「な、なにを言っているのです──。そんなこと、できるわけありません──」
京子は動顛して声をあげる。
すると、目の前の真夫がけらけらと笑った。
「心配いりませんよ。なにかするのは俺です。先生は、なにもする必要はありません。そして、できるか、できないかと言われれば、確実にできますよ。痒み責めは一昨日も、昨日も経験済みですよね。剃毛も問題ありませんよ。俺の女たちの股は、大抵が俺が剃りあげてますから、上手なものです。それで、どっちを選択するんですか?」
「そ、そんなの選べるわけ……」
冗談でじゃないと思った。
陰毛を剃られる──?
想像もしなかった辱めだ。そんなことは受け入れられるわけがない。、
そもそも、京子は陸上部の顧問として、女生徒の部員たちととともに、生徒用の大浴場で身体を洗うことも多いのだ。
困るに決まっている。
かといって、痒み責めの絶筆に尽くしがたい苦しみは、嫌という程味わった。
この坂本真夫という男子生徒は、気絶するまで苦しめると言えば、本当にそうするだろう。
京子はぞっとした。
「選べなければ、両方にしましょう。まずは、痒み責めをしてから剃毛です」
「そ、そんなことは無理です──。いやよ」
京子は激しく狼狽して、裸身を暴れさせようとした。
「あぐうっ」
だが、細い鎖で吊りあげられてるクリトリスに、針でも刺されたかのように激痛が走り、それで動けなくなる。
京子はしばらくのあいだ、痛みに歯を喰いしばった。
すると、真夫がすっと京子のクリトリスの根元に食い込んでいる金属環と天井を繋げている鎖に手を触れる。
京子はぞっとしてしまった。
「いやっ、やめて──」
動かされはしなかったが、さっきの激痛が走るのではないかと思うと、思わず悲鳴をあげてしまう。
すると、真夫がにっこりと微笑む。
「先生を従わせる手段なんていくらでもあります。この鎖をあと五センチ、いや、三センチ引きあげるだけで、先生もおそらく両方とも応じてしまうでしょう。それとも電流を流しましょうか? 先生が承諾するまで、数分というところではないでしょうか。それなのに、先生に選ばせてあげようとしてるんです。優しいものでしょう?」
「ひ、卑怯者──」
「これが最後のチャンスです。選ばないなら両方です」
「い、いやだったら──」
「それが答えですね。じゃあ、半分、半分といきましょうか。まずは半分剃ってから、痒みクリーム。それからは、じっくりと時間をかけて剃っていきます。それと、水もシャボンも使いませんので……。先生自身の愛液を石鹸水代わりにさせてもらいますね」
真夫が京子の股間の前に膝をついた。
そして、両手で京子の股間を押し広げるようにして、舌先を内側に沈み込ませてねっとりと舐め始める。
舌が下から上に動き、金属環で吊り上げられているクリトリスを弾くように舌で擦る。
間髪入れずに、今度は上から下に……。
さらに、また下から……。
「んふううっ」
京子は激しく声をあげながら、首を大きくのけぞらせた。
だが、股間だけはほとんど動かすことができない。鎖でクリトリスを引きあげられているので、ちょっとでも腰を動かせば激痛が走るのだ。
抵抗できない京子の股間に、容赦のない真夫の舌責めが加えられる。
「ああ、か、感じる──。感じちゃう──。き、気が変になる──」
「気が変になればいい。先生は調教されてるんです」
真夫が一度股間から口を離して、すぐに舌責めに戻った。
そして、片方の指先で金属環をそっと持ち、こりこりと微妙に揉みあげながら、舌でゆっくりと愛撫をしてきた。
つんと大きな快感が股間から全身に迸る。
「ああ、あああっ」
京子は首を横に振る。
敏感な場所を鎖で引きあげられての局部責めに、京子はあっという間にのっぴきならない状態まで追い詰められた。
いや、それだけじゃない。
やっぱり、京子はここに監禁される前に比べて、途方もなく敏感な身体になっている。
こんなに簡単に我を忘れるほどに感じるわけないのだ──。
「ああ、ああっ、あああ──」
あまりに激しい快感に、どうしても腰を動かしてしまい、そのたびに鋭い激痛が襲う。でも、それさえも気持ちいい。
痛いのか、気持ちいのか、それすらも、もうわからなくなる。
「先生、我慢するんですよ。簡単に達してはいけません」
真夫がちょっとだけ口を離して、股間の前でささやく。
その喋る息の風さえも、くすぐったくて京子を刺激する。
痛烈な快感の痺れが背骨に貫き、さらに脳天に達する。
我慢しようと思ったが、そんなのは無理だ。
とてもじゃないが、耐えられない──。
「さ、坂本君──、無理です──。無理いい──」
京子は完全に追い詰められてしまった。
それなのに、どんどんと快感を真夫に追加される。
とにかく、必死に奥歯を噛みしめて、真夫の命令に従い絶頂感を堰き止める。
もうなにがなんだか、わからない。
考えるのは、真夫の言葉に従うという一点だけだ。
「仕方ありませんね……。達してもいいですよ。その代わりに、先生、達するときには、“いく”と言うんです。命令です」
真夫がそう告げてから、舌責めにまた戻る。
しかも、突然に舌の動きが速くなる。
「いぐううっ、ああああっ」
なにも考えなかった。
昇天とともに、“いく”と言わないとならないと思っただけだ。
快感で頭が真っ白くなり、京子は腰だけを動かさないようにしたまま、身体をのけぞらせてぶるぶると痙攣させた。
そして、がっくりと頭を前に倒す。
脚が脱力しそうなのを必死になって爪先立ちを保持する。
「じゃあ、剃毛といきましょう」
真夫が剃刀を手にして、べっとりと愛液で濡れ裸京子の陰毛の上に刃物を滑らせた。
まとまった縮れ毛が一気に剃られる。
「ああっ、やめて──。ばかなことはやめて──」
京子ははっとして、我に返って叫んだ。
さすがに、陰毛をすべて剃り落とされるなど躊躇する。
それを許せば、正真正銘に、教師の京子がこの真夫の奴婢に成り下がったことを形にしてしまう気がしたのだ。
「動くと危ないですよ。刃物を使ってますからね」
だが、真夫はそう言っただけだ。
すぐに、剃刀で京子の陰毛を剃る作業に戻る。
「わ、わかったわ──。痒み責めを受けます──。その代わりに、そこだけは剃らないで──」
京子は意を決して言った。
痒み責めなど耐えられないのはわかっている。
でも、昨日とは異なり、こうやって、陰核を吊り上げられている状況であれば、意図的に腰を動かすことで、吊りあげられているクリトリスの激痛で痒みを忘れられると思ったのだ。
いや、そうでないとしても、股間の毛など剃られたくない──。
それは、京子の最後の自尊心の象徴のような気がした。
「へえ、そうですか? 耐えられるわけないと思いますけどね?」
真夫が顔をみあげて、きょとんとした表情を京子に向ける。
「い、いいから約束して──、あなたの言う通りにするから、あたしの股間の毛を剃るなんて、ばかなことはしないで──」
「いいでしょう。先生の言葉の通りにしましょう」
真夫がにやりと微笑む。
そして、一度立ちあがって、浮かんでいる箱を寄せて、手にしていた剃刀を置き、その代わりに筆と小瓶を取り出した。
筆を持った右手で、真夫が小鬢の蓋を開く。つんとした刺激臭が京子の背中にどっと冷や汗をかかせる。
「一昨日や昨日使った掻痒剤とは、またひと味違ったものですが、気に入るといいですね。油剤というよりは、液剤になります。これを筆でたっぷりと塗りつけていきます。即効性なのですぐに効果が表れます、多分、先生はよがり泣くどころか、本当に気を失うかもしれません」
「くっ、そ、その代わりに、や、約束よ──」
「ええ、先生の言う通りにしますよ。約束します」
真夫がいまだに絶頂の異音でひくひくとなっている京子の股間に、薬液を浸した筆先を這わせ始めた。
「あ、ああっ」
京子はその刺激に切羽詰まった悲鳴をあげた。
だが、腰を動かすことはできない。
クリトリスを鎖で吊られているのだ。
身動きできない股間に真夫の筆が襲い、その部分がいたぶられていく。
京子はしばらくのあいだ、進退窮まった感じで、ひたすらに悲鳴をあげ続けた。
そして、五分ほど経っただろうか。
クリトリスを含む局部に少なくとも十回は塗り重ねられて、いよいよ怖ろしいほどの痒みが股間に襲い掛かってきた。
いや、痒みだけじゃない。
ずどんという衝撃すら感じるほど、濃密な身体の疼きも襲い掛かってきた。
なにこれ──?
股間だけじゃなく、全身が燃えるように熱くなる。
全身が性感帯になった感じであり、身体が溶け落ちていくようだ。
「ああ、な、なにこれ? ああっ、あああ……」
股間が痒みというよりは熱い──。
いや、痒みもある……。
とにかく、苦しい……。
眼が回り、全身が脱力していく。
「辛いですよね、先生? 股間の痒みも、性感の疼きも、放っておけば、どんどんと拡大していきます。それでいて、どこまでも、全身が敏感になるので気も失えません」
真夫が言った。
その瞬間、突然にクリトリスを引っ張っていた鎖がクリトリスの根元の金属環を離れてしまった。
「えあっ?」
京子は呆気にとられた。
爪先立ちからは解放されたので、それは助かったが、痛みで紛らすことができなくなった途端に、股間の痒みが数倍の迫力とともに京子に襲い掛かる。
「もしかして、クリトリスを吊られたままなら痒みを我慢できるかもしれないと思ってましたか? あり得ませんよ。そんなことをすれば、痒みと痛みの両方でわけがわならなくなって、あっという間に失神してしまうと思いますね……。でも、先生には失神も許しません。たっぷりと、痒みに苦しんでください。失神させるような失敗は、俺はしませんので……」
「ああ、なに、なによ……。ひ、卑怯……。く、苦しい……。ああっ、く、苦しいわ──。いえ、痒い──。ああ、痒い──。熱い──」
京子はあっという間に限界まで追い詰められてしまった気がする。
そして、痒み責めを受け入れようなどと口にしたことを後悔した。
なによりも、股間の疼きが凄まじい。
痒みも我慢できない。
「あああ、離して──。ひ、ひどいわ、こんなやり方って──」
京子は、拘束された四肢を引き千切らんばかりに身体を暴れさせる。
恥も外聞も忘れた。
手足が自由なら、この場で間違いなくオナニーをしただろう。
でも、その自由も京子にはない。
「先生が選んだことですよ。とにかく、約束ですから、先生が拒否する限りは、先生の陰毛を剃ることはしません。もっとも、先生が剃ってくれと言うなら、剃るしかないですけどね」
真夫がすっと京子から距離をとる。
京子は愕然とした。
そして、この真夫がまったく約束を守るつもりがないことを悟った。
このまま放っておかれてしまえば、京子はおそらく、いくらも経たないうちに、今度は剃毛を認めてしまうに違いない。
「ひ、卑怯ものおおお──」
京子は狂ったように腰を動かしながら絶叫した。