「あくううっ、うあああっ」
股間とアナル、そして、乳首にぶら下げられている大きな鈴が振動を再開して、欲情しきっている京子の肉体はあっという間に達しそうになる。
もう十数回も同じことを続けられているので、絶頂に達するまでの時間が短い。
身体の中には出口を求めて暴れまわっている巨大な官能の疼きがまさに暴発せんとして沸騰しているのだ。
京子は一気に絶頂しかけた。
拘束されている身体を弓なりにして、喘ぎ声をあげる。
「あっ、ああっ、ああっ、またあ……」
しかし、頭に巻かれている計測具は、精密に京子の絶頂感覚を測定し続けていて、完璧な淫具の制御により、京子に絶頂を許さない。
まさに昇天しそうだったその瞬間に、正確無比にすべての振動が停止して、またもやエクスタシーの波が引いていく。
動く床の上で強要されている苛酷な淫具付きのジョギングとジョギングの合間にやらされている測定器具を用いた連続の寸止め責めだ。
玲子の説明によれば、単純なコンピュータ制御ではなく、AIも駆使した超高性能の寸止め装置らしい。
それだけに、幾度も寸止めの責め苦を繰り返されている京子は、すでに発狂しそうな焦燥感に陥っている。
「もういやよお──。許してよお」
どうしようもない状況に追い詰められている京子は、もう恥も外聞も関係ないと思った。
停止した淫具の刺激の代わりに自ら腰や胸を動かすことで、引き下がっている絶頂感を呼び戻そうと、必死になって、腰を動した。
「ひがああ──」
だが、挿入されている淫具により股間に刺激が得られたと思ったのは束の間だった。すぐさま、股間のディルドに電流が流れて、その激痛で強引に絶頂感はキャンセルされた。
すぐに電撃は止まったものの、京子は股間に流された電撃の衝撃で、床に背中からひっくり返ってしまった。
「勝手なことはしないのよ、京子。無理に器具に逆らおうとすると、それこそ電流を流してでも強引に絶頂感は取りあげられるわ。究極的な寸止め調教装置なの。はしたないことはしないで、大人しく寸止め責めを受け入れなさい」
鉄格子の外にいるスーツ姿の工藤玲子が冷静な口調で言った。
「く、くっ……」
屈辱でかっと身体が熱くなる。
京子は歯噛みしながら、涙目で玲子を睨んだ。
「ところで、休憩は終わりよ。十二回目の運動に入りましょう」
だが、玲子は、京子の憤慨など一切無視して、壁に向かっていき、鉄格子の中の床を動かす作動パネルに触れる。
ぶんと音がして、床が動き始める。
京子の身体は一気に後ろの鉄格子に密着しそうになるが、そこに電流が流れているのはわかっている。
懸命に起きあがって、すぐに駆け足の態勢に戻る。
なんとか背中を電流の流れている鉄格子に触れさせなくて済んだ。
もう何も考えられない。
京子はただただ、必死に脚を前に進ませるだけだ。
「ああ、あん、ああ、ああっ……」
たちまちに股間とアナルのディルドが局部を刺激し、乳房が揺れ、鈴のぶら下がる乳首が上下左右に動いて、稲妻のような疼きが駆け巡りだす。
たちまちに、京子は喘ぎ声をあげてしまった。
寸止めを繰り返されている京子にとっては、それでもかなりの刺激なのだが、しかし、まったく動かない淫具だけでは疼きは走るが絶頂にまでは至らせてくれない。
それでも、快楽だけは肉体に発生し続ける。
半日を越える運動責めの強要による体力の限界もあり、あっという間に京子は追い詰められていく。
しかし、走るのをやめることも、速度を緩めることも許されない。床の速度に負けて身体を鉄格子に触れさせてしまえば、凄まじい電撃の衝撃が待っているのだ。
京子は汗みどろで疲労困憊の身体を必死に動かし続ける。
淫具による官能の刺激を受けながら……。
しかし、今回については、始まってそんなに時間が経っていないのに、突然に床の速度が緩んで、すぐに静止状態になった。
一回のサイクルで決められている二十分間には程遠いはずだが、そんなのはどうでもいい。
なにも考えられずに、京子は崩れ落ちるようにその場にしゃがみ込んだ。
「はあ、はあ、はあ……」
だが、休憩が開始するということは、またもや寸止め責めの性の拷問も始まるということだ。
京子は背中で両手を束ねて拘束されている手の拳をぎゅっと握る。
ところが、それも始まらない。
顔をあげる。
すると、鉄格子の向こうに、制服姿の真夫が訪れているのがわかった。従者生徒の白岡かおりを連れている。
「あらあら、汗びっしょりね。この玲子も冷酷で容赦ないから、大変だったでしょう? とにかく、真夫の登場よ。奴婢の挨拶をしなさいよ、先生」
鉄格子の外から京子を覗き込んで声を掛けてきたのは、白岡かおりだ。
京子はかおりを睨んだ。
「なにを言っているのよ──。あ、あたしは教師よ──。奴婢だなんて……。すぐにここから解放するんです。このままじゃあ、あなたたちは取り返しのつかないことになるのよ」
京子は怒鳴った。
すると、かおりがきょとんとしたような顔になる。
「えっ? なに言ってんのよ、先生。夕べは、あんなに赤裸々に、この真夫に服従を誓ってたじゃないのよ。忘れちゃったの?」
かおりが言った。
羞恥でかっと顔が赤くなるのがわかった。
夕べ、この部屋とは違う寝台のある別室で、真夫に犯されて、確かに京子は屈服の言葉を口にした。
でも、それは、真夫と一対一の状態だったので、まさか、かおりが知っているとは思わなかったのだ。
「まあまあ、かおりちゃん。先生も少し眠ったことで、多少は気力も戻って、奴婢になると誓ったことを後悔するような気分になってるんだろうね……。でも、先生、覚え込まされてしまった身体の悦びは忘れることはできませんよ」
鉄格子の向こうで、真夫がかおりの横に立つ。
「ば、馬鹿なことを言わないで」
「なにが馬鹿なのかわかりませんが、先生はマゾです。マゾの血が俺の奴婢になることを求めるんです。まだ、二日あります。苦痛と快感……。これを何度でも繰り返してもらいます。先生は必ず、心からの悦びとともに、俺の奴婢に留まることを望みます」
「あ、ありえません。とにかく、解放しなさい……。く、工藤さん、どうして、生徒にこんなことをさせるんです。あなたは間違ってます。こんなことはすぐにやめるんです──」
京子は大声をあげた。
「うわっ、本当に元気ねえ……。ねえ、玲子、こいつ、真夫の命令のとおりに、午前中、ずっと走らせてたんでしょう? それなのに、こんなに元気なの? もしかして、手を抜いた?」
かおりだ。
ふたりの後ろに立っている工藤玲子を振り返って、かおりが唖然としているような口調で声をかける。
一方で、玲子はこれまで通りの無表情のままだ。
それが忌々しい……。
「最後の空元気でしょうね。自分が追い詰められているのを自覚しているんでしょう。だから、余計に反撥してるのだと思うわ。それと、わたしが真夫様の命令に逆らうなどあり得ません。ご命令のとおりに、徹底的に体力と気力を削ぎ落すようにしましたよ」
玲子が冷静な口調で応じる。
「うん、そうだね。十分に京子先生は追い詰められているよ。問題ない。調教の第一歩は、思考ができないくらいに体力を削ぎ落すことだけど、すでに十分だろう。次の段階に進んでもいい」
真夫だ。
「次の段階って?」
かおりが真夫を見た。
「体力の次は、心を追い詰める……。徹底的にね。調教の王道さ。まあ、観察する限り、それもかなり進んでいるみたいだけどね。さすがは、時子婆ちゃんの開発した最新鋭の寸止め装置だよ」
真夫が笑う。
「か、勝手なことを……」
京子は歯噛みした。
しかし、玲子の言葉を完全に否定できない自分もいる。
追い詰められている……。
確かに、京子はそれを自覚しつつあった。
すでに、なにもかも限界だと思う。
これ以上、彼らの言う「調教」を継続されれば、本当に京子は、以前の京子でなくなってしまうかもしれない。
いや、すでにそうなりつつあるのかも……。
全身は立っていられないくらいにへとへとだし、本当はこうやって反論の言葉を口にするのも苦しい。
繰り返されている寸止め責めは、沸騰するほどの官能への飢餓を京子にもたらしていて、確かに完全に京子を追い詰めている。
口惜しい……。
「京子先生……、もう一度言います。先生はマゾです。先生は、俺の言いなりになって、性の嗜虐を受けることで悦びを感じる女性なんです。夕べはそれを自覚させられたはずですが、忘れてしまったのなら、何度でも先生にそれをすり込むだけです……。俺に犯されたいんじゃないですか? だったら、そう言ってください」
真夫が京子に声を掛けた。
「あ、あなた、生徒が教師を犯すなど……」
京子は絶句した。
「そうですか。でも、先生は無力です。誇りを奪われ、抵抗の手段も与えられずにいたぶられる存在です。そして、それに快感を覚えるマゾです」
「あ、あたしはマゾじゃありません──」
「いえ、マゾです。先生にマゾの悦びを教えてあげます。俺に心を委ねてください」
「い、いい加減にして──」
京子はもう一度声をあげた。
「そうですか……。ところで、玲子さん、時子婆ちゃんに開発してもらった寸止め装置の具合はどう? 京子先生は試作品の試験者一号だから、時子婆ちゃんには結果も報告しないとならないんだけど」
時子というのが誰のことかわからないが、彼らの協力者であることは確かなのだろう。
この忌々しい寸止め装置とやらは、その老齢の女性の開発?
「データはとれてます。計測されている彼女の脳波信号は、幾度も完全なオーガニズム状態の寸前に昇っては、それを低下させるということを繰り返してます。そして、オーガニズム直前までに達する速度も、その波の高さも、最初の段階よりも後になるに従って急速で、興奮度も上昇させてます。繰り返されている寸止めで京子が快感に抵抗できなくなっているというのもありますが、やはり、AIが京子の快感度合いを精密に測定して、自律的に調整されているようです」
「へえ……。あの頭のベルトだけで、そんなにすごいことができるの?」
かおりは唖然としている。
「一度は強引に電流を流して、制御装置は強引に絶頂を阻止するということまでしてます。しかしながら、数十回繰り返している中で一度も絶頂に到達してないのは明白ですね。それだけでなく、エンドルフィン反応も上昇し続けてます……。真夫様の言葉を裏付けてます」
「エンドルフィンって、なによ?」
「脳内麻薬ね。人は苦痛を耐えさせるために、耐えがたい苦痛から精神を守るために、それを麻痺させる脳内物質を発生させる仕組みになっているの。それがあるから、人は苦痛に耐えて生きていけるんだけど、この京子はかなりのエンドルフィンの放出反応が観察されるようになってきてます」
「そんなのがあるの?」
「マゾヒストの快感というやつだね。苦痛やストレスを繰り返し味わうことで脳内麻薬を発生しやすくする体質を作る。脳内麻薬は紛れもない快感だ。そうやって、人工的にエンドルフィンを発生させることを繰り返せば、やがて、苦痛やストレスをすぐに快感として感じるようになる。もちろん、実際の快感も併用してね。つまりは、苦痛と快感の区別が頭の中でつかなくなるんだ。それが科学的なマゾ調教の仕組みというわけさ」
かおりの言葉に、真夫がお道化るように応じた。
自分のことが揶揄されている……。
そのことに、京子は腹が煮えるような苦痛を覚えた。
「科学的って……。そもそも、あんた、そんなに頭よかった?」
「学年三位だよ。忘れた?」
「そうだったわ」
かおりがくすりと笑った。
だが、京子の苛々も臨界点に達した。
「い、いい加減にして──。ここから出して──」
京子はそれ以上、彼らの戯言を耳にしたくなくて絶叫した。
「わかりましたよ、先生。でも、もう少し、寸止めを味わってもらいましょう。そうですね。小一時間も続ければ、先生もかなり素直になれると思いますよ……。じゃあ、玲子さん、お願いします」
真夫が玲子を振り返る。
一時間──?
京子は絶句してしまった。
「はん──、いやっ」
だが、玲子はテーブルのパソコンに向かって操作すると、すぐに股間とアナルで淫具の振動が再開した。
しかも、かなりの振動だ。
京子は一気に快感を上昇させられる。
「ああ、ああっ、ああああ……」
乳首にぶら下げられている鈴の振動も始まる。
もうどうしようもない。
腰ががくがくと震える。
「ああ、またああ──」
しかし、またしても、ぎりぎりですべての刺激が静止してしまう。
巨大な焦燥感だけが残り、京子はもどかしさに、髪を振り乱して鳴き声をあげた。
これは、まさに拷問だ。
女にとって、これほどの屈辱と淫靡を与える拷問はあるだろうか。
京子はじりじりと身体を灼く焦れったさと、切なさに肩で息をしながら、貞操帯を装着されている裸身を悶えさせた。
「さて、先生はそのまま、少し素直になるまで、しばらく寸止め責めの調教を続けます……。ところで、玲子さんはご苦労様です。ご褒美ですよ。こっちを向いて、奴婢のポーズをしてください」
真夫が玲子に言った。
すると、寸止め責めの苦悶に潤む京子の視界に、ずっと冷徹な表情を続けていた玲子が、急に顔を赤らめて相好を崩すのが見えた。
そして、その直後の玲子の姿に、京子は唖然としてしまった。