「じゃあ、真夫様は部屋の中にどうぞ。玲子はここで待っててね」
日曜日ということで、病院の待合室は無人だった。
真夫が九条あゆみに連れられてやって来たのは、学園から車で一時間ほど走った場所にあるかなり遠い街の総合病院だ。
五階建ての病院施設であり、広い地積にかなり大きな駐車場があったが、真夫たちを乗せた車両は、駐車場地区ではなく、病院関係者用だと思われる地下駐車場に誘導された。
そこから、エレベーターで二階にあがり、各科の診療室や検査室が並んでいる端に到着し、そこに入ってきたのである。
五脚程の長椅子があり、あゆみが先だって、真夫をさらに奥の診療室のような場所に誘導してくれた。
同行の玲子さんと、あゆみの随行者の小萩さんは、ここで待機する感じらしい。
これからここでやるのは、真夫の精液検査だ。
「いえ、その前に確認させていただきます。失礼──」
だが、玲子さんは、あゆみを押しのけて、奥の診療室に入っていく。
「ちょ、ちょっと──」
すると、あゆみが慌てたように追いかけていった。
真夫と小萩さんも、それに続いて室内に入る。
中はがらんとしていて、隅に寝台がひとつと、まだ折り畳まれたままのパイプ椅子二脚あるだけだ。
「ここで、検査を?」
玲子さんが怪訝な顔になる。
「ここで検査はしないわ、玲子。真夫様の精液を採取するだけよ。検査機は別の場所になるわ。もともと、ここはなにも使ってない場所で、誰も近寄らないようにしているの。真夫様も恥ずかしいでしょうしね」
あゆみだ。
「なるほど。では、ここであたなが真夫様の精液採取をするのですね?」
真夫が大人しく精液検査を受ける条件は、あゆみ自らが真夫の精液採取をすることとしたのだ。
どういう反応をするのかと思ったが、二つ返事であゆみは応諾し、今日の検査になったというわけである。
「そういうことよ。わかったら出て行って。真夫様とふたりきりにさせてよ。終われば声を掛けるわ」
あゆみが言った。
真夫も口を開く。
「玲子さん、俺からも、お願いします」
「わかりました。では、なにかあれば、お叫びください」
玲子さんが頭をさげて出ていく。小萩さんも出ていき、あゆみとふたりきりになった。
あゆみが追いかけていき、こちらから鍵をかけた。
「真夫様、こっちよ」
すると、今度はもっと奥の部屋に向かう扉に真夫を誘導していく。
真夫は肩を竦める。
「奥の部屋って……。ここでやるんじゃないんですね?」
「ひとつくらい隣りの部屋に移動したって、一緒でしょう。あんたも、声とか出たら、恥ずかしいでしょうし……。あっ、わたし、つい言葉使いが乱れちゃったわね。しまったわ……」
あゆみが立ちどまってはっとした表情になる。
真夫はくすりと笑った。
昨日会ったときから、このあゆみが丁寧なお嬢様言葉を使ってるなあ思っていたら、時折、言葉が乱れることには気がついていた。
おそらく、日常的には、この砕けた言葉がいつもなのだろう。
また、ぞんざいな態度をとっているが、このあゆみが今現在、怖ろしく緊張をしていることには気がついている。
おそらく、それを隠す意味もあり、つい被った猫が脱げてしまったというところかもしれない。
「いえ、できれば、その口調でお願いします。これからセックスをしようというのに、壁があるような言葉使いも不自然でしょう。どうぞ、楽な喋り方をしてください」
「セックス? 精液採取じゃなくて?」
あゆみが振り返る。
「精液採取だけじゃなくて、セックスでしょう。俺はその気でしたけど、違うんですか? それとも、ちゃんと段階を踏んで、とりあえず、お友達から始めますか?」
真夫はちょっとお道化た。
「お友達デートも素敵だけど、確かに、奴婢の愛人契約をしたのに、もったいぶっても仕方ないわね……。じゃあ、ありがとう。もともと、こんな話し方よ。もしも、九条家の令嬢らしい口調を期待していたらごめん。まあ、言ってくれれば、そんな口調でも会話できるわよ。令嬢っぽいのも得意技よ」
「じゃあ、ざっくばらんでいこう、あゆみさん」
「わお、いいわね、それ。別に呼び捨てでもいいけどね」
あゆみが陽気な口調になり、奥に向かう部屋にいく扉を改めて開く。
そこに入り、ちょっと驚いた。
部屋は薄暗く、ピンクの照明になっていた。
病院ぽくない大きな寝台があり、部屋の真ん中に椅子がある。ただの椅子じゃない。前に膝を掛ける足台がついていて、背もたれが寝椅子に近い状態になっている、いわゆる産婦人科の「分娩椅子」というやつだ。
「もしかして、あれに座れと?」
真夫は笑ってしまった。
「そうよ。まずは裸になってね。先生のいうことには逆らわないのよ」
あゆみがあらかじめ準備してあったらしい白衣を持ってきて、身に着けているワンピースの上に着る。また、空のかごを持ってきて、真夫に手渡した。
「先生って、あゆみさんのこと?」
「今日だけはね。ところで、さっきセックスしてくれるって、言ったけど、玲子は承知? わたし、彼女に真っ最中に途中で乗り込まれたくないわ。一応、処女なのよ。見られてする趣味はないの」
「これから、見られてセックスする機会も少なくないかもしれないよ……。まあ、一応、玲子さんには、精液検査のあとで遊ぶかもしれないとは言ってる。まあ、大丈夫かな」
「それは感謝ね。小細工をすることなかったかな?」
「小細工?」
「うん、ごめんね」
あゆみがにこやかに真夫に近づき、首に抱きつくように手を回してきた。
白衣を着たあゆみが、膨らみを真夫の胸に擦り付けるように密着する。
「ぐあっ」
次の瞬間、首の後ろを突然に殴られたような感覚に陥ち、気がつくと真夫は床に倒れていた。
首にスタンガンを当てられて、強い電撃を流されたのだとわかったのは、床に倒れたまま見上げたあゆみの手に、まだ電気の火花が飛んでいるスタンガンを見たときだ。
生まれて初めて受けたスタンガンは強烈だった。
いまだに身体が痺れて動かないし、舌も回らない。
こんな感じなんだと思った。
「うーん、あとで仕返ししてもいいよ。でも、まずはわたしのターン……。あんたには、わたしの調教を受けてもらうわ……。だけど、あんたは、それでわたしに堕ちるの……。わたしはあなたの奴婢になるけど、あなたはわたしの性奴隷になるのよ……。愉しみね……」
あゆみが微笑を浮かべたまま、真夫の前にしゃがみ込む。白衣とミニスカートのあいだから、白い下着が見えたのは愛嬌か……。
真夫は自嘲気味に笑ってしまった。
すると、あゆみがスタンガンを白衣のポケットに戻し、ペンのような道具を取り出してきた。
それを真夫の首に当てる。
「くっ」
針を刺されたような痛みが首に走り、真夫は急速に意識を失ってしまった。
*
微睡みから覚醒した。
一瞬、どういう状況かわからなかった。
真夫はなにかに腰掛けていて、誰かが真夫に覆いかぶさっていた。
すぐに、覆いかぶさっていたものが人の身体だとわかった。
それが離れる。
白衣を着たあゆみの姿が視界に入った。
「気がついた? 着付け薬を打ったんだけど、大丈夫よね? 問題ないことは何度も確認したけど、頭が痛かったり、眩暈がするとかはない?」
あゆみが心配そうな表情で、真夫の顔をの覗き込んでいる。
それでわかったが、あゆみの手には、最後に首に打たれて意識を失ったときと似たようなペン型の注射器があった。
だが、色が違うので、同じものではないのだろう。
いまの物言いからすれば、最初に打たれたのが、意識を失わせる薬品が入っていて、今度は覚醒させる薬品なのかもしれない。
「……あ、頭は……痛くないないかな……。眩暈もない……。だけど、身体が熱いかも……」
ぼんやりとしていたのは覚醒後の一瞬だけだ。
だんだんと意識もはっきりとしてくる。
だが、身体が燃えるように熱かった。
それだけじゃなく、まるで無数の虫が身体を……特に股間からお尻にかけて這いまわっているような不快感がある。
それがだんだんと強くなっていく……。
「えっ?」
それで気がついた。
真夫は裸だ──。まったく全裸であり、下着一枚身に着けてない。
しかも、あの分娩椅子に座らせられており、両脚を上にあげて、大きく股を開かされている。
また、全身を革ベルトで拘束もされていた。
「ええ──?」
自分の状況に驚いて、さらに大声をあげる。
すると、あゆみがけらけらと笑いだす。
「元気そうね。よかった。だったら、思う存分に調教できるわね。身体が熱いのは、あんたを元気にする媚薬のせいよ。結構強烈ならしいから、ちょっとやそっとじゃ、勃起が収まらないかもしれないわ。そして、疼くでしょう? とってもエッチな薬らしいし、だんだんと痒くもなると思うわ」
あゆみの言葉のとおり、天井に向かって脚をあげさせられている真夫の股間では、隆々と男根が勃起をしていた。
そして、痒い──。
虫が這うような感覚は続いているが、それが痒みそのものになっていく。
「うわっ、痒い──」
真夫は身体を跳ねさせる。
だが、椅子はびくともしない。もしかしたら、この分娩椅子も床に固定されているのかもしれない。
「ふふふ、落ち着きなさい……。とりあえず、まずは射精ね。精液検査だけはやらないとならないしね」
あゆみが真夫の横に回り、操作ボタンのようなものを手をやった。
すると、脚がさらに開脚し腰全体が上昇していく。
「くあっ、痛い──。こ、これは冗談きついよ、あゆみさん──」
股が裂けるような痛みに、真夫は顔をしかめた。
やっと開脚がとまる。
すると、今度は尻が乗っている座椅子が左右に割るようにふたつに離れていく。
そして、完全に分離し、尻たぶをのせ、中心の部分はなにも載らない状態になって固定した。
「ここまでするのは初めてだけど、どの男も、このあゆみご主人様の責めには泣いて許しを乞いて、最後にはひれ伏して服従を誓ったのよ。あなたもそうなるわ」
あゆみが真夫に回り、真夫の脚のあいだに入ってきた。
そして、身体を屈め、真夫の怒張に顔を寄せながら、両手を真夫の下肢に当てて、くすぐるように指先で撫であげてくる。
「ううっ、な、なにを……」
「もちろん、精液採取よ……。そういう約束でしょう……?」
あゆみの手がついに、真夫の肉塊に触れる。
そして、両手でゆっくりと包み込むようにしごきだす。
「あっ、あっ」
思わず声が出てしまう。
炎で炙られるように痒かった股間が擦られて刺激を受けることで、快感に変わる……。
真夫は思わず顔をあげて、全身を突っ張らせる。
「……こ、これが男の人の性器……。あのクラブではこんなことしなかったし……すごい……香り……。くらくらするかも……」
一方であゆみの顔は真っ赤だ。
また、うっとりと蕩けるような表情になり、さらに、興奮した感じでもある。
すると、突然に大きく口を開けて、真夫の怒張の尖端を口に咥えてきた。
「うああっ」
舌が這いまわる。
それだけじゃなく、口全体を使って顔を動かして、激しく刺激してくる。
吸いついてもくる。
気持ちいい……。
あっという間に射精しそうになり、真夫は思わず腰に力を入れて我慢した。
そのとき、あゆみが真夫の怒張を咥えながらくすくすと笑ったと思った。
「んあああっ」
真夫は、拘束されている身体をのけ反らせて大きく呻いた。
あゆみの手がいつの間にか、お尻の後ろに回っていて、割れた座椅子の開いた部分から、指をアナルに這わせだしたのである。
しかも、クリームのような潤滑油を塗っているのか、指を入れてくる。
そして、中を揉み解すように動かしだしてきた。
さらに、お尻の中で股間側の一点を揉み出す。
突如として、一気に射精感が襲いかかった。
「うわあっ、ああっ」
真夫はついに射精をしてしまった。
二射、三射──とあゆみの口の中に精を放出する。
あゆみはしばらく、それを受けとめ、やがて、準備していた紙コップのようなものに、口で受け止めた真夫の精を入れた。
「ほほほ、ありがとう。これは検査に回すわね。でも、まだまだ、お姉さまの調教は続くわよ。覚悟してね」
あゆみがまだ紅潮した顔のまま立ちあがる。
そして、検査場に持っていくのか、真夫たちが入ってきた扉ではない、さらに奥に向かう扉に向かっていく。
真夫の視線の先で、あゆみがドアノブに手をかけて扉を開く。
「きゃああああ──」
次の瞬間、あゆみが吹っ飛ばされたように、床に仰向けに倒れた。
そこから女たちが入ってくる。
最初に入ってきたのは、スタンガンを手にしている玲子さんだ。続いて、あさひ姉ちゃん、かおりちゃんも入ってきた。さらに小萩さんだ。
「大丈夫、真夫ちゃん──」
あさひ姉ちゃんが駆けつけてきて、拘束ベルトを外しだす。
「うわっ、いい格好ねえ」
かおりちゃんだ。真夫のみっともない格好に接して、愉しそうに破顔している。
「いい機会だから、たまにはみんなの気持ちをほんのちょっとでも味わおうと思ったんだけどね。責められるのも悪くないかもしれない」
真夫は白い歯をみんなに見せる。
「京子、こいつをひん剥きなさい──。いくら、真夫様のご指示でも、もう限界──」
玲子さんは怒っているようだ。
「はい──」
京子先生がまだ倒れているあゆみに飛びかかる。
「ど、どうして……? それに、玲子は薬で眠らせとけって……」
一方で、あゆみは目を白黒させている。
「どうも、こうもないですよ、お嬢様。こんな計画、すぐに破綻すると申しあげたじゃないですか。しかも、この玲子さんに一服盛るだなんて、いくらお嬢様のご命令でも無理です。あたし、死にたくないですし」
すると、小萩さんが呆れたように、あゆみに声を掛けた。