に隠しカメラを備え付けて、覗きなんてやっちゃいねえ。伯父貴は勃起しない精を発散するために、若い女の裸身を見るのが愉しみなんだ」
秀也は笑いながら言った。
玲子はびっくりした。
ただ、言われてみれば、そんな気もする。
とにかく、龍蔵自身に犯されたという記憶はまるでないかもしれない。
龍蔵にしろ、秀也にしろ、責めのときに「操心術」を多用するので、玲子の記憶はぐちゃぐちゃになっている。
さっきもそうだったが、なにが現実で、なにが操心術による幻想だったのか、いまだにわからないのだ。
「さもなきゃ、お気に入りのあんたを俺に調教させるわけがないだろう。伯父貴は、自分が失った性機能の身代わりとして、俺を使ってたんだ。監視カメラで俺があんたを責めるのを覗くんだ。それが、あのじじいのお愉しみなのさ。まあ、情けないよな。好色で常軌を逸した女遊びを続けてきた龍蔵伯父貴のなれの果てが、他人が自分の女を責めるのを覗くことだとはな」
秀也は自嘲じみた笑みを浮かべた。
だが、それで合点がいくところもある。
龍蔵と会うたびに思ったのだが、龍蔵は前の日に受けた秀也からの調教の内容のことをよく知っている感じだった。
それほど頻繁に秀也と龍蔵がやり取りしている様子でもないのに、前日の秀也の責めに対する玲子の反応のことを、龍蔵は数時間後の朝には承知していた。
それは、とても不自然なことである気がしていたのだ。
つまりは、龍蔵はずっと秀也が玲子を責めるのを見ていたということだったのかと思った。
考えてみれば、秀也が玲子を責めるのは、ほとんどが学園内だけだ。
学園には、龍蔵の備え付けた隠しカメラがあらゆる場所に設置されている。
おそらく、龍蔵は、それで秀也が玲子を責めるのを監視していたに違いない。
「真夫のことだって、そうだぜ。どうせ、あの伯父貴のことだ。あんたが、真夫と関係する場所を指定してるんじゃねえか? どこでもいいとは言っていないはずだ。伯父貴は、それをどこかでまた覗き見するつもりなんだぞ」
秀也がくすくすと笑った。
玲子ははっとした。
「り、理事長には、午後に真夫殿と会うホテルの一室で、真夫殿に抱かれるように指示されています」
玲子は言った。
そのホテルは龍蔵の支配する豊藤財閥の系列のホテルだ。学園内と同じように、客室に隠しカメラを備え付けるのは簡単だろう。
「だったら、十中八九まで、伯父貴はその部屋の映像を転送させている。まあ、せいぜい、覗き趣味の老人を愉しませてやれよ」
「だ、だったら……」
玲子は驚きで口に溜まった唾を飲み込みながら言った。
「……その理事長の監視の中で真夫殿の精を受けないというようなことは不可能じゃないですか」
すると、秀也はさっと小さな容器を差し出した。
「これは?」
「避妊ゼリーだ。真夫と会う前に、これを膣に濡れ。それで精は殺され、直接的に子宮に精を受けないのと同じことになる。事前に塗るんだから、伯父貴にはばれない。そして、あんたは、真夫の支配を受けることもないということだ」
玲子は避妊ゼリーを受け取った。
迷ったがとりあえずバッグに入れた。
だが、もうひとつだけ腑に落ちないことがある。
玲子はその疑念を口にすることにした。
「秀也様のことが本当だとすれば、なぜ、秀也様はこんなまどろっこしいことをしているのです? そもそも、一族のうちの最初に精を与えられた男の支配にわたしが陥ってしまうのであれば、わたしはあなたの支配に陥っているのではないですか?」
すると、秀也は初めてばつが悪そうな表情になった。
「……もともと、伯父貴には直接にあんたに精を注ぐことは禁止されていた……。犯すときには、必ずそのゼリーを事前に塗らされた……。伯父貴は、自分の代わりにあんたを俺に調教させても、俺にあんたを与えるつもりはなかったんだ……」
「えっ?」
玲子は思わず叫んだ。
確かに、龍蔵だけでなく、秀也もまた、あまり玲子を直接に犯すことがなかった気もする。龍蔵同様に器具を多用し、精を放つのを自制していたように思う。
秀也の若さでは、その自制心は不自然だと思ってもいたが、それは龍蔵の監視下だったから、勝手に精を放つということができなかったということのようだ。
だが、それでも……。
そもそも、おかしな小細工をして、真夫の精を無効にするようなゼリーを玲子に使わせるよりも、秀也の目的を果たすのであれば、もっと有効で手っ取り早い手段がある。
いま、犯せばいいのだ。
玲子は秀也に逆らうのは不可能だ。
この瞬間にだって可能だ。
しかし、秀也はそうしない。
そのとき、秀也が玲子の疑念を見透かしたように口を開いた。
「……それに、俺は一度もあんたに精を放たなかったわけじゃねえ。実際には何度も試した……。だが……。だが、なぜか支配は……」
「だが……? 支配……?」
玲子は首を傾げた。
しかし、続く言葉は秀也の口からは出なかった。
ただ、口惜しそうな表情をしているだけだ。
玲子にはそれで十分だった。
秀也に玲子は、わざと挑戦的な笑みを浮かべた。
「なるほど、わかりました……。実際には、何度も試したけど、あなたの精はわたしを支配するには至らなかったのですね……つまり、あなたには一族の能力が不完全だと。もしかしたら、それを理事長も知りましたか? それで見限られましたか? 女を支配することができないのでは、一族の長としての能力は不完全だとか……。それで、理事長は真夫殿を真の後継者として……。あっ、あぐうっ」
股間に走った衝撃に、玲子は両手をスカートの上からあてて全身を弓なりにした。
クリリングが信じられないような高振動で動き出したのだ。
脳天まで突き抜けるような衝撃に、玲子はベンチから腰を滑り落してしまった。
「ああ、あっ、だ、だめえっ、あああっ」
慌てて口に手を当てる。
声が我慢できない。
猛烈な甘美感が次から次へと襲い掛かっている。
「そんなの納得できるか──。なんだ、その女を支配する精なんて──。そんなの信じられんし、あり得ん。その能力に欠けるだけで、俺は操心術の真の後継者でないというのか。馬鹿馬鹿しい──。その真夫とかいう男にだってない。そんな戯けた話は、龍蔵伯父貴の妄想だ」
秀也は激しくなじるように怒鳴った。
玲子はそれどころじゃない。
性感が爆発したかのような快感が全身に拡がる。
異様なまでの衝撃が脳を灼き尽くすかのようだ。
「んぐううっ」
玲子はあっという間に絶頂していた。
クリリングの高性能の振動は、玲子がどんな刺激に強く反応するかを詳細にメモリーしていて、もっとも効率的に玲子が絶頂する振動と波動を注ぎ込んでくる。
しかも、玲子の身体の反応そのものを探知して、玲子の絶頂の方向に確実に導くのだ。
そこから快感を逃れさせるのは不可能だ。
「お、お願い、とめて……とめてください……んん、んふううっ──」
玲子は一度果ててもとまらないクリリングの責めに、地面の上でのたうち回るしかなかった。
「……だいたい、なんで伯父貴は、会ってもいない真夫に、最初から執着しているんだ。俺には、玲子の調教係を命じても、お前を与えようとはしなかったんだぞ。それなのに、真夫には最初から玲子をくれてやるつもりでいる。面白くねえ」
秀也は怒鳴り続けている。
玲子はそんな秀也に何度もリングをとめてくれと哀願した。
そして、やっと秀也がクリリングを停止したのは、玲子が二度目の昇天をしたときだった。
終わっても玲子はすぐに立ち上がれなかった。
肩で息をしながら、秀也の座るベンチの足元にしゃがみ込んだままでいた。
「……そんな玩具で一生弄ばれる暮らしをしたくねえだろう、玲子。もともと、お前はプライドの高い女だ。こんな風に玩具にされるのは我慢できないはずだ。俺に従えば、クリリングを無効にする方法を教えてやってもいいぜ」
秀也が言った。
「ほ、本当?」
玲子は顔をあげた。
すると、秀也はにやりと笑った。
「ああ、本当だ。手術で埋めつけたものだから、もう一度手術して外すのが一番なんだが、ある特殊な信号を流せば、それでリングの内部チップが破壊される仕掛けになっている。なにしろ、龍蔵伯父貴には敵が多いしな。万が一、あんたが捕らえられて、クリリングを見つけられれば、それを拷問具として使われてしまう。そうならないための保護機能だ。ほかにもいろいろと機能や秘密があるんだが、まあ、俺でも、そのリングを無効にする方法はいくつか知っている」
「そ、それを教えてくれるというの?」
玲子は自分の声が大きくなったのがわかった。
この忌々しいリングが無力化できる。
その方法があれば、どんなに素晴らしいことか……。
解放されたい……。
この恐ろしい淫具から……。
「その代わり、俺に従え。真夫に抱かれる前にさっきのゼリーを塗れ。そして、伯父貴には、真夫には女を精で支配する能力はないようだと報告しろ。あの伯父貴の頭では、一族の長である証の真の操心術は、女を支配する能力にこそあるということらしい。とにかく、真夫にそんな力がないとなれば、それで、少なくとも俺と真夫は同列ということになる」
玲子には、秀也の目的がやっとわかってきた気がする。
精で女を支配する力──。
そんなものが本当に存在するのかどうかはわからない。
だが、もしも、本当に真夫がその能力を受け継いでいるのであれば、龍蔵は自分の後継者は真夫だと完全に認めるだろう。
秀也は、それを阻止しようとしているのだ。
「これは、あんたと俺が一蓮托生の仲間になる見返りだ」
秀也が手を伸ばして、しゃがんでいる玲子の胸のシャツのボタンの上からふたつを外した。そして、ブラジャーに包まれている胸の谷間を露出させると、そこに紙を突っ込んだ。
玲子はそれを手に取って拡げた。
二千万円の小切手だ。
「俺のポケットマネーだ。真夫に会う前にゼリーを膣の中に塗れ。それだけで、それが手に入る」
「拒否すれば?」
「さっきのスマホの待ち受けの写真が大量にネットに流出する。あんたと三生徒のプロフィールと一緒にな」
秀也は言った。
玲子は立ちあがった。
スーツには土や草がたくさんついて皺くちゃだ。
午後に真夫たちに会う前に、着替えなければならないだろう。
「選択の余地はなさそうですね。わかりました、秀也様」
「賢いあんたなら、わかってくれると思ったよ」
秀也が満足そうに微笑んだ。
確かに選択の余地はない。
真夫が龍蔵の望む本物の後継者なのであれば、玲子が真夫の精を直接に受ければ、玲子は真夫に逆らえない本物の「奴隷」になるのだろう。
これは、まったく選択の余地のない話に違いない。
「まあ、こんなところか……」
玲子が去った公園で、秀也は呟いた。
大いなる満足心とともに……。