「ひあっ、ああっ」
真夫は舌を七生の股間に這わせ続ける。
クリトリスに舌が絡みつき、包皮を剥くようにねっとりと舐められる。舌が動くたびに、七生の身体はびくんびくんと震えて、短い鼻声が口から迸る。
「あっ、ああっ、か、感じる……」
真夫の舌の愛撫は続く。
七生の喘ぎ声はだんだんと大きくなっていった。
「あ、あああっ──」
どうして、こんなに感じるのか……?
これまでのセックスの経験では、一度も味わったことのない官能の愉悦に七生は戸惑った。
セックスでこんなに気持ちよくなったことなどない──。
七生がこれまでに経験をしたセックスとは、ちょっとくすぐったいくらいのものであり、こんなに頭が真っ白になるような強烈なものではなかった。
それなのに、真夫のほんの少し股間を舌で舐められただけで、七生は早くも巨大な激情に包まれている。
これがセックス──?
だとしたら、いままでのはなんだったのか──?
「感じるか? 七生は自分がエロスを理解できず、セックスの快感がわからないと口にしていたけど、実際はどうだ? 感じているんじゃないか?」
真夫が七生の股間から顔を離して立ちあがった気配を感じた。
「わ、わからない……。こ、これが感じるということなら、わたしはとても感じている……と思う……。激しい。とにかくすごい……」
「エロスがわかりそう?」
真夫がくすくすと笑いながら、七生の制服のブラウスのブタンを外して、縄の下で左右に開く。
さらに、ブラジャーが上にあげられて、乳房を剥き出しにされる。
そして、今度は舌先で乳首の先を絡めるように舐めあげる。
「ひんっ、ああっ──」
乳首への刺激はたまらなかった。
七生は身体をびくびくと震わせて、甲高い声をあげた。
「縛られると感じるだろう? しかも、目隠しをしていると、どこを責められるか、ぎりぎりまでわからない……。感じたくなくても感じさせられるんだ。それがマゾのエロスだよ」
七生の胸から顔を起こした真夫が今度は指で股間に触れる。
クリトリスを指で挟んで軽く動かされた。
一気に股間から脳天に突き刺さるような官能の刃が全身を貫く。
「ひんっ──」
七生は身体を突っ張らせた。
だが、その指もすぐに離れる。
「七生はマゾだ。だから、普通のセックスではそんなに快感を覚えなかったんだ。エロスに向かないわけじゃない。自信を持て」
「じ、自信と言っても……。はうっ」
言葉に応じている途中で、真夫に再び乳首を口に含まれて抽送するように吸いあげられる。
七生は痺れるような快感を覚えて、またもや声をあげた。
胸を舐められるのも、股間を愛撫されるのも経験はあるのに、こんなにも感じてしまうのは自分でも信じられない。
「七生は、縛られると、なにをされても感じて感じるいやらしい身体をしている。……というよりも、もう縛られないと物足りなくなるぞ……。キスをしたことは?」
「あ、ある……」
「なら、縛られて受ける口づけを教えてあげるよ。違いを味わうといい。舌を出して……」
再び七生の胸から顔を離した真夫が言った。
真夫の顔がお互いの息を感じるほどに接近をしたのがわかる。
七生の左右の頬に真夫の両手が添えられた。
びくりとしてしまったが、すぐに七生は舌を口から出した。
「もっとだよ……」
「あっ、はい……」
さらに舌を出す。
その七生の舌を真夫の口が柔らかく包む。ねっとりと舌と舌が絡みつき、ゆっくりと揉み動かされる。
「んあっ、あえ……」
自然に七生の口から甘い声が放たれていた。
なにこれ……?
身体が痺れる……。
まるで、溶けていくような感覚だ。
局部がかっと熱くなり、大きな疼きがやってくる。
爪先立ちの足で身体を支えてられなくなり、一瞬身体が浮く。
慌てて、身体を支え直す。
「口づけが気に入ったか?」
長い口づけから解放された。
それとともにかなりの涎が口からこぼれてしまったと思う。
でも、七生にはそれを拭う手段はない。
どんなにみっともない顔になったのだろうと考えると、ちょっと羞恥が襲う。
「わ、わからない……。だ、だけど……もっと……。エロスがわかりそうだ……。それを知ることができれば……わたしはもっと近づける……。愛の真理に近づける……。エロスに……」
七生は、喘ぎながら言った。
この快感の向こうにあるもの……。
それが七生に知りたいものである確信がする。
「エロスか……。芸術のことはわからないけど、エロスについて、俺の意見を言わせてもらえれば、エロスとは愛欲だと思う……。快感に対する剥き出しの欲望かな……」
「む、剥き出しの愛欲……?」
「そうだな。例えば、俺はいま、七生を泣かせたい。翻弄させて、凌辱したい……。それがいまの俺の剥き出しの欲望だよ」
真夫の指が七生の股間に触れた。
次の瞬間、真夫の指が亀裂を抉って挿入されてきた。
「あっ、ああっ」
七生は喘いだ。
真夫の指が上下に律動する。
ねちゃねちゃと大きな水音がした。
どれだけ、自分は蜜を股間に溢れさせているのだろうと思った。
「聞こえるね? これが愛欲だ。まだ、本格的な愛撫もしてない。それなのに、こんなに股間を濡らしているのが七生の持っている愛欲の本質だよ。君は十分に淫らだ……。縛られれば感じる……。それが七生のマゾの本質だ」
真夫の指が律動を続けながら、別の指がクリトリスに触れた。
一緒に愛撫される。
「ひああっ、ああっ」
七生は身体を硬直させた。
「俺に支配されるということは、自由を失うことだと言ったのは覚えている?」
真夫が指で股間を犯しながら言った。
七生は顔を上下に振る。
「……お、覚えている……。ああっ、ひあっ、ひああっ」
「だったら命令だ。許可なくいくことを禁止する。声もなるべく我慢するんだ。俺の命令なしに絶頂をするな。声も出すな──。限界まで我慢しろ──」
「ああっ、わ、わかった……。くあっ、あっ」
七生は頷いたが、股間の愛撫に加えて、乳首にも舌舐めを受けた。
たちまちに喘ぎ声が迸る。
「声を我慢しろと言ったぞ──」
真夫が口を離して笑う。
そして、すぐに乳首を舐め始める。
「んくっ──。わ、わかってる──。で、でも……ううううっ」
七生は必死に歯を喰いしばった。
なんとか快感に耐えようと、身体を強張らせる。
だが、どうしてこんなに感じるのだと思う程に、真夫に翻弄される。
「んんんっ、んんんん──」
懸命に声を我慢する。
だが、声を出さないようにしても、どんどんと快感が蓄積される。
それが身体の中で膨れあがる。
「ああ、あああっ」
ついに声を出してしまった。
すると、真夫が股間を愛撫している側とは反対の手を七生のお尻に触れさせる。後ろから七生の股間に触れ、指に蜜をまとわせると、すっと指をアナルに挿入してきた。
「ひいいっ──」
七生が身体をのけぞらせた。
「声を出すな──。我慢するんだ──」
強い口調で真夫が七生を叱咤する。
「う、うううっ……。だ、だめだ──。無理いいい──。もう許して──」
股間と胸とアナルへの三箇所責めに七生は哀願した。
大きなものがやってくる──。
七生は予感した。
「だめだ。七生は俺の奴婢だ──。許可なく達する自由を与えない──。もっと我慢しろ──」
真夫が強く言った。
一方で愛撫はさらに激しくなる。
膣に入っている指が股間の中のある一点を腹の方向に押しあげた。また、アナルの中の指が曲がり、押し動かされる。
その瞬間、強烈な衝撃が一気に七生に襲い掛かった。
「ひあああっ、ひいいっ、んっふううう──」
我慢しようと思ったが無理だった。
腰で強烈な快感が爆発し、快感が背骨を駆け抜けて衝撃が身体を貫く。
七生は緊縛された身体をがくがくと痙攣させて快楽を昇天させてしまった。
真夫が指を抜く。
七生ががくりと身体を脱力させた。
「許可なく達したな?」
真夫が項垂れている七生の顎を持ちあげる。
七生は荒い息をしながら、小さく頷く。
「こ、これが達する……絶頂するということか……。す、すごいな……。そして、申し訳ない……。わ、わたしは真夫の命令に従えなかった……」
「我慢しようとしたのに、無理矢理にいかされてしまう……。これもマゾの快感だ」
「マ、マゾの快感?」
「そうだ。七生はマゾだ。被虐されて感じる淫乱だ」
「わ、わたしは……マゾで……い、淫乱なのか……」
「そうだ。そして、淫乱になりきること……。究極のところ、それがエロスだ。剥き出しの愛欲だ」
「そ、そうか……。愛欲か……」
「いくのを我慢しようとするのに、他人の手で強引に絶頂する──。身体も心も自由がない。それもマゾの快感だ。次もぎりぎりまで我慢しろ……。ただし、達するときには、いくと口にするんだ」
真夫が再び七生のクリトリスを愛撫し始めた。
「ひゃん──。ま、まだするのか──」
「当たり前だろう。今度はぎりぎりまで頑張れば達してもいい。だが、いく前に口にしろ──。さあ、練習だ」
股間の中に指を挿入される。
さらに、アナルにも再び指が入ってきた。
律動が始まる。
「ひんっ、んんんんっ、んんんんっ、あああっ」
我慢しようとするが、さっき呆気なく達した膣の中の場所を再び抉られる。
艶めかしい喘ぎ声が迸り、再び一気に快感が襲い掛かった。
「あああっ、そ、そこは刺激しないで──。怖い──。ひいいいい」
愉悦の大波があっという間に襲ってきた。
前後の穴に挿入されている指二本だ──。
それがある一点をそれぞれに触れると、瞬時に快感が極限まで昂るのだ──。
怖い……。
だが、真夫は七生の哀願を無視し、むしろ執拗にそこを刺激してくる。
「あひいっ、い、いくいっ、真夫、いぐうう──。許して──。いぐうう──」
七生は顔を激しくのけぞらすと、絶頂の悲鳴を迸らせた。
真夫の命令だから、もっと我慢するつもりだったが、むしろ、あっという間に達した。
そして、二度目の絶頂は、愛撫が開始されてから達するまでの時間が一度目よりもずっと短かかったが、確実に一度目よりも快感は深かった。
七生ががくりと身体を脱力させる。
「まあいい……。いく前に口にできたのは誉めてやろう。だが、堪え性が不足だね。随分といきやすい身体だ。あんまり簡単に達し続けると、身体がそれを覚えてしまって、ちょっとした刺激で絶頂する玩具のような身体になってしまうぞ」
真夫が再び膣の中とお尻の中を刺激し始める。
七生は狼狽した。
「ま、まだ、するのか──?」
「剥き出しの愛欲を知りたいんだろう? エロスの本質を……。だったら、とことん極めないとね……。どんなものでも、本質というのは極めた先でしか理解できないものだ」
アナルを刺激され、クリトリスを揺らされながら、膣の中に入っている真夫の指が膨れている肉のしこりを押し揉むようにこすりあげた。
「そこだめええ──。あああっ……あああっ」
またもや同じ場所を責められて、まるで力を吸い取るような甘美感が駆け抜けた。
これまでも激しかったが、さらに激しくそこを刺激される。
一気に快感が昂る。
与えられる快感から逃げることができない。
「ふぐううっ、いぎますうう──。んんぐううっ」
またもや七生は呆気なく達した。
身体をがくがくと揺すって、二度三度と身体を跳ねさせる。
とにかく、信じられない。
セックスにおけるオーガズムは知っていた。だが五回のセックスでは、経験しなかったし、自分はそういう体質なのだろうと思っていた。
ましてや、真夫が口にしたようなイキやすい体質などとは、夢にも思わなかった。
だが、実際には、真夫の指だけで七生は繰り返し絶頂し続けている。
それが本当に信じられない。
しかし、一方で真夫のの口にする剥き出しの愛欲というのもわかったと思う。
確かに、これは壮絶な快感だ。
これがエロスなのだ──。
「三回連続で絶頂して信じられないという顔になったな。だが、まだこれだけでなにかを悟った気になるのは早いぞ。七生はまだ俺に犯されてもいない」
真夫がくすくすと笑い声をあげる。
そういえば、真夫は七生の身体を執拗に愛撫はするが、いまだに犯してはない。どうして、犯さないのだろう?
だが、それ以上は考えられなくなった。
真夫が、またもや膣の中の膨らみを押し揉んできたのだ。
「ああ、もういやだああ──」
七生は悶え啼いた。
自分の身体の中に、こんなにも感じやすい場所があるなんて知らなかった。
またもや、高みに押しあげられる。
腰骨まで蕩けそうな快感に、七生は縛られている身体を揺すりたてた。
だが、その快感の底から小さな異変が沸き起こった。すると、あっという間に極限状態の異変になり、七生は大きく焦った。
激しい尿意を覚えたのだ。
「あ、ああっ、ちょ、ちょっと待って──。待ってくれ──」
慌てて七生は叫んだ。
だが、考えてみれば、トイレで小尿を済ませたのは、朝起きてすぐであり、それからトイレには行っていない。
下着一枚でずっと立たされていたことを考えると、尿意が沸き起こってもおかしくはないのだ。
しかし、愛撫されたままでは、尿意を押さえるために股間に力を入れることができなのだ。
「た、頼む。待ってくれ──。な、縄を解いて──。あ、ああっ、触るのを待ってくれ──」
「どうしたんだ?」
真夫が愛撫を緩めずに訊ね返す。
「そ、その……、お、おしっこが……。も、漏れそうで……」
「ああ、そうか。わかった」
真夫が指を股間とアナルから抜く。
七生はほっとした。
しかし、真夫は七生から離れただけで、縄を解く気配がない。
それどころか、見えないものの、新しい縄をしごく音がする。
「ま。真夫?」
七生は訝しんだが、返事はない。
一方で、天井側に梁に縄がかかって、上から戻ってきた縄尻に背中が触れた。
「な、なにをするのだ……? お願いだ。おしっこが……」
「無理矢理に感じさせられるマゾの快感も少しはわかったようだから、丁度いいから、次のマゾのエロスのレッスンだ。恥ずかしいことを無理矢理にさせられる……。それを体感してもらおう」
すると、新しい縄が左膝にかかった。
ぐいと引きあがり、左腿が水平よりも高く上がってしまった。
「あっ、なんだ──? そんなあ──」
縄を解いてもらうどころか、七生が尿意の迫った身体を片脚立ちにさせられてしまったのだ。
さすがに愕然とした。
目隠しが外された。
明るい光で一瞬眼が眩む。
だが、すぐに慣れ、目の前にいる真夫の姿がうつる。
真夫は、まだ制服すら脱いでいなかった。
それに比べて、自分だけが恥ずかしい姿を晒していることに、急に羞恥を覚えてしまう。
「ま、真夫……。縄を……」
とにかく緊縛を解いてもらわなければ……。
七生は、一瞬ごとに増大する切迫する尿意に、もう一度訴えた。
すると、真夫が背中に隠していたものを七生の顔の前に見せた。
大小の数本の絵筆だった。
この部屋に置いていたものを持ってきたようだ。
嫌な予感がした。
「じゃあ、エロスを知りたい七生に羞恥の極みを味わってもらおうか。目隠しを外したのは、その七生の羞恥の姿をちゃんと見るためだ。しっかりと自分の醜態を目に焼き付けるんだよ」
真夫がにやりと笑うと、七生の前にしゃがみ込んだ。
小筆がクリトリスをくすぐり始める。
「ひあああっ」
七生は腰を引いて、必死に小筆から逃れようとした。