※この作品はR-18です。

淫魔王のいる学園【完結】   作:ドン・ドナシアン

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第21章 遊戯
120話 文オタの少女


「それって、夏目漱石のことですよね。知ってますよ。“アイ・ラブ・ユー”を日本人なら、“月がとても綺麗ですね”とでも訳すべきだと語ったんですよね」

 

「ああ、確か、それをネタにした小説を読んだことがあります──」

 

「どんな小説よ?」

 

「ライトノベルです。ええっと、ねえ……」

 

 女生徒たちの賑やかな会話が続いている。

 ひかりは、それに耳を傾けていた。

 先週から始めて、毎週水曜日と金曜日に開くことにしたサロンという名のお茶会だ。

 

 表向きの目的は、社交の練習という名目でひかりが選んだ五、六人の生徒を招待して、この学園内のハウスでお茶会をするというものなのだが、真の目的は十人の奴婢を集めなければならない真夫のために、有益な女生徒の情報を手に入れることである。

 

 今日集めたのは、全員が一年生の女子であり、先週の中間試験の発表で上位五人だった者たちだ。

 たまたま五人の全員が女生徒だったので、今回はこの五人を招待したのだが、金城光太郎として、金城財閥の後継者である御曹司ということになっているひかりのサロンの招待は、かなり貴重な場であるらしく、今回も五人の全員が招待に応じてくれた。

 

 もっとも、その五人のうちのふたりが、絹香の双子侍女の(あずさ)(なぎさ)だ。真夫の奴婢仲間であり、驚いたことにこのふたりは、侍女でありながら上位五人に入るほどの成績だったのである。

 まあ、さすがは絹香の侍女だと思った。

 

 そして、いつものように、ひかりは緊張気味の女生徒の緊張がほぐれるような雰囲気を作ると、あとはなるべく自由に彼女たちが会話をするように場を促した。

 最初は大人しかった彼女たちだが、ひかりも金城家の御曹司として、会話術のようなものには熟達している。

 こういうお茶会で、自分が聞き手になり、相手に積極的に話をさせるようにさせるのは簡単だ。

 特に、今日集まった一年生の女生徒たちは、大人しかったのは最初だけで、一度会話に花が咲けば、あとは勝手に盛りあがってくれて本当に楽だ。

 そのときだった。

 

「くっ」

 

 ひかりは思わずソファーから腰を落としそうになった。

 またもや、突然に、股間とアナルに挿入しているディルドがバイブレータとして動き出したのだ。

 脳天にまで突き抜けるかと思ったような衝撃だった。

 ひかりは、手摺りをぎゅっと握りしめて刺激に耐えながら梓を睨んだ。

 

 今日のサロンを開始してから、これで五回目くらいになるだろうか。仕掛けているのは梓である。

 淫具を装着させたのは真夫であり、その淫具の操作具を梓に渡したのも真夫だ。梓はそれを使って、このサロンが始まってから、ずっとこんな悪戯を繰り返しているのである。

 すると、その梓がほかの四人と、アイ・ラブ・ユーがなんとかだとか会話をしながら、ひかりだけに見えるように、操作具をちらりと見せた。

 そして、強弱のメモリのひとつをすっとあげるのがわかった。

 ひかりは、はっとして歯を喰いしばった。

 

「んふっ」

 

 アナルに挿入されているディルドが凄まじい振動になる。

 ひかりは、顔を紅潮させて、梓をまじまじと見る。

 すると、梓は、何食わぬ顔をして、スイッチを切った。

 ひかりは、がくりと脱力した。

 そして、女生徒たちに目をやる。

 ひかりの不自然な態度に気がついた女生徒は、梓以外にはいなさそうだ。

 崩れた姿勢を取り直す。

 その瞬間、再び二本のディルドがいきなり動き出した。しかも、ひかりの小ペニスを包んでいるペニス袋まで収縮を開始する。

 

「うむむっ」

 

 眉をひそめて、ひかりは膝を震わせた。

 いったん終わったと安心していたところの快感の直撃に、眼がくらむかと思うほどの衝撃を受けたのだ。

 はしたない声が出そうになったが、振動はすぐに止められたので、恥ずかしい目に合うことは免れた。

 再び、梓を睨むが、彼女は素知らぬ顔をしている。

 そして、操作具をスカートのポケットにそっと隠したのが見えた。

 ひかりは歯噛みした。

 

 実のところ、今日に限らず、ひかりは真夫の奴婢になって以来、ずっと股間かアナル、あるいはその両方にディルドもしくは、アナルプラグを挿入して生活をするということを続けさせられていた。

 もう十日間にもなるだろうか。

 

 もっとも、ずっとではない。

 真夫の奴婢になった当初は、全員がディルドを挿入して授業を受けるという試練を必ず数日間受けることになっているらしく、ひかりもそれを数日間やらされた。

 いつ遠隔操作で動くのかわからない淫具を挿入して、何食わぬ顔で授業を受けるというのは、恥辱的であり、また破滅的な快感であった。

 それで、すっかりとひかりも、真夫の雌奴隷に染まらされたのである。

 

 そして、その洗礼も一応は終わったのだが、今日は放課後にサロンのある日ということで、昼休みに真夫にSS研に呼び出されて、男子制服の下にブラジャー代わりに五センチ幅の白色の革ベルトを乳首の上に巻きつけられて、電磁ロックをかけられてしまったのだ。

 革ベルトには、上下にワイヤーが入っていて、ひかりが自分で指で触れることができない仕掛けになっている。

 しかも、真夫は、それを装着する前に、むず痒さを発生させるローションを乳首に塗ったのである。

 

 さらに、真夫はズボンの下にも鍵のかかるワイヤー入りの革下着をはかせたのだ。

 内側に大小の二本のディルドがあり、それそれが花芯とアナルを打ち抜いているのである。そして、そのディルドにも真夫がローションを塗ったのだった。

 小ペニスにもやはり遠隔で振動ができる革袋で包まされた。

 制服を身につけていればわからないとはいえ、淫具を挿入されている違和感と屈辱は堪らない。

 しかも、妙な痒みまであるのである。

 

 ひかりは、午後の授業のあいだの小休憩に、トイレに駆け込んで、革ベルトの上から胸を揉みあげ、ズボンの中の革の下着を越しに淫具をいじくってしまった。

 

 とにかく、真夫からは、サロンが終わって、SS研に到着したら外してやるから、それまでは外すなと厳命されていた。

 もっとも、外そうと思っても、どうやっても外せないのは、これまでの経験でよく知っている。

 耐えるしかないのだ。

 

 サロンの始まる放課後になる頃には、ひかりは頭が朦朧となるほどだった。

 加えて、下手にディルドをいじったために、性感が刺激されて、股間の中は熱い蜜があふれ出てきた。

 それでも、なんでもない態度を装って、サロンを仕切っていると、いきなり淫具が動いたのだ。

 驚いたが、訝しむ声をかけてくる女生徒たちに交じって、梓がディルドの操作具をひかりにこっそりと見せてきた。

 それで、ひかりは、悪戯をしたのが梓であることを知ったということだ。

 

 真夫には、玲子さん、恵さん、かおり、絹香、梓と渚、ひかり、明日香、そして、七生という九人の奴婢がいるが、その中で梓の立場はちょっと、ほかの女とは異なる。

 梓が真夫に嗜虐される性奴隷であることは変わらないのだが、真夫はほかの女を責める役割を、その梓にもさせるのである。

 どうやら、今日も、ひかりに仕掛けた淫具の操作具をサロンに参加する梓に渡していたようだということがわかった。

 

「だけど、その夏目漱石がアイ・ラブ・ユーを、“私はあなたを愛します”などとは、日本人は言わないので、そんなときには、“今夜は月が綺麗ですね”とでも訳しておきなさいと授業で言ったというのは、実際には根拠のない都市伝説にすぎないというのが定説なのですよ」

 

 さんざんに梓に翻弄されて、女生徒たちの会話から意識を話していたひかりの耳に明るい声が入ってきた。

 今日集まった女生徒たちの中で、一番元気な立花(たちばな)柚子(ゆずこ)という少女だ。

 童顔であり、背も低く、多分身長は百四十センチ台だと思う。高校一年生のはずなのだが、とても可愛いくて幼い顔をしているので、小学生高学年だと言われても信じてしまいそうだ。

 この柚子が一年生の成績トップであり、実のところ、真夫の奴婢候補として、ひかりは考えていたのだ。

 両親も資産家というほどではないが、A級生徒になる程度の財産持ちである。金城財閥系列の大企業の役員のひとりであり、ひかりの立場でどうにかなるというのもあったのだ。

 

 しかし、こうやって面と向かってみて、その気持ちが小さくなっていた。

 思った以上に、見た目が幼いという印象だからだ。体型もまだ未成熟の印象である。

 なんとなくだが、セックスができるような雰囲気ではない。

 

「えっ、そうなの?」

 

 柚子の言葉に問い返しをしたのは梓だ。

 この柚子はどうやら、かなりの小説好きのようだ。さっきから、文学に関するをうんちくを時々披露したりしている。

 

「そうなのです。夏目漱石がアイ・ラブ・ユーを月が綺麗ですねと訳せと言ったという文献はないのです。漱石が英語教師をしていたのは本当ですけど、その逸話を裏付ける記録はないのです」

 

「へえ……、そうなのですか?」

 

 渚だ。

 梓と同じ顔をしているのだが、性格は全く違う。どちらかというと渚は大人しく慎ましやかだ。

 梓のように、二年上級生で上流階級に属する絹香やひかりを容赦なく、嗜虐責めするようなことはしない。

 奴婢の中では一番大人しいと思う。

 そういう意味では、本来の役割である絹香の侍女っぽい。

 

「そうなんです。その話が世間に紹介されたのは、昭和五十年代のことで、某翻訳家が聞いたことがある逸話として紹介しているのが、おそらく、最初だと言われているみたいです。その翻訳家も、ある作家からから教えてもらったと書いているだけで、間違いのない逸話として書いているわけじゃないんです」

 

「ふうん。さすがが文オタの柚子ちゃんね」

 

 笑ったのは、柚子でも双子でもない女生徒だ。

 

「文オタ?」

 

 ひかりは口を挟んだ。

 

「文学オタクです。柚子ちゃんは、文学の話になれば、話が止まらなくなるんです。だから、文学オタクの柚子ちゃんなんです」

 

 その娘が笑った。

 しかし、柚子はけらけらと笑い返してきた。

 

「オタクっていい言葉ですよね。好きなことを極めているという勲章のような気がします。もっとも、あたしはそこまで本を極めてはないですけど、そうなるように頑張りたいです」

 

 柚子は明るく言った。

 

「へえ、読書好きなんだ。たとえば、最近はどんなジャンの本を読むの?」

 

 ひかりは何気なく訊ねた。

 

「……ううん……。最近ですか……。そうですねえ……。ポーリーヌ・レアージュ著の『O嬢の物語』とか、ジャン・ド・ベルグ著の『イマージュ』とかかなあ……。ところで、『イマージュ』の作者名のジャン・ド・ベルグは、作品内の男性の主人公の名前で、本当の作者は、カトリーヌ・ロブ=グリエという女優さんなんです。『O嬢の物語』のポーリーヌ・レアージュという作者名も、ドミニク・オーリーという女性作家で、彼女は女性作家は官能小説は書けないという恋人に反論する意味を込めて、その作品を書いたと言われていて……」

 

 柚子はあっけらかんと答えた。

 

「ちょっと待って──。いま、官能小説って言った?」

 

 柚子を文オタと呼んださっきの一年生が柚子に訊ねたが、ひかりもちょっとびっくりした。

 柚子があげた書物は、いずれもフランス文学小説ではあるが、確かに官能小説なのだ。

 しかも、いずれもSMがテーマの本なのである。ふたつとも、マゾヒズムの女性が作品の中心人物だ。

 興味を持ったとしても、こっそりとするもので、少なくとも、女子高生が自分が好きな本として、あっけらかんと挙げる書籍ではない気がする。

 

「それって、エッチな内容の本ってこと?」

 

 さらに、もう一人の下級生が口を挟む。

 

「うん、最近そういうのに興味があって──。あたし、嵌まってるかもしれない……。団鬼六という人が書いた『花と蛇』って小説も、ほんっとに興奮しちゃった。よくわからないんだけど、なんか変な気持ちになるの。あっ、ところで、この作品の愉快なところは、十巻で何年もの物語の印象があるのに、時系列で並べるとわずか二週間ちょっとのほどの物語になってしまうことで、そして……」

 

 愉しそうに堂々と猥談のような発言を始めた柚子に、ひかりを含めた全員がちょっと絶句してしまった。

 

「うぐうっ」

 

 そのとき、またもや突然に股間の前後のディルドが動き出した。

 梓だ──。

 ひかりは、必死に声を押し殺しながら、眉をひそめて梓を睨みつけた。

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