京子は、玲子に跳びかかった。
両腕は拘束されているが、両脚は自由になっている。空手で鍛えた京子の蹴りなら、一発で気絶させられる。
残りは、真夫とかおりだが、いまここにいる三人の中で別格に強いのは玲子だけだ。
京子のように多少の武芸を極めれば、立ち振る舞いでわかるものがある。
真夫もかおりも素人だ。
股間に挿入されている淫具を動かされてしまえば終わりだが、その前に片付ける。
「うああああ──」
京子は自分を鼓舞するように叫び声をあげて、自分が粗相をしたおしっこの上で途方に暮れた感じになっている玲子に向かって踏み込む。
次いで、ありったけの力を込めて、右脚を軸にして裸身を回転させ左足で玲子の後頭部──、延髄を狙ってまわし蹴りを放った。
「うわっ」
玲子は完全に意表を突かれたみたいだ。
咄嗟に腕で防ごうとするかのような反応を示したが、もう遅い──。
蹴りが届く方がは早い──。
京子は勝ちを確信した。
しかし、京子にも誤算があった。
右脚を軸にして大きく脚を回転させたとき、股間とアナルに埋まっているディルドと、クリトリスに接触している革帯の内側の突起が股間を擦りあげ、痺れるような刺激が局部に走ったのである。
ついで、大きな乳房が揺れて、乳首に吊っている鈴を引っ張り、電撃のような疼きが胸に突き刺さる。
上下からの快感が一気に全身を席捲し、半日の焦らし責めを受けて焦燥感で暴発しそうになっていた身体に襲い掛かった。
「あくうっ」
蹴りが首に届く寸前に京子は体勢を崩してしまい、京子の蹴りは首ではなく肩に叩き込まれてしまった。
力も十分じゃない。
玲子が横に吹っ飛ばされたものの、それほどのダメージ出ないのは明白だ
「玲子──」
かおりが悲鳴のような声をあげたのが聞こえた。
一方で京子は失態に舌打ちした。
一発で玲子を気絶させられなければ、股間のディルドを動かされて、それで終わりになる。
あとはもう抵抗できない。
どうする──?
こうなったら、真夫を人質にとるか──?
しかし、そもそもどうやって……。
京子は蹴りを飛ばせる体勢で三人に向かって身構える。
「くっ、油断したわ……。さすがは、元全日本大会の優勝者ね……」
玲子が立ちあがって、真夫たちと京子のあいだに立つ。
「えっ、この京子、そんなに強いの? 学生時代は陸上部じゃないの」
玲子の後ろにいる真夫のさらに後ろに隠れているかおりだ。
「陸上は趣味のようなものね。実家は道場で、祖父の師範から物心つく前から英才教育を受けてたらしいわ」
玲子が身構えながら言った。
よく知っている……。
京子が空手の猛者であることは、この学園においてはもちろん、大学時代の友人にも語ってない。ただ、いまでも実家での修練は続けているので、腕は落ちたとは思ってない。
「残念ね。ちゃんとした状況でお相手してあげたかったわ。でも諦めなさい。逃亡なんてさせるわけないでしょう」
玲子がじわりと半歩身体を前に出す。
だが、その玲子も、たったいまの真夫との性交の余韻のせいか、脚がふらついている感じた。息も荒く、肩を上下させている。
これなら、いけるかも……。
もう一発──。
「あああっ」
だが、京子は悲鳴をあげて、その場に崩れ落ちてしまった。
花芯とアナルのディルドがバイブレータになって激しく動きだしたのである。
脳天を貫くような感覚によって、京子は膝からその場に崩れ落ちてしまった。
「あっ、ああっ、あああっ」
立ちあがろうとしたが、いままで受けた振動とは次元が違う。
腰にまったく力が入らない。
しかも、かっと股間が熱くなる。
「ああっ、おわっ、あああ……」
言葉を口にしようと思うが、口を開くと出てくるのは甲高い呻き声だけだ。
京子は完全に身体を崩してしまい、肩と頭を床につけて、腰を上にあげた格好で動けなくなってしまった。
「残念でしたね、先生。でも、ここで俺たちを倒したとしても、脱出するのは不可能だと思いますよ。地下室内のすべての部屋は、指紋登録によるロックがかかってます。開錠するには、SS研のメンバーの誰かの指が必要です」
真夫だ。
首だけ動かして、彼を見上げる。
手にスマホのようなものを持っている。それで京子のディルドを動かしたのだろう。
「あ、ああ、や、やめ……あが……はああ……」
喋ろうとするのだが、激しい刺激のため、口を開くと甘い声しか出てこず、言葉にならない。
「先生が逃げようとしたことは怒ってません。でも調教中のことですから、罪には罰が必要です。実はディルドの中には媚薬がたっぷりと入ってるんです。いま、振動とともにディルドの表面から、先生の股間の中に媚薬液をまき散らしてます。多分、股間が熱いですよね。それがしばらくすると強い痒みに変わります。それが先生への罰です」
真夫が淡々と語る。
媚薬──?
だが、確かに股間がどんどんと熱くなる。
いや、股間だけじゃない。
全身が熱い──。
「あ、ああ、な、なにを……うあっ──」
京子は目を見開いた。
ほとんど唐突という感じで、身体の芯にずしんと響いてきたのだ。
痛い──。
いや、痛いほどむず痒い感覚が一気に広がった。
バイブの刺激と重なって、急激に全身の淫情が沸騰する。
「うあああっ、あああっ、ら、らめええ──」
京子は、腰を自ら振りながら絶叫していた。
自制などできない。
凄まじい快感が全身を圧倒する。
「もう大丈夫でしょう。先生も抵抗できないはずです。俺にはわかります」
真夫の声が聞こえた。
しかし、いまの京子にはどこか遠くの場所から聞こえる気がした。
それどころじゃないのだ。
「も、申し訳ありません、真夫様。油断しました……」
玲子が真夫に向かって小さく頭をさげたのが辛うじて視界に入る。。
「いえ、思ったよりも、京子先生に体力があることに驚きました。そして、まだ抵抗の気力があることにも……。かおりちゃん、先生の両脚をこのまま固定してくれ。棚に拘束棒がある」
真夫が言った。
「はーい。玲子、ちゃんと押さえておいてね。真夫とのセックスで呆けていたのかもしれないけど、もう失敗しないでね」
「わ、わかっているわよ」
玲子がちょっとむっとした口調で京子に近づく。
「いや、失敗じゃない。わざと隙を作ってみせた。本当に逃亡を図るとは思わなかったけどね。まあ、これも調教の一環だよ」
真夫だ。
調教の一環──?
わざと隙を示した?
なにを言っているのかわからないが、もう思考することもできない。
淫具の刺激が激しさを増す。
いよいよ快感が極限を突き抜ける。
「あああ、いやああ、ああああ」
身体ががくがくと震える。
一方で、玲子が京子の身体を上から押さえたのを感じた。
両方の足首の一点を握られた。
なぜか、途端に脚の力が抜けた。
今度こそ、拘束されれば終わりだ。
京子はもがこうとするが、下肢からは力が抜けていている。
そこに、全身を異様な戦慄が駆け抜け散っていく。
アナル、局部、乳首、クリトリスの全ての性感帯が激しくバイブレーションにより刺激を受けているのだ。
「あああっ、ああっ、あっ、ああああ──」
そして、絶頂感がやってきた。
振動は続いている。
京子は蹲ったまま、全身を震わせて背中をのけ反らせた。
「はがあああ──」
だが、その瞬間、股間に電撃が流れて、頭が真っ白になる。
そういえば、寸止め装置とやらの計測具が頭に巻きついたままだ。これは絶頂感覚を計測して直前に淫具の動きを止めるわけでなく、強制的に電撃を流して無理矢理に絶頂感をキャンセルもさせるのだと思い出した。
一度、それで股間に電撃を流されて、悶絶しそうになったのを覚えている。
それが作動したのだと思った。
しかも、振動は続いている。
そのためかわからないが、そのときには一瞬で終わった電撃が流れ続けている。
「ひがあああ──」
続いている電撃のショックで身体がびくんびくんと跳ね、大きく仰向けにのけぞった。
気が遠くなる──。
「あがああ、や、やめてええ──。ああああ、あがあああ──」
京子は獣のような声をあげて全身を突っ張らせた。
電撃は終わらず、振動も続く。
途方もなく巨大なものが京子の身体を席捲した。
「んぐうううっ」
凄まじいほどの絶頂感が京子の身体を突き抜けていった。
同時に、そのまま京子は意識を失ってしまった。
「あら、この先生、おしっこ漏らしちゃったわ。貞操帯がべちょべちょ。おまけに電撃を股に流されたまま絶頂したみたい。器用ねえ……」
呆れたようなかおりの声が耳に入ってきた。
「先生、逆らえば罰……。それを身体で覚えてください」
意識を失う直前に聞こえたのは、真夫が妙に優し気な口調で語るその言葉だった……。
闇の底から京子は目を覚ました。
どのくらい気を失っていたのか……?
ディルドから電撃を流されて、さらに絶頂の衝撃により、京子が気を失ってしまったのは辛うじて記憶している。
ほんの一瞬前のことだった気がするのだが、失神していたのはほんのちょっとの時間だったのだろうか?
「んがあっ──」
しかし、次の瞬間、強い痒みが腰から背骨にかけて込みあがり、すぐに全身を衝撃が貫いた。
痒い──。
股が──。
京子はわけもわからずに、必死になって腰を振り動かした。
「んんっ、んぐっ、あがっ、がっ」
だが、口の中には球体のようなものが押し込められていて、舌が動かず言葉を喋ることができない。おそらく、ボールギャグというものだろう。
しかも、京子の首には首輪がかけられているだけでなく、その首輪が床に鎖で繋がっているらしく、顔を数センチ以上離すことができないでいた。
身体はうつ伏せになっており、膝と足首のあいだに棒上のものが挟まれている感触がある。そして、その棒状の拘束具もまた、鎖のようなもので床に繋がれている。
両腕は相変わらず背中で括られている。
つまりは、京子は口にボールギャグを嵌められて、高尻の姿勢で床に下半身と首を繋がれているのだ。
それはともかく、人の気配がない。
襲い掛かる痒みに狂いながら、必死に床に繋がっている顔を巡らす。
拘束されているのは、最後に暴れたあのSS研の地下の調教室だ。変わってない。
ただ、真夫もかおりも玲子も、別の部屋にいるのか、どこにもいない。
そして、部屋の隅に二本のディルドが突き出た革の下着と、玲子の乳首にぶら下げられていた鎖付きの鈴が二個、無造作に置かれているのが見えた。
鈴はともかく、ディルド付きの下着は大量の体液でねっとりと汚れている。
あれは、京子から外されたもの?
そういえば、股間とアナルに挿入されていたディルドの感覚がない。
だが、だからこそ、脚を開いて拘束されている京子には、ほんの少しも痒みを癒す手段がなく、京子は必死になって身体をもがかせた。
そのとき、がちゃりと部屋のどこかの扉が開いて、後ろ側から誰かが入ってきたのがわかった。
「んがあああ──」
京子は吠えるように絶叫した。
「どうですか、京子先生? 真夫から伝言ですよ。逃亡の罰として、しばらく放置だそうです。あいつがディルドからまき散らした分だけじゃなく、さらに掻痒剤を先生の股間に塗り足してたから痒いと思いますが、仕方がないので我慢してくださいね。真夫もそのうち来ると思います、でも、気紛れですからね。もしかしたら、明日の朝まで来ないかもしれません」
京子の頭側にやって来たかおりが京子を見下ろして言った。
冗談じゃない。
このまま放置など本当に狂ってしまう。ましてや、朝までなど……。
「んぐううっ、んがあああ──」
京子は懸命に無理だと訴えた。
「まあ、これに懲りたら、もう、あいつには逆らわないことですね。あいつって、人当たりは優しいですけど、結構、容赦ないですよ。しかも、なにかにつけ、受け入れることができない命令を与えて、それに逆らうことで罰を与えるんですから……。まあ、そのうち、先生もわかると思います。もしかしたら、罰を与えられることが病みつきになるかも……」
かおりがくすくすと笑う。
「んんんんっ、ああああっ」
痒みはずきんずきんと腰から全身に突き刺さる。
京子は暴れながら、あまりの痒みにぼろぼろと涙をこぼした。
「じゃあ、伝言は終わりです。それと、これは助言ですけど、次に真夫がやってきたら、全力で媚びた方がいいですよ……。それと、もうひとつ言っておきますけど、多分、先生はあいつが罰を与える口実を作るために、隙を作られたんだと思いますね。次に同じとことをすれば、もっと重い罰が待っているだけです。先生は真夫の手のひらで踊らされているだけということを知った方がいいです……。じゃあ、先生、わたし、今日は語学教室の日なんで帰りますね」
かおりがそう言い残して立ち去っていく。
すぐに背後で扉が閉じる音がするとともに、部屋の照明が消えて、真っ暗闇になった。
まさかと思ったが、本当に人の気配が完全になくなってしまった。
痒い──。
痒い──。
痒い──。
気が狂うような股間の痒み──。
京子は口の中のボールギャグを砕かんばかりに噛みながら、力の限り腰を振りながら日吠えるような声で号泣した。