「お寝覚めか……」
男の声がした。
同時に複数の男たちの笑い声もしたと思った。
恵は、まだ痛みの残る朦朧としている頭をなんとかあげた。
どこか薄暗い小屋のような場所だ。
だが、次の瞬間、いきなり強い光を当てられて、なにも見えなくなった。
ここは……?
どうして……?
思考を巡らすが、とっさには思い出せない……。
しかし、すぐに学園の中で自動車を走らせている途中でかおりに出くわし、車を停めて車外に出たところをジャージ姿の覆面に襲撃をされたという記憶が蘇った。
だんだんと光の明るさにも目が慣れて、恵の視界に覆面姿の若い男たちの姿が入って来た。
その瞬間、恵をパニックの発作が襲った。
「んんっ」
ありったけの悲鳴をあげたつもりだったが、口に丸いボールギャグが押し込まれている。
うまく声が出ない。
怖い……。
怖い……。
目の前に男……。
久しぶりに味わう恐怖症の発作だ。
手足が痙攣のように震えはじめるとともに、すっと頭から血の気が引くのがわかった。
同時に激しい嘔吐感を襲い掛かる。
「んんっ、んおおっ、んぐううっ」
恵は激しく暴れた。
だが、手がまったく動かない。
それでわかったが、恵は両手首を束ねて縄で天井から吊るされていた。そして、左足だけが床に装着されている金属の杭に縄で足首を固定されている。
恵は運動部の倉庫を思わせる場所の中心で、両手を頭の上にあげて立たされていたのだ。
「んぐうっ、んんっ、んんっ」
縄はとてもじゃないが、暴れて外れるようなものでもない。
それでも、恵は狂ったように暴れ続けた。
全身を恐怖心が襲いかかっている。
気がつくと、あっという間に滴り落ちるような汗をかいていた。
その汗が木の床にぼたぼたと落ち続ける。
「様子がおかしいですよ、竜崎さん……。怖がるのは当たり前だけど、この汗は異常ですよ。それに鳥肌がすげえ……」
恵の前に立っている覆面の男が言った。
目の前には六人ほどの覆面の男がいたが、その中でもっとも小柄な男が中心にいる男に向かって心配そうな口調で言った。
覆面の男たちに心当たりはないが、この学園の生徒たちだろう。
恵にかすかに残っている理性がそれを悟らせた。
ただ、全員が筋肉質の体格をしている。
おそらく、なんらかのスポーツをしているのだと思う。
でも、なんでその連中が恵を襲うのだ……?
いずれにしても、襲撃者が狼狽えるほどに、恵は異常な状態らしい。
恵は完全にパニックに襲われていた。
しかも、だんだんと呼吸まで苦しくなる。
助けて……。
怖い……。
真夫ちゃん……。
助けて、真夫ちゃん──。
恵はボールギャグ越しに必死に、声にならない悲鳴をあげた。
「てめえ、なんで俺の名を呼んだ──」
そのとき、声をかけられたもっとも大柄の少年が小柄な男を蹴り飛ばした。
「んげえっ、す、すんません──」
壁に吹っ飛んだその小柄な少年が必死に頭をさげる。
「……まあいい……。いずれにしても、こんな状況じゃあ、興醒めだ。もう少し後で使うつもりだったが、さっそく使うか……。あんたには、ちょっとばかり、気持ちよくなってもらうぜ。レイプされたものの、俺たちの珍棒が気に入って、いつの間にか、淫乱に腰を振ってよがり狂ったというのが、今回の設定なんだ……。おいっ」
巨漢の男の合図でさっと少年たちが恵に群がり、恵の身体を前後からがっしりと掴んだ。
ひとりが筒状の細い金属の器具を恵の首筋に近づけた。
「んんっ」
すぐにちくりという痛みを感じた。
針のようなものに刺されたと思った。
さらに反対側からも首に刺される。
注射器……?
金属の道具は注射器のようだ。平らな先端を肌に押しつけてボタンを押せば、針が飛び出して薬液を体内に注入する仕掛けのようである。
得体の知れない薬物を注射されたとわかったとき、恵を別の意味でパニックが襲った。
だが、いきなり、がくりと全身が脱力した。
それとともに、全身にまるで無数の蟻が這い回るような感覚がやってきた。
同時に、頭がまたもや朦朧としてきた。
身体だけでなく、思考も動かなくなってくる。
そのため、恐怖症の発作は薄れてきたが、それは身体への新しい恐怖に変わった。
「う、あううっ、ああ……」
恵は声を出していた。
あっという間に、全身がまるで炎にでも炙られているように熱くなってきたのだ。
しかも、局部が怖ろしいほどに疼いてもくる。
なにを注射されたのかは、薄々わかった。
おそらく、媚薬だ……。
しかも、信じられないくらいに強力で即効性のあるものだろう。
だんだんと全身に凄まじい疼きを感じてくる。
特に、股間だ。
まるでただれるように疼く……。
それだけでなく、乳首の疼きもすごい。
ブラジャーに包まれているふくらみの裾野から、尖った先端にかけてびりびりと電流でも流れているようだ。
発作による大暴れをやめて、荒い息を始めた恵の前に巨漢が立った。
顎を掴まれて、顔を上に向けられる。
とっさに振りほどこうとしたが、信じられないくらいに力が強い。
媚薬の効き目が回りだした恵には、男の手を払いのけることはできなかった。
「どんな気持ちだ、あんた? これはアマゾン原産の特殊な麻薬が配合されていてな。これを打たれれば、どんな女でも狂ったようによがり狂う。系列の医薬会社から、ひそかに回してもらったものだ。もちろん、外には出回ってねえ、正真正銘の媚薬だ。以前に、親父のつてで遊んだモデルに使ったが、そりゃあ、大変だったぜ。みんなで廻したときには、最後には泡を吹いて、小便まで垂れ流したからな。まあ、小一時間もすれば、あんたもそうなる」
巨漢が言った。
そして、恵を押さえつけていた男たちとともに、巨漢も離れていく。
その巨漢がさっき蹴飛ばした小柄男を見た。
「おい、お前、罰として撮影係だ──。すぐに大人しくなる……。そうしたら、始めるぞ──。ただし、お前の番は、俺たちがこの女のマンコを精液だらけにしてからだ」
「は、はい」
小柄な男が渋々という感じで、どこからかビデオカメラを取り出して、恵にレンズを向ける。
撮影……?
恵は自分を映し始めたカメラに目を丸くした。
しかし、だんだんと鈍くなる頭のおかげで、恐怖症の発作は緩まって来た。
だがら、少しだけ思考が戻ってくる。
そして、この小柄の少年が大柄の少年を“竜崎”と呼んだことを思い出した。
その名に記憶がある。
確か、竜崎というのは、真夫が特別寮に入るにあたって、玲子がS級生徒からA級生徒に格下げした男子生徒の姓だ。
つまり、これは真夫に対する腹いせ──?
恵は訝しんだ。
「さて、じゃあ、いつものやつから始めるか」
竜崎という学生だと思わせる巨漢が笑いながら言うと、ほかの男たちがさっと動き始める。
なにをされるのかと思ったが、右の足首に革枷が嵌められて、その枷についている短い鎖が、天井についている滑車に繋がっている細い鎖に接続される。
恵は滑車の先を見た。
足首に繋がっている鎖が滑車を通って、床に垂れている。
その先端は、恵の頭の高さくらいで宙に浮いていて、少年たちが金属の接続具を使って、鎖の先にバーベルの重しを装着しようとしている。
はっとした。
なにが始めるのかわかったのだ。
しかし、次の瞬間、鎖にとりついていた少年たちがさっと手を離した。
鎖にバーベルの重さが加わり、それが滑車を通じて、すごい力で恵の右足首を引っ張り出す。
「んああっ、ああっ、ああっ」
恵は歯を食い縛った。
右足首が上に引っ張られるが、あげてしまえば短いスカートから股間がさらけ出されることになる。
さっきの媚薬で猛烈に疼ている股間をこの少年たちの前に出してしまえば、なにをされるかわからない。
恵は必死で足に力を入れた。
「おお、すげえな。あの媚薬を打たれて、最初の重りの難関を堪えたのは、あんたが初めてかもしれねえ。だが、時間の問題だ。媚薬はどんどん効いてきて、あんたの力を奪うし、重りはいつまでもあんたの足を引っ張り続ける。あんたが脚を上にあげきってしまったのが祭り開始の合図だ」
竜崎が笑った。
そして、さっとポケットからあるものを取り出して、恵に示した。
目を疑った。
それは恵がはいていたはずの下着だった。
そういえば、股間を覆うものに、物足りなさのようなものを感じていた。
どうやら、気絶をしているあいだに、下着を脱がされていたのだ。
「やっとはいてないのに気がついたのかい、美人の姉ちゃん。随分と色っぽい下着をしてるんだな。紐パンとはな……。そして、パイパンもあんたの恋人の坂本って小僧の趣味かい?」
「もちろん、すでにしっかりと撮影しているよ。だから諦めて脚を拡げな。そうしたら、ここにいるみんなで、あんたをやってやるからよ。すぐに、恋人のことなんて、もう考えられなくなると思うぜ。どんな女もさっきの媚薬でそうなった」
竜崎の左右の少年たちが、大人のような好色な笑い声をあげた。
だが、恵にはもうなにも考えられない。
足がつるような猛烈な痛みが右足に襲い掛かっている。
そして、媚薬に痺れはじめている股間から、つっと蜜が垂れ落ちてスカートの裾から下に流れるのも感じた。
恵は懸命に脚に力を入れ続けた。
「絹香さんにしつこくされて、なにかお困りのようでしたので……。ご迷惑でしたか……?」
理事長室に入ると、すぐに玲子さんが立ちあがって、もじもじとしながら真夫に歩み寄って来た。
学園登校の初日であり、真夫は昼休みになったところで、メールの呼び出しを受けて、玲子さんのいる理事長室にやって来たのだ。
理事長室に隣接する隠し部屋には、この学園中に備え付けられている無数の隠しカメラとマイクを映像や音声を確認できる装置がある。
それは、教場や各種施設、グラウンドやレクレーション施設だけにとどまらず、生徒の寮の個室、浴場にシャワー室、トイレの中までの情景をここで確認することができる。
また、その記録等も残すことができ、真夫は玲子さんから、この学園の女生徒のオナニーシーンや、あるいは学園内で行われているセックスシーンなども観ることができると教えられた。
真夫は、とりあえず、そんな隠し映像などには興味は湧かなかったが、監視システムそのものにはびっくりした。
ともかく、玲子さんは、それを使って、絹香からSS研のことでしつこくされていた真夫のことを確認していたのだろう。
それで、わざわざメールをして、理事長室に呼び出し、絹香から離れる口実を作ってくれたようだ。
もちろん、一介の生徒が無遠慮に理事長室でひとりで入るところを誰かに見咎められるわけにはいかない。
真夫がやってきた経路は、あまり人のやって来ない廊下にある隠し扉からやって来る通路であり、やはり、隠し扉からその通路から部屋に入るものだ。
事前に玲子さんに教えてもらっていたものであり、初めて使ったが、すぐに使いこなすことができた。
部屋に入る前に、通路側から理事長室を覗き穴から確認し、室内にいるのが玲子さんのみであることはしっかりと確認をしている。
真夫を出迎えたスーツ姿の玲子さんの顔は真っ赤だった。
額にも薄っすらと汗をかいている。
真夫はほくそ笑んでしまった。
「本当にそれだけですか? ほかにも用事があるんじゃないですか」
真夫は理事長室にあるソファーに腰をおろす。
玲子さんは困ったような赤ら顔で、真夫の前に立ったままだ。
「スカートをめくってください。俺の可愛い奴婢理事長代理様が、ちゃんといい子だったかどうかを確かめるんです。それとも、仕事をしながらいやらしいことを考えていたような淫乱理事長代理だったら、罰を与えようかな」
真夫は笑って言った。
もちろん、戯れだ。
しかし、なんとなく、このところ、玲子さんの性癖の傾向もわかってきた。
玲子さんは、なぜか真夫の仕掛ける言葉責めや陰湿っぽいいじめのような責めが好きだ。そんな責めをした後で、思い切り可愛がってあげると、日ごろの生真面目っぽさが嘘のように、玲子さんは、でれでれになる。
「ああ、意地悪を言わないください……」
案の定、玲子さんは色っぽく悶えたような仕草をする。
早速、スイッチが入ったみたいだ。
真夫はちらりと時計を見た。
この学園の昼休みは長く、昼食を含めて二時間はある。
玲子さんのことだから、真夫がここで食事をしたいと言えば、すぐに準備をしてくれるだろうし、あるいは、一時間ほど、ここで玲子さんといちゃいちゃしてから、一度寮に戻ってもいい。
あさひ姉ちゃんも戻る頃だし、さっきかおりも、一度寮に戻ると言っていた。
いずれにしても、この十日間ほど、あさひ姉ちゃんだけでなく、玲子さんと肌を接しない日はなかったのに、学園にやって来てからは、玲子さんと交わる機会がさすがに減っている。
真夫は、それが気になっていた。
それに、時折垣間見る玲子さんの感情には、なぜか、玲子さん自身に対する厭世心のようなものが垣間見えるのだ。
真夫たちからすれば、いつも完璧な玲子さんは感嘆するほど立派なのだが、もしかしたら、玲子さんはそんな自分が好きではないのかもしれない。
だが、真夫といやらしいことをするときの玲子さんは、そんな感情が消滅して、心を完全に解放している。
玲子さんが、真夫との「プレイ」を本当に愉しんでいるというのはよくわかっている。
そのくせ、玲子さんは、どうしても真夫に対して遠慮気味であり、自分から進んで求めるのは気が咎めるようなのだ。
真夫に言わせれば、エッチなくせに、ちょっと面倒な困ったお姉さんなのだ。
「ほら、早く」
真夫は言った。
玲子さんはおずおずと、短いスーツのスカートの裾を両手で掴んであげる。
「ああ……。は、恥ずかしいです、真夫様……」
玲子さんが俯きながら小さな声で言った。
スカートがめくられることで露わになった玲子さんの股間には、革製の細い貞操帯がしっかりと食い込んでいる。
玲子さんに嵌めるために、時子婆ちゃんに頼んで準備してもらったものであり、見た目は革製のTバッグの下着だが立派な貞操帯だ。
腰の後ろで電子ロックがかかっていて、真夫自身が指の指紋で開錠しない限り、玲子さんはそれを外すことはできない。しかも、股間を食い込む革の縁にはワイヤーが埋め込んであり、玲子さんにはずらすこともできない。おしっこはそのままできるように、尿道口には小さな穴があるが、大便は真夫が外さないと不可能だ。
また、貞操帯の内側には、大小の張形が装着されており、それはしっかりと、玲子さんの前と後ろの穴に挿入されている。しかも、遠隔操作で張形を動かすこともできる。
昨夜、玲子さんに寮の部屋で会ったときに、真夫自身が玲子さんにはかせたものだ。
今日の午前中、真夫は十回ほど、玲子さんの前後の張形を短い時間動かした。
もちろん、玲子さんの仕事の予定はしっかりと把握しており、それの阻害になるような時間は避けた。それだけではなく、玲子さん側からも、真夫の遠隔の悪戯を解除できる信号操作だけはできるように仕掛けも施している。
つまり、どうしても、悪戯をされたくない状況にあるときには、玲子さん側から遠隔操作を遮断できるのだ。
その場合は、真夫にその操作を知らせるメールが自動的に入るようになっているのが、少なくとも、玲子さんは、今日の半日は、一度も自らは遠隔操作の信号は解除してこなかった。
「びしょびしょじゃないですか、玲子さん」
真夫はスカートの中を眺めてからかった。
果たして、玲子さんの股間は固く食い込んでいる貞操帯でも防げないくらいの量の蜜が縁から滲んでいる。
玲子さんがひと晩中……、そして、今朝からこの張形付きの貞操帯で悩みまくった証拠だ。
「やっぱり、こんなに濡らしていましたね……。それでも、俺を呼び出したのが、俺にいやらしいことをして欲しかったからじゃないと言うんですか?」
真夫は笑った。
「……ご、ごめんなさい、真夫様……。し、して欲しいです……。お呼び出ししたときに、もしかしたら、ここで犯してもらえるかもしれないと期待としていました……。申し訳ありません……」
玲子さんが項垂れた。
なんだか、その意気消沈した顔が可愛い。
真夫は、スマホを取り出して、アプリを出す。
真夫が時子婆ちゃんに貞操帯とともに開発してもらったものであり、「玲子さん調教ソフト」だ。
画面に出現した操作具を使って、さっそく貞操帯の淫具を振動させる。
とりあえずは、張形の方ではなく、クリトリスに接触している突起からだ。
「あ、ああっ、ま、真夫様──」
玲子さんががくりと膝を折った。
「スカートをめくったまま、じっと立っているんです。声も出しちゃいけません。これは調教ですからね」
真夫はすかさず叱咤した。
「は、はい……」
玲子さんが懸命に歯を食い縛るような表情になる。
めくられているスカートの中にある白い内腿が、小刻みに震えている。
必死で快感を耐えているのだろう。
真夫は、あっさりと振動を止めてあげた。
玲子さんはほっとしたように脱力する。
しかし、すぐに振動を入れ直す。
「あっ、ああっ……ん、んんっ」
慌てて、玲子さんが口をつぐむ。
真夫は、玲子さんが耐えようとすると、すぐにスイッチを切り、逆にほっとしたところで、振動をさせるということを数回繰り返した。
たちまちに、玲子さんは、スイッチを切っても、淫情に我慢できなくなったようにもじもじと悶え始めるようになった。
真夫は色っぽい玲子さんの姿に嬉しくなった。
興に乗ってきた真夫は、本格的に玲子さんをここでいたぶってあげたい気分になっていた。
いよいよ張形も動かそうと、画面に指を伸ばす。
そのとき、着信を知らせるメッセージがスマホの画面に出た。
かおりからだった。
真夫はスマホを操作してアプリ画面から電話用の画面に切り替える。
「もしもし、どうしたのかおりちゃん?」
「真夫君……、いえ、ご主人様……わたしは悪い女で裏切り者です……。どうか罰を与えてください……」
すると、電話の中から感情を失ったような抑揚のない口調のかおりの声が聞こえてきた。