いつまで経っても、真夫たちはなかなか姿を見せなかった。
夜とはいっても、まだ早い時間である。
公園の遊歩道も、まばらではあるが、それなりに人通りもある。
犬の散歩だったり、ジョギングをしたり、あるいは公園を横切ってただ通り過ぎる経路として使う通行人とか、とにかくいろいろだ。
あゆみが取り残されてしまった公園灯は、公園の外壁に近い奥まった樹木に囲まれた場所だったが、明るい灯の真下なので、どうしても目立ってしまう。
だから、遊歩道側に背を向けるように立っていようと思ったが、ふたつの手錠を使って、灯のポールに両手を背中側で拘束されているので、そうすると手錠を見られてしまうことになる。
仕方なく、あゆみは両手の手錠をポールの後ろに隠して、遊歩道側に身体を晒すように立っているのだ。
そんなには多くはないが、通り過ぎていく者たちは当然にあゆみの姿に身性を向けてくる。
なにしろ、異様なほどに短いワンピースから生脚を剥き出しにした女が汗びっしょりの姿で身体を震わせながら立っているのだ。
便意だけでなく、前後で振動する淫具と戦うあゆみの姿は、他人からはさぞや滑稽に違いない。
こんな目にあゆみを遭わせている真夫を恨めしく思った。
「くっ、ううっ、ゆ、許さないからね、あの変態少年……」
あゆみは後ろ手の拳を力一杯に握りしめながら呟く。
便意も、淫具の振動も、あゆみをとことん追い詰めていった。
あゆみは、俯いて歯を喰いしばりながら、必死で真夫たちが戻るのを待ち続ける。
「おっ、こんなところで、なにしてんだ、あんた?」
そのときだった。
急に前から声を掛けられて、あゆみは驚いて顔をあげた。
はっとした。
三十前後の男たちふたりだ。
酒が入っているのか、ふたりとも身体から酒の匂いがする。
「な、なによ、あんたたち? 放っておいてよ」
あゆみはふたりを睨みつけた。
「随分と可愛いねえ。よければ、カラオケでもいかねえか?」
「奢るぜ。ちょっとばかりいいだろう」
「行かないわよ。人を待っているのよ。もうあっちに行って──」
あゆみはきっぱりと言った。
顔立ちがよく、スタイルもいいあゆみは、実家の京都では旧公家という権威に守られているが、こっちで大学や街に出れば、いまのように男たちから声を掛けられるのは日常茶飯事である。
しつこい誘いを手っ取り早く追い払うには、強気に拒絶するのが一番だということは経験で知っていた。
それはともかく、いまでもスカートの中では荒々しい便意が襲い続け、前後で淫具が振動をしている。口を開けば、声におかしな嬌声が混ざりそうで怖い。
なによ、こいつら……。
さっさとどっかに行け──。
「随分ときれいな脚だなあ。なあ、
だが、この男たちは随分としつこかった。
そして、唖然とすることに、ひとりがあゆみの前にしゃがみ込み、スカートを下から覗くような仕草をしてきた。
あゆみは仰天した。
「ち、近寄るんじゃないわちよ──。警察、呼ぶわよ──」
怒鳴りつける。
「へえ……。警察を呼ぶのかい? いいぜ、呼びな。だけど、そのときには、あんたも説明しないとならないな。そのポールに手錠で繋げられんだろう?」
しゃがんでいた男が急に立ちあがって、いきなりあゆみの背中に手を伸ばしてきた。
「きゃあ、なによ──」
逃げようとするが、手錠で繋げられているのでそれもできない。
その男は、拘束されているあゆみの手錠を掴んで、後ろに引っ張った。あゆみは背中をポールに押しつけられたかたちになる。
男の息が顔にかかるほどに接近した。
さすがに全身に恐怖が走る。
「いやいや──。離して──」
「うわっ、なんだ、それ? なあ、あんた、なんでこんなことしてんの? 本当に手錠じゃねえかい。警察呼んでやるよ」
もうひとりが大笑いした。
そして、本気なのか、揶揄うだけなのかわからないが、内ポケットからスマホを出して、どこかに連絡をする素振りをする。
「ちょ、ちょっと放っておいてって、言ってるでしょう──。どこか行きなさいよ──」
「じゃあ、なんで手錠を掛けられてんだよ」
「う、うるさいったら──。こ、これはプレイよ──」
「プレイ?」
ふたりがげらげらと笑う。
あゆみは歯を喰いしばりながら、顔を俯かせる。
「プレイかい。じゃあ、なにをされてもいいんだよな? そういう遊びだろう?」
背中側で手錠を掴んでいた男があゆみのスカートの裾の前側を握る。
あゆみは驚愕した。
「おい、待て。ゆっくりとやってくれ……。SNSにあげようぜ」
もうひとりがスマホを構える。
録画だ──。
撮影するの──?
「ふざけないで──。やめなさい」
あゆみは必死でスカートから男の手を振りほどこうとするが、拘束されているのでできない。
とにかく、スカートの中を隠そうと、片方の足を曲げてあげる。
「ほらほら、もっと抵抗しな。さもないと、スカートあげちまうぞ」
「抵抗しても、まくるけどな」
「やめなさい──。スカートに触らないで──」
あゆみは悲鳴をあげた。
「そこまでだね」
そのとき、やっと真夫が現れた。いつの間にか、あゆみの正面側の男ふたりの背中側に立っていた。
ひとりだ。
ほかの女たちはいない。
よく見ると、息が荒いし、額にちょっと汗をかいている。もしかして、慌てて走ってきたのだろうか。
また、前後で暴れ続けていた淫具の振動がとまる。
それについてはほっとして、思わず脱力しかけた。
「ほんと、ごめんなさい。ちょっと調子に乗りすぎたかな……。最初に俺を襲ったお仕置きにちょっとばかり怖がらせようと思ったけど、ここまで危ない目に遭わせるつもりはなかったんだけよね」
真夫が申し訳なさそうに言った。
一方で、ふたりの男は突然の真夫の登場に驚いた顔をしたが、すぐに怒りで顔を真っ赤にあっせた。
「な、なんだ、小僧?」
「見た通り取り込み中だ。どっかに行きな」
ふたりが真夫に向かって振り返る。
さらに、興奮した状態のまま、真夫に掴みかかるような仕草を見せた。
「真夫さん──」
あゆみは声をあげた。
だが、真夫と視線を合わせた途端に、男ふたりは突然に気が抜けたみたいになって、なぜか棒立ちになってしまった。
真夫の身体を掴もうとしていた腕も、いまは力なく体側にだらんとなっている。
また、こっちからは半身になったひとりの男の横顔しか表情がわからないが、表情を失った能面のような顔だ。もうひとりはこっちに完全に背を向けているので、まったく顔は見えないが、ふたりとも突然に大人しくなり、ぼうっとなっている。
えっ?
なにかしたの?
あゆみは当惑した。
「怖かったですか、あゆみさん。でもスリルはあったでしょう?」
真夫がスマホを構えていた男からそれを取りあげる。
だが、それについても、どちらの男も抗議もしなければ、抵抗もしない。ただ、真夫がスマホを操作するがままに任せている。
これは異常だ。
どうして?
だが、真夫がスマホを返して、ぽんとふたりの肩を叩くと、まるで憑き物でも落ちた感じで、そのまま無言でふたりとも立ち去っていく。
あゆみは呆気にとられた。
「いまのは、どういうことなの?」
ふたりが完全にいなくなると、あゆみはやっと我に返って真夫に訊ねた。
「気にしないでください。大丈夫ですよ。いまのことは男たちの記憶にも残ってません。撮影もされてませんでした。まあ、柚子が向こうで改めて点検してくれると思いますけどね……」
「柚子って?」
「あゆみさんの先輩奴婢ですね。歳は下ですけど。学園の一年生です」
「一年生って……。近くにいるの?」
「みんないますよ。頼んで遠巻きにしているだけです……。だけど、さっきは危険はないからって大見栄切って、ひとりでここにきて……。それで、あいつらに掴まれそうになってしまったんだから、あとでまた玲子さんやあさひ姉ちゃんに叱られるかなあ」
真夫が頭を掻く。
意味不明だ。
どういうこと?
「それよりも、あゆみさん、そろそろ便意が限界なんじゃないですか?」
真夫がポケットからふたつの鍵を出してあゆみに見せる。
あゆみは、はっとした。
「早く、外して、トイレに──」
すでに切羽詰まっている。
あゆみは声をあげた。
「わかりました。じゃあ、準備をしましょう。まずは貞操帯を外しますか」
真夫がミニスカートに手を伸ばしてきた。
「ちょっ、ちょっ、ちょっと待ってよ」
反射的に、あゆみは身体をよじる。
いま便意を辛うじて我慢できるのは、アナルにアナルストッパ―を押し込まれているからだ。
貞操帯を外されるということは、それも抜かれるということに違いない。
そんなことをされれば、この場で大便を漏らしてしまうだろう──。
「どうしてですか? 外さないと出せないよ」
「い、いまは外さないで──。トイレで外して──」
あゆみは悲鳴をあげた。
「いいや、外すのはここでだよ」
貞操帯の電子ロックが解除されたのがわかった。
がちゃんと音がして、貞操帯の締めつけが緩んだのだ。
真夫が貞操帯を持って、ディルドとアナルストッパ―を引き抜いていく。
排便の恐怖でどっと背中にが冷たくなる。
まだ、両手は手錠で公園灯のポールに繋げられたままだ。
抵抗はできない。
「くうっ」
あゆみは歯を喰いしばる。
やがて、完全に後ろのアナルストッパ―も引き抜かれた。
懸命にお尻の筋肉を締めつける。
「これは置いていきましょう。もう必要ありませんし」
真夫が少し離れた位置にある木製のベンチの上に、あゆみから引き抜いたばかりのディルド付きの貞操帯を放る。
「なに言ってんのよ。置いていくな、あほっ」
自分が汚した淫具をあのまま置いていくなんて冗談じゃない。
一方で、真夫がやっと、あゆみが公園灯のポールに巻かれて嵌めていた手錠を外した。二本の手錠で繋がっていたが、とりあえず、その接続を外したのだ。
まだ手首に手錠は残っているが、あゆみは真夫の手を振りほどき、慌てて貞操帯をベンチの上から回収した。
すると、がちゃんと音がして、左手首に残っていた手錠の反対側をベンチに繋げられてしまった。
あゆみは唖然とした。
「なによ? どうして、また嵌めたのよ?」
なんのことはない。
やっと公園灯から離れられたのに、今度はベンチの背もたれと繋げられてしまったのだ。
しっかりと、ベンチの背もたれの縦材に掛かったので、今度はベンチから離れられなくなってしまった。
あゆみは、呆然と真夫を見た。
「トイレに行きたければ、ここで裸になってください。さもなければ、ここですることになります」
「ど、どうしてよ。なんで、トイレに行くのに、裸になるのよ」
「隠れていますけど、ちゃんと俺の女たちが周りを見張ってます。裸になっても、ほかの人に見られることなく、トイレには行けます。どうやって、人が近寄らないようにしているかは教えませんけどね」
「答えになってないわよ──。い、いやよ──。こんなところで、裸になんてなれない──。この公園のトイレって、どこにあるのよ」
あゆみには、このあたりの土地勘はないので、当然に、ここの公園のことは知らない。
裸になったとして、どれだけ移動しなければならないのか。
人が来ないようにしているって、どういうことなのか──。
いや、どっちにしたって、ここで全裸になって、公園を歩くなど不可能だ。真夜中でもない。まだかなりの人間がいる公園だ。真夜中でも無理だが……。
「む、無理よ」
「わかりました。それがあゆみさんの選択なら、それでいいでしょう」
すると、真夫がぱちんと指を鳴らした。
えっ?
なぜか、突然に身体が硬直したように動かなくなる。
どうして──?
どういうこと──?
まるで金縛りになったかのようだ。
口も舌も動かないので、声さえ出せない。
催眠術?
いや、そんなものじゃない。
まるで魔法にでもかけられたみたいに、突如として身体が動かなくなった。
あゆみはどっと背中に冷たいものを感じた。
「じゃあ、限界まで頑張れるようにおまじないです」
真夫がポケットから一個のイチヂク浣腸を取り出して、あゆみの顔の前に示した。
あゆみ眼を見張る。
まさか──。
だが、そのまさかだった。
真夫はあゆみの目の前でイチジク浣腸のキャップを外して準備を整え、なぜか身体が動かないあゆみの背後にまわって、お尻にイチジク浣腸の先端を差し入れた。
じゅるじゅると薬液が注入される。
ただでさえ限界に陥っているところに、追加の薬液だ。
あゆみは全身の肌を粟立たせてしまった。
「トイレに行きたくなったら、服を脱いでください。それか、ここで排便するかです」
真夫が再び指を鳴らす。
金縛りがなくなり、身体が自由を取り戻したのがわかった。
それはともかく、いまはこの便意だ。
追加の薬液まで注がれてしまったあゆみは、もう体裁に構っている余裕はない。
「こ、この鬼──。あんた、どこまで鬼畜なのよ──。トイレよ。もう漏れるの──。トイレに行かせて──。お願いだから」
「だから、何度も同じことを言わせないでください。好きなようにしてください。ここでするか。それとも、裸になるかですよ」
真夫がスカートの中に手を入れ、貞操帯がなくなってなにも遮るものがなくなくなった股間に触れてきた。
「ひいいいっ、やめええ」
びっくりして、拘束されてない右手でそれを阻止しようとした。
だが、簡単にその手首を掴まれてしまう。
股間の亀裂をゆっくりと指で愛撫される。
「ひあああっ、だ、だめええ。漏れちゃうう」
「なんだ、あゆみさん、びしょびしょじゃないですか。これは媚薬のせいだけじゃないですよね。やっぱり、あゆみさんはマゾなんですよ。こういうことが好きなんです」
真夫が愛撫をしながら笑う。
あゆみは必死に腰を動かして淫らな指を避けようとするが、左手と右手を手錠と真夫の手で拘束され、切迫した便意のために大きな動きもできない。
せめて、懸命に内腿に力を入れて、真夫の指の侵入を防ごうとした。
「わ、わかったから──。脱ぎます。脱ぐ──」
これ以上の我慢は不可能だ。
もう数分ももたないだろう。
真夫が手を離す。
あゆみは自由になった片手でワンピースから片腕を抜き、頭から全部を抜いた。手錠が掛かっている側に集まったワンピースを真夫がベンチから手錠を外して抜く。
身体にはパンプスが残っているだけだ。
「ひんっ」
全裸になったあゆみはその場にしゃがみ込んだ。
すると、再び後ろに回った真夫がベンチから外した手錠の反対側をあゆみの右手首に背中側で嵌めてしまう。
さらに、首に掛けられている銀製のチョーカーに細い鎖を繋いだ。
銀製のチョーカーは真夫の奴婢になるとホテルで誓ったときに嵌められたものだ。ほかの奴婢たちにも同じものがあり、真夫という少年の性奴隷になった証らしい。
「立つんです。行きますよ」
真夫が鎖を引っ張って、あゆみを立たせる。
抵抗できない。
抵抗する気もない。
もうもたない。
早くトイレへ……。
もうそれしか考えられない……。
あゆみは、鎖に引かれるまま、よろよろと脚を進める。
便意が崩壊する予兆を感じる。
だが、はっとした。
真夫はあゆみから脱がせたワンピースをベンチに置いたままだ。ディルド付きの貞操帯もそのままである。
「ま、真夫さん、服を忘れてます」
あゆみは鎖で引っ張らるまま、真夫にささやく。
「トイレに行きたいなら、大人しくついてくることです。これが調教です」
「くっ、こ、この変態──」
「これで興奮しているあゆみさんも同じですけどね。愛液が脚に垂れてますよ」
「嘘よっ」
真夫は歩みをとめない。どんどんと遊歩道側から離れて、樹木のあいだを抜けて、中央広場らしき場所に向かう方向に進んでいく。
悪夢だ。
夜とはいえ、素っ裸で犬のように首輪に鎖を付けられて、野外の公園を歩かされているのだ。
本当に見られることはないのか?
本当に見られてないのか?
もう神経が焼き切れそうだ。
怖い──。
怖いよ──。
あゆみは歯を喰いしばっていた。
全神経をお尻の一点に集中している。
でも、こんなんで感じてる──?
いや、ふと見れば、乳首は痛いほどの張りでそそり勃っているし、さっき真夫に指摘されたとおり、二本の太腿の内側は、自分でも否定できないほどの愛液でいびただしく濡れてもいた。
感じている?
いや、感じている。
公園で無防備な全裸を晒させられ、便意に追い詰められながら犬のように首輪を引かれて歩く……。
これほどの屈辱と羞恥を味わいながら、本当に自分は感じているのだ……。
マゾ……。
わたしはマゾ……。
「トイレまではもう少しです。でも、少し燃料給油と行きましょうか」
真夫が横にあった樹木の幹にあゆみの首輪に繋がっている鎖を巻き付けた。
「はあっ?」
巻きつけられた位置は、あゆみの腰から少し上くらいの高さである。そこに長さの余裕がない短さで鎖を巻かれて、あゆみは顔を樹木の幹に着けて、腰を引いて後ろに突き出した体勢に無理矢理に取らされてしまった。
両腕は背中側で手錠をかけられている。
その腰に回った真夫があゆみのお尻の両側に手を添える。
「な、なにやってんのよ、あんた──?」
あゆみは驚愕して声をあげた。
真夫が背後でズボンをおろす気配がしたのである。
「さすがに大声は出さない方がいいですよ、あゆみさん。見物人を集めたければ別ですけどね」
真夫がお尻の下に怒張を滑らせて、股間に性器の先を迫らせてきたのがわかった。
「む、無理いい──。もう無理いい」
便意も、多分最後のうねりに近いだろう。
絶対に漏れる──。
「我慢しきったら、トイレに連れて行ってあげますよ」
真夫の怒張が後ろから挿入され、すぐに律動が開始される。
「んんぐうっ」
あゆみは必死に歯を喰いしばって、口から漏れ出そうな嬌声を呑み込む。
容赦のない律動だ。
余程に濡れていたのか、なんの前戯もないのに、あゆみの耳にはっきりと水音が聞こえるほどにあゆみの股間は濡れほぞっていたようだ。
「あっ、ああっ、んんっ、んんんんっ」
凄まじい快感だ。
あゆみはあっという間に、自分が昇り詰めていくのを感じた。