※この作品はR-18です。

淫魔王のいる学園【完結】   作:ドン・ドナシアン

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110話 マゾのエロス

「……ま、真夫──?」

 

 不安に耐えられなくなり、七生(ななお)は声をあげた。

 しかし、それはまるで自分の声ではないかのような遠い音のようにしか感じなかった。

 外音は真夫が七生の耳を塞いだヘッドフォンによって遮断されており、七生に届いたのは骨伝導による声なのだろう。

 いずれにしても、真夫の返事はないし、反応もない。

 すぐに触れてきて、すぐにセックスをするのかと思ったが、それもない。そう思ったのは、これまでに経験した男子生徒たちがそうだったからだ。

 拘束をされてセックスをするのは初めてだったが、別段、そうでなくても、七生がなにかをするわけではないから問題はない。

 七生が知っているセックスは、ふたりきりになれる場所に赴き、七生は服を脱ぐ。すると、男子生徒が七生を愛撫して女性器に男性器を突っ込んで律動して射精する。

 つまるところ、セックスとはそういうことだ。

 

 しかし、真夫が七生に施したものは、まったく違う行為だった。

 縄で拘束をし、七生を抵抗できない格好にすると、そのまま放置したのだ。

 ただただ、放置されている。

 それだけの時間が延々と過ぎている。

 

 真夫はそばにいるのだろうか?

 それにしては、まったく気配を感じない。

 あのまま部屋に残っているのだろうと思うのだが、それにしても、これだけ長い時間、なにもせずに放っておかれているというのは、もしかしたら、真夫はどこかに行ってしまったのではないかという気がする。

 そもそも、こうやって自由を奪われて爪先立ちにされてから、どのくらい経ったのだろう?

 かなり長い時間が過ぎたという感覚があるが、あるいは、それほどの時間は過ぎていないのかもしれない。

 とにかく、視界を奪われ、外音を切り離され、風さえ感じることができず、七生はこれまでに味わったことがないような大きな不安感と緊張感に包まれている。

 

 これも、エロスというもの……?

 

 真夫が口にしたのは、七生が知ることができなかったエロスを教えるということだ。

 そして、こうやって七生を縄で縛り、視覚と聴覚を奪って放置した。

 つまりは、この不安で押し潰されそうなが気持ちがエロスなのだろうか。

 

 自由を奪われ、なにをされても抵抗できないような状態で放置される──。抗う気持ちが最初からなかったが、だが抗う手段を一切奪われるというのは、これほどに怖さを生むというのは知らなかった。

 そして、こうやって、時間が過ぎていくと、その恐怖心が諦めのような感情に変わっていく気がする。

 いずれにしても、いま七生が味わっているのは、これまでの人生において、経験のなかった負の感情であることは確かだ。

 

 そして、こうやって放置される時間がすぎることで、七生を襲っているのは心理的な変調ばかりではない。

 肉体的な苦悶もじわじわと七生を追い詰めている。

 肌を締めあげる縄の圧迫感と爪先立ちの姿勢をずっと強いられている苦痛が七生の服の下にかなりの汗をにじませている。

 なによりも、七生の女の部分に喰い込み、締めつけていくる股縄が……。

 

 股間に喰い込まされる前に垣間見た縄瘤は、しっかりとクリトリスと膣とアナルに当たっていて、疼痛のような感覚を強く産み出している。

 真夫が、女であることを思い知れ──と言っていたのは、まさにこのことに違いない。

 ずっと襲っている股間の刺激は、ほんの少しも逃げることができない。

 

「あ、ああ……」

 

 爪先立ちの姿勢を保とうと身じろぎするたびに、股縄の縄瘤は、七生の花芯とクリトリスを抉りあげる。

 いや、なにも動かなくても、疼きのようなものが七生を圧迫する。

 動いても、動かなくても、七生はなにかに追い詰められる……。

 もう、七生を苛んでいる股間のことしか考えられない。

 これが、女であることを知るということか……。

 

「ま、真夫……。い、いるんだろう? い、いつまで……」

 

 七生は再び声をあげた。

 今度はさっきよりも、余程に自分の声が弱々しいと感じた。

 いつまでこうしていなければならないのだろう……。

 局部を締めあげる緊縛感とひたすらに対峙しながら七生は思った。

 

「……そ、そろそろ許して……くれ……。わ、わたしと……セックスを……」

 

 これほどの緊張感に襲われ続けるなら、もう真夫に襲って欲しい……。

 七生は思った。

 だが、返事はない。

 いるのか、いないのかも感じられない。

 

 鼻の横や顎の下に自分の汗を感じる。

 もうかなりの汗にまみれているに違いない。

 はあ、はあという自分の吐息が身体の内側を通じて伝わってくる。

 

 時間がひたすらに過ぎていく。

 もう、真っ直ぐに立っていられない。

 上下の感覚がわからなくなってきた。

 

「ううっ、くっ」

 

 重心がずれるたびに、どちらかの足を踏ん張るのだが、すると身体が揺れて、縄瘤が股間に強く喰い込む。

 

「ひああっ、ああっ──」

 

 突然のことだった──。

 背後から抱きすくめられて、縄が上下に喰い込んでいる乳房が手の平に包みこまれ、指が乳首を探すように押し揉んできた。

 

「ああ、あああっ、いやあ──」

 

 自分が大きな声を出しているのがわかる。

 七生はなにも考えられずに、唯一自由な顔を左右に振りたてた。

 だが、どうして愛撫を拒絶するような言葉を吐いたのかわからなかった。七生はこのまま放置され続けるくらいなら、むしろ真夫に犯して欲しいと思ったのではなかったのか……。

 

 真夫の手が離れる。

 七生はすぐに犯されることを予想した。

 しかし、その予想に反して、七生は再び放置された。

 相変わらず、股間の縄瘤は大きな存在感をもって七生を追いつめ続けるし、疼痛はますます拡大する。

 だが、一度刺激されたということが、さらに七生の心を圧迫する。

 

 次は、いつ触れてくるのか──?

 いまなのか──?

 それとも、まだ焦らされるのか……?

 

 七生は、もう真夫のことしか考えられなくなってきている。

 追い詰められすぎて、頭がおかしくなりそうだ。

 

「ま、真夫──。お願いだ──。もう苦しい──」

 

 七生が声をあげた。

 すると、不意にヘッドフォンが外された。

 

「ま、真夫──」

 

 七生は真夫の名を口にしていた。

 久しぶりに聞いたいつもの自分の声だった。これまでは身体の内側を通した声しか聞いてなかったので、自分の声が自分ではないみたいだったのだ。

 目隠しはそのままなので、真夫の姿は見えない。だが、ヘッドフォンを外された感覚から考えて、真夫の位置は後ろ側のような気もするが、よくわからない。

 

「約一時間だ。充実した一時間だったか?」

 

 真夫がくすくすと笑った。

 どうやら、前にいるようだ。

 

「わ、わからない……。だが、怖ろしく不安で……怖かった……。と、とにかく、この股間の……縄のことしか考えられなくて……。あ、あとは真夫のことばかり……」

 

 七生は心に浮かんだことを素直に口にした。

 もっと長かった気がしたが、たった一時間だったのか……。

 確かに、滅多に味わえない充実した時間だったかもしれない。

 

「さすがが芸術家様だ。詩人のような言葉を使う……」

 

 真夫が笑う。

 次の瞬間、その真夫の手が内腿の内側にそっと触れた。

 

「ひゃん──」

 

 七生が身体を跳ねさせた。

 縄瘤がぐんと股間に喰い込んで刺激を拡大する。

 

「んくうっ、あんっ」

 

 これまでに一度も出したことがないような甲高い鼻声が七生の口から迸った。

 自分がそんな声を出すことがあるということにびっくりした。

 そして、真夫が七生にさらに近づくのがわかった。

 

 しかも、抱きしめられた。

 身体がかっと熱くなる。

 しかも、下腹部に腰を押しつけられた。

 ズボンの生地越しではあるが、勃起している男根の感触が腹の下に感じた。 

 

「あっ……」

 

 吐息混じりの声が出た。

 いよいよ、犯されるのだなと思った。

 

「エロスを知りたいと言っていたね」

 

 抱きすくめられている耳元でささやかれる。

 七生が小さく頷いた。

 

「……言った……」

 

「だけど、エロスというのは、そんなに簡単に知ることができるものじゃないと思うね。多分、色々なエロスがある……。俺が七生に教えることができるのは、七生が俺に支配されるというエロスだ……。いままで君は自由だった。自由に男を選び、セックスを体験した。でも、俺にエロスを教わりたいなら、俺の女になると誓い、隷属すると約束し、自分の自由を俺に差し出さないとならない……」

 

「自由を……差し出すのか……?」

 

「それが支配されるということだよ……。どうする……?」

 

 自由を失う……。

 それがどういうことなのか、よくわからない。

 たた、予感はある。

 もしも、この真夫に従えば、七生は七生でなくなるような気がした。

 根拠はないが、勘だ──。

 

 ここで承諾すれば、七生は全く別の存在になる──。

 この真夫には、そんな力がある気がする……。

 

「なんか怖いな……」

 

「別の物言いをしようか。俺の女になれば、ひかりちゃんのヌードを描かせてやろう。俺でもいい。好きなようにさせてやるよ」

 

 真夫が言った。

 いままでちょっと威圧的な雰囲気を出していたが、急に七生を包み込むような優しい口調になった。

 七生は不思議な安堵感に包まれた。

 ここで、そんな優しい物言いか……。

 この男は狡いな……。

 そのことを完全に理解した。

 自分の頬が綻ぶのがわかった……。

 

「……わかった。わたしを真夫の女にしてくれ。わたしを支配して欲しい……」

 

 もう不安は消えていた。

 真夫に抱いて欲しい。

 心から思った。

 

 セックスによってエロスの真髄に近づこうとした七生だったが、純粋に男に抱いて欲しいと思ったのは、この真夫が初めてだ。

 股縄の疼きはどうしようもないものになっている。

 もう七生の肉体の欲望がそれを求めている。

 

「いいのか? 一度隷属を誓えば、もう一切の拒絶はできなくなるよ。どんなに理不尽な命令でも、七生には“はい”の返事しか許されなくなる。それがどういう意味かはわかるよね?」

 

「問題ない。わたしは自分で求めて決めた。真夫の女になる。わたしを支配してくれ……。ところで、そろそろ目隠しも外して欲しい……」

 

 すると、真夫がくすくすと笑い声をあげた。

 

「な、なぜ笑う?」

 

「七生がわかってないからだ。支配されるというのは、拒絶が許されなくなるなると言った本質を理解してないようだと思っただけだよ」

 

「本質?」

 

「拒絶できないというのは、一切を受け入れなければならないということだよ。それがマゾのエロスだ……。ようこそ、俺たちの仲間に……。それとSS研にも……」

 

 真夫が七生から身体を離してしゃがみこんだのがわかった。

 股縄が外される。

 

「あんっ」

 

 縄瘤から解放される緊張感の消滅により、またもや口から甲高い声が迸ってしまった。

 しかし、それ以上のことは考えられなかった。

 真夫が七生から腰の下着をあっという間に足首までさげ、いきなり七生の股間に口づけをしてきたのだ。

 

「わっ、ひんっ、ああっ」

 

 真夫の舌が七生の股間への蹂躙を開始する。

 混乱し、動転した。圧倒的な衝撃が股間から全身を貫いた。

 七生は緊縛されて吊られている身体を大きく震わせてしまった。

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