※この作品はR-18です。

淫魔王のいる学園【完結】   作:ドン・ドナシアン

60 / 201
 60話 夜のデート

「とても準備がいいんですね。漏らしたときの用心とは、さすがは玲子さんです」

 

 くすくすと真夫は笑ってしまった。

 

「笑わないでください。真夫様のせいですよ。こんなの準備するようになったのは……」

 

 玲子は顔を真っ赤にしながらも、車を二十四時間対応している駅前近くのコインパーキングに駐車した。

 その玲子さんは、上半分はスーツだが下半分はすっぽんぽんだ。

 真夫が脱がせたのだ。

 

 学園のある山から三十分ほど車を走らせたところにある市街地である。

 平日の夜だが、まだまだにぎやかだ。

 真夫はあまり知らないが、この辺りは真夜中になっても開いている店も多くて、人通りが絶えることはないらしい。

 

 学園のある小高い山から、玲子さんの運転する私有車で市街地まで下りてきた。

 特段の理由はない。

 ただの気紛れだ。

 本当は学園の生徒は、寮のある敷地内に完全に隔離されており、こうやって夜に抜け出して街に繰り出すなど不可能だ。

 学園の外縁を二重三重の警戒設備が取り巻いているだけでなく、山ひとつ分が豊藤グループのものであり、車がないとどこにも辿り着けない。また、学園と街を繋ぐ道路もまた豊藤グループの私道であって、そこも警備要員によって監視されている。

 道以外には無数の警備線が張られていて、文字通りの罠もあちこちにあるらしい。

 最初に玲子さんの説明を受けたときには、まるで「要塞」ですねと笑ってしまった。

 だが、それに対して、玲子さんは「まったく、その通り」だと、大真面目な顔で応じた。

 豊藤グループの総帥である豊藤龍蔵は、その能力のために、常に世界中の組織からの暗殺と誘拐の対象になっていて、この聖マグダレナ学園の敷地を利用し、学園が建っている山のどこかに住居を作って、身を隠しているらしい。

 さっきまでいた屋敷の地下部がそうなのだが、それが学園内のどこかにあるのかは、玲子さんもよく知らないようだ。

 

 いずれにしても、屋敷から帰る自動操縦の車の中で、玲子さんは真夫の悪戯によって、例によって失禁してしまった。玲子さんは、あまりにも感じすぎると、絶頂とともにおしっこを漏らす癖があるのだ。

 それで、下半身をそのまま脱がせて、玲子さんの私有車で山を下りてきたのだが、さすがに街に出てくるとなれば、せめてスカートをどうにかしなければならなかった。

 真夫としては、玲子さんを駐車場に待たせて、真夫がどこかで買ってくるつもりだったが、玲子さんは替えのスカートと下着を私有車のトランクに、小さなスーツケースに入れて置いてあったのだ。

 それで、準備がいいと笑ってしまったのだ。

 

 車が停まると、真夫だけが一度降りて、後部トランクからスカートを一枚持って戻った。

 おしっこ癖のある玲子さんとしては、こんなときのために準備していたようだが、スカートだって何枚もある。真夫は、その中で一番短いスカートを選んだ。

 

「あ、ありがとうございます」

 

 戻ってきた真夫からスカートを受け取ろうとして、運転席の玲子さんは手を伸ばした。

 しかし、真夫はさっと、スカートを後ろに隠す。

 怪訝な表情をする玲子さんに、真夫は後部座席で、まずは上衣のスーツもなにもかも脱いで素っ裸になれと命令をした。

 人通りの多い繁華街だが、ここはビルとビルに挟まれた駐車場だ。玲子さんは、その中でも一番奥に車を停めたので、ここには人目はない。

 

 玲子さんは一度車の外を見て、人影がないのを確かめてから、運転席から後部座席側に移動をした。

 玲子さんの丸いお尻が真夫に向かって露わになる。とてもエロチックで可愛い。

 真夫については、もう一度外に出てから、外から後部座席に座った。

 玲子さんの車はワゴンタイプなので後ろが広い。なんでもやる玲子さんだから、必要なときには荷物なども運べるようにだろう。

 

 真夫は、なにもかも脱いで靴以外には全裸になった玲子さんから衣類を取りあげて片付けた。

 

「じゃあ、俺から離れるというようなこと口にした罰を与えますね。あのとき、俺は本気で腹がたったんですよ」

 

 真夫は言った。

 すると、玲子さんが狼狽えたように真っ赤になった。

 

「あ、あれは……」

 

 玲子さんが口を開いたのを真夫は手で制して黙らせた。

 

「そこでオナニーしてください」

 

 真夫は車内灯をぱちりとつけた。

 車内灯くらいでは、駐車場の外の通行人に見咎められる心配はほとんどないが、玲子さんにすれば羞恥の恐怖が拡大するはずだ。

 案の定、玲子さんは引きつったような顔になる。

 

「なにやってんですか、玲子さん。玲子さんが俺から離れてもいいと口にしたのは、玲子さんへの調教がまだ足りなかったためですよね。だから、今夜は徹底的に辱めてあげます。そのために、外に出てきたんですよ」

 

 真夫は言った。

 すると、玲子さんはしょげたようになってしまった。

 

「も、申しわけありません……。二度と口にしませんから……」

 

「口にしていいですよ。ただ、俺は玲子さんを手放しません。俺は玲子さんが好きです。どんなことをしても、玲子さんをそばに置きます。それについて、玲子さんの意思など、俺には関係ありません」

 

「は、はい。も、もちろんです。わ、わたしは真夫様の奴婢です。ど、どうか……」

 

 玲子さんは嬉しそうに頷いた。

 

「さあ、オナニーですよ。やったことはありますか?」

 

 真夫は玲子さんの言葉を遮った。

 恥ずかしい質問をするのも、羞恥責めのひとつだ。

 玲子さんはますます顔を赤くする。それは車内灯の明るさ程度でもよくわかる。

 

「……あ、あります……」

 

 聞こえるか、聞こえないかくらいの小さな声だった。

 玲子さんは指を股間と乳房に持っていく。

 指で乳首を挟むようにして乳房を揉み、一方で股間の指はクリトリスを触り始めた。

 

「はあ、ああ……、ああ……」

 

 玲子さんの静かな悶え声が聞こえ始める。

 無論、真夫は玲子さんの自慰を注視しながらも、誰かが車のそばにやってくる気配がないかを確認している。まあ、いまのところ、なんの問題もないようだ。

 

「最初のオナニーは何歳ですか?」

 

「……は、ああ……、じゅ、十二……で、です……」

 

 美しい顔を陶酔したように呆けさせながら玲子さんは言った。

 

「早いですね。場所は?」

 

 真夫は、玲子さんが恥ずかしくて答えられないような質問を次々に浴びせて、玲子さんを辱めた。玲子さんは、それによって、ますます淫情に酔ったような表情になる。

 やがて、感極まってきたのか、身体をがくがくと震わせだした。

 

「あ、ああっ、ま、真夫様……、ああっ」

 

 玲子さんが真夫の名を呼びながら、身体を仰け反るようにした。

 真夫はすかさず、玲子さんの手を掴んで身体から離してしまう。

 

「あっ、ど、どうして?」

 

 玲子さんがびっくりしたように、真夫の顔を見た。

 

「どうしてじゃないですよ。オナニーはしろと言いましたが、いっていいとは言わなかったですよ。今夜は調教だと言ったでしょう。簡単に気持ちよくなんかなれませんから……。じゃあ、食事にでも行きましょう。これを着てください」

 

 真夫はさっき選んだスカートとスーツの下に身につけていた白いブラウスだけを玲子さんに差し出した。

 玲子さんは絶頂寸前で快感を取りあげられたことに呆然とした様子になりながら、真夫から衣服を受け取った。

 そして、すぐにはっとした顔になる。

 

「あ、あの……」

 

 おずおずと顔を真夫に向ける。

 渡したのはミニスカート一枚とブラウス一枚だ。

 下着もなにもない。

 だから、戸惑ったのだろう。

 

「それだけですよ。嫌なら裸で外に出しますよ。なにしろ、これがあれば、逆らえませんしね」

 

 真夫はクリリングの操作具をちらつかせた。

 もちろん本気ではないし、玲子さんもそれはわかっている。

 だけど、マゾの玲子さんは、それだけでうっとりとした目つきに変わった。

 

「わ、わかりました……」

 

 玲子さんは素肌に衣服を身につける。

 寸止めオナニーをしたばかりの玲子さんの汗がブラウスの白地に貼りつくようになった。乳首だってまだ勃起しているので、服の上に突起がしっかりと出ている。

 玲子さんは、それを懸命に皺で誤魔化すように直した。

 

 真夫は玲子さんの手を取り、スカートの真横に持っていかせた。

 スカートの横部分の裾には、さっきトランクから取り出したとき、真夫が小さな金具を装着していた。

 玲子さんの手首にある腕輪が、電磁石の仕掛けによって、ぴたりとスカートの横のその金属に密着する。

 

「あっ」

 

 それに気がついた玲子さんが声をあげた。

 しかし、構わず真夫は反対の手首も同じようにスカートの裾と接合させる。

 

「その腕リングはこんなこともできるんですよ。これで、玲子さんは手を動かせば、スカートがめくれてしまいますね。ノーパンの股やお尻を見られたくなかったら、手を動かしちゃいけませんよ」

 

 真夫はにんまりと笑った。

 玲子さんは「そんな」と小さな声で呟く。

 

「もう少し、サービスしますか。これは調教ですしね」

 

 真夫は玲子さんのブラウスのボタンを上からふたつ外して左右に拡げた。

 乳房の半分くらいが露出して、ミニスカートと相まって、びっくりするくらいにセクシーになる。

 

「わっ、こ、これは……。ま、真夫様、これは勘弁してください。こんなにされたら、外は歩けません」

 

「もちろん、歩けますよ。服は着てるじゃないですか」

 

 真夫は、動顛した声をあげた玲子さんをさらに追い詰めるためのことをした。

 こっそりと準備してあった掻痒剤のチューブを出すと、玲子さんの乳首とクリトリスにしっかりと塗り込めたのだ。

 玲子さんは身悶えしながらも、泣きそうな顔になった。

 

「さあ、外に出ましょう」

 

 真夫は無理矢理に玲子さんを車の外に出した。

 

 


 

 

 正人(まさと)は、秀也と龍蔵の指示により、ナスターシャを一台の寝椅子に拘束した。

 寝椅子というよりは、産婦人科の診察室にある診察台のようなかたちのものだ。

 ナスターシャはわずかに嫌がる素振りを示したものの、時子がクリリングの電撃を一度見舞うと、それだけですっかりと抵抗の意思を失ったようになった。

 

 正人も、この小生意気な白人女にはずっと接しているが、派手に悪態をついていたのは最初だけだ。いまではすっかりと諦めたように、龍蔵たちのサディスティックな責めに従順になっている。

 お陰でこのところは手間もかからない。

 いまも簡単に、椅子の数箇所にある枷で、全裸のナスターシャを両足を開脚した状態で固定することができた。手足の関節の前後だけでなく、首にもウエストにも金具があるので、もうナスターシャはほとんど身動きすることができない。

 

「どれ、次は一リットルの浣腸といくか」

 

 龍蔵が言った。

 すると、時子が心得たようにイルリガートルの浣腸を準備する。

 椅子のお尻の下の座席の部分は左右に割れていて、真ん中はなにもない。

 だから、このまま尻も股も責められる。

 

「う、うう……」

 

 日本人同様に日本語ができるので、なにを言われているのかわかっているはずだが、ナスターシャはもう抗う気力もないのか、なにも言わずに唇を噛みしめたままだ。

 

 正人は時子から浣腸管を手渡されて、ゼリーを塗ってからナスターシャの肛門に管を挿し込む。

 ただの栓じゃない。肛門栓にもなっていて、挿し込むと内側で傘のように開くので抜けなくなるものだ。浣腸責めをするときの龍蔵のお気に入りの責め具のひとつである。

 

 時子が浣腸液の入っている容器の栓を開いた。

 すぐにナスターシャの腸に薬液が注がれ始める。

 ナスターシャが歯を食い縛ったのがわかった。

 

 正人の仕事は秀也に仕えることだ。

 雇っているのは龍蔵らしいが、正人は秀也が主人だと思っている。

 ただ、このところ、やけに秀也が龍蔵のところにいることが多いので、自然と正人も龍蔵のところにいる時間が長くなる。

 嗜虐好きの龍蔵と秀也なので、ふたりで女を責めるときの手伝いをするのも仕事のうちだ。

 このところは、ふたり揃ってナスターシャを責めるのがお気に入りだ。

 この気の強い白人女を泣かせることに、ふたりとも夢中なのだ。

 

「あ、ああっ、も、もう……」

 

 一リットルの浣腸液を注がれて、ナスターシャがフランス語混じりの日本語で哀願を始めた。

 

「だいぶ、牙も抜けてきたようだのう。でも、まだまだ、気の強さが抜けておらんわ。まあ、その調子でいつまでも屈服せずに、龍蔵殿たちを愉しませてやっておくれ」

 

 時子が鳥の羽根のようなものを持ち出して、両手を上にあげているために無防備に露わになっているナスターシャの脇の下をくすぐり始める。

 

 龍蔵の愛人の変態婆さんだ。

 ただ、正人が秀也に仕えるようになった二年前には、すでに秀也と男女の関係になっていた。

 いい歳しながら、自分の孫のような秀也と浮気をしている性悪女だ。

 まあ、それも、場合によっては、龍蔵を出し抜いてでも総帥の地位を奪うための秀也の取り込みなのだろうが……。

 

「ほら、苦しいか、ナスターシャ。口惜しければ逃げてみよ。逃げねばもっとくすぐるぞ。ほら」

 

 相好を崩した龍蔵も、鳥の羽根を持ってナスターシャの内腿をくすぐりだす。どう見ても、ただのひひ爺だ。大財閥の総帥の貫禄も威厳もなにもないと、正人は思った。

 すると秀也も筆を持ち出して、ナスターシャの裸身を撫ぜ始める。

 女に興味のない正人としては、拘束された身体を右に左にと捩るナスターシャの姿を前にしても、なにも感じないが、おそらく、とても色っぽい光景なのだろう。

 三人は、しばらくのあいだ、かさにかかったようにいつまでもナスターシャをくすぐり続けた。

 ナスターシャは、便意の苦痛に顔を歪めながら笑い泣きをして、暴れ続ける。

 正人には、嗜虐趣味もないので、これについても顔をしかめたくなる光景だ。

 

 やっとくすぐり責めが終わってナスターシャが排便を許されたのは、ナスターシャの身体の下に大きな汗の水溜まりができてからだ。

 ナスターシャはすでに疲労困憊で息も荒い。

 

 龍蔵の指示で正人はナスターシャの尻の下に大きな容器を置いた。

 栓を抜く。

 ナスターシャの悲痛な泣き声とともに、尻から噴流が飛び出し、続いて固形物がぼとりぼとりと落ちていく。

 臭気もあるが、床と壁にある脱臭装置によって、すぐに匂いは消えていった。

 

 三人からからかわれながら排便を終ったナスターシャは、時子の後始末を受けて、さすがに身体の力が抜けたようにぐったりとなっていた。

 すると、がらがらと秀也が奇妙なかたちに器具を運び込んできた。

 

 以前に、同じものを玲子に使ったのを見たことがあるので、正人はあれがなんの機械か知っている。

 しかし、ナスターシャは初めてのはずだ。

 ナスターシャが不安そうな顔をした。

 

「な、なに、それは……?」

 

 耐えられなくなったのか、ナスターシャが自分の尻の下に機械を置く秀也に訊ねた。

 

「まあ、それはお愉しみだ。俺たちはこれから、大事な話し合いがあるんで忙しい。だから、今夜の調教はこれで終わりにしてやろう。その代わり、これを朝まで取り付けてやろうということだ」

 

 ナスターシャの尻の下にある機械にはシリコン製のバイブがある。それに潤滑油を塗ると、秀也が機械の操作盤に触れた。

 機械音がして、ゆっくりと張形が上昇してきた。

 秀也が機械の位置を移動させて、ナスターシャのアヌスが張形の先端が当たるようにする。

 

「あっ、や、やめてっ、こ、怖い──」

 

 ナスターシャが叫んだ。

 しかし、張形はゆっくりと上昇して、しっかりとナスターシャの肛門に挿入されていく。

 龍蔵と時子が横から手を出して、機械についたベルトでナスターシャの腰と太腿に固定した。これでナスターシャが暴れたところで、張形はナスターシャのアヌスから抜けることはない。

 

 つまりは、あれはアヌス調教機械なのだ。

 コンピューター制御で、一晩中でも女の尻を責め続けるロボット張形であり、今夜はナスターシャにあれをつけっぱなして放置することになっている。

 一応は正人が監視役を命じられているものの、基本的には機械がナスターシャの身体を感知しながら、肛門から快感をむさぼらせるように責め続ける。

 まあ、あれをひと晩やられれば、どんな女でも抵抗の意思を失うだろう。

 あの玲子でさえもそうだった。

 

「ああ、とめて、とめてえっ、破ける──。お、お腹が破けるううっ」

 

 じーという規則的な振動音をしながら、張形が上昇し続けているのがわかる。

 ただ、まだ十五センチほどしか喰い込んでいないはずだ。機械のゲージがそうなっている。

 しかし、ナスターシャはすでに恐怖に打ちのめされている様子だ。

 

「じゃあ、朝まで愉しむがいい。では頼むぞ、正人」

 

 龍蔵が言って、部屋を出ていく。

 秀也と時子がそれに続いた。

 機械から尻を責められるナスターシャとふたりきりになった。

 

 三人の大事な話というのが、なんのことなのかは知らない。

 おそらく、後継者の話なのではないかと思う。

 夕方、あの真夫が玲子とともにやってきて、後継者になることを龍蔵に拒絶したというのは秀也から聞いていた。

 

「ああ、お、お願い。お願いよ。止めて、止めて、ああっ、お願い──」

 

 ふたりきりになると、ナスターシャは正人に哀願をし始めた。

 

 正人はちらりとナスターシャに視線をやると、とりあえず食事をするために、準備のしてあった夕食をナスターシャを見守る位置にある机の上に置く。

 そして、食事を始めた。

 

 そのあいだ、いつまでもナスターシャの悲鳴は部屋に響き続いていた。

 正人は淡々と食事を続ける。

 

 しかし、しばらくしてから、いつの間にかナスターシャの声がまったく聞こえなくなっていることに気がついた。

 正人は怪訝に思って視線をナスターシャに向けた。

 

 ナスターシャの姿は変化はなく、尻に挿入されている機械も相変わらずナスターシャを責め続けている気配だ。

 ナスターシャが快感に襲われている証拠に、ナスターシャの身体は全身を赤くして、淫らに悶え続けている。

 だが、声がしない。

 

 気絶しているのか……?

 

 正人はナスターシャに近づいて顔を覗き込みに行く。

 すると、ナスターシャの眼が開いた。

 

 違和感があった。

 

 なにかが違う……。

 

 それがなにかすぐにはわからなかったが、すぐに正人はそれに気がついた。

 ナスターシャであるはずの目の前の女が、まるで違う人間のように感じたのだ。

 

 顔は同じだ。

 身体もそうだ。

 しかし、違う。

 説明は不可能だが、なにかが違うという感じがした。

 

「……起きろ、正人……。覚醒せよ……。“赤ずきんは白い谷の上で狼とコニャックを愉しむ。つまみはクラッカーとチーズ”……」

 

 日本語に続いて、ロシア語が、ナスターシャ……いや、ナスターシャの中にいるほかの何者かの口から発せられた。

 いや、実際にはほとんど唇が動いただけだ、声には出していない。

 しかし、正人にはなぜか、しっかりと耳に届いた。

 

 その瞬間、正人の中のなにかが覚醒した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。