※この作品はR-18です。

淫魔王のいる学園【完結】   作:ドン・ドナシアン

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第6章  前夜【恵、玲子】
 33話 カラオケ遊び


 約束の場所は、大通りに交差するアーケード内にあるカラオケボックスだった。週末の夜ということで、場内はいっぱいであり、空き室待ちのグループもいくつかいた。

 

「店長はいる?」

 

 玲子は、彼らの前を通り過ぎて、カウンターに向かうと、自分の名刺を差し出した。

 すると、受付係をしていた若い女が首を傾げながら、奥に入っていき、すぐに慌てたように四十過ぎの男が出てきた。

 この店長には面識はないが、全国にチェーン店が拡がっているこのカラオケ会社は、豊藤グループの末端企業のひとつだ。

 玲子が差し出したのは、総帥である豊藤龍蔵の部下としての肩書の名刺であり、玲子がここにやって来ることは、さっき電話で知らせていた。

 だから、店長は驚いて、玲子を出迎えにきたのだろう。

 

「さっき連絡をした工藤です。仕事ではありません。プライベートです。二十二号室のお客様はまだ在室かしら?」

 

 玲子は言った。

 二十二号室というのは、真夫から連絡のあったボックス番号であり、恵とともにそこで玲子を待っているのだ。

 店長は、受付記録を確認して、一応、あと一時間半の予定だと玲子に教えてくれた。

 

「では、退出時刻はこちらから連絡するまで延長です。確認コールは必要ありません。退出のときには、こちらから連絡します……。それと、ここには監視カメラがあったわね」

 

 玲子は言った。

 店長は頷いた。

 

「二十二号室の監視は外しなさい。巡回もしないでください。それと、先に入っているふたりは、なにか注文をしたのかしら?」

 

「……いえ、入室のときに、ワンドリンクを注文しただけですが……」

 

 店長は当惑気味に言った。

 そうだろうと思った。

 昨夜、明日はカラオケボックスにでも遊びに行くというようなことを話していたので、玲子は事前にこのカラオケ店の場所を教えたのだ。

 ここなら、なんでも注文してもいいし、しかも、料金は支払う必要はないとも告げていた。

 だが、あまり、贅沢なことや、特権を駆使するくせのないふたりは、玲子の名を出すことなく、普通に受付をして空き室待ちでしばらく待ってからここに入ったようだ。

 玲子は、それをここにやって来る直前に、それを知って歯噛みした。

 

 真夫は特別な人間だ。

 

 カラオケに入りたければ、店ごと貸し切れるし、このカラオケ店に限らず、宿泊しているホテルで扱うどんな料理や飲み物でも、代金なしで贅沢に飲み食いして問題ない。

 だが、どうも、真夫も恵も、贅沢をしない習慣が身についているのか、ホテルのレストランにしても、ルームサービスにしても、それほど高価なものは食べないし、飲み物だって、備え付けのミネラルウォーターどころか、水道の水で済ませてしまう始末だ。

 このカラオケボックスについても、玲子の名を出せば、特別待遇で扱われるように手配してあり、それを説明したつもりだったが、あのふたりは、ほかの客と同様に普通に受付をしてしまったのだ。

 もっとちゃんと説明しておけば、こんなカラオケボックスのロビーで待たせるような失礼をしなくて済んだのにと、玲子は思った。

 

「では、フルーツの盛り合わせ……。そして……」

 

 玲子は、真夫と恵が好きそうなものを数種類見繕って、部屋に運ぶように命じた。

 飲み物については、ふたりが注文したものを大きな容器に入れて、氷やグラスなどとともに、トレイに載せて運べとも言った。

 さらに、代金については、これで処理せよと指示して、手持ちのクレジットカードを差し出した。

 

「すぐにしなさい」

 

 店長は、玲子のてきぱきとした指示に気後れしたようになり、すぐにやりますと応じた。

 玲子はすぐには真夫たちのいる部屋には向かわずに、注文したものが準備できるまで待ち、料理と飲み物を載せたトレイとともに、部屋に向かった。

 二十二号室はたまたま、この店の最奥の部屋だ。

 このカラオケ店は、この界隈ではもっとも大きな敷地面積があり、廊下も長い。

 玲子は突き進んだ。

 

 トレイを押す店員を手前で待たせて、覗き窓から室内をそっと覗いた。

 ふたりがいた。

 歌っているのは恵であり、少し前に流行ったグループソングを熱唱していた。

 

 玲子は、ちょっとほっとした。

 実のところ、もしかしたら、室内で「プレイ」でもしていないか心配だったのだ。

 だが、こういう場所で、そういうことをすると、すぐに店員が駆けつけてきて客を追い出すか、場合によっては警察に通報するシステムになっている。

 だから、玲子の名を出してから入って欲しかったのだが、いずれにしても、「いまは」ただ普通にカラオケを愉しんでいるだけのようだ。

 

 しかし、少し様子が不自然でもある。

 歌っているのは恵だが、マイクを恵の口にかざしているのは真夫なのだ。

 恵の両手は、座っている椅子側に回されて背中の後ろだ。

 なにか、おかしい。

 

「も、もういいわ。戻りなさい。さっきも言ったけど、この部屋については巡回は不要です」

 

 トレイを受け取り、慌てて店員を追い返す。

 部屋をノックしてからトレイとともに入った。

 

「あっ、玲子さん」

 

 恵が歌をやめて、トレイを押しながらやって来た玲子に声をかけた。

 室内は、四畳半くらいのスペースであり、六人分の机と椅子。そして、カラオケ機器とディスプレイがあった。

 

 真夫が玲子ににっこりと笑いかけて、手で挨拶をしてきた。

 玲子は、ただそれだけで、胸が締めつけられるような感じになり、同時に全身がかっと熱くなるのがわかった。

 

 わからない……。

 

 とにかく、真夫に対する玲子自身の反応は異常としか思えない。

 だが、真夫に会うと、いつもそれだけで頭がぼっとして、なにも考えられなくなる。

 こんな気持ちになった経験がないので、玲子はどうして、そんな風になってしまうのか、皆目見当がつかないでいる。

 

「遅くなりました、真夫様、恵さん。これはおつまみにどうぞ。飲み物も作り替えますね」

 

 玲子は、大皿に乗せた果物や食べ物を机に置くとともに、空になりかけていたふたりの前のグラスを取りあげた。

 新しい飲み物を作っていく。

 

「あさひ姉ちゃん、歌を途中でやめたから、罰が三個だよ。さあ、次はどこを外そうかな」

 

 そのとき、真夫が中途になった演奏を中止させるとともに、恵に手を伸ばした。

 

「そ、そんな、いまのはなしよ、真夫ちゃん。だって、玲子さんが来たんだもの。ねえ、いまのはなしだったら」

 

 恵が顔を真っ赤にして目を見開く。

 玲子は違和感を覚えた。

 

「駄目だね。じゃあ、三点分でブラを外してしまおう。それで勘弁してあげるよ」

 

 真夫が笑いながら恵の胸元に手を伸ばす。

 玲子はぎょっとした。

 部屋の外から見ただけでは気がつかなかったが、恵の恰好は普通じゃなかった。

 ミニスカートの下は靴も靴下もなく素足であり、ブラウスのボタンは上から三個まで外れていて、しっかりと白いブラジャーが見えている。

 しかも、スカートのホックは完全に外れているようだ。

 あれでは、立ちあがるだけでスカートは足首に落ちてしまうだろう。

 

 さらに、両手は背中側で拘束されている気配だ。

 両手を背後に回したまま、真夫がマイクをかざしていたのは、そのためなのだと悟った。

  

「ま、待って、待ってください、真夫様。こういうところには、監視カメラがあるんです。待って──」

 

 玲子は急いで言った。

 監視カメラは、客に不快な気持ちにさせないように隠しカメラになっていて、無線で映像を事務室に送るようになっている。

 玲子は、バッグから映像データの送信を遮断する装置を隠しカメラの位置に貼りつけ、映像の伝送をカットさせた。

 監視をするなと命じたが、念のためだ。

 また、廊下から巡回するために扉の一部に、小さな監視穴があるのだが、そこもシールで貼って隠す。

 

「へえ、そんな風になってんだ。知らなかったですよ」

 

 真夫が玲子の動作を見て、感心したように笑った。

 

「で、でも、なにをしていたのです?」

 

 玲子は処置を済ませてから訊ねた。

 

「カラオケですよ。採点装置で遊んでたんです。でも、ただ歌ってもなんだから、得点が八十を超えなかったら、少しずつボタンやホックを外していくというルールにしたんです。だけど、あさひ姉ちゃんは意外にしぶとくてね。結構抵抗するんですよ」

 

 真夫が笑った。

 玲子は驚いた。

 やっぱり、エッチな遊びをしていたのだと思ったが、慌ててやって来てよかったと思った。

 放っておけば、通報されてもおかしくなかった。

 

「だって、玲子さん、真夫ちゃんたら、狡いんですよ。歌っているときに、わざとくすっぐたりするんです。そんなんで歌えるわけないと思いませんか」

 

 恵が玲子に訴えた。

 玲子は嘆息した。

 

「あ、あの……。さっきも言いましたが、こういう場所では、おかしなことをすると、警察に通報されたりすることもあるんです……」

 

 玲子は困惑して言った。

 しかし、真夫はにやりと笑っただけだ。

 

「……でも、その怖れは、玲子さんが排除してくれたんでしょう。つまり、もう、ここで遊んでも大丈夫なんじゃないんてすか?」

 

 真夫が片目をつぶった。

 どきりとした。

 この顔はなにかを企んでいる表情だ。

 おそらく、真夫は、恵だけでなく、玲子にも、これからエッチな悪戯をしようとしている……。

 それはわかっている……。

 

 だが、困惑しつつも、なぜか本気で逆らう気になれない。

 むしろ、玲子の一部には、真夫だったら取り返しのつかないくらいの羞恥責めに遭ってもいいという、期待感のようなものまである。

 玲子は、自分の感情に戸惑うしかなった。

 

「……とにかく、あさひ姉ちゃんはブラ取りあげね。抵抗は無意味だよ」

 

 真夫が恵の胸に手を伸ばした。

 鋏を準備していたらしく、ボタンの外れているブラウスにそれを差し込んで、肩紐と横を切って、恵からブラジャーを抜いてしまった。

 しかも、乳首が見えるぎりぎりのところまでブラウスをくつろげてしまう。

 

「あ、ああ……。は、恥ずかしいよ、真夫ちゃん……」

 

 白い乳房と桃色の乳頭の一部を露出されてしまった恵が、顔を真っ赤にして俯く。

 羞恥に悶える恵だが、その両手は背中で拘束されているために、服を戻すことはできない。

 玲子は、そんな恵の仕草を見ていると、なぜか股間がじゅんと濡れてくるのを感じた。

 

「可愛いよ、あさひ姉ちゃん……。じゃあ、次は玲子さんだね。でも、遅れた分は、最初からいくらか脱がすよ。そうじゃないと、あさひ姉ちゃんに比べて、ハンディをもらい過ぎだからね」

 

「そ、そんなあ……」

 

 玲子は抗議しようとしたが、真夫に腕を掴まれると、それでもう気が萎えてしまって、一切の抵抗心を奪われてしまう。

 身に着けていたのはスーツだが、最初に上着を取られて、さらにスカートも脱がさせられた。

 

「ま、真夫様、やっぱり、こんなところでは……」

 

 真夫の言いなりになってスーツの上下を脱いでしまったが、上はボタンのついた白いシャツで、下は横で紐で結ぶ白い下着だけの姿だ。

 やはり、こんな場所で半裸になる羞恥に、内腿が震えてしまう。

 いくら、従業員に念を押してきたとはいえ、扉に鍵がつけられているわけでもないし、扉を開いて覗かれでもしたら終わりだ。

 緊張のあまり、一気に全身から汗が吹き出す。

 

「手を後ろに回してよ」

 

 真夫に両手を取られた。

 やっぱり駄目だ……。

 真夫には絶対に逆らえない……。

 手首に背中側で手錠をかけられる。

 

「ま、真夫様、どうか……」

 

 玲子は小さな声で訴えたが、自分でもなにをお願いしているのかがよくわからなかった。

 こんなことをやめて欲しいのか、それとも、責めを少し緩めて欲しいのか……、あるいは、ただ、口先でそう言っているだけで、玲子の本心は、すっかりと真夫に弄ばれたがっているのか……。

 

 自分でもわからない……。

 

「さあ、歌を選んでください、玲子さん……。制限時間は十秒だよ。歌を入れられなければ、素っ裸になるだけじゃなく、これを塗るよ」

 

 真夫はさっと背後から小さな容器を取り出した。

 玲子ははっとした。

 それは、ホテルのプレイルームに備え付けてある強力な掻痒剤だった。

 あれを局部に塗られでもしたら、地獄の痒みに襲われて、玲子は泣き叫ぶしかなくなる。

 顔がさっと蒼くなるのがわかった。

 ふと見ると、真夫が掻痒剤を取り出したのを見て、恵もまた、引きつったような表情になっている。

 

「……あと十秒」

 

 真夫が言った。

 

「だ、駄目なんです。わ、わたしは歌が下手で」

 

 玲子は必死で言った。

 実のところ、玲子は音痴だ。

 人前で歌うなどとんでもない。

 ある意味、まだ裸になった方がましだと思うくらいだ。

 

「五秒、四……」

 

 しかし、真夫は容赦なく、カウントダウンをする。

 

「ま、真夫様……。ゆ、許してください」

 

 玲子は言った。

 しかし、真夫は、笑いながら数字を唱えるだけだ。

 

「ど、どんぐりころころを──」

 

 玲子は仕方なく叫んだ。

 残り一秒。

 だが、真夫は呆気にとられている。

 

「どんぐりころころ?」

 

 真夫だ。

 

「童謡のですか? 玲子さん、童謡を歌うんですか?」

 

 対面で座るかたちになっている恵もきょとんとしている。

 玲子はかっと赤面した。

 

「わ、わたし、本当に歌は……」

 

 玲子は泣きそうな声で言った。

 だが、真夫は笑いながら機器を操作して、マイクを玲子にかざす。

 前奏が流れ出した。

 仕方なく、玲子は口を開く。

 だが、歌を人前で歌うなど、玲子の人生ではありえないことだ。

 

 生まれつき、音痴のいう人間は絶対にいる。

 玲子がそうだ。

 自分でいうのもなんだが、ほかのことなら、玲子はどんなことでも、少し練習するだけで、一流に近いことをこなせる。

 しかし、歌だけは駄目なのだ。

 

「どん、ぐり、ころころ、どんぶりこ」

 

 とにかく、歌いだした。

 だが、自分でも歌い出しから間違っていることがわかる。

 曲は耳に入るが、それをどうしていいかさっぱりわからない。

 真夫も恵も笑いはしなかったが、結局散々なものだった。

 なぜか、画面の歌詞の文字が変わっても、まだそこを歌い終わってなかったり、逆に、曲は続くのに、もう画面には歌う歌詞がなかったりするのだ。

 

 拷問のような時間が終わった。

 採点は五十五点。

 真夫の言った合格点には遥かに及ばない。

 玲子は項垂れてしまった。

 

「ある意味、童謡をそんなに下手に歌えるなんて才能ですね」

 

 真夫が笑った。

 

「か、からかわないでください──」

 玲子は声をあげた。

 

「でも、玲子さんにも苦手なものがあるんですね。ちょっと、安心しました」

 

 今度は恵が言った。

 

「わ、わたしが音痴なことを誰にも言わないでくださいね。絶対ですよ、もう──」

 

 玲子は頬を膨らませて見せた。

 すると、真夫と恵がぷっと噴き出した。

 玲子も苦笑するしかない。

 だが、ふたりが声をあげて笑うので、玲子も結局声をあげて笑った。

 そして、しばらく三人で笑い合った。

 

「でも、罰は罰ですからね。じゃあ、次から、じゃんけんにしましょうか。野球拳です」

 

「野球拳?」

 

 だが、玲子は首を傾げた。

 玲子も恵も後ろ手に手錠をかけられている。

 どうやってじゃんけんをするのだろう。

 だから、そう言った。

 

「だったら、手以外でやればいいでしょう。でも、その前に──」

 

 真夫が玲子の腰に手を伸ばす。

 

「ああっ、やっ」

 

 玲子は逃げようとしたが、真夫は玲子の腕を掴むと、腰の横で結んでいる紐を解いて、あっという間に下着を取りあげてしまった。

 

 玲子は下半身を素っ裸にされてしまい、思わず椅子からおりて、床にしゃがみ込んだ。

 

「じゃあ、じゃん拳のやり方を説明するよ」

 

 だが、真夫はそれを無視して語り始めた。

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