「ちゃんと前を見て歩かないと、みんな変な目で見ますよ……」
真夫は夜道を歩きながら言った。
人通りの多い繁華街の歩道である。
行合う人も多い。
ミニスカートで胸元を半分くらい露わにしている玲子さんを視線を向ける通行人もかなりいる。それだけ、玲子さんは美人なのだ。
そんな玲子さんをこうやって好きなように弄ぶことができると思うと、真夫もちょっと優越感を感じる。
「は、はい……」
玲子さんは慌てたように顔をあげた。
すっかりと顔は上気して、汗で髪の毛が額に張りついている。
やっぱり、掻痒剤の責めはつらいみたいだ。
とても苦しそうだし、そして、恥ずかしそうだ。
しかし、その表情がとても色っぽい。
だからこそ、いくら責めても飽きない。
真夫もこっそりとズボンの中で一物を隆起させてしまっている。
しばらくのあいだ、真夫は玲子さんを連れまわして、適当に街の中を歩き回った。
玲子さんは、それだけでかなり追い詰められたようになってしまった。
「お腹ががすきましたね。玲子さん、食事をしましょう」
やがて、真夫は言った。
「えっ? あ、あれっ、ここは……」
玲子さんがはっとした表情になった。
どうやら、ぼうっとしていたようだが、真夫が声をかけたのは、最初に玲子さんと出逢った豊藤系列のホテルの正面だ。
真夫と玲子さんは、大きな交差点の信号待ちで立っていて、大通りの向かい側にホテルがある。
玲子さんは声をかけられるまで、気がつかなかったようだ。
しかし、真夫は最初から、ここで食事をしようと決めていた。
ここなら、かなりの融通が利くし、多少のことをしても通報のようなことをされることもない。なによりも、個室のような目立たない場所も準備してくれるだろう。
それに、最上階の特別室は、いまだに真夫がルームキーカードを持ったままだ。
いつでも自由に寝泊りできるように、真夫専用の部屋になっているのだ。
玲子さんとエッチをするための道具も揃っている。
「でも、さすがに、この恰好じゃあだめか……」
真夫は玲子さんの上衣のブラウスに手をかけて、くつろげて乳房を半分露出していたのを襟を直して、ボタンを嵌めてあげた。
もっとも、両手首はスカートの横裾にある金具に密着して、両手を動かせばノーパンのスカートの中が露わになる仕掛けであるのは変わりないし、ブラジャーをしていないので、よく見れば勃起した乳首が汗で薄っすらとブラウスの上から透けて見える。
「お、恐れ入ります……」
それでも玲子さんはほっとした顔になった。
「その代わり、クリリングを入れますね。どうせ、そろそろ痒みも我慢できないですよね」
真夫は言った。聞こえるかどうかのぎりぎりの声だ。少なくとも周りの人間にはふたりの話声など聞こえるはずはない。
玲子さんはかなりの動揺を示した。
「……でも、いやならいいですよ。そのままにしてあげます。だけど、痒いでしょう? クリリングを動かした方がいいんじゃないですか?」
意地悪く言った。
すでに掻痒剤を塗ってかなりの時間が経過している。
もう、放置されるのも限界のはずだ。
玲子さんは、少し迷っていたようだが、やがて決心したように口を開いた。
「お、お願いします」
玲子さんは言った。
もちろん、玲子さんにとっても大きな賭けだろう。
しかし、痒みをそのままになどできないと思う。
「その代わり、ここで俺とキスをしてもらいます」
真夫は言った。
「えっ、ここで?」
玲子さんは当惑している。
いま真夫と玲子さんが立っているのは、大きな交差点だ。
駅にも近く、周りにはかなりの人がいる。
「そうです。これも調教です。玲子さんが俺の物だということを身体に染み込ませるためです」
「わ、わかりました……」
すると玲子さんは決心したように小さく頷いた。
真夫は玲子さんを抱き締めた。
玲子さんの唇を奪う。
ちょっと、周りでざわめきがあった気がした。
だが、それほど珍しくない風景だろう。騒ぎててる者はさすがにいない。ちょっとしたバカカップルと思われるだけと思う。
一方で真夫はクリリングのスイッチを入れる。
強度は第一段階。
焦らすのが目的で、いくかいかないかと微妙な振動が続く。そんなモードらしい。
「んっ、んんっ」
真夫の腕の中で、玲子さんの力がだんだんと抜けていくのがわかる。
玲子さんは腕を動かせないので、両手は身体の横に垂らしたままだ。
信号が青になり、周りから人がいなくなるのがわかった。真夫はそのまま玲子さんの口の中を蹂躙した。玲子さんもしっかりと舌を絡め返してくる。
やがて、信号も赤になり、束の間、人がいなくなった。
真夫はやっと、玲子さんから口を離す。
ただし、まだ玲子さんを抱いたままだ。
玲子さんが完全に力が抜けたようになり、手を離すとそのまましゃがみ込みそうな感じだったのだ。
「……ふふふ……、か、軽くいってしまいました……」
玲子さんがすとんと真夫の胸に頭を付けて言った。
真夫はにんまりとしてしまった。
次の信号を待って道路を渡る。
ホテルに入った。
玲子さんの股間では静かな振動がクリリングによって続いたままだ。
ロビーに入ると、玲子さんのことを知っているホテルの従業員がすぐにやって来た。
玲子さんの代わりに、真夫がふたりで食事をする場所を頼んだ。できれば、あまり目立たない店がいいとも言った。
このホテルには、レストランだけでも数軒入っている。
すぐに手配がされて、そのうちのひとつに案内を受けた。
そのホテルマンは、さすがに顔色ひとつ変えなかったが、その視線がちらちらと玲子さんの胸と太腿に向かうのを真夫は気がついていた。
案内されたのは、照明の薄暗い静かな音楽が流れる店だった。
食事というよりは、お酒でも飲むような店の感じだ。
そのとおり、すでに店にいた数グループのお客さんは、全員がお酒を飲んでいた。
真夫と玲子さんは、そのもっとも奥の通路面以外が壁に囲まれている席に案内された。玲子さんを座らせると、真夫は向かい合わせではなく、玲子さんと隣り合うように座る。
やって来た女の店員にメニューを渡されて開く。
驚いた。
料理名らしきものが並んでいるが、まったくどんな料理なのか見当もつかなかったのだ。
ついでに、値段もない。
これはメニューなのだろうか。
玲子さんには、利用額が無制限だというクレジットカードも渡されているので、いくらでも問題はないと思うが……。
真夫は適当にメニューに指をさして注文した。
さらに飲み物を訊ねられたので、玲子さんにはグラスビール、真夫にはコーラを頼んだ。それ以外のものは、なにが出てくるのかちっともわからなかったのだ。
いつもなら、玲子さんにすべて任せるのだが、クリリングの刺激を受けっぱなしの玲子さんには、注文は無理そうだ。
「やっぱり、よくわかりませんね。でも、この店、さっきのメニューに値段がありませんでしたよ」
店員が立ち去ってから、真夫は玲子さんに笑いかけた。
さっきのメニューにあった料理名もよくわからない。
魚料理なのか、肉料理なのかわかるくらいだ。選んだのは肉料理だと思う。子羊という単語が辛うじて読み取れた。
それにしても、値段のないメニューなんて初めてだ。
「……そういう店なんです……。値段を気にするような……も、者は……ここは選びません……。企業の接待にも……つ、使いますので……逆に、値段がわかると……都合の悪い場合もあります……。ホテルの中でも……もっとも格式の高い場所です……」
玲子さんがやっと顔をあげてにっこりと微笑んだ。
その表情はとても色っぽかった。
真夫はどきりとした。
「一流のお店ということなんですね。でも、相手が俺なのに、わざわざ、こんな高級そうな場所にしなくても……」
ホテルの人は、真夫を見て店を選んだはずだ。
それとも、玲子さんだから、ここを選んだのだろうか?
「ま、真夫様だからですよ……。真夫様の名で最上階の……へ、部屋をずっと確保させてます……。何者なのか不思議がっていると思いますが……真夫様がただの高校生でないことは……わかっていると思います……。い、言っておきますが……わたしだけなら……ここには入れません……。このホテルは……、この店は……客を選びます……」
玲子さんは言った。
「へえ……」
真夫は驚いてしまった。
「……そういえば……、以前にこのホテルに滞在したときには……、あまりレストランの食事はふたりともしなかったですよね。あとで清算しようとして、ちょっと驚いたことがあります……。もっと贅沢してもよかったのに……」
玲子さんが嘆息しながら言った。
いまでも、玲子さんの股間はクリリングの振動が流れっ放しだ。痒みが癒されている代わりに、かなり追い詰められていると思う。
「俺もあさひ姉ちゃんも、こんなところ慣れないんです。なにを食べてもいいと言われても、なんか、よくわからなくて、途中からホテルの外のファーストフードばかり行ってました」
「そうみたいですね」
玲子さんがくすくすと笑った。
真夫は玲子さんの身体に手を回して、ブラウスの上から乳首を擦ってあげる。股間はクリリングで刺激して癒してあげているが、ここは掻痒剤を塗ってからずっと放置だ。
「んふうっ」
玲子さんが気持ちよさそうに声をあげ、慌てたように口をつぐんだ。
しかし、すぐに店員がやって来るのがわかったので、真夫は手を離す。
ふたりの前に女の店員が料理を置いた。飲み物も置かれる。よくわからないが、竹の皿に入った小さな料理が五つほどあるだけだ。
もしかして、これで終わり?
食べ終わるのに、二分もかからないだろう。
真夫は戸惑った。
適当に頼んでしまったが、失敗だったのだろうか。
「……これは前菜です。真夫様が選んだのはコース料理ですから、順番に出てきますよ……」
玲子さんが耳打ちした。
真夫はほっとした。
「へへ、豊藤の総帥候補になるんなら、こういう場所での注文のことも覚えなければなりませんね。飲み物の名前もわかりませんでしたよ」
「わ、わたしが……お、お教えします……。恵さんにも……」
「お願いします。かおりちゃんは、そういうことも知っていそうですけどね」
かおりちゃんは、あれでもいいところのお嬢さんだ。
こういう店も慣れているだろう。
「……そ、それにしても、総裁候補……を目指す……決心をしたのですね……。う、嬉しいです……。あ、ありがとうございます」
玲子さんが頭をさげた。
「玲子さんを失わないためですから」
真夫はまずはビールをとると、玲子さんの口に持っていった。
玲子さんの両手はいまでもスカートにくっついたままなのだ。
手は動かせない。
玲子さんは戸惑った顔をしたが、大人しく飲み物を飲む。
次に真夫は、玲子さんの前にある料理を箸で取ると、玲子さんの口に持っていった。
「あっ、あ、あのう……。自分で食べさせてください……」
玲子さんが顔を真っ赤にした。
いままでも赤かったけど、本当にゆでだこのように赤くなる。
「駄目です。今日はこうやって、全部、俺の手から食べるんです。調教ですからね」
玲子さんは目を丸くして、驚いた表情になる。
だが、素直に口を開いて、真夫の差しだしたものを口に入れる。とても照れくさそうな感じだ。
真夫は、そのあいだに自分のものを口に入れた。
なかなか、美味しい……。
料理名は知らないが、美味しいものだというのはわかる。
「……ところで、SS研というのは、なんのクラブなんですか?」
しばらく、料理を味わってから、真夫は訊ねてみた。
龍蔵に言われたのは、玲子を失いたくなければ、学園でSS研の部長になり、女生徒たちを全部で十人愛人、すなわち、奴婢にしろという命令だ。
奴婢十人はともかく、SS研とはなんだろう?
「……SS研とは……しゅ、秀也さんの……愛人クラブのようなものです……」
玲子さんが語りだした。
それによれば、SS研は一応は、“social sciences 研究クラブ”、つまり社会科学研究クラブという名目になっているが、活動実態はなく、ただ秀也が愛人にしている女生徒を放課後に呼んで遊ぶ目的の場所だということである。
先日、秀也と対面したときの場所だ。
龍蔵という真夫の父親でもあるらしい総帥は、非常に奇妙な帝王学の価値観を持っていて、人を支配する能力やコツを複数の女を支配させることで養わせるのだそうだ。
秀也も、龍蔵の指示でSS研を作って、女生徒を愛人にしていたということだった。
玲子さんが秀也に与えられたときには、秀也はすでにSS研を所有していて、そこで好き放題やっていたようだ。
「……なるほど……。だったら、俺にSS研の部長になって、女を大勢作れと命じたということは、龍蔵さんは俺のことをまだ総帥にすることは諦めていないということですね」
安心した。
総帥にはならずに、秀也の下で働くと宣言したものの、それによって玲子さんを失うことになるなら話は別だ。
真夫は秀也を出し抜いてでも、総帥になるつもりだ。
「そ、そうだと思います……。と、ところで、あ、あの……む、胸を触ってもらって……いいですか……」
玲子さんが遠慮がちに言った。
痒いのだろう。
いつにない甘えぶりだが、ここが閉鎖された場所であることが玲子さんを大胆にしているのだと思う。
真夫は手を伸ばして、荒々しく乳首を擦ってあげた。
がたんと音がして、玲子さんが身体を大きく震わせた。大きな音は玲子さんがテーブルを蹴ってしまったのだ。
慌てて、玲子さんが身体を大人しくする。
「あ、ありがとうございます……」
玲子さんが言った。
真夫は手を離した。
再び、玲子さんに食べ物と飲み物を運ぶ動きに戻る。
「秀也という人はどういう人ですか……? つまりは、龍蔵さんとの関係とか……。どこの生まれとか……」
「わ、わかりません……。知っているのは、龍蔵様の甥……である……ということだけです……。で、でも……、わたしは……龍蔵様に兄弟がいることも……知りません。少なくとも、豊藤グループの……主要メンバーでは……ないと思います。そうであれば、わたしは……全員を知っていますから……」
玲子さんが荒い息をしながら言った。
真夫はちょっと意外だった。
玲子さんは、一年にわたり、豊藤龍蔵という総帥の秘書のようなことをした。
当然に、豊藤家のことも、ある程度知ってしまったと思う。
それなのに、その玲子さんにもわからないというのは不思議だ。
グループとして、意図的に隠していると思っていいと思う。まあ、暗殺対策と思うが……。
いずれにしても、秀也とは何者なのだろう?
これから、総帥の座を争うことになるなら、秀也のことを知っておきたい。
真夫はそう言った。
「……しゅ、秀也さんのことを知りたいのであれば……や、やっぱり、SS研でしょう……。SS研の部長となれば……、その部員……が……真夫様の最初のターゲットということになります……。彼女たちなら、わたしが知らない秀也さんのことも知っているかもしれません……」
確かに、SS研が秀也の愛人クラブだったということなら、その女を奴婢にすれば、少なくとも秀也の性格や性癖などはわかるのだろう。
まあ、その辺りからか……。
真夫は思った。
「秀也の愛人の女生徒とは?」
「ひとりは西園寺絹香さん……。S級生徒であり、真夫様も知っていますよね。生徒会長です」
もちろん知っている。
今日もしつこく、SS研に入れと誘われた。
だが、SS研が秀也の愛人クラブなら、どうしてあんなに熱心に真夫を誘うのだろう。
わからない……。
「……もうひとりは、前田明日香……。絹香さんの友人です。A級生徒。女子サッカー部のエースです……」
真夫はその名を頭に留めた。
「あ、あの……。その気になってくれて……う、嬉しいです。わ、わたしもできるかぎり、秀也さんのことを調べます……。もしかしたら、真夫様の役に立つこともあるかもしれませんし……」
玲子さんは言った。
真夫は頷く。
玲子さん調査能力は真夫は完全に信頼している。
なにしろ、あさひ姉ちゃんのお父さんのこともあっという間に片付けてくれたし、なによりも、世間に埋もれていたはずの真夫のことを見つけ出してきた女性なのだ。
「でも、秀也さんのことを調べるなら……、
「正人?」
真夫は首を傾げかけたが、すぐに思い出した。
秀也と会ったとき、最初にその場にいたイケメン男だ。
正人のことを秀也は完全に信頼していない感じだったが、秀也の付き人だと言っていたと思う。
「……正人も謎の男です……。わたしは……経歴を知りません。一度……調べたこともあります……。でも、ちょっとわかりませんでした……」
玲子さんでもわからないということは、彼もまた、なにかの秘密を持っているのかもしれない。玲子さんでも調べられないというのは、相当に秘密が厳重だということだろう。普通の人間がそこまでしっかりと身辺を隠す必要はない。
「……また、調べてみます……。いままでは、そんなに念を入れて調べたわけでも……、あ、ありませんし……。そ、それと……ま、また、胸をお願いしていいですか……」
玲子さんは完全に甘えモードになったみたいだ。
真夫は微笑みながら、玲子さんの胸に手を持っていく。
玲子さんが気持ちよさそうに、身体を震わせる。
今度はしっかりと口をつぐんでいる。
「ところで、玲子さん、調べるのであれば、さっきの外人の女性もお願いします。龍蔵さんのところにいたあの女の人です」
真夫はしばらく乳首を刺激してあげてから、手を離して言った。
「ナスターシャを?」
玲子さんは真夫の指示が意外そうだった。
「……ちょっとだけですが、彼女の感情がまったく読めませんでした。操心術を遣い慣れていないから、ただ失敗しただけなのかもしれませんが、操心術が遣えるようになってから、感情に触れられなかった相手はふたりだけなんです。ひとりは秀也……。そして、もうひとりが彼女です。ナスターシャというんですか、彼女は……」
真夫は言った。
そして、ナスターシャという名も、しっかりと記憶に留めることにした。