※この作品はR-18です。

淫魔王のいる学園【完結】   作:ドン・ドナシアン

66 / 201
 66話 マゾっ子の試し

 寮に戻って、勉強部屋に入った西園寺絹香は、部屋に置いてあるパソコンを開いてメールが届いているのを確認した。

 すると、操作をしないのに勝手に動画の再生が始まった。

 西園寺絹香は内心で舌打ちをした。

 

 コンピューターウィルスか……?

 

 とりあえず、パソコンの電源を切ろうと思って、目を見張った。

 画像に写っているの背景に見覚えがあったのだ。

 この寮だ。

 しかも、絹香の部屋のリビングである。

 

 これは……?

 

 そして、絹香は眼を見開いたまま顔色を失った。

 画像に映っているのは、間違いなく絹香だった。また、絹香に仕えている侍女生徒の梓(あずさ)と渚(なぎさ)である。

 しかも、下半身を露出させたふたりを拘束し、鳥の羽根でくすぐって悪戯をしている下着姿の絹香だ。

 

 いつの間に……。

 絹香は愕然とした。

 

 これは数日前……?

 

 このところ、絹香は「ペット」のように可愛がっているふたりの侍女を毎夜のようにレズプレイをして遊ぶということを続けていた。

 その映像のようだ。

 

 部屋に隠しカメラが……?

 慌てて、もう一度画面で撮影されている方角と場所を確認する。

 大体の場所はわかった。

 映像は切ることができなかったので、モニターだけを落としてリビングに向かう。

 

「あっ、お嬢様、戻られたのですね。気がつきませんでした。すぐにお着替えを……」

 

 そこで浴室から出てきた(なぎさ)と会った。すでに制服から侍女服に着替えている。浴室の掃除をしていたのだろう。部屋に戻ったとき、奥にいることに絹香も気がついていたが、中断させては悪いと思って、声をかけることなく先に勉強部屋に行ったのだ。

 

(あずさ)は?」

 

「委員会で遅くなると……。どうかしましたか?」

 

 渚は首を傾げている。

 絹香は余程に焦った顔をしているのだろうか。

 しかし、この部屋に、隠しカメラなど、簡単に仕掛けられるわけなどない。

 特別なセキュリティが整えられているS級生徒の寮だ。

 もしも、隠しカメラを仕掛けられるとしたら、侍女生徒である楓と梓くらいだろう。

 だから、思わずメールで送られた映像のことを口にすることを躊躇した。

 

「なんでもないわ」

 

 絹香はとりあえず、隠しカメラを探してみようとした。

 見当をつけた方角にはリビングボードがあり、その後ろの壁には風景画が飾られている。その風景画そのものは、生徒会長になったことでS級生徒になったお祝いに両親から送られていたものだ。

 

「あっ」

 

 絹香は思わず声をあげた。

 

 渚はきょとんとしている。

 しかし、絹香はそれどころではなかった。

 その絵の額縁の下側に、わかりにくいが丸い異物がある。おそらく、これがカメラだ。

 

 いつの間に……。

 絹香は背に冷たいものを感じた。

 

 いつから……?

 そもそも、誰が……?

 

 最初からついていたとすれば、この隠しカメラは絹香が三年生になってすぐに、実家から送られるときから、ついていたことになる。そして、カメラを取り付けたのが両親、あるいは業者?

 しかし、そんなことはあり得ない気もする。

 そうでなければ、誰かが部屋に侵入して取りつけた?

 でも、どうやって……?

 

「あ、あのう……。なにか……?」

 

 渚が当惑した口調で声をかけてきた。

 

「なにか、貼るものを持って来て。ビニルテープでも、絆創膏でもなんでもいい」

 

 渚はすぐに小物入れから絆創膏を持ってきた。

 

「どうかしたのですか?」

 

 渚は小首を傾げている。

 絹香は額縁の下の丸い異物の部分に絆創膏を貼った。

 すぐに、渚の顔を見る。

 しかし、渚に様子に変わったところはない。

 

 渚はなにも知らない……。

 絹香は確信した。

 

「あのね、渚……。落ち着いて、聞いて」

 

 絹香はおかしな映像のことを話そうとした。

 そのとき、持っていたスマホに着信音が鳴った。

 発信者は「非通知」になっている。

 また、合わせたように、部屋に訪問者があることを告げるチャイムが鳴る。

 

「渚は出て。わたしはちょっと部屋で電話を……」

 

 絹香はとりあえず、そう言って個室に引っ込んだ。

 モニターの電源を入れてみる。

 いまだに、画像が流れ続けている。絹香はすぐにモニターを切って電話に出た。

 

『もしもし、絹香ね』

 

 馴れ馴れしい感じの女の子の声がした。

 声に聞き覚えはない。

 なんとなく機械で変声をしている感じだ。

 

『誰ですか?』

 

『映像を観たでしょう。それを送った者よ』

 

『な、なんのために……』

 

 かっとなって思わず声をあげる。

 

「面白いものが撮影できたんでね。こんなのが撮れるとは思わなかったけど。それと、もうすぐ荷が届くと思うけど、とりあえず中身を見てね。それから、映像のことは双子には喋っちゃだめよ。喋ったら、すぐに、この映像から落とした写真のデーターが学園中にばらまかれるわ。隠しカメラを見つけたようだけど、あんたの部屋にはたくさんのカメラがあるからね。こっちで見張っているのを忘れちゃだめよ」

 

『い、いったい、どういうつもりで……』

 

 絹香はやっとのこと言った。

 

『どういうつもりって、わからないの?』

 

 電話の向こうで、くすくすというわざとらしい笑い声がした。

 

『ふざけないで──』

 

『ふざけちゃいないわ……。まあ、わかりやすく言うと、これは脅迫よ。じゃあね。待っているわ』

 

 電話が切れた。

 待ってる?

 絹香は通常我画面に戻ったスマホを呆然と眺めた。

 すぐに操作して、発信者をもう一度確認しようとした。

 だが、相手先の電話番号はなぜか出てこない。通話記録そのものが残っていないのだ。

 

 誰だろう……?

 秀也?

 

 こんなことをしそうな相手として、まず思いついたのは、木下秀也だ。

 秀也とは、この数箇月、男と女の仲だった。SSクラブという活動の中で、秀也の仕掛けるソフトSMの相手をするということをずっとしていた。

 なぜ、絹香はそんなことをすることになったのか、その記憶がなぜかない。

 ある日突然に秀也に誘われ、断る気が起きずに、それ以降、彼の命じるままのさまざまな破廉恥な行為をするようになった。

 

 縛られたり……。

 

 淫具で弄ばれたり……。

 

 ときには、恥ずかしい恰好や危惧を装着したまま、学園内を歩き回ったりもされた。

 その過程の中で、当然に関係も持った。

 

 だが、どうして、そんなことを承知したのか、まったく当時の記憶がないのだ。

 もともと、秀也という生徒は同級生であるものの、その存在も知らなかった男子だ。だが、あのとき、秀也に求められるまま、彼に仕える愛人、すなわち「奴婢」になった。

 あれ以降、絹香は秀也に逆らうことができなくなり、ほぼ毎日のように彼から与えられる被虐的な性愛を受け続けた。

 

 絹香だけでなく、絹香の親友であり、「恋人」の前田明日香もまた……。

 

 しかし、それはある日突然に終了した。

 ほんの二週間ほど前だ。

 秀也が、しばらく学園には登校することはないので、SSクラブをやめると言い出したのだ。

 絹香は呆気にとられた。

 だが、それは本当だった。

 あれ以降、絹香は学園でも、SSクラブでも、生徒会でも秀也の姿を見ていない。

 不思議なのは、絹香もまた、秀也と別れたことを気にしていないことだ。

 あれだけの関係だったのだから、恋愛感情のようなものがあったはずなのだが、いまの絹香には、愕然とするほど、秀也のことは忘れてしまっている。

 

 実際、あれから、いまのいままで、秀也のことが頭に浮かんだのは、いまが初めてではないだろうか。こんな映像で脅迫めいたことして、エッチなことをさせるというのは、いかにも秀也がやりそうなことだったのだ。

 

 だが、秀也はもう絹香には関わらないとはっきりと宣言をした。

 あの様子から考えると、もう絹香を構ってくるとも思えなかったのだが……。

 

 いずれにしても、あの日々があって、絹香はすっかりとおかしくなってしまった。

 悶々として、身体が疼くのだ。

 秀也がいなくなってから、以前からひそかに女同士の関係だった梓と渚の双子と、ハードな遊びを繰り返すようになってしまっていた。

 だが、それを撮影されていたとは……。

 

「お嬢様」

 

 部屋の戸が叩かれた。

 渚だ。

 返事をすると、渚が小包を持ってきた。

 

「管理人の時子さんがこれを……」

 

「わ、わかった。そこに置いておいて」

 

 そういえば、さっきの電話の女も、荷物が届くと言っていたと思う。

 荷は学園の外から配達されたものだ。

 宛先人は書いてあるものの、まったく知らない相手だ。

 さっきの電話の相手が送ったものだとすれば、偽名だと思う。

 

 それにしても、なんのために……。

 とりあえず、絹香は渚をさがらせた。

 中から出てきたのは、真っ赤なミニスカートと白い絹のブラウスだ。どちらも新品だ。

 そして、携帯電話もあった。

 

 すると、その電話から突然に着信音がした。

 メールのようだ。

 

 「【指令1】」

 

 メールの題名にそうあった。

 とりあえず、中身に目を通す。

 

 “その服を着て、外に出ること。ただし、ブラジャーはしてはならないよ。パンティは特別に許してあげるわ。もちろん、ストッキングなんてだめだからね。それと、持って来ていいのはこの電話だけ。外にやって来た時点で、この写真を剥がしてあげる。早くしないと、誰かに見られるよ”

 

 どういう意味だろう?

 絹香は訝しんだ。

 すぐに、再びメールの着信音がした。

 

 開くと今度は写真だった。

 

「あっ」

 

 声をあげる。

 映っていたのは生徒会長室の入口だ。

 さっき送られてきた映像から落としたらしい写真が貼ってある。

 携帯の画面では詳細にはわからないが、双子を縛って下着姿で責めている絹香の写真だと思う。

 こんなものを誰かに見られれば、絹香も終わりだし、梓と渚だって、ここにいられなくなる。ましてや、実家に知られでもしたら……。

 写真の中に、腕時計が映っている。

 どうやら、たったいまの時刻のようだ。

 迷っている暇はない。

 絹香は目の前にある服を着るために、慌てて制服を脱ぎ始めた。

 

 


 

 

「あなたも、ノリノリね……。結構、愉しんでるでしょう?」

 

 絹香に送りつけたメール文を横から覗いていたあさひ姉ちゃんが、にんまりと微笑んでかおりちゃんに言った。

 真夫はそれを聞いて、思わず苦笑した。

 さっきから変声機を使って電話をしたり、絹香への脅迫文のメールを送ったりしているかおりちゃんが愉しんでいるのはわかるが、真夫に言わせれば、それ以上にあさひ姉ちゃんの方が愉しんでいる。

 

 S級生徒寮の真夫の部屋の地下だ。もともと調教部屋だったここの一部が、いまはパソコン室になっている。

 

 真夫たちは、絹香の帰宅を確認すると、最初のターゲットである絹香を落とすために、まずは、ここから脅迫文を送りつけた。

 部屋にいるのは、真夫とかおりちゃんとあさひ姉ちゃんだ。

 玲子さんは、準備のためにいろいろと手伝ってもらったけど、ここにはいない。

 昨日も付き合ってもらったし、準備のときもかなり時間を拘束した。だが、玲子さんはこの学園の理事長代理であり、様々なことで学園の活動を仕切っている。

 本当は忙しいのだ。

 

「これを送ればいいのね」

 

 かおりちゃんは、準備している写真を、荷物の中に入れて渡した携帯にメールで発信する。

 写真は生徒会室の入口に、絹香たちの恥ずかしい写真を貼りつけている映像だ。

 もっとも、たったいま貼っているように見せかけているが、本当は今日の午前中のうちに、玲子さんの作ってもらった写真だ。実際には、いまは写真は貼っていない。万万が一にも、誰かに見られれば大変なことになる。

 そんなことまでやる必要はないのだ。

 

「送ったわよ。さて、どうなるかな。本当にあの服を着て出てくるのかしら」

 

 かおりちゃんが言った。

 

「出てこなけりゃあ、絹香をターゲットにするのはやめるよ。俺は彼女が俺を受け入れる余地がない普通の娘だったら、奴婢にするつもりはないんだ。これは、あくまでも試しさ。彼女が俺たちと同じようなエッチな子なのかどうかを確認するためのね」

 

「えっ? じゃあ、もしも、絹香がメールの指示に従わなければ、もう、手を出すのはやめるということ?」

 

 あさひ姉ちゃんがちょっと驚いたように言った。

 

「そうだね。命令に従わず、誰かに相談したり、どこかに訴えたりしてもやめる。だけど、俺は絹香は出てくると思う。彼女は自分でどう思っているかはともかく、絶対にマゾっ子だよ。こんな風に恥ずかしい命令をされるのが心の底では好きに違いないと睨んでいる。だから、出てくる」

 

 真夫は断言した。

 そして、横のパソコンの映像を部屋の外のロビーの現在の映像に切り替える。

 玲子さんは、このパソコンでこの学園の秘密映像にアクセスできるようにしてくれただけでなく、数千個以上あるらしい、学園内のすべての隠しモニターとマイクをここから確認できるようにしてくれたのだ。

 

 画面に部屋の外の共有ロビーの映像が映る。

 誰もいない。

 だが、しばらくすると、絹香が入っている二号室のドアが開いた。

 

 つばの大きい帽子をかぶって顔を隠すようにしている。

 だが、かなり目立つ格好だ。

 なにしろ、ブラウスは前ボタンの普通のものだが、わざとサイズが少し小さいものを送りつけた、だから、ブラジャーのしていない絹香の胸がやたらと強調されたような感じになっている。

 玲子さんの資料で「バスト:88cm」とあった豊かなバストが丸みを帯びて浮かびあがっていた。もしかしたら、乳首まではっきりと露になっているかも……。

 

 そして、圧巻はミニスカートだ。

 超ミニを超越した短い丈である、スカート丈そのものよりも、露わになっている太腿が長いのだ。

 スカートというよりは汗ふきタオルを腰に巻いている感じだ。

 さすがに恥ずかしいのか、必死になってスカートの裾を押さえるようにして出てきた。

 

「わっ、本当に出てきた。あんたの言う通りね」

 

「真夫ちゃん、監視映像でも、絹香ちゃんは誰にも言ってないわ。ひとりいた渚という一年生にも、伝言だけして見られないようにして出てきたみたい」

 

 玲子さんが今朝持ってきたもう一台のパソコンで、絹香の部屋の監視映像や携帯電話などの通話チェックをしていたあさひ姉ちゃんが言った。

 

「オッケー。じゃあ、外に出た時点で、生徒会室から貼り紙を剥がした映像を送ってあげて、かおりちゃん。そして、二通目の指示を送ってよ。そのまま歩いて売店のある厚生棟に向かうようにとね。ただし、十分以内に来なければ、さっきの写真を厚生棟のロビーにばらまくって伝えておいて。絶対に乗り物を使ってはだめだと強調しておいてよね」

 

 すると、かおりちゃんが呆れた声をあげた。

 

「うわあ……。あんたも鬼畜ねえ。あそこまで十分なんて、走らないと間に合わないわよ。あの格好の絹香を走らせるつもりなの?」

 

 かおりが笑った。

 だが、その顔にはすっかりと悪戯を悦んでいる表情だ。

 

「二度目の試しだよ。命令に従うかどうか……。そして、その命令で、絹香が濡れるかどうか……。命令に従わなくても、そして、恥ずかしいことをさせられて濡れる体質じゃなくても、もう絹香には手を出さない。だけど、絹香が俺が思っているようなエッチな女の子ならば、彼女を四人目の奴婢にするための調教を本格的に開始するつもりさ」

 

 真夫は笑った。

 

「はいはい、仰せのままに、ご主人様」

 

 かおりちゃんがお道化た口調で応じて、パソコンでメール文を叩き始めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。