足元がおぼつかないあさひ姉ちゃんを改札口前の多目的トイレに連れ込んだ。
いまの時間は、乗降客そのものがまばらなので、このトイレを使う者はほとんどいないはずだ。
ターミナル駅の手前で電車の座席に座ってから、あさひ姉ちゃんのアパートに向かうための駅で降りるまでの時間は、十分ちょっとだったと思うけど、そのあいだに真夫は、リモコンローターで七回は寸止めをした。
絶頂寸前で刺激が取りあげられるたびに、あさひ姉ちゃんはとても淫らな顔で切なそうに震えた。
その苦悶の姿がぞくぞくした。
真夫は病みつきになりそうな気がした。
「服を脱いで、あさひ姉ちゃん。靴だけは履いてていいよ。だけど、それ以外は全部俺にちょうだい」
真夫はあさひ姉ちゃんを便座に座らせて言った。
あさひ姉ちゃんは抵抗しなかった。
大人しく一枚ずつ脱いでは、脱いだものを真夫に渡していく。
乳幼児用ベッドがあったので、真夫は渡されたものをそこに置いていった。
あさひ姉ちゃんが素っ裸になった。
その全身は汗にまみれていて、真っ赤に紅潮していた。
また、真夫が強要している無毛の股間からは、おびただしいほどの蜜で濡れている。
とりあえず、真夫は、陰核の上からテープで貼っていたローターを外し、膣深くに挿入しているローターは自分で取り出すように言った。
あさひ姉ちゃんは、恥ずかしそうにしながらも、指を膣に入れ、さらにいきむような仕草をしながら、ローターを取り出した。
それを受け取る。
「じゃあ、そのままオナニーしてよ。それともっと脚を開いてね」
真夫は便座に座っているあさひ姉ちゃんの正面に立って言った。
「えっ?」
あさひ姉ちゃんはちょっと驚いた顔になった。
「聞こえなかったの、あさひ姉ちゃん。オナニーだよ。俺は、あさひ姉ちゃんにオナニーしろって命じたんだよ」
わざと強い口調で言った。
「あっ、は、はい」
あさひ姉ちゃんは慌てたように、手を乳房と股間に向かわせる。
「脚──」
真夫は苛ついているかのように、あさひ姉ちゃんが座っている便座を軽く蹴った。
もちろん、これは「プレイ」だ。
だけど、あさひ姉ちゃんは、ちょっと乱暴にされたり、意地悪をされたりするのが好きなんだ。この数日、ずっと一緒に過ごしているからわかっている。
そして、いまみたいに、頭ごなしに破廉恥なことを命令されるのが好きみたいだ。
その証拠に、あさひ姉ちゃんは、怯えたように脚を水平になるくらいまで拡げながら、それだけで感極まったようにぶるぶると震えた。
すでにかなりの興奮状態みたいだ。
淫情に酔ったような表情のあさひ姉ちゃんは、すごくエッチそうで、すっごく真夫も欲情する。
真夫は、にんまりしそうになって、すぐに顔を険しいものに戻した。「鬼畜プレイ」の最中に、責め側が笑ってしまっては醍醐味が台無しだろう。
「ああ、真夫ちゃん、恥ずかしいよう……」
あさひ姉ちゃんが泣きそうな声で言った。
だけど、指が乳首を転がし、クレヴァスに沿ってするすると上下に動き始めると、たちまちに大きな鼻息をして身体をびくりと硬直させた。
結局のところ、掻痒剤を塗った股間は、ローターによる刺激は与えられたものの、一度も達していない宙ぶらりんの状態だ。
痒みクリームで感度があがり切っているうえに、寸止めをされ続けたあさひ姉ちゃんの身体は、もう最後の絶頂までの刺激への欲望が暴発しそうになっていると思う。
あさひ姉ちゃんは、すぐに淫らな声をだしながら、激しく指を動かしだした。
「ま、真夫ちゃん、真夫ちゃん、真夫ちゃん……」
やがて、あさひ姉ちゃんは、真夫の名を小さく呼びながら、明らかに絶頂の道へと駆け昇る仕草を示し始めた。いまや、あさひ姉ちゃんが動かす股間の指のあいだからは、糸を引いて熱い蜜が滴り落ちている。
そろそろ、達するな……。
真夫にはそれがわかった。
「駄目、お預け──」
真夫は声をあげた。
あさひ姉ちゃんは、ぎくりとしたようにとまった。
だが、まさにあさひ姉ちゃんは、いく寸前……というよりは、達している途中のような感じだったと思う。
そこで寸止め命令をされたあさひ姉ちゃんは、愕然としている。
「そ、そんな、ま、まだ……」
あさひ姉ちゃんは、真夫に恨めしそうな顔を向けた。
真夫は、そのあさひ姉ちゃんの顎を乱暴に握って力を入れる。
「んぐっ、ま、真夫ちゃん」
首を斜め上に捩じりあげられたあさひ姉ちゃんが苦しそうに顔を歪めた。
「なんで、そんな顔をするの、あさひ姉ちゃん? あさひ姉ちゃんは、俺の奴婢でしょう? 奴婢の身体は、全部ご主人様のものだと教えたでしょう。だったら、あさひ姉ちゃんをいかせようが、いかせまいが俺の勝手でしょう。それとも、あさひ姉ちゃんは、俺の奴婢をやめる? だったら、好きにすれば。いくらでもいっていいよ」
真夫はあさひ姉ちゃんの顎を掴んだまま、できるだけ冷たい口調になるように気をつけながら言った。
「ああ、い、意地悪言わないで、真夫ちゃん……。あ、あたしは、真夫ちゃんの奴婢だよ。命令には逆らわない。もっと、意地悪なことしてもいい……。だから、捨てないで……」
あさひ姉ちゃんが泣くような声を出した。
「だったら、どんな風にあさひ姉ちゃんの身体を弄ろうが文句はないよね。これは、俺のものなんだから、俺がどう扱っても自由なはずだよね」
真夫はまだ股間に置かれたままだった、あさひ姉ちゃんの手を払いのけて、股間の指を挿入して膣の中を愛撫した。
あさひ姉ちゃんの股間は信じられないくらいに蜜で溢れていて、しかも、熱かった。
あさひ姉ちゃんの感じる場所はもうわかっている。
親指でクリトリスを刺激しながら、人差し指で膣の入口に近い上側の土手を押し揉んでやる。
いわゆるGスポットだ。
「あ、ああっ、あああっ──。ま、真夫ちゃんの指……、き、気持ちいい……。じ、自分でするのとは……ぜ、全然……」
あさひ姉ちゃんが真夫にしがみつくようにもたれかかってきて、身体を痙攣させた。
だが、真夫はさっと指を離した。
あさひ姉ちゃんは、むせび泣くような声をあげて身体を悶えさせた。
「どうして欲しい、あさひ姉ちゃん? 俺はあさひ姉ちゃんが寸止め責めで苦しむのを見るのが好きだから、もっと寸止めしたいと思っているんだよね。あさひ姉ちゃんが俺の奴婢なら、あさひ姉ちゃんの身体は俺のものだから、もっと寸止めするよ……。だけど、あさひ姉ちゃんがどうしても達したいというなら、最後までしてあげてもいいよ……。どうする? それとも、自分でオナニーする? それでもいいよ。でも、勝手に達したら、奴婢じゃないからね」
真夫は言った。
あさひ姉ちゃんは歯を食い縛ったような感じで、真夫に口を開いた。
「……い、意地悪……意地悪、真夫ちゃん……。あ、あたしが真夫ちゃんのこと大好きなの知って来るくせに……。あ、あたしは、真夫ちゃんの奴婢だよ。心の底から……。真夫ちゃんが愉しいなら、それがいい。もっと、寸止めしてあたしを苦しめて……。あたしは、真夫ちゃんが愉しいのがいい」
あさひ姉ちゃんは言った。
「……わかった。じゃあ、もっと寸止めしよう。その代わり、今度はいきそうになったら、あさひ姉ちゃんが自分でとめてくれと言うんだ。できるだけ、絶頂する寸前で声をかけるんだよ。ただし、本当に達してしまったら、奴婢失格とみなすからね。さあ、両手を頭の後ろに……」
真夫は言った。
あさひ姉ちゃんが両手を頭の後ろに置く。
真夫は再び指であさひ姉ちゃんの股間を愛撫を始めた。
すぐに、あさひ姉ちゃんが甘い声を出しながら、痙攣のような震えをした。
真夫は指であさひ姉ちゃんの膣の中への刺激を続ける。
あさひ姉ちゃんは、歯を食い縛っている。
どうやら、真夫の命令のとおりに、できるだけぎりぎりまで耐えようとしているのだろう……。
それとも、快楽への欲望に負けて、このまま達するかな……?
まあ、どっちでもいいけど……。
やがて、さらに震えが大きくなった。
「と、とめてっ、真夫ちゃん。とめてっ」
あさひ姉ちゃんは叫んだ。
真夫は指を離した。
あさひ姉ちゃんが精根尽きたようにがっくりとなった。
「さすがは俺の奴婢だね。ご褒美だよ。舌を出して」
真夫が言うと、あさひ姉ちゃんが嬉しそうに舌を出す。
その舌をぺろぺろと舐めまわしてやる。
あさひ姉ちゃんは、うっとりとした顔になった。
しばらくして、少し火照りも収まったかと思った頃に、また同じことをした。
今度もあさひ姉ちゃんは寸止めを選んで、真夫の刺激を中断させた。
ただ、寸止めをしたとき、本当に苦しそうに悶え震えた。
同じことをさらに三回やった。
今度こそ、あさひ姉ちゃんは、寸止めの苦しさに負けて、声をかけないかと思ったけど、あさひ姉ちゃんは、健気にぎりぎりのところまで自分を追い詰め、そして、真夫に声をかけて愛撫を中断させるということをやり通した。
「偉かったね、あさひ姉ちゃん。もう、許してあげるよ。立って、壁に手を着いて、お尻を後ろに出して」
最後の寸止めの後で、ご褒美キスが終わったとき、真夫はぽんぽんとあさひ姉ちゃんの頭を叩きながら言った。
「う、うう……。も、もういいの、真夫ちゃん……? す、寸止めでもいいよ……。ま、真夫ちゃんがそれが好きなら……」
「でも、俺も最後までしたくなっちゃった。さあ、立って」
このまま、最後まで寸止めもいいかもしれないけど、それじゃあ、あさひ姉ちゃんがおかしくなってしまうだろう。
それに苦しめた後は、ご褒美が必要だ。
あさひ姉ちゃんは、随分と頑張って、真夫を愉しませてくれた。
ご褒美の価値がある。
「あ、ありがとう……。ありがとう、真夫ちゃん」
あさひ姉ちゃんが言われたとおりにした。
真夫は、脇の下から手を伸ばして、包み込むように乳房を握った。そして、素早くズボンと下着を足首まで降ろして、お尻の下からあさひ姉ちゃんの膣に怒張を貫かせた。
「はあっ」
途端にあさひ姉ちゃんは、大きく息を吸い込んだ。
真夫は苦笑して、大きな声を出すなと注意しなければならなかった。
胸揉みと律動を開始する。
あさひ姉ちゃんは、すぐに快感で震えだした。
「あ……あ、と、溶けちゃう……。ま、真夫ちゃん……こ、このままだと、す、すぐ……い、いく……。が、我慢できない……あっ、ああっ、ああっ……」
「我慢しなくていいんだよ。いっていいから……」
真夫は腰を前後させながら言った。
途端に、あさひ姉ちゃんは顔を上に向けた。
「んぐうううっ」
四肢をエクスタシーに撃ち抜かれたように、あさひ姉ちゃんは必死に食い縛っている口から歓喜の呻き声を放った。
さすがに早すぎるあさひ姉ちゃんの絶頂に合わせることができず、一回目は流した。
二回目の絶頂もすぐだった。
仕方なく、それも流した。
続けざまにあさひ姉ちゃんは、三度目の絶頂をしたが、やっと真夫はそれに合わせることができた。
深い絶頂に身体を震わせるあさひ姉ちゃんのヴァギナに、真夫はありったけの欲望の塊を注いだ。
「はああ……」
真夫があさひ姉ちゃんから離れると、溜息とともにあさひ姉ちゃんは、その場にするずるとしゃがみ込んでしまった。
しかし、すぐにはっとしたように、気だるそうな身体を真夫に向ける。
「ご、ごめん、真夫ちゃん……。お、お掃除するね……」
あさひ姉ちゃんが射精の終えた真夫の性器をぱっくりと咥えた。全体を舌で舐めて掃除し、さらに亀頭から残りの精を吸い出すようにする。
真夫はあさひ姉ちゃんに合図をして口を離させ、下着とズボンをはきなおして服装を整える。
あさひ姉ちゃんはすぐには動けないらしく、真夫へのお掃除フェラが終わっても、そのまま跪いたままでいた。
「……あ、あの……真夫ちゃん……」
だが、思い出したように、顔をあげて真夫を見た。
「なに?」
真夫は微笑んだ。
「あ、あたし、も、もう戻れない……。真夫ちゃんのいない日にはもう戻れない……」
「戻る必要ないさ。それに、俺も同じ気持ちだよ、あさひ姉ちゃん……。あさひ姉ちゃんがエッチでよかった。おかげで毎日愉しい」
真夫は笑った。
だが、この幸せを守るためには、それなりの代償もある。それは、もう覚悟をしている。
すると、あさひ姉ちゃんは、急にたじろぐような強い視線を向けた。
「ほ、本当に、こんなあたしでいいの? 真夫ちゃん、本当に呆れてない? あたし、真夫ちゃんといると、本当にエッチになる。自分でも嫌になるくらいに……。真夫ちゃんに苛められるたびに、自分で自分が呆れるほど、もっといやらしいことをして欲しくて堪らなくなる。あ、あたし、いつもいつも、真夫ちゃんのことしか考えていない。真夫ちゃんとエッチなことをいっぱいしたくて、どうしようもなくなるの。でも、こんな女、嫌でしょう? 迷惑じゃない?」
あさひ姉ちゃんは、なにか切羽詰まって訴えるような口調で言った。
だが、真夫は首を傾げたくなった。
エッチでなにが悪いのか……。
誰にでもエッチなのは困るが、真夫にだけエッチなら、いくらでも淫らでいて欲しい。
そう言った。
「あ、ありがとう……。やっぱり、真夫ちゃんは優しい」
あさひ姉ちゃんは、なにかそれだけで満足したように、胸に両手を置いてほっと息を吐いた。
「それよりも、早く服を着なよ、あさひ姉ちゃん……。それから……」
真夫は鞄の中から、準備していた女性用の下着を出した。
ホテルの引き出しに準備してあったもので新品だ。
「今日からはノーパンは禁止。下着だけははくこと。そして、俺が命令したら、恥ずかしそうに脱ぐこと……。最初からノーパンなのも悪くないけど、やっぱり、途中で脱がせるのが鬼畜の醍醐味だよね」
真夫は笑った。
あさひ姉ちゃんはきょとんとしたが、すぐにくすりと微笑んだ。
「……真夫ちゃんがそう言うなら……」
あさひ姉ちゃんははにかむような顔をした。
やがて、あさひ姉ちゃんは服を着終わった。
それを待って真夫は、あさひ姉ちゃんに後ろを向かせ、スカートをめくりあげた。
そして、いまはかせたばかりの下着をぺろりと剥がす。
「な、なに、真夫ちゃん?」
あさひ姉ちゃんが当惑した声をあげた。
構わず、さっき外したローターをお尻の穴に入れていく。
あさひ姉ちゃんが服を着ているあいだに、たっぷりと潤滑油を塗ったので、ちょっと窮屈だったが、なんとかお尻の奥にローターを押し込むことができた。
真夫は下着とスカートを元に戻す。
あさひ姉ちゃんは、今度は狼狽した仕草をした。
「今日から、アナル調教をするよ。あさひ姉ちゃん。とりあえず、ローターからだ。だんだんと太いバイブに変えていって、最後には俺の性器を挿入できるようにするよ。いいね、あさひ姉ちゃん」
真夫は明るく言った。
エッチなあさひ姉ちゃんだが、まだお尻は自慰にも使ったことはないことはわかっている。だけど、セックスをするときや、真夫の前で排便をしたあとに、お尻を拭いたりするときに、あさひ姉ちゃんはかなり感じているような反応をする。
多分、お尻はあさひ姉ちゃんの強い性感帯なのだろう。
だから、是非、あさひ姉ちゃんにはアナル調教をしたいと思っていた。
「う、うう……。真夫ちゃんがそうしたいなら……」
あさひ姉ちゃんは真っ赤な顔で言った。
お尻の異物が気になるのか、あさひ姉ちゃんの歩きは、最初はぎこちなかったが、しばらくすると慣れてきたようだ。
そんなに不自然な歩き方でなくなった。
真夫も忘れたふりをして、しばらく放っておいた。
駅からあさひ姉ちゃんのアパートまでの道はわかっている。
道なりは、静かな住宅街を通っていて、通行人はまばらだ。
真夫は、他愛の無い話を続けながら、ちょうど、公園の横の辺りに差し掛かって、ちょっとにぎやかになったときを選んで、あさひ姉ちゃんのお尻に埋まっているローターのリモコンをオンにした。
「きゃん」
あさひ姉ちゃんは、真夫がびっくりするくらいに派手な反応をして、お尻をスカートの上から押さえてしゃがみ込んだ。
公園で遊んでいた子供やその母親と思われる集団が一斉にこっちを見たのがわかった。
顔を真っ赤にしているあさひ姉ちゃんの姿に笑いながら、真夫はスイッチを切る。
あさひ姉ちゃんは、わざと怒ったように頬を膨らませた。
でも、その顔はしっかりと笑っている。
そんなことを二度、三度と続けた。
やがて、アパートに到着した。
到着したときには、すっかりとあさひ姉ちゃんは、でれた感じになり、真夫の腕にしがみついて身体にもたれるようにした。
「ね、ねえ、真夫ちゃん……。も、もう、このアパートも最後だし……。ちょっと、ゆっくりしていかない……? なにしてもいいから……」
あさひ姉ちゃんが甘えるような声を出した。
つまりは、あさひ姉ちゃんは、また、すっかりとエッチな気分になり、アパートで遊ぼうと誘っているのだ。
真夫はにんまりしてしまった。
「なにしてもなんて、そんなこと言ったら、うんと意地悪するよ。そうだねえ。浣腸してホテルまで我慢してもらおうかな? それとも、犬のように四つん這いで近所を散歩してもらおうかな」
真夫は言った。
あさひ姉ちゃんは、そんな責めをされている自分を想像したのか、顔を蒼ざめさせて、ぶるぶると震えた。
だが、その後、ちょっとだけ、顔を赤らめて、「真夫ちゃんがそうしたいなら……」と消え入るような声で言った。
これには、真夫も逆に驚いた。
あさひ姉ちゃんには、タブーというのはないのだろうか?
そのときだった。
アパートの奥側から誰かがのそりと起きあがり、こっちに歩いてきた。
男だ。
髪の毛は長くぼさぼさで、無精ひげが生えている。
着ているものは汚れていて、まるで浮浪者だと思った。
男は煙草を吸っていて、それを指に挟んでこっちにやって来た。
「恵の男というのはお前か? 随分と若いな……。とにかく、噂によれば、うちの恵といろいろといいことしているらしいじゃねえか。まあ、ちょっと話をしようか」
その男が言った。
「お、お父さん──」
そのとき、真夫の隣であさひ姉ちゃんがぱっと真夫から手を離して、絶句したように息をとめた。