64話 待っていたふたり
「お、遅い──。急に戻らないなんて連絡してきて──。心配したのよ──」
寮に戻ってくると、部屋の入口の前で、かおりちゃんが仁王立ちをしていた。
昨夜は結局、玲子さんと例のホテルの最上階に泊まって、たっぷりと玲子さんを堪能した。
プレイを終わったのも随分と遅くなったし、あの玲子さんが朝すぐに起きれる状態にはなかったので、玲子さんに頼んで、電話で真夫の欠席の手続きをしてもらって、遅い朝食をとってから、この学園の寮に戻ってきたのだ。
すでに、十一時に近い。
ふと見ると、かおりちゃんだけでなく、あさひ姉ちゃんも部屋にいた。
「どうして、ふたりとも……? かおりちゃんも学校は?」
とりあえず、全員で部屋に入ってから、すぐに訊ねた。
この学校は三学年目になると単位制に代わるので、全授業を出席する必要はないらしいのだが、真夫もかおりちゃんも授業のない日ではないはずだ。あさひ姉ちゃんだって、大学がある。
「い、行けるわけないでしょう──。なにかショックなことがあったんじゃないかって、心配してたんだから。恵だって、どこの誰に会いに行ったのか、教えてくれないし……」
「ま、真夫君、平気? どうだった? 心配していたのよ」
ソファに腰かけていたあさひ姉ちゃんも、不安そうにこっちにやって来た。
あさひ姉ちゃんには、龍蔵のところに向かう前に、真夫が豊藤グループの総帥の
だから、心配していたのだろう。
ただし、かおりちゃんには、まだなにも言っていなかった。だが、あさひ姉ちゃんの様子から、なにかあるのだと察したのかもしれない。
「うん、会ってきた……。あのね、かおりちゃん、実は……」
まずは、かおりちゃんに、真夫の出自のことを告げておくべきだと思った。
最初はそれからだろう。
「ま、待って──。は、話は待って──。とにかく、待って……」
すると、いきなり、かおりちゃんが顔を真っ赤にした。
ふと見ると、最初こそ仁王立ちだった姿勢が、しっかりと股間を擦り合わせるようにぴったりとくっついている。
しかも、スカートの中の太腿を擦り合わせるようにもじもじとしていた。
「ど、どうかしたの?」
真夫はきょとんとした。
「ト、トイレにいく許可をちょうだい……。も、もう、洩れるのよ……。ず、ずっと我慢していて……」
かおりちゃんが顔を歪めて言った。
真夫は驚いてしまった。
「な、なんで我慢しているんだよ。いつから行ってないの?」
そう言えば、かおりちゃんには、大きい方でも小さい方でも、常に真夫の許可なくするなと告げてあった。
調教の一環としての遊びのようなものだが、学園では真夫の従者生徒ということになっているかおりちゃんは、ほとんどの時間を真夫と一緒に過ごす。だから、そう命令してあったのだ。それに比べれば、同じ奴婢でも、真夫と一緒にいないことの多い玲子さんや、あさひ姉ちゃんについては、そんな意地悪なことを言っていなかった。
かおりちゃんの排尿と排便のことを忘れていたといえばそれまでだが、まさか、ずっと律儀に我慢していたのだろうか。
「き、昨日からよ……。だ、だって、あんたの命令でしょう──。奴婢のわたしが勝手なことはできないわよ。ね、ねえ、お願い、許可をちょうだい……」
かおりちゃんが必死の口調で言った。
「許可って……。俺がいないんだから、そんなこといいんだよ。それに電話だってできたでしょう」
真夫は呆れてしまった。
「……ほらね。あたしは許可なんか必要ないからしなさいって、言ったのよ──。でも、この
あさひ姉ちゃんが口を挟んだ。
その口調は真夫同様に呆れたという感じだが、顔は微笑んでいる。
「奴婢」としての自覚と態度をすっかりと取るようになったかおりちゃんを微笑ましく思ったようだ。
真夫も同様だ。
馬鹿だとは思うが、そんな風にしてもらうと、かおりちゃんが可愛くて仕方がなくなる。
「わかった……。これからは、俺がいないときには、我慢せずにすること。病気になっちゃうからね。命令だ……。ところで、大きい方……? 小さいほう……?」
真っ赤な顔で腰をもじつかせている姿を見ると、やっぱり急にエスの血がもたげてくる。
真夫は早速意地悪な質問をした。
「さっきまでは小さいほうだけだったけど……。い、いまは両方……」
かおりちゃんが消え入るような声で言う。
いまのかおりちゃんは、奴婢用の灰色の上下のブレザーだ。
真夫はかおりの手首にしている金属の腕輪を首の後ろに持っていかせると、やはりセットになっている首輪に信号を送って密着させる。
「……じゃあ、行こうか……」
真夫は両手を首の後ろから動かせなくなったかおりちゃんのスカートに手を伸ばすと、ホックを外して脱がせてしまう。
ブレザーのスカートの下はノーパンだった。
これも真夫の命令だ。
制服はいいけど、下着については一切が許可制だ。
真夫がいないので、許可を受けられないかおりちゃんは、おそらく制服以外にはなにも着ていないと思う。
「おいで」
余程に切羽詰まっているのか、かおりちゃんは完全なへっぴり腰だ。そのかおりちゃんを真夫は腕を取って、奴婢用のトイレに連れていく。
一方で、あさひ姉ちゃんはついて来ない。
原則として、女たちの排便に同行するのは、いつも真夫だけだ。
ほかの女たちの前でさせるというのは、なにかの罰以外では真夫もやらせない。
トイレはこの部屋の奥の仕切りの向こう側にあり、完全に周りが透明になっているガラス製の和式の水洗トイレである。
真夫が玲子さんに注文して備え付けてもらったものであり、いまはあのホテルのプレイルームにも同じものがあって、今朝だって、玲子さんに真夫の前で排便と排尿をさせてきた。
真夫は、自分の女たちを辱めるために、目の前でトイレをさせるのが嫌いではない。
むしろ、大好きだ。
一緒にトイレに入る。
外にいても、正面だけでなく下から眺めることもできるが、一緒に入るのがどの女も一番恥ずかしがるので、真夫もそうすることが多い。
「じゃあ、していいよ」
真夫はかおりちゃんを座らせると、優しく声をかけた。
「う、うん……」
かおりちゃんが真っ赤な顔を俯かせて、すぐにしゅっと放尿を開始した。
真夫はしっかりとそれを眺めてやる。
しっかりと目をつぶっているかおりちゃんに、見ているということを告げてやると、ますますかおりちゃんは泣きそうな顔になった。
だが、それでいて、かおりちゃんは随分と興奮している。
操心術のおかげで、女たちの感情を感じることができるようになった真夫には、女たちのマゾ度がどんどんとあがっていくのがはっきりとわかるのだ。
三人の中で、一番マゾ度が低かったのはかおりちゃんだったが、この十日ほどで玲子さんやあさひ姉ちゃんに匹敵するほどのマゾになった気もする。
「お、大きい方も……していい……?」
おしっこが終わると、かおりちゃんがほとんど聞こえないような声で言った。
奴婢としてのマゾ度が進んでも、相変わらずため口で生意気な態度のかおりちゃんだが、この排便のときだけは、完全に被虐の極致に追い込まれたように弱気の声と態度になる。
「いいよ」
すぐに固まった便が落ちだす。
やっぱり我慢していたのだろう。
「ストップ──」
真夫は途中で命令してやった。
かおりちゃんが驚愕したように全身を硬直する。
かおりちゃんの可愛いお尻からは、固形の便がちょっと顔を出している状態だ。
かおりちゃんは顔をひきつらせている。
それでも、理不尽な命令を守って、排便を途中でやめてもいる。
真夫はその姿に笑ってしまった。
いい子だったご褒美として、真夫はかおりちゃんのお尻を指で洗いながら一回と、続いてクリトリスを刺激しながらもう一回絶頂させてあげた。
終わると、頭の後ろにしていた手首を背中側で密着し直して、真夫はかおりちゃんをソファまで連れてきて座らせる。スカートについては、あさひ姉ちゃんに命じて、とりあえずはき直させた。
あさひ姉ちゃんも含めて、三人で長いソファに横に座る態勢になった。
真ん中が真夫だ。
真夫は、まずはかおりちゃんに、自分が豊藤龍蔵の血を引いているらしいということを教えた。それだけでなく、嫡男である彼は、ほかに子のない龍蔵の有力な後継者候補だとも教えた。
もうひとりの後継者候補は秀也である。
それも言った。
排便の興奮と指マン絶頂の余韻に浸っていて、ぼうっとしていた感じだったかおりちゃんだったが、途中から目を見開いて絶句したようになった。
そして、口が完全に開いて閉じなくなる。
なんだか面白い。
「……これは本当のことらしい……。俺自身も信じられないけど、昨日は総帥の龍蔵という人と会ってきた。つまり、俺の父親ということになるのかな……」
説明した。
ただ、真夫に、まるで、子供としての関心がない様子であり、真夫について期待しているのは後継者としての存在のことでしかなさそうだったとも言った。
あさひ姉ちゃんもかおりちゃんも、それについてはなんと言っていいかわからないようだった。
しかし、真夫ももはやどうでもいいと思っているし、そんなものだと考えているとだけ言った。
また、真夫の母親は死んでるが、名前が月子であるということはわかったとも教えた。
これについては、少し前に玲子さんから教わっていたことだったが、このふたりに説明するのは初めてだ。
「……もともと、俺は豊藤の後継者の地位なんかどうでもいいと思っていた。だから、昨日の会合では、後継者を辞退すると言いに行ったんだ。だけど、気が変わった。俺は秀也という人と争って、豊藤の後継者を目指す。少なくとも、それをしなければ、俺が欲しいものを失うかもしれないとわかったからだ──。はっきりと言うね。俺は豊藤グループの後継者を目指す。そして、君たちを手放さない……。俺は結構エゴイストかもしれない……。ねえ、かおりちゃん……。俺は君を一生奴婢として支配してやろうと考えている。この学園を卒業するまでじゃない。終わっても一生だ──。そのために、豊藤の総帥を目指す。馬鹿げた動機だと思うかもしれないけど」
真夫はぐっとかおりちゃんとあさひ姉ちゃんの腰を両手で掴んだ。
「あ、あのう……。そ、そう……。わ、わかった……。ちょ、ちょっと突然で戸惑っているけど……。そ、それがあんたのやりたいことなら……」
かおりちゃんはまだ呆然としている顔のまま言った。
「あ、あたしはほっとしている……。真夫ちゃんがどこの何者であっても、あたしにとっては真夫ちゃんは真夫ちゃんよ。あたしは真夫ちゃんから離れないし、離して欲しくない。もう絶対に離してあげない。だから、そばに置いてね。どんな立場でもいいから、あたしを真夫ちゃんから遠くにやらないでね」
あさひ姉ちゃんは、必死の様子だ。
もしかして、真夫が一介の孤児ではなくとんでもない大財閥の跡取りだとわかったことで、真夫から捨てられるということを心配しているのだろうか。
そんな馬鹿なことはあり得ないのに……。
「だけど、条件を出された。俺を後継者とするには、あることを達成しなければ許さないと言われたんだ。もしもできなかったら、俺から女を取りあげるかもしれないとね」
取りあげるとはっきりと告げられたのは玲子さんのことだけだけど、龍蔵の口調から考えると、真夫をその気にさせるためであれば、どんなことでもやるのではないかという感じはした。
それに、すでに真夫の腹は決まっている。
手に入れたいものを手元に完全に残すためには、誰よりも強くなればいい。
真夫が豊藤の後継者になれば、あさひ姉ちゃんも、玲子さんも、かおりちゃんも失わなくて済むことだけははっきりしている。
だったら、そうすればいい。
「じょ、条件って、なによ──?」
かおりちゃんが怒ったように言った。
あさひ姉ちゃんも、眉間にぐっとしわを寄せて険しい表情になる。
真夫は一度立ちあがって、ふたりに待っていてくれと告げてから、一度地下に行ってあるアタッシュケースを持って来た。
戻ってきた真夫は中を開いた。
それは十組の首輪と腕輪のセットが入っていた鞄だ。すでに、あさひ姉ちゃんと玲子さんとかおりちゃんの三人には装着させていて、それが入っていた場所には空間ができている。
「条件というのは、半年以内に、学園にいる十人の女を奴婢にすること。その証拠がこの首輪と腕輪を女たちが受け入れることなんだ。それができなければ、後継者にはしないそうだ。それははっきりと言われた」
ふたりは唖然としている。
真夫はさらに詳しく説明をした。
SS研のことも言ったし、龍蔵という人は特殊な帝王学の価値観の持ち主であり、そうやって人を支配することを教育するようだとも言った。
最後に真夫の操心術のことも教えた。
玲子さんを含めた三人に対しては、もう一切の隠し事をするつもりはない。
そう決心していたからだ。
「あ、あんたの話はわかった……。とにかく、わたしたちを含めて十人集めればいいのね。もちろん、協力するわ。な、なんでもね……。ところで、ここには、首輪類が七組しかないわ。わたしたちはふたり……。残りのひとつはどこにあるの?」
かおりちゃんが首を傾げた。
玲子さんのことは、まだかおりちゃんは一切を知らない。
真夫は口を開こうとした。
そのとき、寮の部屋に訪問者がやってきたことを告げる音が鳴った。
部屋の外のチャイムを外から、誰かが押したのだ。
「タイミングがいいね。やって来たようだ」
真夫は立ちあがって扉を開いた。
玲子さんが一個の箱を持って立っていた。
「れ、玲子──。……じゃない……。理事長代理──」
いきなり部屋にやって来た玲子さんの姿に、かおりちゃんがびっくり仰天して立ちあがった。
そして、両手を拘束されていることを思い出したのか、それを気にして落ち着かない動作を示す。
「久しぶりね、かおり……。というよりは、わたしはしっかりとあんたを監視していたけど……。まあ、真夫様に受け入れられる奴婢になって安心したわ。わたしは放逐しようと思ったんだけど、そばにいられるのは、真夫様のおかげよ。感謝の心を忘れないように」
箱をひとつ抱えている玲子さんは、部屋に入って来ながら、かおりに言った。
かおりちゃんは顔を引きつらせている。
ただ、どうして玲子さんがここにやって来たのか、まだわかっていない雰囲気だ。
「そんなに驚く必要はないわ、かおり……。こういうことよ……。よろしくね」
玲子さんは、ふたりのそばまでやってくると、箱を置いてスカーフで隠していた首を露わにした。
そこには、真夫が装着させた銀の首輪がある。
もちろん、両手首にもだ。
「あ、あんたが三人目──?」
かおりちゃんは声をあげた。
「二人目よ。あんたが三人目……。ところで、真夫様、言われたものを持ってきました。最初のターゲットになる西園寺絹香についての資料です。隠し映像もあります……。ほかにも、ここで全女生徒の資料や映像に関する情報バンクをこの部屋から検索できるようにセッティングしておきますね」
玲子さんが箱から出したのは、一台のノートパソコンだ。
それをテーブルの上に出して開く。
すぐに起動画面が立ちあがる。
「ね、ねえ……、いま、最初のターゲットが西園寺絹香って言った?」
かおりちゃんが怪訝な声をあげた。