「んうううっ」
恵は顔をしかめて呻き、またもや身体をぶるぶると震わせて気をやってしまった。
「へへ、兄貴、もう三回目ですよ。まだ続けるんですか。もうやっちまいましょうよ」
恵の身体にたかっている男子生徒が媚びを売るように、巨漢の覆面男に言った。
だが、リーダーらしいそいつは、腕を組んだまま首を横に振る。
「まだだ。まだ、その時じゃねえ。もっと狂わせろ。犯すのはそれからだ」
それだけを言った。
一度、離れた手が一斉に、恵に近づく。
恵は身動きできない身体を悶えさせて、泣き声をあげた。
どこかわからない学園内の倉庫のような場所だ。
恵は、突然に暴漢に襲われて、ここに連れ込まれ、こうやって半裸にされて身体をいたぶられている。
恵の両手は天井に向かって束ねて持ちあげられ、片脚は大きく足首を頭の上まで引きあげられていた。
身動きはできない。
口にはも脱がされた下着が詰め込まれていて、悲鳴をあげることさえできない。
しかも、身体は怪しげな媚薬を注射されたために、気が狂うほどに熱い。
その敏感な身体を四人もの男子生徒にいじられるのだ。
感じまいとしても、彼らの粘っこい愛撫に耐えきれずに、恵は甘い嗚咽を口から洩らしながら、女の樹液を滴らせるしかなかった。
真夫以外の男に身体を触れさせるなど、怖気でしかない。
しかし、どうしても感じてしまうのだ。
恵はぼろぼろと涙をこぼしながら泣き続けた。
「んんんっ、んんっ」
局部を弄られ、左右の乳房を別々の手に揉まれ続ける。
クリトリスもお尻の穴も、とにかく、薬物の影響で全身がただれるように熱くなっている身体のあらゆる場所を責められる。
恵にはどうしようもなかった。
おそらく、ここでさんざんに恥をさらされた後で、全員から犯されるのだろう。
死にも等しい汚辱の拷問……。
そして、またもや頂上に昇りかけてきた。
すると、覆面の男子生徒たちはかさにかかったように、愛撫の手を激しくする。
恵は、身体を燃えたぎらせてしまい、痛烈な快感が背骨まで貫いて、くぐもった声をあげて汗びっしょりのうなじを仰け反らせる。
いずれにしても、この男子生徒たちは、随分と女扱いに慣れている感じだ。
会話の中で口にしていたが、こういう強姦はいつもやっているのだろう。慣れた手つきで、あっという間に快感を極めさせられてしまう。
「遠慮せずにいきなよ。恋人のことなんて、俺たちが完全に忘れさせてやるからよう」
ひとりが、まるで子供をあやすような口調で恵をからかう。
そして、恵は、またもや昇天させられてしまった。
そのときだった。
勢いよく扉が外から叩かれるような音がして、次いで蹴り飛ばされた。
真夫ちゃん……。
そこにいたのは、真夫に違いなかった。
手に鉄の棒のようなものを持っていて、すごい形相で睨んでいる。
「俺の女から離れろ、虫けら」
真夫が脅すような声で怒鳴ると、つかつかとこっちに歩いて来た。
「俺の女から離れろ、虫けら」
真夫は言った。
身体を包んだのは、純粋な怒りだった。
おそらく、真夫の人生でこれほどまでに怒ったことはないだろう。
鉄の棒を掴んだまま、恵に向かって進む。
なんの棒か知らない。
ここまでやって来たとき、あさひ姉ちゃんのくぐもった声が聞こえたような気がした小屋の前にあったのを拾ったのだ。
「うわっ」
「なんだ、こいつ」
真夫が鉄の棒を持っているのを見て、あさひ姉ちゃんに群がっていた男子生徒がびっくりしたように悲鳴をあげて、あさひ姉ちゃんから離れる。
どうしてやろうかと思ったが、とりあえず、あさひ姉ちゃんだ。
真夫はあさひ姉ちゃん駆け寄る。
「遅くなってごめん」
真夫はあさひ姉ちゃんの右足首に繋がっている縄に繋がっているバーベルを外した。金具で縄で作った輪っかに引っ掛けているだけなので、留め具をひねるだけで簡単にバーベルは床に落ちた。
あさひ姉ちゃんの吊りあげられていた足が、脱力するように床まで落ちた。
次に、あさひ姉ちゃんの手首を縛っている縄を見上げる。
こっちはしっかりと結んであり、簡単に解けそうにない。
次の瞬間、背後から襲い掛かって来る気配を感じた、
真夫は身体をひねってかわすと、鉄の棒を横に振って、そいつの腹に喰い込ませる。
「ぐああっ」
襲い掛かってきたのは、とりあえずひとりだけだった。
そいつが反吐を吐きながら膝をつく。
顔全体を覆う覆面をしているが、口と眼の部分はくり貫いて穴が開いているのだ。
「こいつ、全員でかかって半殺しにしてやれ。目の前で自分の女が犯されるのを見物させてやる」
巨漢が怒鳴った。
こいつも覆面で顔を隠しているが、この巨漢が竜崎という男子生徒であることは間違いないだろう。
その言葉を合図にするように、竜崎以外の部屋にいた男たちが一斉にかかってきた。
全員がそこら辺にあった棒やら、器具やらを持っている。
とりあえず棒を振り回して払いのける。
すると、顔に白いものを投げつけられた。
石灰……?
思ったときには、粉が眼に入って見えなくなってしまった。
「くっ」
真夫は手で目を擦る。
「んんっ」
すぐそばで、あさひ姉ちゃんの悲痛な声がした。
なにかを背中に押しつけられたと思ったときには、どすんという衝撃が全身に走った。
スタンガンか……。
真夫は崩れ落ちた。
持っていた鉄の棒が蹴られて遠くにやられるのがわかった。
「押さえつけろ」
竜崎と思う男子生徒の声がした。
背後から羽交い絞めにされて、仰向けにされる。
身体の上に誰かが乗ってきた。
やっと目が見えてきたが、上から拳で顔を殴られて、一瞬視界が飛ぶ。
乗っているのは竜崎だ。
顔を続けざまに殴られて、また、視界が白くなる。
とにかく、乗られている身体を退けようと、下から脚を掴んだ。
だが、ほかの男子生徒たちに、両腕を押さえられて手を剥がされる。
顔に衝撃が来た。
上からまともに顔面を殴られたのだとわかった。
口の中に血の味が拡がる。
鼻が詰まったようになったことで、鼻血も出したことを悟った。
身体ががっくりと脱力した。
「もう一発、スタンガンをくれてやれ。そして、縛りあげろ」
竜崎が立ちあがって、腹を思い切り踏みつけた。
「んげええっ」
真夫はのたうち回った。
そこを押さえられて、またもやスタンガンを肌に密着される。
今度は首だ。
逃げようとしたが、衝撃が走って身体が動かなくなった。
「勇ましく飛び込んできやがったが、飛んで火にいるなんとやらだぜ。そうだ。柱に縛りつけたら、ズボンと下着を脱がせてやれ。恋人が犯されるのを見物しながら、おっ勃っているのを写真に撮るんだ」
竜崎が下品な笑い声をあげた。
手下たちが歓声をあげながら群がる。
また、猿ぐつわをされているあさひ姉ちゃんの悲痛な声も聞こえた。
畜生……。
畜生……。
口惜しさが身体に溢れかえる……。
いや、身体ではなく心か……。
なにかが溜まってくる。
それが破裂する感覚が襲いかかってきた。
腕と脚を押さえられて縄で縛られようとしている。
縛られれば終わりだ。
なにかが満ちた……。
破れる……。
とにかく、拘束されたくない。
真夫は強く思った。
頭が真っ白になった。
「うう……」
「あぐう……」
「うっ、うっ……」
「うう……」
気がつくと周りに男子生徒たちが倒れていた。
覆面は全部剥がされていて、顔は血だらけだ。
腕がおかしな方向に曲がったりしている。
ふと見ると、最初から襲撃には加担せずに、ビデオを回していた者も同じように呻き声をあげていた。
ビデオはぐしゃぐしゃに壊れている。
手を見ると、記憶媒体を握っていた。
なぜ、それを持っているかわからない。
あさひ姉ちゃんを撮影した記録をビデオカメラを壊す前に抜いた……?
状況的にはそうなのだが、まったく記憶にない。
「な、なんだ、お前……?」
声がした。
竜崎だ。
まだ、覆面をしたままだが、明らかに真夫に対して、怯えの様子を示している。
どうしたのだろう……?
もしかして、この五人を真夫が打ち倒したのか?
思い出してあさひ姉ちゃんを見た。
まだ両手を吊られて立たされたままだったが、そのあさひ姉ちゃんまで目を見開いて、真夫に対する恐怖を見せている。
なんだ……?
なにをやったのだ?
真夫は途方に暮れた。
「く、くそう」
竜崎が叫んで飛びかかってきた。
手にスタンガンを持っている。
いや、正確にいえば、竜崎は注意深く右手を背後に隠している。
真夫には見えていない。
だが、真夫には竜崎がスタンガンで真夫を襲おうとしているのがわかったのだ。
寸前で身体を振ってかわす。
どの方向から腕を振ってくるのか事前に頭に入ってきたのだ。
わかっているので、避けるのは簡単だ。
しかも、竜崎の身体はまるでスローモーションのようにゆっくりだ。
実際には目にも止まらないように動いているのだが、真夫には止まっているかのようなのだ。
動きがわかる。
どんどんと、事前に竜崎の動きが頭に入って来る。
真夫はかわしながら足を引っかけて竜崎を転ばせ、仰向けに倒れたところで、股間を力任せに踏んづけた。
「うぎゃああ」
竜崎が絶叫して、覆面の口のところから泡のようなものを出した。
真夫は竜崎が落としたスタンガンを拾うと、ズボンの上から股間にスタンガンをおみまいしてやる。
「んぐううっ」
竜崎が悶絶したのがわかった。
真夫の中で竜崎に対する殺意にも等しい憎しみが沸き起こる。
「そう言えば、俺のズボンと下着を脱がそうとしてくれたんだよな」
真夫はうそぶくと、ほとんど気絶している竜崎の覆面を剥ぎ取る。
次いで、ズボンのベルトを外して、一気に下着ごと引き下ろした。
「う、うわっ」
気がついた竜崎が腕を振り回して真夫を殴ろうとする。
だが、またもやそれが起きる前に、真夫には竜崎の考えることが頭に入ってきた。
簡単に避けて、スタンガンを剥き出しの尻に喰らわせる。
「ぐえええ」
みっともない声を出して竜崎が倒れた。
その竜崎からズボンを下着ごと足首から抜き取る。
「た、助けて……。助けてくれ……」
よろよろと起きあがった竜崎がフルチンのまま外に出る扉に向かう。
見ると、小便をしている。
こいつは、おしっこを洩らしながら逃げようとしているのだ。
みっともない竜崎の姿に、思わず笑みをこぼしながら、真夫は力の限り尻を蹴飛ばした。
すると、悲鳴が外からあがった。
竜崎を追って小屋の外に出る。
小屋の外には、何人かの男女の生徒が集まっていた。
人気の無い場所だったが、さっきからこの騒ぎだ。
たまたま近くを通りがかっていた生徒たちが、おかしな喧噪に気がついて、やって来たのだと思う。
そのとき、さらに大勢の人間が近づく気配を感じた。
玲子さんだ。
五、六人の警備員らしき者や、男の教師を連れてきている。
ほかにも、かなりの生徒たちも一緒に来ていて、その中に生徒会長の絹香もいるのがちらりと見えた。
どうでもいい……。
真夫の憤怒は続いている。
よろけて四つん這いになった竜崎の顔を下から蹴りあげる。
竜崎が呻き声をあげて、ごろごろと転がった。
女生徒たちの絶叫が聞こえた。
「ゆ、許してくれ……。な、なあ、か、金を払う……。そ、それで……」
竜崎が弱々しく言った。
「金だと──」
またもや怒りが身体を支配する。
あさひ姉ちゃんを汚した行為を金で償うというのか……?
逃げようとする竜崎の身体を心で念じて動きを止める。
竜崎が起きあがろうとした不自然な体勢のまま、金縛りになったかのように静止した。
自分がそれができるのはわかっていた。
そして、できた。
真夫は身動きのできなくなった竜崎の顔面を足で横蹴りにする。
鼻を完全に潰した感覚が伝わってきた。
「ま、まおさま……。いえ、坂本君、落ち着いて──」
背後から身体を羽交い絞めにされた。
玲子さんだ。
「離してください……。こいつを許すことはできません……。それよりも、小屋にまだあさひ姉ちゃんがいます。助けてあげてください。それと男は入れないで」
真夫は玲子さんに振り返りながら言った。
あさひ姉ちゃんは竜崎たちに襲われて、完全に服が乱れていた。
だから、男は入れるなと言ったのだ。
玲子さんがびくりとしたように手を離す。
あるいは、余程の形相をしていたのかもしれない。
「あ……は、はい……。め、恵さんね……。い、行ってきます」
しかし、玲子さんは慌てたように小屋に駆けだしていく。
何人かの女生徒が一緒に行った。
その中に絹香も混じっているのを真夫は見た。
振り返る。
竜崎は男教師たちに助け起こされていた。
真夫の周りにも、真夫を止めるように警備員が囲んでいる。
もう、襲うのは無理だ。
だが、手を出すのではなく、頭の中に触れることはできそうだ……。
真夫は竜崎の頭の中を透視する。
少し前から覚醒していた他人の感情を覗いたり、操作したりする力……。
それが真夫の中ではっきりとしたかたちとなっていた。
なにをどうすれば、どんなふうになるのかはっきりとわかる。
真夫は、竜崎の頭の中にある線を滅茶苦茶に引き千切ってやった。
「う、うう……」
明らかに頭の線が切れたような顔になった竜崎が、焦点を失くした表情になって、くたくたと座り込んだ。