目が覚めたとき、京子は自分がどこにいるのか、すぐにはわからなかった。
見たこともないような広くて綺麗な場所だなと感じ、やっと夕べは、一介の女教師である京子の収入では一生縁がないような、一流ホテルのスイートルームに泊まったのだと思い出した。
SS研から解放された京子のために玲子が準備した場所であり、ここでなにを頼んでも、全て豊藤財閥が支払うという彼女の言葉を思い出し、やけくそのように、高級料理や高級ワインを注文したのを覚えている。
そして、死んだように眠った……。
「えっ? いま、何時?」
やっと、我に返った。
金曜日の夕方から拘束されて、解放されたのが日曜日の午後であり、それから、その足で、このホテルにやってきて、ひと晩を明かしたのだ。
つまりは、今日は月曜日ということになる。
慌てて、京子は飛び起きた。
授業があるのだ。
飲み慣れない高級ワインをついつい痛飲したせいか、それとも、あの三日間のSS研における調教の疲労のせいか、ここでひとりで食事とともに、ワインを飲んでいた途中からのほとんど記憶がない。
深酒をしても二日酔いにならないのは京子の体質なのだが、その代わりに、記憶が残らないことが多い。だから、覚えてないのは、京子にとっては珍しいことではないが、なんとなく寝過ぎたような感覚があったのだ。
とにかく、寝台の枕元のデジタル時計に視線を向ける。
“8:12”
「ええ──?」
思わず、ひとりで声をあげていた。
いまから、身支度をして学園のある山中までタクシーかなにかであがり、授業の準備をするには遅すぎる時刻だ。
ちょっとばかり、ワインを多く飲んだからといって、寝坊するなど──。
もしかして、目覚ましすら掛けなかったのだろうか。
そして、記憶があまりないものの、唯一、覚えているのは、火照りきる身体を持て余して、ここで狂ったように自慰を重ねたことだ。
あのSS研での三日間が京子の身体を完全に変えてしまったというのは間違いない。
もともと、性欲の強い性質ではないので、自慰などほとんどやったことはなかったが、昨日は真夫から解放されて、すぐに身体にシャワーを浴びながら自慰を行い、それから、ルームサービスで食事とお酒を頼んだあとにも、また自慰をした。それでも収まらずに、寝台に潜り込んでからも、自慰をしたと思う。
いくら自慰をしても、まったく性的満足が得られず、中途半端な焦燥感だけが残り続けるからだ。
そんなことばかりやってきたので、寝坊をしてしまったのだろうか?
寝坊するなど、滅多ないことなので、京子は蒼くなり、寝台から飛び降りた。
ふと見ると、床に身につけていたガウンやブラジャーが置き捨ててある。そして、どうやら、京子はショーツ一枚で寝てたらしい。
下着はこの部屋に備え付けてあったもので、腰の横で紐で結んで留める、いわゆる“紐パン”というやつだ。
ただ、そんな小さな布切れでも、ひと目で高級品だとわかる素材で作られていた。また、驚いたことに、部屋にあるウォーキング・クローゼットには、京子の身体のサイズにあわせた衣類や靴がそれぞれ数種類準備されてもいたのだ。
好きなように使っていいというメモも添えて──。
宿泊代にしても、食事にしても、衣類の代金にしても、どうせ豊藤の支払いだ。どんなものでも、遠慮なく消費する権利がある──。京子は開き直って、利用させてもらうことにした。
そもそも、よく考えれば、このホテルに入ったはいいが、真の意味で身体ひとつでやって来てしまったのだ。
着替えもなにも、それらを使うしか、京子には手段がないのだ。
床のガウンを拾いあげて、ガウンを身につけたときに、部屋の電話が鳴った。
『おはよう、京子。わたしよ』
てっきりフロントかと思ったが、電話の主は工藤玲子だった。
学園の理事長代理にして、豊藤の中枢近くで動く女であり、あの坂本真夫の奴婢だと自称する女性である。
「お、おはようございます」
とりあえず、返事をする。
すると、受話器の向こうからくすくすと笑う玲子の声がした。
『お寝坊さんね。とりあえず、今日は休暇の手続きをしたわ。受け持ちの授業も代行の処置済みよ。今日はゆっくりしていいわ』
「……ありがとうございます」
確かに、昨日の今日だ。
京子としても、心を落ち着ける時間は欲しい気がした。
休暇をとるなど、教師になった三年間で初めてのような気がするが、ならば、遠慮なく休ませてもらおう。
しかし、ふと、気がついた。
授業はともかく、陸上部のことがあった。
もっとも、顧問はひとりではなく、京子と同じように体育を受け持つ男子教師と二人態勢で面倒を看ているのだが、女子部員については京子が指導をしているのである。
『陸上部の方についても、問題はないわ。実家の都合で学園に戻るのが遅れたのだと説明してあるわよ。それよりも、明日はどうするのかしら? 明日も出勤してこないということなら、みんなへの説明も変えないといけないし……』
玲子が京子の心を読んだかのように、先回りをして付け加える。
とりあえず安堵した。
「明日は出ます。いえ、今日の夕方には戻りますから」
また、京子はきっぱりと言った。
明日には学園には戻る。
そのことに迷いはない。
『よかったわ。思ったよりも元気そうで……。すっかりと心が折れて、もしかしたら、学園には戻らないかもしれないということも想定していたのよ。その感じなら、新しい体育教師を探す必要はなさそうね』
「あたしの心が折れるような仕打ちをしたという自覚はあるんですね?」
京子はせめてもの腹癒せで、嫌味を込めて言葉を返す。
なにを言っても、なにをしても、所詮は彼らの手の平の上なのだという自覚はある。
あの三日間のことにしても、泣き寝入りする以外には許されないのだ。
いや、そもそも、あの三日間で京子が示した痴態は、すべて映像記録として残されているに違いない。
あれを脅迫の材料にされてしまえば、もう京子は逆らうことはできない。
そうだ……。
脅迫されれば仕方がない……。
また、あの少年に玩具のように扱われて辱められる日々が始まるのだ……。
あの真夫が言っていた……。
今度、奴婢になれば、もう一生そのままだとも……。
もしも、脅迫されるのであれば、逆らうことはできないのだ……。
京子は、だんだんと自分の振動が早鐘のように鼓動を激しくなるのを自覚した。
『でも、心配はしてなかったわ。真夫様は確信があるそうよ。あなたは、ちゃんと戻るとね……。でも、昨日の今日だったし、身体も心の疲れているだろうから、わたしの方で、目覚ましは止めておいたのよ。だから、もっと遅くまで寝ているのかと思ったけど、思ったよりも早起きで、むしろ驚いたくらいよ』
電話の向こうの玲子が小さく笑った。
目覚ましを止めた……?
玲子が勝手に?
唖然としたが、よく考えれば、ここは玲子が手配した豊藤系列のホテルだ。そんなこともできるのだろう。
また、いまの口ぶりでは、偶然に京子が目を覚ましたときに電話をしたのではなく、京子が起きるのを待って、電話をかけた?
つまりは、この部屋は監視されている?
そのことに気がついて、京子ははっとした。
「も、もしかして、この部屋を監視してるのですか?」
『真夫様が心配なさるからね。でも、いきなり肉料理に喰らいつくくらいだもの。全く問題はないわね。どんな災難があっても、食事ができるなら、心は折れないわ。安心したわ』
やっぱり、監視をされていたのだ……。
この部屋にも隠しカメラが……。
そういえば、あの学園にも、あちこちに隠しカメラを設置して、女生徒や女教師の痴態を記録していた彼女たちだ。
ホテルの部屋にも、当然に撮影されていると予想すべきだった。
夕べのことを思い出して、京子は蒼くなる。
『どうしたの? もしかして、昨日、そこで狂ったように自慰をしていたことを見られていたことに愕然とした? まあ、そんなこともあるわ。大なり小なり、全員が自覚する道よ。もう、真夫様でないと満足できなくなっているのよ。そうだったでしょう?』
玲子だ。
だが、その物言いにちょっとむっとしてしまう。
真夫たちから解放されるとき、あの少年は、京子は自ら望んで、真夫のところに戻ることについて、自身満々だった。
あんなことをしておいて、京子が自ら彼に従いにやってくるなど、とんでもないことだし、そんな風に思っているのは信じられないことだ。
無理矢理に、脅迫されるなら、ともかく……。
「……もしかして、その映像を使うつもり? 隠し撮りなんて卑怯だわ」
京子は言った。
どうせなら、言えばいいのだ。
京子の破廉恥映像を公開されたくないなら、奴婢になれと……。
もし、そうされれば、もう京子は、逆らうことはできない……。
『映像は使わないわ。というよりは消去したわ。真夫様のご指示でね』
「消去? 坂本君の指示? どういうことです?」
『さあ、どういうことかしら……。とにかく、用件を伝えるわ。リビングにそのまま移動して。テーブルの上に、預かっていた財布や身分証明書などの小物を返すわ。それと、新しい携帯電話も。財布の中身は返却の必要はないわ。当座の経費と思ってちょうだい。あるいは、迷惑料とでも』
「財布や携帯電話?」
この寝室で会話をしていたのは、部屋に備え付けのコードレス電話だ。そのまま、リビングに移動する。
確かに、京子自身の財布や持ち物が並べて置いてある。
ただし、置いてあったスマホは、新品のものだ。
とりあえず、財布をとりあげた。
ぎっりしと札束が入っている気配なので、中身を見るとびっくりした。
一万円札が百枚近く詰め込んである。
ほかにも、カードのようなものも入っていた。
『カードはプリペイドカードよ。とりあえず、一千万円は入っているわ。現金とどっちが使いやすいかわからなかったから、両方準備したけど、現金がいいなら、届けさせるわ』
「……どういうことですか? あたしは、まだ彼の支配に入るとは口にしてませんけど」
京子はむっとして言った。
だが、電話の玲子は小さく笑っただけだ。
『真夫様のご指示よ。それは迷惑料ね。それを受け取ったからと言って、なにかの代償を要求するものではないわ。まあ、三日間のお手当とでも思ってちょうだい』
「一千万円で口止めということですか?」
『代償はなしと、言ったでしょう。誰に訴えるにしても、好きにしていいわ。どこにも相手にされないだけだけどね……。それに、もしも、あなたが真夫様の奴婢になることを決心したら、それはただの支度金にしかならないということよ。むしろ、その数倍の金額が定期的に渡されるわ。使うことを要求されるお金よ。真夫様のために、自分を磨く資金としてね』
度肝を抜く話だ。
あの真夫の奴婢になることで、いくら支払うつもりなのだろう。
真夫の奴婢になることを“勝ち組”だと表現した白岡かおりのことを思い出した。
なるほど、納得だ。
「このスマホも自由にしていいと? わたしの使っていたものはどうしたんですか?」
『返納はできないわね。でも、データは全て移動させてるから、不便はないはずよ。もっとも、念のために、教育委員会に所属する個人名や、マスコミとの連絡先とか、そういうものは削除しておいたけどね』
「はあ……」
京子は溜息をついた。
なにをしてもいいとは言いながら、結局はしっかりと管理下に置いているのだと悟った。
「……とにかく、明日には出勤します」
それだけを言った。
玲子から、それ以上の話はなく、京子は電話を切った。
玲子に断言したとおり、翌日の火曜日には、京子は学園に戻った。
実家に戻っていたという連絡を玲子がしてあったこともあり、珍しく休暇をとった京子のことを訝しむ気配さえなかった。
欠勤したことを謝罪しにいった体育教師を束ねる主任教諭からは、代替えが効くように、この学園では余分に教師及び講師を集めているので、もっと定期的に休んでも大丈夫だと逆に諭されたくらいだ。
休むなどこれまで及びもつかずに、ずっと出勤している京子は、真面目過ぎると思われていたみたいだ。
とにかく、意表を突かれるくらいに、当たり前の日常が戻ってきた。
この週は、週末に「文化部発表会」が金曜日と土曜日に行われることになっていて、どちらかというと、それに向けての慌ただしい雰囲気が学園に漂っていた。
文化部発表会というだけあり、中心となるのは、各文化部ではあるが、それ以外の生徒も無関係ではない。
文化部に所属していない生徒については、各クラスごとになにかを発表したりすることを求められており、他の学校における「文化祭」のような位置づけにあるのが、毎年、六月末に開かれるこの文化部発表会なのだ。
陸上部にも文化部と掛け持ちの生徒は多く、発表会の前なので、文化部の方を優先する生徒も多い。
陸上部の女子部も、いつもの半分という感じだった。
その彼女たちも、発表会までに数日は、クラスとしての出し物の準備があるので、半々に出てくるようだ。
まあ、毎年のことなので、京子にはなにもない。
教師たちの中で、文化部の顧問になっている先生は忙しいが、京子のように運動部所属の顧問先生は、むしろ、この時期は余裕があり、それは申しわけないくらいである。
そして、火曜日の朝練において、そもそもの切っ掛けとなった北条麻美と会った。
京子のSS研での受難は、彼女はクラスメートである立花柚子が性的嗜虐を受けているのではないかという訴えから始まったのだが、週を跨いで話したときには、そんなことは全く忘れたように、あっけらかんとしていた。
また、クラス担任ではないが、一年生の保健体育を担任している京子は、立花柚子を教える機会もあったが、あの週末がなにもなかったかのように、柚子が京子に特別な態度をとることもなかったし、むしろ、向こうから話しかけてくることすらなかった。
それは、SS研にしてもそうであり、もしかして、週末のことをネタに、脅迫のようなことをされるのではないかと勘ぐっていたが、玲子の言葉のとおりに、それもなく、偶然に学園内で、坂本真夫やその従者生徒の白岡かおり、あるいは、金城光太郎という生徒とすれ違っても、向こうからは視線すら合わせてくることはなかった。
むしろ、彼らも、文化部発表会の準備のために忙しそうであり、京子はまったく相手にされてないという感じであった。
まるで、あの週末は存在すらしてなかった……。
そんな錯覚を覚えるほどの、日常が数日過ぎていった。
だが、唯一の変化があったといえば、なぜか、京子が実家で見合いをしたという噂が流れたことだ。
実家に戻り、月曜日を休んで、学園に戻ったとき、京子の近い生徒や同僚たちは、京子は随分と美しくなったと印象を受けたらしい。
元来、男っ気が皆無であり、堅物でも通っていた京子だけに、男性のお付き合いをするという印象はなく、昔ながらの見合いをするというのは、いかにも京子らしいと思わせたようだ。
それに対して、京子は否定することができず、顔を赤らめるような反応をしたそうだ。
まあ、週末に男と出会ったというのは、満更、嘘ではない。
確かに、出会ったのだ。
そして、忘れられなくなっている……。
それが、たとえ、学園内の男子生徒のひとりだとしても……。
三日耐えた……。
そして、三日間が限界だった。
あの週末に京子に受け付けられてしまった被虐性と淫乱さは、やはり、京子の心と身体を蝕み、忘れさせてはくれなかった。
自慰もした。
しかし、どうしても満足できない。
自分ではだめだと悟ったとき、京子は負けたのだと悟った。
翌日の金曜日が文化部発表会の初日だという前の夕方の木曜日──。
月曜日から数えれば、四日目になる。
その日は、どの運動部の活動もなく、陸上部もそうだった。
京子は、空いた木曜日の放課後を利用して、SS研の部室にやって来てしまった。
部室には、あのSS研に所属する女生徒たちや真夫が最後の準備に忙しくしていたが、京子の姿を認めると、真夫だけがやって来て、京子の手を掴んで、奥に連れていった。
SS研の部室の奥にある隠し扉だ。
そこから、地下のエレベータに向かう小部屋に入る。
「戻ってきましたね、先生」
エレベータを待つあいだ、京子の手を握ったまま真夫が微笑む。
「はい……。戻ってきました……。あたしを奴婢にしてください」
覚悟を決めて言った。
「わかりました。じゃあ、覚悟をしてください……。それと、ジャージを着てきたんですね。これからは禁止です。授業のときには仕方ありませんが、それ以外はちゃんと身なりを整えてください。それは、ここで脱いで」
エレベータに乗り込むと、すぐに真夫が言った。
いつも学園内ではジャージなので、当たり前のようにジャージを着ていたのだ。
とにかく、慌てて、京子は上下のジャージを脱ぐ。
しかし、あっという間にエレベータは地下に到着して、上をTシャツになり、下を膝までさげたところで、扉が開いてしまった。
真夫にどんと背中を押される。
「きゃああ──」
膝にジャージの下が絡んでいる京子は、そのまま地下側の床に倒れ込んでしまう。
真夫がその京子の両手をとった。
あっという間に後手に手錠を掛けられてしまう。
京子は、ジャージを膝までおろし、下着姿で跪くという恥ずかしい格好になった。しかも、後手手錠だ。
「先生、これがわかりますか。俺の奴婢である印です。これは首輪用ですが、四肢にもつけます。一生外れません。俺の支配の象徴です」
真夫が上半身をあげた京子に、銀色の金属環を示した。
それは知っている。
真夫の奴婢だという玲子を始め、全員の女が身につけている揃いの銀色の金属環だ。
京子も、どうやらそれが、真夫の愛人にして性奴隷である奴婢の象徴らしいということくらいは気がついていた。
「は、はい……。どうかお願いします」
真夫の奴婢になる……。
そして、辱められる……。
調教される……。
それを考えただけで、すでに下着の中がねっとりと湿ってきたことを自覚した。
「じゃあ、このまま、その場でおしっこをしてください。ジャージで俺に会いに来た罰です。それが終わったら、これを嵌めてあげましょう。さあ、そのままするんです」
「えっ?」
京子は耳を疑った。
この場で──?
下着をしたまま、ジャージを半脱ぎのままお漏らしをしろということ──?
そんな恥ずかしいことを……。
「するんです──。それだけじゃないですよ。これから想像もできないような辱めをされると覚悟してください。それが俺の奴婢になるということです。目の前でお漏らしをする罰など、生やさしいものです。さあ、始めて──」
真夫が京子を見る。
口調も表情も柔和だが、なぜか、逆らうことを許さない迫力が真夫にはあった。
京子は股間の力を抜いた。
尿意はなかったが、まったく出せないわけではない。
始めると、じょろじょろと下着の中が温かくなり、滴が奔流となって、膝に絡んだジャージを塗らし始める。
生徒の目の前でお漏らし……。
気の遠くなるような羞恥に、京子は激しい興奮を収めることができない。
ああ、奴婢になったのだ……。
京子は失禁を続けながら思った。
「みっともないですね、先生。でも、これから、先生は勝手に、おしっこも、排便もできません。常に、俺に見られながらしてもらいます。これから、死にたくなるような辱めを受け続けることになります。一生……。もう先生の許可はとりません。ただ、先生は無理矢理に、それらをやらされるだけです」
真夫が京子の唇に唇を重ねてきた。
突然のことだったが、拒もうとは思わなかった。
舌を受け入れ、自らの舌も委ねる。
排尿はすぐに終わったが、おしっこをしながら受けるキスは甘美だった。
「これまでに誰かとキスをしたことは?」
口を離すと、真夫が微笑んだ。
「こ、これが初めてです」
「そうですか。おしっこをしながらのファーストキスですね。記念のキスです。じゃあ、来てください」
首にがちゃんと金属音がした。
さっきの金属環を首に嵌められたのだと悟った。
それには細い首輪が繋がっていて、真夫がぐんと鎖を引っ張る。
真夫が歩きだしたので、慌てて立ちあがり、ついていく。
ジャージは膝から落ちて、足首に絡まったが、それを脱ぐ暇はない。京子は不自由な足下を必死に動かして、真夫を追う。
連れて行かれた部屋は、あの週末に調教され続けた大部屋だ。
だが、その部屋の真ん中に一本の縄が張ってあった。
よく見れば、たくさんの縄瘤がついている。
「とりあえず、運動をしましょう。そのジャージは脱いで、あれを跨いでください。近くまで行けばわかりますが、たっぷりと掻痒剤のクリームを塗ってあります。十往復してください。その後、犯します」
鎖で引っ張られて、縄のそばに連れて行かれる。
でも、どうして、こんなものを準備していたのか……?
京子が今日、ここに来るのを予想していた?
とりあえず、足下のジャージを蹴るようにして足首から外す。
「ほら」
真夫が京子の身につけていた下着を掴んだ。
下着は、あのホテルから持ってきた紐パンだ。なぜか、それ以外は許されない気がして、京子はずっとこの数日、それだけを身につけている。
真夫はあっという間に、それを外してしまう。
ジャージは自分で蹴って脱いだので、京子はTシャツ一枚の姿だ。
「あっ、いやっ」
股間を露出され、思わず身体を竦ませた。
あのとき、剃られた陰毛はこの三日で、薄っらと産毛のようなものは生えている。むしろ、それが恥ずかしくて、咄嗟に片膝を折って隠そうとする。
「ほら、早く──」
生尻をぴしゃりと叩かれた。
「あんっ」
その瞬間、なにか強烈な衝撃のようなものを感じて、思わず甘い声をあげた。
京子はかっと顔を赤くしてしまった。
「跨ぐんですよ」
真夫に身体を支えられ、片脚を掴まれて、強引に縄を跨がらされた。
縄は京子の腰の上くらいの高さで張ってあったが、それが京子の股間に思いきり喰い込む。
「ほら、歩いて──」
また、お尻を叩かれる。
「あんっ、は、はい……」
京子は仕方なく歩き出す。
「あっ、ああっ」
すぐに、最初に縄瘤の位置に差し掛かり、京子は身体を突っ張らせて、甘い声をあげてしまった。