「それじゃあ、身体を流しに行きましょう。あさひ姉ちゃん、玲子さん、じゃあ、歩いて」
真夫は、選んだSMグッズを入れた籠を載せたトレイを押しながら、元気に言った。
とりあえず、玲子さんも真夫も身体を洗おうということになったのだ。
玲子さんが二度目のエクスタシーに達したときに出たおしっこのようなものは、「潮吹き」というのだそうだ。
おしっことは別のものみたいであり、そんなに匂いもしなかった。だけど、出たのはおしっこの穴からのように思えた。
玲子さんによれば、興奮が大きくなりすぎると、潮を噴くことがよくあるらしいのだが、二回目くらいで潮を吹いたのは初めてだとか、これまで器具で潮を拭くことはあっても、性交の最中にして人にかけてしまうなんてありえないとか、ごちゃごちゃ言っていた。
なんか、一生懸命に、わけのわからない言い訳と謝罪を必死に繰り返す玲子さんは可愛いかった。
とにかく、狼狽える玲子さんの姿は、見ていて笑いたくなるほどであり、真夫があさひ姉ちゃんと一緒に床を拭いたときなど、ほとんど泣きべそをかいていた。
だから、わざと玲子さんの縄を解かずに、そのままにしていたのだ。
玲子さんの縄を解いたのは、すっかりと床を掃除して、玲子さんが汚した寝台のシーツをあさひ姉ちゃんと一緒に交換してからだ。
そのあいだ、ただ横で立っているしかなかった玲子さんは、まるで苦しめられているような顔をしていた。
「は、はい。じゃあ、前足から、恵さん」
「は、はい……」
あさひ姉ちゃんと玲子さんが、「せーの」とか言いながら横歩きで真夫を追いかけ始める。
いま、あさひ姉ちゃんと玲子さんは、裸のまま背中合わせにして押しつけ、ウエストの細い部分をまとめて縄で縛り、さらにふたりの足首と腿も離すことができないように縄で固定している。
胸の下でも縛った。
そして、お互いの両手首は、背中方向に回させ、相手の股間の前で手錠をかけている。
つまり、ふたりは背中とお尻をぴったりと密着し合って離れられないようになっているのだ。
移動するにも、一緒に脚を動かさないと転んでしまうので、声をかけ合って「カニ歩き」をするしかない。
「ま、真夫様、浴室はその扉の向こうです……」
少し遅れて着いてくる「一対のカニ」から玲子さんの声がする。
大きなSMルームの突き当りに、横開きの扉がある。
そこを開くと、大きな更衣室のような場所があり、さらに奥の扉を開けると、浴室が出現した。
「うわっ、ひろっ」
真夫は湯気のたちこめる浴室に入って、まずその言葉を吐いた。
部屋に連接している湯舟だというので、もっと小さなお風呂を想像していた。
そこにあったのは、真夫が暮らしていた寮の浴場よりも広い大浴槽だ。おそらく、三十人くらいは軽く一緒に入れるだろう。
洗い場も広くて、大理石の豪華な彫刻のあちこちに飾られている。
普通の浴場と違うのは、壁や天井に人を拘束できるベルトや枷、あるいは鎖や横パイプなどがあちこちにあることだ。
ここもまた、SMをする場所なのだと思った。
「す、すごい……」
遅れてやってきたあさひ姉ちゃんと玲子さんだったが、あさひ姉ちゃんもまた感嘆の声をあげた。
真夫は持って来たトレイを湯舟のそばに置くと、洗面器でふたりの身体に湯をかけてあげた。
「あ、ありがとうございます……」
「真夫ちゃん、ありがとう……」
ふたりが恐縮するような声でお礼を言った。
その二人の手を取り、支えるようにして湯の中に入れた。
湯は少しぬるめだけど十分に温かい。多分、長く入っていられるように、この温度に調整してあるのだと思う。
湯の高さは、ちょうどふたりの腿の半分くらいだ。
真夫はふたりをしゃがませずに、そのまま立たせたままにして、湯舟の天井から繋がっている鎖を引き寄せた。
そして、トレイで運んで来た籠から、繋がった二つの首輪を取り出し、ふたりの細い首に嵌めて、それを天井から伸びている鎖に繋ぐ。
これであさひ姉ちゃんも玲子さんも湯舟で立ったままでいるしかない。
「ふたりとも、俺が全身を洗ってあげますよ。でも、その前に、もっとふたりには仲良くなってもらいますね……。ところで、玲子さん、トレイに載っている媚薬のたぐいの中で、猛烈な痒みを引き起こす責め剤はありますか?」
トレイの上の段には、水差しとコップをおろして、真夫が籠を積んできたが、下の段には媚薬類が載せたままになっている。
真夫がそれを訊ねると、玲子さんの顔が引きつったようになった。
「……そ、その白い無地のチューブです……。それを塗ると、狂うような痒みに襲われます……。だ、だけど、身体には無害です……。あ、あの、それを使うんですか……」
玲子さんがおずおずと言った。
向かい合わせのあさひ姉ちゃんも、痒み責めと聞いて、顔色を変えている。
「使いますよ」
真夫は持って来ていた籠から、今度は両端に革ベルトのついている五十センチほどの金属棒を取り出した。
それの端をまずはあさひ姉ちゃんの膝の上に装着し、反対側は玲子さんの脚の膝に固定する。
これで、ふたりは大股開きを閉じることもできなくなったということだ。
準備ができたところで、真夫はチューブから薬剤を出して指に乗せると、玲子さんとあさひ姉ちゃんの股間にたっぷりと塗ってあげた。
「あ……」
「んんっ……」
真夫の指が敏感な部分に触れるたびに、ふたりの腰がもじもじと動く。
だが一方が動けば、密着している反対側の者も動くしかない。
それがふたりとも恥ずかしそうだ。
とりあえず、真夫はふたりの肉芽と股間の亀裂にかなりの量の薬剤を塗った。
「さあ、これからどうなるかわかるね、ふたりとも? 痒くて痒くてたまらなくなると思う。だけど、痒みを癒すには、相手にやってもらうしかない。だから、そんな拘束をしているんだ。ふたりには、これから相手の痒いところを癒してもらうよ。お互いにどこを弄って欲しいか頼むんだ。ただし、条件がある。絶頂するのは、二人一緒でないとだめ。もしも、同時に達することができなかったら、先にいった方だけに浣腸をするよ。その恰好のままでね」
真夫は籠に入れてきた十個ほどのイチジク浣腸をぱらぱらと見せた。
ふたりの顔が蒼くなった。
「そ、そんな真夫ちゃん……」
「あ、あのう……」
ふたりが抗議のような言葉を口にしようとしたが、すぐに口をつぐんだ。
さすがに、「奴婢」になった立場で、「ご主人様」に抗議をするのは躊躇ったのだろう。
もっとも、真夫としては、別に抗議をしてもらってもよかったのだが……。
まあ、それで責めを中止するわけじゃないが……。
「これが俺の調教だよ。ふたりで息を合わせて絶頂しよう。その練習だ。ただし、俺の許可なく始めてはだめだ。まずは、許可があるまで我慢してもらう。勝手に開始したら、ふたりとも浣腸だからね」
真夫は言った。
ふたりが諦めたように俯いた。
真夫はほくそ笑んだ。
後は待つだけだ……。
そして、あさひ姉ちゃんと玲子さんが、「痒い」と泣き出すのに、そんなに時間はかからなかった。
最初は、腰を動かすと、臀部を密着している相手の腰も動かすことになるので、遠慮がちだったふたりだったが、一分もしないうちに、そうもいっていられなくなったらしく、悲鳴をあげて激しく腰を振り出した。
「ああ、か、痒い。痒いよ、真夫ちゃん」
「か、痒いです、真夫様」
ふたりが悲痛な顔をして、悲鳴をあげ続ける。
余程に痒いらしく、ふたりとも必死になって、股間の前にある相手の手に自分の股間を押しつけようとする。
だが、真夫から「お預け」を与えられているので、相手の股間に触れるわけにもいかず、ふたりとも腕を少し持ちあげるようにした。
すると、ほとんど無意識の行動だと思うが、ふたりとも、そこに向かって腰を突きだそうと、さらに前に腰を出そうとしはじめた。
だが、ふたりの腰は繋がっているので、引っ張り合うようなかたちになる。
本当に悲痛な姿だ。
また、真夫は少し観察していたが、どうやら、この掻痒剤は痒みだけではなく、薬剤の力で局部を蕩けさせる効果もあるのかもしれない。
真っ赤になっているふたりの股間からは、なにも触れさせていないのに、おびただしい樹液が流れ出していた。
「ああ、真夫ちゃん、もう許して」
「ま、真夫様……」
ふたりが代わる代わる悲鳴をあげて、ついには涙をこぼし始めた。
もうしばらく、ふたりが苦しがる姿を見物したい気持ちはあったが、とりあえず、相手の股間を弄ることを許した。
「ああ、ありがとう、真夫ちゃん……。はあっ、れ、玲子さん、お願いします。も、もう……」
「わ、わたしもお願い、恵さん──。ああっ、も、もっと強くして──」
真夫が許可した途端に、あさひ姉ちゃんと玲子さんは、聞いていてこっちが恥ずかしくなるような赤裸々な物言いで相手に自分の股間を弄ってくれとせがみ合った。
だが、局部を擦り合えば、媚薬成分もある掻痒剤だけに、たちまちにふたりとも追い詰められるようになる。
ふたりとも、すぐに切羽詰まった喘ぎ声を出し始めた。
「だ、だめ、ちょ、ちょっと待って、恵さん」
突然に悲鳴をあげた玲子さんが上体をぐいと突っ張らせた。
多分、玲子さんは、さっき二回も達しているので、感じやすくなっていたのだと思う。
「あっ、えっ?」
「だ、だめえええっ」
あさひ姉ちゃんがはっとしたように、手の動きを緩めたときにはもう遅かった。玲子さんは呆気なく、先に達してしまったようだ。
「じゃあ、玲子さんは罰だね」
真夫はイチジク浣腸のキャップを外すと、ぴったりくっついているふたりのお尻の下側からイチジク浣腸の先を潜り込ませた。そして、玲子さんの肛門を探し当てると、一気に中身を注入する。湯で温めていた浣腸液が玲子さんのお尻の中にあっという間に吸い込まれる。
玲子さんは、恐怖で引きつったような顔をしていた。
ふたつ……三つ……。
玲子さんのお尻に浣腸剤を注いだ真夫は、改めてふたりの股間にさっきの掻痒剤を塗り足して、二回戦を命じた。
始まった。
だが、二回目は痒みよりも、便意が気になったのか、玲子さんはなかなか達することができないようだった。
それに比べれば、まだ達していないあさひ姉ちゃんは、ずっと敏感になっていたのだろう。
今度は、玲子さんよりも先に、あさひ姉ちゃんが達してしまった。
真夫はあさひ姉ちゃんにも、イチジク浣腸を三個注いだ。
「……うう、ま、真夫ちゃん……」
「も、もう……」
三回戦目をさせようかと思ったが、玲子さんが限界のようだったし、そろそろ危ないと判断した。
真夫は、ふたりの首輪を吊っている鎖と膝のあいだに装着していた横棒を外して、浴槽から出し、さらに浴室の流し場の端っこに連れていった。
そこに大きな排水溝の入り口があることに、さっき気がついたのだ。
おそらく、そこは、こういうプレイを浴室でもできるようにするための設備なのだろう。
そこの壁にはシャワーだけじゃなく、普通のホースも水道に繋げて置いてある。
真夫は苦しそうにカニ歩きしてきたふたりの首輪を今度は、排水溝の真上に来るように調整して、そこに垂れている鎖に繋いだ。
「ふたりとも、もう少し我慢だよ……。じゃあ、玲子さんからね……」
真夫は立ったままの玲子さんの股間に怒張を貫かせると、手を伸ばしてあさひ姉ちゃんの乳房を揉みながら、抽送を開始した。
「ああ、そ、そんな、真夫様」
玲子さんは悲鳴をあげた。
排便を許されずに、あさひ姉ちゃんと後ろで密着し合ったまま、立って真夫に犯されるのだ。
玲子さんは苦痛と快感をまぜこぜにしたような泣き声を迸らせた。
でも、すでに数回昇天して敏感になっていて、しかも、便意を全力で堪えなければならない玲子さんは、真夫の責めに対応することなどできなかったようだ。
あっという間に絶頂し、がくがくと身体を震わせた。
真夫はがっくりとしている玲子さんから怒張を抜き、今度は反対側に回って、あさひ姉ちゃんを前から犯した。
もちろん、玲子さんの乳房を揉みながらだ。
あさひ姉ちゃんもまた、真夫が快感を覚える間もなく、すぐに昇天してしまった。
真夫はふたりから身体を離して、シャワーを手にとると、湯を出す準備をした。
ふたりとも絶頂の火照りで身体は真っ赤だが、一方で激しい便意に襲われて、すっかりと肌に粟が立っている。
「じゃあ、ふたりとも、していいよ。汚れは、全部俺がきれいにするから気にしないで」
真夫は言った。
ふたりは苦悶の悲鳴をあげたが、真夫が本気だと悟ると、諦めたようになった。
そして、ふたりで同時に出そうと、励まし合うように喋り合う。
「うう……」
「ああっ」
ふたりが消え入るように小さく叫んだ。
同時に崩壊が始まった。
真夫はふたりの足のあいだにシャワーによる放水を開始した。
排便姿を見られる……。
しかも、立ったままでだ。
想像を絶するような辱めであるはずなのに、玲子は恵とともに、真夫の目の前で排便をさせられるとき、はっきりとした快感を覚えたのを記憶している。
それは、紛れもなく、羞恥と恥辱の中に生まれた震えるような恍惚感だった。
そして、それでなにかが吹っ切れたようになった。
やっと恵と背中合わせにされていた拘束を解かれ、真夫に汚物のついたお尻と脚を洗ってもらったときには、この若い「ご主人様」に積極的に甘える気持ちになっていた。
この真夫は、玲子のご主人様……。
真夫に奴婢として、生涯仕える……。
そう思うと、どうしても笑みが頬に浮かびあがってしまう。
また、恵は同志だ。
同じ男に仕え、同じように愛し、愛されるパートナーだ。
排便ひとつのことで、自分でも呆れることだが、あんなに恥ずかしいことを一緒にやったというのが、恵との一体感を生んだ気がした。
拘束を解かれて、玲子は真夫と恵に身体を洗われ、その後、玲子は真夫とともに、恵の身体を洗った。
不思議に愉しかった。
笑みがこぼれて仕方なかった。
恵とともに真夫を洗ったときなど、ふたりがかりで真夫をくすぐったり、お尻やおちんちんに悪戯したりして、まるで童心に返ったような愉しい気持ちになった。
そのあと、もう一度プレイルームに戻った。
首輪に鎖を繋がれて、恵とともに四つん這いで進まされた。
秀也に同じことをさせられたとき、屈辱の涙を流しながらやったことを、そのときは不思議な高揚感を覚えながら行った。
そのあと、もう一度後手に緊縛され直して、真夫と恵と愛し合った。
そして、真夫に抱かれて昇天した。
恵との百合プレイもさせられた。
さらに、ふたりで奉仕し、それから、身体に真夫の精を受けた。
もちろん、避妊具や避妊ゼリーなどない。
はっきりと子宮に真夫の生の精が注がれるのを感じ、玲子は悦びにむせび泣いた。
三人で倒れるように寝台に眠り込んだときには、すっかりと夜になっていた。
玲子もまた、少しまどろんでいたと思う。
目を覚ましたときには、玲子が横になっていた寝台では、まだ真夫と恵が寝息をかいていた。
玲子は起こさないように気をつけながら、寝台を降りた。
服を着る前に身体を洗おうかどうか迷ったが、いまは、真夫と恵とともに愛し合った痕跡を身体から失くしてしまうのが惜しい気がした。
だから、汗だけを拭いて、そのまま服を着ることにした。
部屋を出る前に、もう一度寝台を見る。
まだ、寝ている……。
玲子は真夫の頬に口づけをした。
「……わたしのご主人様……」
小さく呟いた。
そして、ふたりを起こさないように気をつけながら壁まで移動し、額縁の横の壁に手を触れさせて、隣の部屋に戻る隠し壁を開く。
隣の部屋のソファーには、真夫と恵と玲子の着ていたものが無造作に置いてある。
玲子はまずは自分の身支度をし、次いでふたりの服を洋服掛けに片付けた。
時計を見た。
七時を回っている。
フロントに電話をして、ふたりの食事を部屋の外に置いておくようにルームサービスの手配をした。
次いでメモを残す。
夕食が部屋の外の廊下に置いてあること……。
着替えや下着は、棚の中に着替えの分も含めて置いてあり、遠慮なく着て欲しい……。
汚れ物はまとめておけば、明日の朝、ホテルの者が取りに来て、クリーニングをする……。
朝食はホテルのカードキーでホテルのどのレストランでも好きなものを食べれるし、ルームサービスでもいい……。
明日の昼前にまた顔を出す……。
最後に、玲子の連絡先のスマートフォンの番号を書いておいた。
さて……。
玲子は部屋を出た。
やることはたくさんある。
まずは、恵のお父さんのことと借金の始末……。
これは今夜中に始末をつけて、明日にはふたりに報告したい。
また、恵のアパートの解約……。
それは手続きだけは進めるが、恵にやってもらうこともある。
真夫のメイドとして寮に入る恵は、身の回りのものくらいしか持っていくことができない。だから、特に大切な物以外は、処分してもらわければならないのだ。
それに比べて、真夫は鞄ひとつで以前の寮を出てきたみたいなので、そのままでいい。
それから、恵がバイトをやめる手配……。
恵は、もうすぐ闇金融の者に連れていかれることになっているにも関わらず、ぎりぎりまでバイトを入れていたようだ。
すでに近日中にすべてやめる調整はしていたようなので、それが少し早まることには問題はないと思う。
そして、龍蔵への報告……。
それから……。
玲子は処置すべき事項を頭の中で整理しながら、部屋を出るとエレベーターに向かってホテルの廊下を進んだ。
エレベーターはすぐそこだ。
だが、そこに人がいた。
玲子はぎょっとした。
「よう」
そこにいたのは、壁にもたれかかって立っていた秀也だ。
「話がある。ちょっと、来いよ」
有無を言わせぬ口調で、秀也は玲子を真夫たちがいる部屋とは別の部屋に玲子を促した。