※この作品はR-18です。

淫魔王のいる学園【完結】   作:ドン・ドナシアン

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 17話 ライバルの影

「真夫様、恵さん、こちらにおいでください」

 

 玲子さんが、なぜか小さなポーチだけを持って、真夫とあさひ姉ちゃんを隣室に導いた。

 玲子さんもあさひ姉ちゃんもすっかりと全裸であり、真夫だけが学生服を着たままだ。

 ふたりともちょっと恥ずかしそうに、両手で身体を隠しているのが可愛い。

 

 隣室は書斎のようなかたちになっていて、壁際に古風な洋書の百科事典がずらりと並び、手前には木製のアンティックな机と椅子があって、その反対の窓際側には壁から伸びた台にノートパソコンが置いてある。

 この部屋だけで、あさひ姉ちゃんのアパートと同じくらいか……。

 また、そんなことを思った。

 真夫はなんだか苦笑してしまった。

 

「もしも、お気に入りになれましたら、この部屋は真夫様たち専用にするように、ホテルの者に伝えましょうか? 学園に入るまでに限らず、外出をしたときなどに気が向いたときにいつでも使える場所として確保させておきます。真夫様には部屋のキーカードを渡しましたが、恵さん用のも準備させます。いかがです?」

 

 真夫たちのため息のようなものが聞こえたのかに、玲子さんが顔だけをこっちに向けて言った。

 

「こ、ここを?」

 

 あさひ姉ちゃんが声をあげた。

 驚いたのか、声が裏返っている。

 真夫としても、それに不平があるわけもないが、そんなことをしてもらっていいのだろうか。

 

「後で手続きしますね……」

 

 玲子さんがくすりと笑った。

 どうやら、真夫もあさひ姉ちゃんも、感情が顔に出てしまったようだ。

 次いで、玲子さんは百科事典の一番上に手を伸ばした。

 

「操作を説明します……。この上から三段目の段のどの巻でも構いませんから、まずは、一冊をちょっとだけ引いて戻してください。そして、同じ段のほかの巻をまた少し引いて戻します」

 

 玲子さんが説明をしながら、壁に並んだ本棚の百科事典を二度出したり戻したりした。

 すると、本棚が横に動いて、奥に部屋が出現した。

 

「うわあ……」

「へえ……」

 

 隠し部屋だ。

 真夫とあさひ姉ちゃんは感嘆の声をあげてしまった。

 玲子さんに続いて、中に入る……。

 

「こ、これはっ」

 

「すごい……」

 

 もう一度声をあげてしまった。

 奥にあった部屋は、さっきのソファのあった部屋と同じくらい広いのだが、いわゆる「SMルーム」だったのだ。

 天井からは鎖つきの枷がいくつも垂れているし、十字架の磔台や金具などが壁についている。一方の壁は全部棚になっていて、そこには大小さまざまなSMグッズが置かれていた。

 また、部屋の一画には、ソファーもあり、かなり大きな寝台もあった。ちょっと見ると、寝台の四隅には革ベルトが繋がっている。

 部屋の床は、絨毯が敷き詰められている場所と、タイルのような感じになっている場所などに分かれていて、タイルの方には排水のようなものもある。

 さらに奥には、一段高くなったガラス張りの場所に、やはりガラス張りの洋便器がある。

 もちろん、なんのための透明の便器なのかは想像はつく。

 

「あさひ姉ちゃん、ここにいるあいだは、あさひ姉ちゃんのトイレはあそこだよ。小さいのも、大きいのもね」

 

 真夫はすかさず言った。

 ちょっとからかっただけのつもりだったが、あさひ姉ちゃんの顔が真っ赤になり、表情が引きつったようになった。

 

「い、いやよ、真夫ちゃん。は。恥ずかしいわ。そ、それに大きいのもって……」

 

 あさひ姉ちゃんが絶句しちゃった。

 だが、こんなに恥ずかしがるなら、絶対にやらせようと思った。

 別に真夫は、あさひ姉ちゃんなら、うんちだって汚いとは思わない。

 

 そのとき、ふと横を見た。

 玲子さんがあさひ姉ちゃんと同じように、真っ赤になって真夫を凝視している。

 どうやら、玲子さんも、真夫に見られながら用を足すことを想像しちゃったみたいだ。

 真夫は何気なく壁のSMグッズに目をやった。

 ちゃんと浣腸プレイ用の道具や液剤がある。

 使ったことはないが、使えると思う。

 あとで本当にやってみようかな……と思った。

 

「ほ、本当に真夫様は、エス……なんですね……」

 

 玲子さんがぼそりと言った。

 

「もちろんですよ……。そう言ったでしょう」

 

 真夫は玲子さんの白いお尻に指を伸ばして、亀裂に指を添わせると、ちょうどお尻の穴あたりをくりくりとしてあげた。

 

「ふんんっ、ひいいっ」

 

 すると玲子さんは、こっちがびっくりするような悲鳴をあげて、その場に座り込んでしまった。

 

「大袈裟だなあ……。玲子さんって、随分と感じやすいんですね」

 

 反応の大きさに真夫は、苦笑してしまった。

 

「ち、違うの……。いえ、いえ、違うんです。な、なんですか、いまの? さ、触られたとき、なにかびりびりっとした不思議な強い疼きのようなものが……。な、なにか、したんですか?」

 

 しゃがみ込んだ玲子さんが身体を両手で隠すようにしながら、驚いた顔を真夫に向ける。

 だが、真夫も呆気にとられた。

 なにがどうしたというのだろう……?

 

「も、もしかして、玲子さんもですか? あ、あたしも真夫ちゃんに触られると、いつもびりびりってした感じになります。と、とっても、不思議な指なんです……。施設のときに、ほかにも真夫ちゃんに触ってもらった女の子もいるんですけど。その子たちはなんでもないって……。で、でも、あたしは、いつもびりびりしちゃって……。あたしだけがおかしいのかと思ってた……」

 

 そのとき、あさひ姉ちゃんが口を挟んだ。

 

 びりびり……?

 なんのこと……?

 

 真夫は首を傾げた。

 

「……そ、そうなんですか……。と、とにかく、すみませんでした……。ちょ、ちょっと驚きました。わたしは初めてだったので……」

 

 玲子さんはまだ動揺している感じで立ちあがった。

 気がつくと、いつの間にか、開いたままだった隠し扉が閉じて、こちらからはただの壁になっている。

 ただ、悪魔のような化け物が裸の美女を犯している絵が飾ってあった。

 

「この絵の額縁の横の壁に、扉を開くセンサーがあります。これを知らなければ開きませんし、真夫様と恵さんの手でしか開けられないように設定できます。誰かを監禁するときにも使えます。順に手を壁に置いてください」

 

 玲子さんが意味ありげに微笑んだ。

 真夫とあさひ姉ちゃんは、順に言われたとおりに壁に手をつけた。

 玲子さんはポーチから取り出したスマホのようなもので、なにかの操作をした。

 あっという間に、登録は完了したみたいだ。

 玲子さんは、次いで、真夫たちを寝台のある場所まで導く。

 

 玲子さんはあさひ姉ちゃんとともに、寝台のへりに腰をおろした。真夫は向かい合うようにソファに腰かけさせられた。

 

「……さ、さて、どうしましょうか……? さらに奥には浴室があります。地下から出ている温泉水を沸かしたもので、常に湯は張ってありますので、二十四時間入ることが可能です。先に身体を流した方がいいですか……?」

 

 これまで、てきぱきと真夫たちを案内してきた玲子さんが、急にどうしていいかわからなくなったように、おろおろした雰囲気になった。

 なんか面白い。

 

「身体を流すのはひと汗かいてからにしましょう。ふたりともベットにあがってください」

 

 真夫はそう言ってから、SMグッズの並んでいる棚にいき、数束の縄と幾つかの革枷を持って来た。

 玲子さんとあさひ姉ちゃんは、寝台にあがって待つ態勢になっていたが、真夫が戻ったとき、玲子さんがはっとしたように寝台から降りた。

 

「も、申しわけありません。大切なことを忘れていました。ちょっと待ってください、真夫様」

 

 玲子さんが一度立ちあがって、本棚の隠し扉の近くにあったトレイを寝台の横まで持って来た。

 そこに玲子さんは、最初に持っていたポーチを置いていたのだ。

 戻ってきた玲子さんは、ポーチの中から小さな錠剤を取り出して、あさひ姉ちゃんに手渡した。さらにトレイに載せてあったコップに水差しの水を注いで渡す。

 

「避妊ピルよ。あなたはまだ学生だから飲んでおく方がいいわ。とりあえず、一箇月分を後で手渡すわね」

 

 玲子さんがあさひ姉ちゃんに低い声で言った。

 あさひ姉ちゃんはちょっとびっくりしたみたいな顔をしたが、すぐに大人しく錠剤を飲んだ。

 玲子さんがあさひ姉ちゃんから受け取ったコップをトレイに戻す。

 

 トレイは二段になっていて、一番上には、水差しとコップがある。

 下の段には、口の広い容器やチューブがたくさんあって、さらに透明のケースに入れてある錠剤もあった。錠剤はケースの中でさらに数種類に分かれている。

 おそらく、あれは媚薬の類いだろう。ほかにも、潤滑ゼリーもあるみたいだ。

 とにかく、この部屋にはあらゆる性具が揃えられている。

 真夫は改めて思った。

 玲子さんは、上の段にあるポーチをまた取り、小さなスマホのようなものを取り出した。

 

「真夫様がわたしを受け入れることを決められたら、これを手渡すように龍蔵様に命じられていました。忘れておりました。申し訳ありません」

 

 玲子さんが真夫にそれを押しつけた。

 なんだろうと思った。

 さっきの操作具とは似ているけど、別のものだ。

 

 スマホじゃなくて、リモコン?

 

 なんとなく、その単語が頭に浮かんだが、小さな画面の表面にはなにもなかった。

 だが、真夫が握ると、なにもないと思っていた表面に、不意に画像が浮き出てきた。

 

「……すでに真夫様用に調整してあります。ほかの者が触っても、なにも映りません」

 

 玲子さんが言った。

 確かに、画面にはいくつかのボタンのような画像がある。

 

「これはなんですか?」

 

 真夫は訊ねた。

 

「わ、わたしを支配する操作具です。わたしは、これを使われて調教され、龍蔵様から逃げ出せない身体にされました」

 

 すると、玲子さんが言った。

 

「はあ?」

 

 思わず訝しむ声を出してしまった。

 

 玲子さんが真夫に説明を始めた。

 つまりは、自分の股間にはクリリングという淫具が埋め込まれていて、このリモコンで操作できる……。

 青色のボタンは小振動……。マイクロコンピューターが内蔵されていて、玲子の反応を感知し、いくにいけない微振動を延々と流し続ける。

 黄色は、中振動……。強い振動を玲子に与える刺激。

 そして、赤色は、強振動……。強制絶頂であり、これを押されると、玲子さんはどんな状態でも、大抵は一分以内に絶頂してしまう……。内蔵のコンピューターがセンサーで探知しながら、最大限の刺激を加えるので、玲子さんには抵抗不可能……。

 また、振動の解除は、一番上の白ボタンの画面に触れればいい……。

 そして、この信号は、どんなに距離があっても逃れられない。

 おそらく、地球の反対側でも衛星電波を使って追いかけてくる……。

 

 自分を苦しめる操作具について、淡々と説明する玲子さんに、真夫は唖然としてしまった。

 あさひ姉ちゃんも横でびっくりしている。

 ほかに、画面を横スライドして別の画面を出し、クリリングに電撃を流す要領も教えられた。

 

「へえ……」

 

 説明を聞き終えて、真夫はびっくりしてしまった。

 まさに、女を家畜のように支配してしまう道具と言えないだろうか。 

 また、これはこれで大した技術だ。

 真夫は、玲子さんを支配していた龍蔵という人物の力の大きさの一端を垣間見た気持ちだ。

 

 そして、できるだけ感情を押し殺したように説明する玲子さんから、真夫はこの操作具に対する、玲子さんの心からの嫌悪感のようなものも感じてしまった。

 玲子さんは、クリリングとかいうものを手術で埋め込まれて苦しんだのだろう。

 

 そして、恥辱され……。

 虐げられ……。

 脅され……。

 意思に反した快感を強要され……。

 惨めな扱いを受け……。

 ときには電撃で苦しめられ……。

 

 そうやって、玲子さんは心を支配された……。

 

 ふうん……。

 

「玲子さんのクリリングというものを操作するリモコンはほかにもあるんですか?」

 

 真夫は訊ねた。

 玲子さんは真夫の質問に驚いたようになった。

 そして、顔を曇らせた。

 どうやら、それはあまり触れられたくないことだったようだ。

 だが、しばらくして口を開いた。

 

「……あ、あと、二個あるはずです」

 

 玲子さんは言った。

 なんとなく渋々という感じだ。

 

「持っている人のひとりは龍蔵さんという方ですね? でも、もうひとりは?」

 

 訊ねた。

 何気無くした質問だった。

 だが、そのリモコンを持っている者もまた、これまで玲子さんをそうやっていたぶり続けた者ということになるのだろう。

 その人物が龍蔵という人のほかにいるのは、ちょっと不思議な感じがした。

 

 すると、玲子さんははっきりと顔色を変えた。

 どうやら、その質問は玲子さんにとっては、答えたくない質問だったようだ。

 

「教えてください……。それとも、教えるのを禁止されているのですか?」

 

 真夫は自分の口調が詰問調になっていることに気がついた。真夫が不機嫌になる理由はないのだが、真夫には、玲子さんの抱いた不安がなんとなく伝わってきたのだ。

 そのことが、なぜか真夫を不愉快にさせた。

 

「そ、そんなことはありません……。もうひとりは秀也という人です。真夫様とは同学年になる学園の生徒のひとりです……。そして……」

 

 玲子さんはそこまで言って、なにかを確かめるように一度口を閉じた。

 だが、すぐに口を開いた。

 

「……そして、龍蔵様の親族にもあたります」

 

 玲子さんは言った。

 なんとなく、それで、なぜ、秀也という学園の生徒が、玲子さんを支配する道具を持っているかがわかった。

 

「……もしかして、その秀也という人は、玲子さんの直接の調教係? あるいは、俺の前の男……?」

 

 真夫は言った。

 今度こそ、玲子さんの顔は強張った。

 どうやら、その通りだったようだ。

 

 まあ、だからといって、なんだというわけじゃないが……。

 しかし、なんとなく、ほかの男の影というのは、気持ちのいいものじゃない。

 どうやら、龍蔵という支配者は、女を他人に責めさせるのが趣味のようだが、龍蔵という支配者に関してなにも感じなかった不愉快さを秀也に対しては感じた。

 もしかしたら、それは嫉妬のような感情なのかもしれないと、真夫の冷静な部分は思った。

 

「……わかりました。だけど、もしも龍蔵さんというお方が、俺に玲子さんを譲渡するというのであれば、その秀也という人物からは金輪際、横入りされたくないですね。できれば、龍蔵さん自身の操作具でも──。この玲子さんは、言われた通りに、俺の奴婢にします。でも、それなら、俺以外の者には触れて欲しくありません」

 

 真夫はわざと大きな声で言った。

 

「そ、それは……」

 

 玲子さんは困った顔をしたが、別に真夫は玲子さんに、なにかを喋ったつもりはない。

 玲子さんには、どうにもならないことというのは承知している。

 ただ、もしかしたら、この会話を龍蔵という人が聞いているかもしれないと思ったのだ。

 さっきの玲子さんの話によれば、龍蔵という人は、玲子さんを抱く真夫をどこかで観ていると言っていた。

 それはいま観ているのかもしれないし、後で観るかもしれない。

 

「龍蔵さん、聞いていますか? 俺はあなたの指示のとおりに、あなたの奴隷にでも、道具にもなりましょう。だけど、玲子さんを操作するものが、俺以外の者にもあるのは我慢できません。玲子さんは俺専属にしてください」

 

 だが、この真夫の言葉は、龍蔵に届けたかった。

 だから、大きな声を張りあげた。

 

「ま、真夫様――」

 

 玲子さんが叫んだ。その顔は真っ青だ。

 だけど、これがなにかの機嫌を損ねることになってもいいと思った。

 真夫には、玲子さんを支配できる者がほかにもいるというのが、本当に愉快ではなかったのだ。

 

 そのとき、突然に持っていた操作具がかすかに振動した。

 真夫はびっくりした。

 

 

 “承知。その操作具以外の信号はすべて無効にした”──。

 

 

 画面に突然にその言葉が出現した。

 さすがに真夫も驚いた。

 本当に、どこかで観ているのだ……。

 

 改めて周りを見渡してしまった。

 ただ、隠しカメラのようなものは、わからない。

 

 まあいいか……。

 

「あ、あの、どうかしましたか……?」

 

 真夫の様子が突然に変化したのかもしれない。

 玲子さんは、真夫に不安そうな視線を向けている。

 

 その玲子さんに真夫は微笑みかけた。

 

「なんでもありません。ただ、龍蔵さんは、本当に玲子さんを俺だけのものにすることを承知してくれたようですね」

 

 真夫は言った。

 玲子さんはきょとんとしている。

 

 真夫は立ちあがった。

 服を脱ぐためだ。

 最初に真夫は、とりあえず、渡されたリモコンをトレイの上のポーチの横に戻した。

 そのとき、ポーチから小さな容器が落ちそうになっているのが見えた。

 なんとなく、手に取った。

 

「これは?」

 

 玲子さんを見た。

 特に理由はないが、真夫がそれに手を触れたとき、玲子さんが動揺したように思えたのだ。

 

 しかし、玲子さんは、すぐに落ち着いた感じになり、微笑んだ。

 一瞬にして、なにかに対して腹を括った……。

 そんな風に思えた。

 

「……どうというものではありません。さっきの秀也様……、いえ、秀也に渡されたものです。必要はないので使ってません」

 

 なんとなく意味ありげな感じだ。

 とにかく、真夫はその容器をポーチに戻した。

 

「あさひ姉ちゃん、少し趣向を考えていたけど、それは後にするよ。悪いけど、先に玲子さんを抱くことにする。だから、ちょっとこっちで待っていて」

 

 真夫はそう言って、寝台の上にあがり、服を脱ぎ始めた。とにかく、大きな寝台だ。三人あがっても、まだまだ余裕がある。

 一方で、あさひ姉ちゃんがにっこりと微笑んで頷いた。

 そして、寝台の隅の方に寄っていった。

 

 いずれにしても、龍蔵という人が見ているなら、まずはその人に、玲子さんが真夫のものになったということをはっきりと示したい。

 そう考えた。

 会ったばかりだが、もう玲子さんのことを真夫はすっかりと気に入ってしまっていた。

 

 だから、真夫は玲子さんを抱く。

 そして、玲子さんと真夫が、完全に心を通じ合わせるところを龍蔵に示すのだ。

 

 玲子さんと抱き合うのはこれが初めてだし、真夫には男として数多い経験があるわけでもないが、なぜか、玲子さんと真夫が完全に相性がいいということが真夫にはわかるのだ。

 ただの勘だが、絶対だ。

 

 一度抱き合えば、真夫も玲子さんも、そして、龍蔵という人も、さらに秀也も納得するはずだ。

 

 玲子さんは、真夫のものだ──。

 

 不思議だが、真夫にはその確信があった。

 

「ま、待って──」

 

 そのとき、玲子さんがびっくりしたように声をかけてきた。

 

「自分で脱がないでください。ご主人様の服の着脱は、わたしたち奴婢の役目です──。さあ、恵さんも」

 

 玲子さんが真夫に飛びついて、慌てたように真夫の服に手をかける。

 

「は、はい」

 

 すぐに、あさひ姉ちゃんもそれに倣った。

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