「離しなさい──。だいだい、小萩、よくも裏切ったわね。覚悟しなさいよ──」
あゆみは、京子という背が高くて、やたらに胸が大きい女に横倒しにされて組み伏せられてしまった。
どういう状況なのか、いまだに完全には理解できないが、侍女の小萩が真夫の女たちをここに誘導したようだということだけはわかった。
とにかく、あゆみは真夫を調教しようとしていたこの病室で、逆に真夫の女たちによって捕らわれてしまったのだ。
あゆみは、京子に身体を押さえられたまま、玲子の後ろに立っている小萩を睨みつける。
「裏切りじゃないですよ。そもそも、お嬢様はこの真夫さんの奴婢になるご契約をしたのですから、これは順当というものです」
小萩はまったく悪びれる様子もない。
あゆみは歯噛みした。
「屁理屈、言うんじゃないわ──」
「いいえ、これもまたお嬢様のためです。あたしはちゃんと知っております。お嬢様の本当の性癖も。いい加減に、悪びれるのはおやめになることです」
「冗談じゃないわよ。解雇よ──。解雇──。お前なんて、解雇よ──」
「解雇してどうするのです。あたしほどお嬢様のことをご理解している女もいないというのに」
小萩がわざとらしい笑みを浮かべて、深々とお辞儀をする。
そのふざけた態度に腹が煮える。
「お、お前ねえ──」
「いいから、大人しくしなさい。真夫さんの指示よ。服を脱いでもらうわね」
すると、あゆみの身体を横倒しに押さえつけていた京子が、まずはあゆみが被っていた白衣に手をかけた。
そして、あっという間にその白衣を剥され、さらに身に着けているワンピースにまで手を掛られる。
「なにするのよ──」
あゆみは身体を捩じりその京子という女の手に噛みついてやった。
「いたああっ──。こ、このおお──」
噛みついた手を振りほどかれて、思い切り頬に平手打ちされる。
「ぐふっ」
衝撃で一瞬頭がぐらつく。
だが、掴まれていた腕は離れた。
あゆみは身体を回転させながら、その京子の胸を蹴り飛ばそうとした。
「おっと」
しかし、その脚を抱えられてしまう。
そのままうつ伏せにされて、両脚を逆海老のかたちに引っ張られる。
「痛い、痛い、痛いいいっ」
必死にもがく。
だが、京子にさらに首にも手を回され、頭と両脚を背中方向に強引に反り返らされて固められる。腕も脚で踏まれて自由を奪われた。
今度こそ完全に動けない……。
首を固められて、だんだんと息が苦しくなる。
「あぐっ……。は、離して……」
しかし、今度は完全に身体を固められて身動きできない。
それでも、あゆみは、びくともしなくなった京子の組み伏せから必死に抵抗してもがく。
「公家の令嬢さんのくせに、なんてお転婆なのよ。いい加減にしなさいよ」
玲子だ。
しゃがみ込んできて、京子が腕を回しているあゆみの首になにかを当てる。
「京子、一度離れて──」
玲子の言葉で京子が掴んでいたあゆみの首と手足を離す。
逃げるチャンスだと思って、急いで身体を起こそうとするが、次の瞬間、激痛が首から全身に向かって走るとともに、一気に身体が脱力した。
「ぐあっ」
スタンガンだ。
全身が痺れて、あゆみは再び床に横倒しになってしまった。
しかも、今度は身体に力が入らない……。
「思ったよりも、あゆみさんは元気な人だね……。わかった。予定を変更しよう……。玲子さん、そのまま気絶させてください。彼女へのお仕置きは、場所と態勢を整えてからすることにします」
真夫だ。
すでに、あゆみが拘束していた分娩椅子からも解放され、裸身に上着のようなものをかけてもらっていた。
また、両脇を若い娘が身体を支えてもらっている。
白岡かおりと、もうひとりは、真夫の年上の幼馴染の朝日奈恵だ。
真夫は下半身にはまだなにも身に着けておらず、赤黒く変色した男根が逞しく、そそり勃っていた。
かなり強い媚薬を使ったから、しばらくは勃起が収まらないだろう。
「……ねえ、あんた、ところで、それは大丈夫なの? 媚薬飲まされたんでしょう? いいの?」
「そうね。真夫ちゃん、まずは、鎮めないと……」
その両側の娘たちが心配そうに声を掛けた。
あゆみは内心で舌打ちしてしまう。
その薬で勃起させた怒張を筆でくすぐったり、指で焦らし気味に愛撫したりして、徹底的にいたぶるつもりだった……。
きっと、真夫は泣きべそをかいて、あゆみに墜ちたに違いないのに……。
実に残念だ。
本当に、本当に愉しみにしてたのに……。
「そうだね……。確かに身体が熱いし、疼きもとまらない……。先にみんなに相手をしてもらっていいかな?」
真夫は笑っている。
「あんたも馬鹿ねえ……。あえて、こいつの罠にかかってみせるだなんて。まあ、わたしたちのいつもの苦悶をちょっとでも共有してくれようという気持ちは嬉しいけどね」
かおりが嘆息する。
「それが真夫ちゃんの優しいところなのよ」
恵だ。なぜか、にこにこと笑っている。
いずれにしても、逃げないと──。
あゆみは、スタンガンで痺れさせられている身体をなんとか置きあがらせようとする。
「わかりました」
あゆみの首に玲子が手を伸ばす。
「ほごおっ」
またもや、重い衝撃が首から全身に迸る。
玲子に再びスタンガンを首に押し当てられたのだ。
全身が完全に脱力する。
「んごおっ、んぎゃああっ」
しかも、一度だけじゃなく、二度、三度と連続で電撃を押し当てられた。そのたびに、あゆみの身体はびくんびくんと跳ね踊る。
次いで、首にちくりと痛みが走った。
「じゃあ、いい夢をね」
玲子が今度は別のなにかを首に押し当ててきた。
針?
ちくりと痛みが走った。
視界が突然に消滅し、あゆみはそのまま意識を失った。
*
「んんんっ、んぐううっ」
あゆみは、もう何十回目かになる仕草で、口の中に押し込められている穴あきのボールギャグの表面の唾液をすすりあげた。
すでに、かなり長い時間、口にボールギャグを押し込められたまま逆さ吊りの状態にされており、放っておくとボールギャグの穴から垂れ落ちた唾液が鼻の穴の中に入っていき、あゆみの息を制約するのである。
「ああっ、あんっ、ああっ、真夫ちゃん、素敵──。すごいいい、すごいいいっ」
一方で、あゆみの視界の先には寝台があり、そこで真夫が代わる代わる周りの女たちと性交を繰り返している。
いまは、多分、四人目らしい朝比奈恵を抱いているところだ。
真夫と女たちの会話によれば、真夫は女を抱くときには、女を拘束して抱くと決めているのか、恵は自分の番なると、当たり前のように両腕を背中に回して、真夫の縄を受け入れた。
そして、後手縛りになり、さらに両脚を胡座縛りにされ、その状態でうつ伏せにされて、お尻側から犯され始めた。
もう十数分にはなるだろう。
拘束の手段も、やり方も女によって異なるが、共通するのは女たちはああやって、拘束されて真夫に抱かれるのを気に入っているようだということと、真夫の絶倫具合だ。
真夫が最後に女に射精するまでに、相手をする女たちは必ず複数回の絶頂に達しているが、それでも、真夫は最後に確実に精を放っていると思う。
それでも、あゆみが意識を回復したときに抱いていた京子、次のかおり、そして、いまの恵と休憩なしに続き、まだまだ元気そうだし、おそらく、その前に玲子も抱き終わっている感じだ。
それでも、衰える様子もなく、真夫は恵の股間に激しく律動を続けている。
「んぐうう、いぐううっ、真夫ちゃん──、いぐううう」
恵が五回目くらいの絶頂の兆しを示した。
縄掛けをされている彼女の脂汗まみれの身体が、胡座状態のまま限界まで反り返って震える。
「まだだよ、あさひ姉ちゃん──。次で終わるから、一緒にいこう。我慢して──」
真夫が恵の腰に股間を叩きつけながら、平手でぱんと恵の横尻を叩く。
小気味いい音が鳴るとともに、恵が泣くような声な悲鳴をあげる。
だが、痛がっているような声じゃない。
明らかに欲情している女の呻きだ。
あゆみは、ぎりぎりと口の中のボールギャグを砕かんばかりに噛みしめる。
「あれっ、眼をつぶったんじゃない?」
「さあ……。まあ、そうじゃないとしても、逆さ吊りしていると気絶しやすいから、そろそろ気合いを足しておいてもいいわね。真夫様ももう少しかかりそうですし」
かおりと玲子だ。
二人を含めて、周りの女たちは裸身にガウンをまとった格好である。
真夫との性交が終わって、ここに戻り、こうやってあゆみを見張っているのだ。
また、目の前で真夫がほかの女を抱くのに慣れっこなのか、気にする様子もなく淡々とした感じである。
「んんんんっ」
あゆみはその言葉を耳にして、すぐに首を横に振る。
長時間の逆さ吊りはあゆみの体力を奪い続け、ともすると、意識を朦朧とさせていくのは確かだが、気絶するような楽をあゆみがすることは、女たちは許さない。
あゆみの両脚の付け根に電極パッドが貼り付けられており、ちょっとでも目を閉じると、すぐに周りの女たちがパッドにコードで繋がっている電圧器にスイッチを入れて、あゆみの身体に電撃を送り込むのである。電圧器は、あゆみが逆さ吊りになっている横にある台に乗っている。
もう、幾度も電撃を加えられて、苦悶にのたうち回らされた。
「京子、五秒ほどでいいわ。やって」
玲子の無慈悲な指示が飛んだ。
「わかりました」
京子が電圧器のスイッチを押す。
「んごおおっ」
電極パッドから強い電流が迸った。
あゆみは逆さ吊りの身体を揺れ踊らせる。
そして、電流がとまる。
あゆみはぐったりとなってしまった。
「目を開けなさい。もう一度いくわよ」
かおりの叱咤が飛ぶ。
あゆみは慌てて、眼を見開いた。
「いぐううっ、もう限界いよおおお、真夫ちゃん──」
一方で寝台の恵は激しくよがり続けている。
「まだだよ。死ぬ気で我慢して、あさひ姉ちゃん」
「意地悪ううう──」
恵が真っ赤な身体を痙攣させながら、必死に歯を喰いしばる仕草をする。
真夫は愉しそうに、淡々と律動を繰り返す。
とにかく、こういう状況が延々と続いていた。
部屋はかなり広く、壁のひとつに普通のダブルベッドよりも大きな寝台がひとつあり、その上で真夫と恵が抱き合っているのであるが、そこから少し離れた場所で、あゆみは天井から繋げられた鎖付きの革枷で左右の足首を拘束され、脚を肩幅ほどに開いた格好で、頭を下にして天井からぶら下げられているのである。
両腕は背中側で腕を水平にして束ねられ、やはり革帯で拘束されてしまっている。
ここがどこなのかわからないし、あの病院で注射によって気絶させられた後、どうやってここまで運ばれたのかもわからない。
意識を戻してみると、この部屋の床に横たえられており、そのときにはすでに両腕は背中で拘束されていたのである。
そして、すぐに両足首をそれぞれに天井に引きあげられて、いまの逆さ開脚吊りの状態にされてしまったというわけだ。
抗議の言葉を喚こうとしたら、ボールギャグを嵌められてしまった。
それから、多分、一時間近く過ぎている思う。
小萩は最初からいなかった。あゆみを真夫たちに引き渡して、どこかに行ったのだろう。
あいつめ……。
自分がどんなに惨めな格好であるかは、壁の四隅に大きな鏡があり、あゆみが顔を向けている正面の壁の鏡にも、あゆみの姿がうつっているのでわかる。
ストッキングはここで覚醒したときにはなくなっていて、生脚がスカートから剥き出しのなのだが、逆さ吊りのため、スカートはまくれかえり、白い下着がすっかりと露わになっているのである。
この格好でずっと放置だ。
なんという屈辱的な格好なのだろう。
あゆみは、ぎりぎりとボールギャグを噛みしめた。
「ふふふ、もしかして、あんた、真夫がわたしたちを抱くのを見続けて、欲情している? 下着にいつの間にか丸い染みができてるわよ」
そのときだった。
急に立ちあがったかおりがあゆみに近づき、揶揄うような言葉をかけてきたのだ。
あゆみの下着の股部分は、立ちあがった彼女が見下ろす位置だ。
「んぐううっ」
そんな馬鹿なことあるものか──。
あゆみは首を振って否定する。
「あら、本当ね」
「まあ」
すると、玲子と京子もやってきて、近くからしけしげとあゆみの下着を覗いてくる。
「んんんっ」
あゆみは、羞恥がかっと込みあがった。