※この作品はR-18です。

淫魔王のいる学園【完結】   作:ドン・ドナシアン

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 30話 全裸検査

「ぬ、脱ぎました……。せ、制服をください……」

 

 玲子相手とはいえ、他人の前で素裸になるのは抵抗があるらしく、かおりはかなりの躊躇を示した。

 玲子に向ける言葉も、当初は、玲子へ真偽を問うものだったが、それが抗議になり、最後には哀願に変化した。

 玲子は、その都度、冷たく残り時間を告げるだけで応じた。

 

 結局、かおりが最後の一枚の下着を脱いだとき、スマホのカウントはすでに一桁になっていた。

 玲子は、スマホを操作して、カウントダウンを消滅させた。

 

 かおりは、両手で乳房を抱き締めるように隠して、玲子と向かい合っている椅子の横にしゃがみ込んでしまっている。

 さすがに恥ずかしいのだろう。 

 

 さっきまで小生意気にも真夫のことを馬鹿にしてみせたかおりも、素っ裸にさせられては、気の強さのようなものも消失して泣きそうな顔だ。

 そして、机に隠れるように必死になって、裸身を隠そうともがいている。

 

 だが、玲子の腹は煮えまくっている。

 

 かおりが、真夫のことを侮辱するような言動や行為をしたことが、なによりも許せないのだ。

 本当は、ここで着替えさせるくらいのことしかするつもりはなかったが、このかおりには、それなりの辱めを与えなければ、誰よりも玲子の気が済まない。

 

「たかが裸になるのに、随分と時間がかかったのね。じゃあ、脱いだものをこれに入れなさい。畳まなくていいわ。どうせ、全部処分するものだから……。それから、わかっていると思うけど、あなたについては、今後わたしが一切を見張っていると思いなさい。おかしな素振りを示せば、あなたの恥ずかしい映像を学園中どころか、白岡家の主立つ者に送りつけるわ。嘘だと思うなら、生徒指導室で裸にされて辱められたと、警察でもマスコミでもどこにでも訴えなさい。だけど、あなたのような小娘がなにをしようとしても無駄よ。きっちりとあなたを破滅させてあげる。それを忘れないことね」

 

 玲子は空の紙袋を机越しに放った。

 かおりがやっと怯えるような表情になった。

 

 このかおりが、玲子のことを弁護士の資格を持つ一介の理事のひとりくらいにしか思っていなかったのは明らかだ。

 白岡家の令嬢であるかおりの立場からすれば、玲子はまだ「目下」の人間だ。

 どうやら、この娘は、かなり上流意識が強くて、「目下」の人間と判断した相手を軽んじる悪癖があるようだ。

 だから、玲子に大きな力があることを教えてやった。

 かおりが怯えたのは、玲子の言葉と表情に、はったりなどではない「本当」の力を垣間見たためだろう。

 

 それに、玲子が握っている「かおりの映像」というのは、かおりが脅されて破廉恥なことをしているという内容ではなく、このかおりが自ら恋人と狂態を演じている映像だ。

 あの三人組のうち、最初にかおりを引っ掛ける「恋人役」と映したもののようであり、少し変態気味の「プレイ」をその少年と興じているという内容のものだ。

 あの映像が出回れば、かおりが「被害者」であるとは、誰も思わないだろう。

 しかも、相手の少年が、かおりを罠に嵌める意図をもって映像を撮ったのは明らかであり、かおりの姿は明白に映っているのに、当の少年については、巧みに身体しか撮影されていない。

 

 そんな映像であるために、かおりも、映像を公開するぞと脅せば、逆らうことも、どこかに訴えたり相談したりすることもできなかったに違いない。

 なにしろ、あの映像は、白岡かおり本人に留まらず、白岡家の令嬢の痴態として、白岡家そのもののスキャンダルにもなるだろう。

 いずれにしても、恋人と信じ込んでいたとはいえ、あんな映像を撮ることを許すとは、このかおりが案外馬鹿なのではないかと思う。

 玲子に言わせれば、自業自得だ。

 まあ、だからこそ、あんな三人組の支配に陥ってしまったのだろうが……。

 

「……さ、逆らいませんから、早く制服を……」

 

 かおりが観念したように机の下で言った。

 玲子は内心で微笑んだ。

 こんな女子高生ひとりくらいなら、玲子の表情ひとつで、いくらでも言いなりにできる。

 だが、これから一緒に生活する真夫と恵のこともある。

 本格的な調教は真夫に委ねるとしても、もう少し懲らしめておく方がいいだろう。

 玲子は、わざと力強く机を脚で蹴った。

 

「ひっ」

 

 大きな音に対して、かおりが反射的に身を竦めた。

 

「聞こえなかったの、グズ。脱いだものをその空袋に入れろと言ったでしょう。さっさとしなさい」

 

 玲子の言葉で、かおりは自分の座っていた椅子に置いていた制服や下着を慌てたように入れ始めた。

 その紙袋を取りあげて後ろに隠す。

 これで、玲子が新しい服を渡すまで、かおりは素裸でいるしかない。

 

「立ちなさい」

 

 玲子は、かおりが脱いだものを入れた袋に加えて、C級用の制服の入った荷物を持って立ちあがった。

 この生活指導室は、理事長室と隣り合わせであり、廊下に出なくても扉が繋がっている。

 かおりが脱いだものをいったん全部部屋から出すことにした。

 そうすれば、玲子に従うしかないということが、嫌でもわかるだろう。

 

「本当にグズねえ。立っていろと言ったのが聞こえないの」

 

 そのとき、玲子は、まだかおりがうずくまったままであることを見て、怒鳴りあげた。

 かおりがびくりとして、身体を両手で隠すようにして立ちあがった。

 

 玲子は理事長室に戻ると、荷を置き、机からひとつの巻き尺を取り出した。

 そして、すぐに戻ろうとしたが、思い立って、生活指導室とは反対側の部屋になる「モニター室」に向かう。

 

 ここは、いわゆる「学生監視室」である。

 出入り口は理事長室と繋がっている扉だけだが部屋はかなり広い。

 この部屋には、学園中に張り巡らされている無数の隠しカメラの映像と音声がここに集められるようになっていて、撮影方向をここからコントロールできる定点カメラだけでも数百台。遠隔装置により移動できるマイクロカメラが百台。さらに、学生寮の全個室の室内やシャワー室、さらにトイレの映像までここで見ることができる。

 無論、そのすべてを記録しているわけではないが、スイッチひとつでいくらでも記録は可能だ。映像の自動編集ソフトまであり、簡単にマイクロチップに保存もできるし、それのモニター再生もディスプレイに表示させたリストに触れるだけでいい。

 

 玲子は理事長代理になる以前に、何度もここで龍蔵の指示で映像管理をさせられており、この部屋の操作は自由自在だ。

 いずれにしても、この部屋ひとつだけでも、この学園が豊藤龍蔵の好色趣味で運営されているものであるということがわかる。

 なにしろ、この部屋で記録されている生徒の映像は、創設六年目になる学園に所在したことのある女子高生や女性教師の痴態の映像ばかりだったのだ。

 それが、スイッチひとつでいくらでも再生できることになっている。

 

 玲子自身のもあった。

 秀也に調教されているものだけであり、龍蔵に嬲られているものは存在しなかったが、クリリングの電撃に怯え、快感に我を失くしている自分の姿が克明に記録されていた。

 

 ほかの女性や少女のものもある。

 例えば、この学園には、「四菩薩」と称する四大美人とされている女生徒と女教師が存在している。

 

 生徒会長の「西園寺絹香」。現在三年生であり、特別待遇生徒ということで、真夫や秀也と同様に特別寮に部屋を持っている女生徒──。

 

 その親友で女子サッカー部のキャプテンであり、同じく三年生の「前田明日香」──。

 

 すでに数本の映画にも出演経験があるテレビでも有名な若手女優で二年生の「相場まり江」──。

 

 さらに、女体育教師の「伊達京子」──。

 

 この四人は四菩薩と呼ばれ、男子生徒だけでなく、女性生徒のあこがれのような存在なのだが、その四人全員の「オナニー映像」というのもあった。

 どうやら、龍蔵がこの四人が口にする飲料に強力な媚薬を混入させ、ひとりきりになった自室で自慰に耽る姿を撮影したものであるようだが、これらの映像ひとつだけでも、この四人を支配できるかもしれない。

 そんなのが無数にあるのだ。

 もちろん、玲子は、真夫が入学したら、この部屋も映像も自由にさせようと考えている。

 玲子が与えられている力は、すべて真夫に捧げる。

 そのつもりなのだ。

 

 玲子はモニターを切り替えて、かおりが待っている生活指導室の映像に合わせた。

 素裸で待っているかおりの姿を前後左右、さらに下からも撮影し続けている。

 かおりは部屋の中を懸命に物色して、身に着けるものを探している気配だ。

 もちろん、そんなものはないが、身体にまとうものがあれば、そのまま逃げようとでも考えているのだろうか。

 

 とにかく、玲子はモニター室を出て、さらに理事長室を経由して、かおりがいる生活指導室に戻った。

 部屋を歩き回っていたかおりが慌てたように元の場所に移動する。

 

「なにをしていたの? まさか、逃げようとしていたんじゃないでしょうねえ」

 

 玲子は詰問調で言った。

 だが、かおりが意を決したように、玲子を強い視線で睨み返す。

 

「こ、こんなことは許されることじゃありませんからね。ふ、服を返してください。わ、わたしは訴えます。せ、生徒会に告発しますから……。それと……」

 

 全裸のかおりが身体を隠しながらも懸命に言った。

 どうやら、時間を与えたことで、少しだけ冷静になったのかもしれない。

 だが、そんな風に態度を変えるだろうということについては、玲子はすでに見抜いている。

 こんな女子生徒は、どんなに屈したようになっても、すぐに気持ちが変わって、また反抗するような行為をとったりするものだ。

 だから、その都度、こっぴどくもたげた反抗の気持ちを叩いてやらなければならないのだ。

 

「だったら、さっさと行きなさい。生徒会の部屋はすぐ近くじゃない。早く駆け込むがいいわ」

 

 玲子はつかつかと部屋を横切って、廊下に出る扉を開け放ってやった。

 いまの時間、たまたま、近くに誰もいないことは、さっきのモニター室で確認済みだ。

 だが、素っ裸でいるかおりは、外から部屋を丸見えにされたことで、悲鳴をあげてうずくまった。

 

「い、いやあっ──。あ、開けないで、理事様──」

 

 かおりが泣きべぞのような声をあげたのに満足し、玲子は部屋の扉を閉め直した。

 そして、わざとらしく鼻を鳴らす。

 

「もう一度、わたしの前で反抗的な態度を取れば、容赦しないわよ。あなたが仕えることになる真夫君とその連れの恵さんという女性に逆らってもね──」

 

「め、恵?」

 

 かおりがきょとんとした。

 坂本真夫という男子生徒の「奴婢」になると言われたものの、その連れがいるとは思いもよらなかったのだろう。

 

「坂本真夫君と特別室で同居することになる朝比奈恵さんよ。侍女扱いだけど、実際には、真夫君の恋人だからね。真夫君同様に、真摯にお仕えするのよ。いいわね」

 

 玲子は怒鳴った。

 かおりの顔色が変わった。

 真夫という男子生徒だけはなく、その恋人にも仕えよという言葉に、かおりは衝撃を受けたようだ。

 かおりが受けた屈辱感が表情に明白に出ている。

 

「とにかく、立ちなさい」

 

 玲子はかおりのいる横の椅子に座った。

 かおりは今度は大人しく立ちあがった。

 

「……両手を頭の後ろで組みなさい。断れば、さっきのカウントダウンを再開するわ。確か、残りは八秒ほどかしらね」

 

 玲子の言葉に、かおりははっとしたようになったが、だが、すでに観念する気持ちになったのか、言われるまま両腕を頭の後ろに組む。

 かおりの恥部が露わになる。

 もちろん、この姿も克明に記録されていることだろう。

 

「名前と年齢……。それと身長と体重を言いなさい」

 

 ややあって、かおりは口を開いた。

 もうなにを言っても、この場では屈服するしかないと理解できたのだろう。

 

「……し、白岡かおり……。し、身長は……百六十四……。た、体重は、四十……五……」

 

 玲子は立ちあがると、かおりの乳房に巻き尺を巻いた。

 かおりは、思わず逃げかけたが、玲子が一喝すると、もう大人しくなった。

 

「バストは八十ね。じゃあ、次はウエストよ」

 

 玲子は無造作に巻き尺を移動させる。

 

「ウエストは五十六……。ヒップは……」

 

 玲子は淡々とした口調で数字を読みあげていく。

 口惜しいのかかおりの身体が小刻みに震え始める。

 

「ヒップは八十五ね……。じゃあ、男性経験は何人?」

 

 玲子が訊ねると、うちひしがれていたようだったかおりの顔がきっと引き締まった。

 

「な、なんでそんなことを喋らないとならないんですか?」

 

 かおりが背筋を伸ばして、きっぱりと告げる。

 美しい顔で射すくめるような表情に、玲子もちょっと驚いたが、こういう交渉事については、玲子とかおりでは場数が違う。

 大勢の暴力団員のいる場所に乗り込んで、かなり危険な交渉もすることのある玲子だ。

 多少のことでは、気後れすることなどあり得ない。

 

「決まっているでしょう。あなたは、真夫君の奴婢になるのよ。もしかしたら、真夫君が気紛れであなたを犯したくなることもあるかもしれないじゃない。だから、あなたのことについては、克明に教えておこうと思うのよ」

 

「わ、わたしに、その孤児の少年に抱かれろと言うんですか──」

 

 かおりがむっとして言った。

 その顔は真っ蒼だ。

 かおりにとって、それがどれだけ屈辱的であることなのかが、その反応でわかる。

 

「……質問に答えなさい。男性経験は何人? それとこっちは事前調査をしているから、もしも、事実と異なるようなら、映像公開よ」

 

 玲子は冷たく言った。

 

「……ろ、六人です……」

 

 すると、やっとかおりがか細い声で言った。

 玲子は、さらにその相手について喋らせた。

 六人のうち三人は、例の三人組だが、それ以前のふたりは、いずれも名の通った家の青年だ。初体験は、中学生のときで、受験のときに雇った家庭教師の大学生とらしい。

 なかなかの尻軽ぶりに、玲子も少々呆れた。

 

 玲子は喋らせ終わってから、懐に隠していたボイスレコーダーを机に置いて再生した。

 隠しカメラとマイクでも、かおりの裸身と声は記録しているのだが、この娘は、じわじわとわかりやすく追い詰めるのが一番効果的だろう。

 

 かおりの声で、最初に名前を告げるところから始まり、次いで男性経験を赤裸々に話す声が再生され始めると、かおりがぎょっとした顔になった。

 

「今後、わたしだけじゃなく、真夫君や恵さんに、反抗的なことをしてごらんなさい。これを学園の全寮に流すわよ。さぞや、話題になるでしょうね」

 

 かおりが驚きで目を見開いた。

 だが、玲子はもうかおりの相手をするつもりはない。

 無視して立ちあがると、理事長室に一度置いたC級生徒用の制服と靴の入った袋を持って来て、かおりに渡した。

 

 かおりはひったくるようにそれを受け取ると、がさごそと中をすぐに探り出す。

 だが、すぐに顔をあげた。

 

「……あ、あの……し、下着がありません。せ、制服と靴だけです」

 

 かおりが訴えた。

 玲子は冷笑をかおりに向ける。

 

「靴下はあるでしょう。手間をかけさせた罰よ。下着は没収。真夫君に頼むのね。それまでは、そのノーパン、ノーブラで制服だけですごしなさい……。それとあなたが、特別寮に持って行っていい荷は、段ボールひとつにまとめて、すでに移動させたから、A級生徒用の寮には戻る必要はないわよ。もっとも、戻ろうとしても、認証リストからあなたは外しているので寮には入れないけどね……。ほかにも、学園内のすべての施設に入ろうとしても、ロックがかかって警告音が鳴るわ」

 

 学園内の全施設には、声紋と眼の生態認証システムチェックがあり、許された者しか出入りはできないようになっている。

 従者生徒である「C級生徒」は、すべての施設にひとりで入る権限がなくなるので、A級生徒からC級になったかおりは、すでに修学施設とC級生徒用の食堂、そして、これから生活することになる特別寮の真夫の部屋以外には出入りできないようになっている。

 与えられなかった下着を入手しようとしても、売店で購入することもできないというわけだ。

 

「……へ、部屋に入れないって……。わ、わたしのほかの荷はどうなるんですか? か、勝手に持っていっていい荷だけを箱詰めしただなんて……」

 

 かおりは玲子の言葉の中で、それに一番ショックを受けたようだ。

 

「余分な荷物は白岡家に送り返したわ。あなたは、C級生徒になったから、不相応な個人荷物は学園には置けなくなったと説明してね。とにかく、その制服を着たら、じっくりと自分の立場を理解して、これから仕えることになる真夫君の部屋に行きなさい。そして、隅々まで掃除よ。あなたには、わたしの眼が光っていることを忘れないようにね」

 

 玲子はその言葉を言い捨てて、理事長室ではなく廊下に出る扉に向かった。

 かおりは、自分がC級に落とされたことを実家が知っているということに驚いたようだ。

 

 だが、玲子はかおりがもっと衝撃を受けることがあるということを知っている。

 実は、かおりが所有している携帯電話の契約はさっき解除契約を終え、もう使えなくなっている。この学園は深い山中にあるために、徒歩ではどこにも行けない。

 外部との連絡なしに、生徒がひとりで逃げることは不可能だ。

 

 玲子は、呆然としているかおりを部屋に置いたまま、廊下に出た。

 そして、疲労感に襲われて、大きく息を吐いた。

 

 だが、次の瞬間、びっくりしてしまった。

 理事長室に近い生徒会の部屋の前に、さっきはいなかった秀也がいたのだ。

 しかも、こっちを見てにやにやと笑っている。

 玲子は眉をひそめた。

 

 なんで、ここに……?

 

「そんな顔をするなよ、玲子。俺は生徒会の副会長だぜ。副会長が生徒会の前にいて、なにがおかしい」

 

 秀也は笑っている。

 だが、なにかを企んで愉しんでいるようなそんな顔だ。

 玲子は秀也に薄気味悪いものを感じた。

 

「……それにしても、とんだ女狐だったな。あの白岡かおりは……。だが、お前の女狐ぶりも愉しかった。なかなかに面白い見世物だったよ」

 

 玲子はぎょっとした。

 秀也は、あの生活指導室での出来事をどこかで観察していた?

 

 理事長室の隣のモニター室には秀也はいなかったので、どこかほかの場所から秀也は、玲子たちを見ていたということだろうか……?

 とにかく、玲子はちょっと驚いた。

 

 そのとき、生徒会室の扉が開いて、ひとりの女子高生が出て来た。

 生徒会長の西園寺絹香だ。

 だが、なんとなく様子が不自然だ。

 歩き方がぎこちなく、額に不自然な汗をかいていて、顔が真っ赤だ。

 

 はっとした。

 

 この秀也が、これまで玲子以外にも、何人かの女子生徒を「愛人」のようにしているという事実は承知している。

 ただ、玲子はこれまで頻繁に学園内に来ることはなかったので、秀也の愛人という女生徒が、どういう素性の者たちであるかということまでは知らない。

 

 だが、秀也に続いて部屋からできていた感じの西園寺絹香の様子を垣間見ると、どうやら絹香は、秀也の愛人のひとりではないかと思った。

 学園の四菩薩の一角である生徒会長の西園寺絹香だが、考えてみれば生徒会長の絹香と副会長の秀也は、一緒にいるときが多いだろう。

 秀也が、美少女の絹香に手を出さないということは、あまり考えにくいことだ。

 

「あっ……、工藤さん」

 

 絹香が玲子の存在に気がついて、ぎくりと身体を反応させた。

 工藤というのは、玲子のことであり、多くの生徒が、理事長代理である玲子のことをそう呼ぶ。

 

 それにしても、絹香のあの反応……。

 おそらく、なにか淫らな仕掛けを秀也にされている……。

 玲子にはそれが本能的な勘でわかった。

 

「四菩薩の筆頭である西園寺絹香と新菩薩の筆頭である玲子さんの初顔合わせだな。これを機に仲良くしろよ。まあ、あんたも理事長代理なら、これからは、生徒会長である絹香と昵懇でなければならんだろう? 折角だから紹介するぜ」

 

 秀也が言った。

 理事長代理をすることになった玲子が生徒会長の絹香と仲良くすべきというのは、確かにそうなのだが、それよりも、秀也が「新菩薩」と口にしたことを玲子は訝しんだ。

 

「新菩薩とはなんですか、秀也君?」

 

 玲子の物言いも、秀也の物言いも、他生徒である絹香を意識した他人行儀のものだ。

 理事長代理の玲子と生徒の立場の秀也があまりに密接な間柄であることが他の生徒に知られるのはまずい……。

 

「知らねえのか? もちろん、四菩薩というのは、この学園の生徒が言い出した学園のトップ美女四人のことだが、あんたが理事長代理になったことで、さらに菩薩を加えなければならなくなったと専らな風評でな。いまは玲子さんを含めた新菩薩というのを決めようと、多くの生徒たちが躍起になっているらしいぜ。本当に、ガキのすることは面白いな」

 

 自分自身が同年代のくせに、秀也はまるでずっと年嵩のある男のような物言いで笑った。

 

 それにしても、「新菩薩」?

 

 まあ、秀也ではないが、確かにこの世代の高校生のすることは面白い……。

 

「おい、工藤玲子──。お前、覚悟はできてんだろうなあ──」

 

 そのとき、突然に激しい剣幕の声が背後からした。

 玲子は振り返った。

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