「はあ、はあ、はあ……」
絹香は必死で学園内の通りを走っていた。
メールで届いた指示は、十分以内に売店のある厚生棟まで辿り着くことだった。
S級生徒寮は、学園内の寮棟地区の外れにあるので、A級以下の生徒用の寮に近い厚生棟まではかなりある。
とてもじゃないが、歩いて間に合う距離じゃない。
それにしても、外に出てみると、さすがに、この異常に短いスカートに鼻白んだ。
丈は太腿の付け根のぎりぎりまでしかなく、少しでも歩幅を大きくして歩くと、ミニ全体がずれあがって、完全に下着が丸見えになるのだ。
走っている絹香は、まるで下着を晒しながら進んでいるようになっている。
だが、「命令」には逆らえない。
絹香が双子の従者生徒を相手に淫らなレズプレイをしているあんな写真などばら撒かれたら、身の破滅だというのはわかる。
それにしても、誰がやっているのだろう……?
絹香の頭には、何人かの候補者の顔が浮かぶ。
いずれにしても、相当の力を持っている者という気はする。
なにしろ、あのガードの固いS級生徒寮の中に隠しカメラを仕掛けるような人物なのだ。
もしかしたら、こうやって、走っている姿もどこかで監視しているのかもしれない。
いずれにしても、幸いだったのは、学園の中心方向からS級寮や外門に繋がるこの道には、ほとんど人通りがないことだ。
少なくとも、第三者から、この露出狂のような絹香の姿を見られることはない。
ただ、それも厚生棟に着くまでのことだ。
課業外のこの時間であれば、そこはかなりの生徒でごった返しているだろう。
絹香は、そこにこの恰好で行かなければならないのだ。
わずかな救いは、つばの大きな帽子だ。
これで少しは顔を隠せる。
もっとも、それでも生徒会長としている絹香のことに気がつく者はいるかもしれないが……。
そのときだった。
後ろから自動車の音がして、絹香を通り過ぎていった。
慌てて脚の歩みを普通にして、スカートの丈を一生懸命に引っ張って戻す。
焦ったが、特になにもなく自動車は通り過ぎていった。
絹香はほっとした。
チロン──。
はっとした。
この服と一緒に送られてきた携帯電話からの音だ。
何者かは、絹香にほかの物を一切持たずに、この携帯電話だけを持って出るように強要をしていた。
絹香はその携帯電話を握りしめたまま走っていた。
手に持っている携帯電話の画面を見る。
画面は勝手にタイマーになっていたが、そのタイマーが残り時間が二分であることを告げる音だった。
絹香は再び走り出した。
やがて、厚生棟の近くに着いた。
当然ながら、そこにはかなりの生徒がいる。
普通寮に近いので、制服姿もいれば、私服姿の者もいる。
さすがに絹香はここでは走ることなどできずに、必死で顔を伏せながら、人混みの少ない場所を避けて歩き進んだ。
そのとき、びっくりするくらいの大きな音でいきなり鳴りだした。
慌てて電話を取ったが、それによって周囲にいた生徒の視線が一気に絹香に集まったのがわかる。
急いで、帽子で顔を隠す。
『なにをしている。さっさと建物に入れ。一番奥の喫茶店だ。その一番奥の席に座るんだ』
変声をした男の声だった。さらに店の名を告げて電話は切れた。
やはり、どこかで見ているのだろう。
絹香は周囲を見渡す。
だが、多くの視線を感じて、急いで顔を伏せる。
超がつくほどのミニスカートはかなりの注目を浴びていた。
自分の脚ががくがくと震えているのがわかった。
とにかく、棟の中に入る。
喫茶店の中には十人ほどの客がいた。ほとんが生徒だが、出入りの業者らしき大人もいる。
最奥の席は窓際になっている。
絹香は店全体に背を向けるように腰をおろした。
ぴったりと太腿を付け合わせて、同時に両手で前を隠す。
ただでさえ短いスカートは、椅子に座ったためにずれあがり、両脚が完全に剥き出しになっている。
だが、どうしたらいいのだろう。
絹香は電話の男の指示により、財布ひとつ持たずにここにやって来たのだ。
持っているのは携帯電話のみである。
ウェイトレスがやって来た。
学園で契約をしている業者の若い女性だ。
水を置いたウェイトレスに、とりあえず、紅茶を注文した。
やがて、その紅茶も運ばれてきた。
すると、電話が鳴った。
今度は普通の音だったので、外で大音響で鳴ったのは、嫌がらせの意味があったのだろう。
『時間切れだね。三分も遅れた。君たちの映像はネットに公開したよ。反対側のシートにスマートフォンがある。それを見てごらん』
「えっ?」
視線を向けると、シートと同じ色だったのでわからなかったが、確かにそこにスマートフォンがあった。
腰を浮かせて反対側に座り直し、携帯を持っている手とは反対側の手でそれを手に取る。
「あっ」
思わず声をあげた。
絹香が手に取ると、スマホが勝手にネットに繋がり、ひとつのサイトが現われたのだ。
“S学園 三年生 西園寺絹香(17)”
周囲の卑猥な画像とともに、はっきりとそう文字が書かれている画像データーがある。
しかも、絹香が
「ちょ、ちょっと待ってください。消して──消してください」
絹香は自分の顔が真っ蒼になるのを感じながら、携帯電話の相手に必死で哀願した。
『駄目だね……。もっとも、このままじゃあ、君も困るだろうからね……。データを消してあげるための条件を言おう……。その場で下着を脱ぐんだ。そこで脱ぐんだぞ──。そうすれば、画像を消してやる。早くした方がいいぞ。こうしているあいだにも、知っている者がその画像が見つけるかもしれないし、一度でもネットに出た画像は、いつまでも世界中に拡散する可能性があるらしいね』
電話が切れた。
絹香は唖然とした。
ここで下着を脱ぐなど……。
しかし、従うしかない。
周囲を見回す。
絹香の席は奥ということもあり、誰もこっちには注目していないし、死角にもなっている。少なくとも、ここでなにかをしていることがはっきりとわかるくらいの距離にいる者はいない。
もう一度、反対側の客に背を向ける側の席に移動した。
スカートの中に両手を入れる……。
激しく鼓動が鳴っていた。
手が震えた。
直接は見られていないとはいえ、こんな場所でノーパンになる緊張感と恥ずかしさは尋常じゃない。
本当に、ここで下着を……?
まさか……。
絹香は自問自答した。
そんなことができるわけがない……。
でも……。
しかし……。
だが、一方でぞくぞくするような倒錯感が沸き起こったのを感じた。
客たちには背を向けている。
絹香のことを注目している者などないはずだ。
それなのに、絹香は背中からすべての客の視線が向いているような錯覚を感じていた。
それは怖ろしいほどのスリリングな緊張だった。
恥ずかしい……。
だけど……。
気がつくと、絹香は下着を掴んで、すっとさげていた。
巨大な解放感……。
できた……。
不思議な達成感も生まれる。
あとはそんなに面倒ではない。
絹香は足首から下着を抜き取ると、さっと自分の手の中に隠した。
いま、自分はノーパンだ。
あまりにも短いこのスカートからは、股間そのものが露出しそうである。
とてつもない羞恥は、絹香に手足が痺れるような戦慄を与えていた。
だが、その手をいきなり、がっしりと掴まれた。
「ひっ、あっ」
絹香の手を掴んだ相手の顔を見て、絹香は大きな声をあげてしまった。
しかし、自分の声に驚いて口をつぐむ。
そこにいたのは、坂本真夫だった。
新しくやってきた転校生であり、転入早々に学園の恥部といわれていたあの竜崎と諍いを起こして叩きのめし、絹香がずっと「SSクラブ」への加入を呼びかけている真夫である。
絹香は全身の力が脱力していくのを感じた。
「も、もしかして、こ、これ、あなたが……?」
呆然とした。
こんなことをするような相手とは思って思いなかったのだ。
絹香の感じている真夫は、どちらかといえば紳士的であり、女に対して優しいという印象だった。恥辱的な写真や映像で脅迫して、女を辱めるタイプとは想像が違っていた。
「愉しかった、絹香? スリルがあったかい」
真夫が絹香から下着と帽子をひったくった。
「ま、待って──」
帽子はともかく、下着を取り戻そうとした。
「そんなに激しく動いたら見えるよ」
真夫が笑った。
「えっ? いやっ」
自分の身体を見る。
確かに、スカートが捲くれあがっていた。
絹香は裾を掴んで、椅子に座り直す。
すると、手首でがちゃりと金属音がした。
ふと見ると、真夫に捕まれていた腕に銀色の金属の腕輪がついている。
真夫に嵌められたらしい。
「これは?」
「そのうちわかる。反対側もだよ。左手を出して」
真夫の言葉には有無を言わせないなにかがあった。絹香は言われるまま、左手も差し出した。
その手首にも銀色の金属の腕輪が嵌まる。
「こ、これはどういうことなの──。説明して、真夫──」
しかし、真夫はにこにこと笑うばかりで、なにも応じない。
その代わりに、絹香の反対側の席に腰かけると、手に持っていたスマホらしき機械でなにかを操作した。
そして、顔をあげた。
「さっきの映像は消去したよ、絹香……。もっとも、別に本当に公開していたわけじゃないけどね。あれは、絹香に渡した受信機だけに送ったものなのさ」
絹香は唖然とした。
どうやら、一連の脅迫はこの真夫の悪戯だったようだ。
口を開こうとしたが、すぐに店員がやって来て、真夫の前に水とコーヒーを置く。
あらかじめ頼んでから、この席にやって来たのだろう。
それはともかく、絹香は必死に両手でスカートの裾の部分を隠した。
下を向いている絹香に、なんの意識を動かした様子もなく、ウェイトレスが立ち去っていく。
真夫はすぐに落ち着いた素振りでコーヒーを口に入れた。
「な、なんで、こんなことを……」
店員が完全に去ったのを確認して、絹香は真夫に言った。
「もちろん、君を試すためさ」
真夫には、悪びれた様子もない。
「試す?」
「俺をSS研にやたらに誘う美少女生徒会長様が、どれだけ淫乱なのかの試しさ」
真夫は手に持っていた絹香の下着を拡げた。
「い、いやっ、拡げないで──」
絹香は真夫から下着をひったくろうとした。
だが、さっと手を避けられてしまった。
「見てごらん、君の下着だ。べっとりと濡れている。絹香はただ命令されて、短いスカートでここにやってきただけなんだよ。それなのに、こんなに濡れているのはなんで?」
真夫が絹香から取りあげた下着をかざした。
確かに、そこは、ここからでもわかるくらいに、べっとりと絹香の蜜で汚れている。
絹香は欲情していた。
それはわかっている。
「か、隠して……。晒さないで」
絹香は低い声で懸命に言った。
同時に全身がかっと熱くなるのを感じる。
さらに太腿を締めつけた。
真夫に指摘されるまでもない。
絹香の股間からは、いまこの瞬間だって、とめどもない蜜がちろりちろりと流れている。しっかりと脚を締めなければ、その愛蜜でシートの座席を汚してしまいそうな気さえしている。
「変態だからでしょう? 絹香、君は変態だ。俺と……俺たちと同じようにね。君の言う通り、俺はSS研に入ってあげるよ。ただし、部長は俺だ。君は俺に仕える部員という名の奴婢として、俺に仕えるんだ」
真夫がやっと下着を隠した。
「ああ……」
絹香は全身が脱力するのを感じた。
まるで、真夫の言葉は催眠術のようだ。
この人には逆らいたくない。逆らえないという気持ちにさせる……。
そんな気持ちにさせていく。
「大人しくした方がいい……。脅迫者の犯人が俺だとしても、状況に変更はないんだよ。絹香は、俺に絶対に逆らえない弱みを握られてしまった。だから、脅迫に屈して、そんなエッチな恰好でここにやって来た。そういうことなんだよ」
真夫が笑った。
絹香は目を丸くした。
この人は、こんな顔もできるのかと思うような好色でいやらしい微笑みだったからだ。
それでいて、この人に服従しなければならないという暗示のようなものも走る。
「……君は普通じゃない……。その自覚はあるはずだ。君はこうやって、脅迫に屈して、そんな恥ずかしい恰好で出てきた。そして、こんなにも興奮して股間を濡らしてしまった。いまだって、平静を装えないほどに動揺しているはずだ。それは君が変態の証拠だろう?」
真夫はにやりと笑う。
「わ、たしは変態じゃあ……」
否定しようとしたが、その言葉が途中でとまってしまう。
そもそも、従者生徒とあんな関係というのは言い訳のしようがない。
「乳首、立っているよ……。ボタンを外した方がいい。上ふたつくらいはね。そうすれば、谷間は見えるけど、服が緩んで、余程注意しないと見えなくなる」
「えっ?」
驚いて胸を見た。
小さめのブラウスにノーブラの乳房が張りついているだけじゃなく、走ったために汗で濡れて、はっきりと絹香の桃色の乳首がシャツに浮き出ている。
こんな恥ずかしい恰好のままだったのかと思って、またかっと身体が熱くなる。
とにかく、急いで言うとおりにした。
確かに胸元の裾野は露出したが、少しは目立たなくなる。
「いずれにしても、自覚しているんでしょう? 普通はどんなに脅されたところで、こんな格好では外には出ない。脅迫に屈したという時点で、君には露出願望、あるいは、被虐願望があるということさ」
真夫は笑った。
今度は、ねちっこいいやらしい笑いではなかった。
どちらかというよりは、屈託のない愉しそうな笑いだ。
絹香にこんなことを強要しながら、そんな笑顔を向けることのできる真夫は不思議な男子だと思った。
「……そ、そんなことは……」
言いかけた言葉がまた途中でとまった。
さっきの言葉……。
絹香に被虐願望があるというのは……。
否定できない……。
それを絹香に言ったのは二人目だ。
なぜか、いままでほとんど思い出さなかったのに、急に思い出したのだ。
そうだ。
そのとおり……。
絹香にはどうしようもない被虐願望がある。
自分自身に、それを認めてみた。
すると、まるで、心の闇がすっと消えていくような気分になった。
「想像してごらん……。絹香は俺に逆らえない秘密を握られた……。今日から、毎日、寮でも……授業中でも……、こうやって課業外の学園でも……あるいは、実家にだって、俺の破廉恥な命令が送り続けられるかもね……。そして、ちょっとでも命令に逆らえば、君が破滅するような写真や映像を公開されるんだ……。あの双子……。今度は彼女たちを脅迫しようかな……。だけど、彼女たちには手を出さない。脅迫するのは、あの子たちに、君を調教させるためだ。想像してごらんよ。君がペットのようにしている一年生の双子から、絹香は毎日調教されるんだ……。どんな気分?」
絹香は、いまここで悪質な脅迫者(実際にその通りなのかもしれなかったが)に呼び出されて、破廉恥なことを強要されるのだと想像してみた。
この真夫に……。
梓と渚に……。
途端に、絹香の五体に全身を痺れさせるような得体の知れない衝撃が走った。
わけのわからない興奮と開放感に襲われた。
「……手は身体の横にしてよ。そして、脚を開いてね。いいというまで閉じたらだめだ」
真夫がにやりと微笑んだ。
絹香はぎょっとした。
真夫は手に十数枚の写真らしきものを持っていた。
それを床側にかざしている。
しかも、それは絹香たちの痴態の写真に間違いなかった。
「わかるね? 俺の手はとても敏感だ。あっという間に、手が離れて床にばらかまれるかもしれない」
真夫の声には、絹香のことを見抜いて、それを嘲るような響きがあった。
ぞくぞくした……。
あるいは、それは絹香の錯覚なのかもしれない。
なにしろ、こんな風に辱められるというのは、絹香自身がずっと望んでいたことに違いなかったからだ。
絹香はある名家の正家の一人娘だった。
長く子供のできなかった両親に生まれた大望の子供であり、おそらく考えられる限りの愛情と、そして厳しい躾と英才教育を受けながら育ったと思う。
幼いころから、「いい子だ、いい子だ」とずっともてはやされて育った。
実際に絹香は、自分でいうのもなんだが、同世代の誰よりも頭がよく、器用だったと思う。
両親をはじめとする周囲の絹香に対する称賛と期待は、幼い絹香がたじろぎを覚えるほどだった。
しかし、絹香はそれに十分に応えてきた。
なにしろ、絹香には、それができるからだ。
絹香は周囲が求める子供になろうとして努力し、努力によって実を結んだ成果は、さらなる期待を絹香に向けた。
そして、絹香はみんなが求める「絹香」を追い求め続けた。
だが、それはいつまで経っても終わることのない「仮面」の日常でもあった。
絹香の子供時代は、まるで、自分に似合わない衣装と演技を次々に重ねていくような作業だったような気がする。
だが、絹香は頑張った。
誰もが求める「いい子」を目指し、ずっと努力した。
周囲の期待に応えようと思った。
そして、そうなった。
しかし、実際の絹香はずっと平凡で普通の娘だ。
心には悪辣なことも、狡いことも、いやらしいことだって存在している。
エッチなことにも興味があるし、人並みに性欲もある。
いや、むしろ、他人よりも、ずっと好色なのかもしれない。
オナニーだって、初潮も始まっていないときから、ずっとやっている。
だが、そんなことはおくびにも、外に出すことはできない。
なにしろ、絹香は、誰もが認める「いい子」なのだ……。
そんな淀んだ心を持っている絹香は、周囲が求めている絹香ではない。
だが、いつしかそれは絹香自身の中に、どうしようもない破綻のようなものを生み出した気がする。
黒い闇と言い換えてもいいかもしれない。
いつしか絹香は、自分の心の底に隠れている黒い欲望のようなものに気づくようにもなっていた。
そして、それはやがて、絹香を鬱積した倒錯の世界に走らせた。
自分に逆らうことのできない梓と渚をペットのようにしたのだ。
ふたりは実家の屋敷に住み込みで暮らしているシングルマザーの家人の連れ子であり、ふたりとは姉妹のように育ったものの、絹香の実家が見捨てれば、母娘ともども生活ができないような立場だったのだ。
ある事情で彼女たちの母親は借金をしており、それを実家が肩代わりもしていた。
だから、絹香は、梓と渚が絶対に絹香に逆らえないのを知っていた。
どんなことをしても、この双子が誰にも訴えることもできないことも認識していた。
それで彼女たちを罠にかけたのだ。
そして、秘密を作り、絹香の性欲を解消するための道具にした……。
十五歳のときだ。
絹香の心の苦しさは消滅した。
梓と渚の前では、なんの飾りもない剥き出しの自分でいられる。
そして、その秘密の行為はだんだんとエスカレートもしていった。
十六歳になって、この学園に入った。
この学園に入っても、常に最優秀生徒だった絹香は、やはり、ここでも求められる自分を演じた。
それによって溜まるストレスは、週末に実家に戻るたびに双子を性的にいたぶることで解消した。
だが、それでも癒されないなにかが、絹香を次第に追いつめていった。
しかし、転機がやって来た。
秀也の出現だ。
なぜかあの秀也は、絹香の隠している性癖を簡単に見抜いて、絹香にそれを暴露した。
秀也が言ったのは、絹香には被虐願望があるということだった。
しかし、その欲望は誰からも癒されることがなく、絹香の中に巨大な漆黒の闇のようになってるのだそうだ。
どこから得た情報か知らないが、秀也は絹香が家人の双子を「玩具」のようにしているのを知っていて、それは絹香が得ることのできない願望を癒すための代償だと指摘した。
だが、本当に絹香が求めているのは、双子を「ご主人様」としていたぶることではないそうだ。
「お前は、本当は、あの双子から奴隷のように扱われたいんだ」
秀也は言った。
絹香はまるで操られるように、秀也の「性奴隷」になった。
十七歳……。
二年生の冬のことだ。
だが、それはすぐに終わった。
秀也が絹香から去っていったのだ。
なぜか、秀也がいなくなると、秀也のことはほとんど思い出さなくなった。
しかし、その秀也は絹香の前から消える前に、まるで呪いのような言葉を残した。
「転校してくる坂本真夫の奴婢になれ」と……。
絹香はその言葉に捉われた。
そして、いま、その真夫が絹香に向き合っている。
絹香が絶対に秘密にしたい映像や写真を手に入れ、それを公開したくなければ、与えられる破廉恥な命令に従えという。
ぞくぞくした。
それはまさに絹香がずっと追い求めてきた「ご主人様」の言葉だったからだ。
ご主人様──。
そうだ。
それを求めていたのだ。
秀也は残念ながら絹香の「ご主人様」ではなかった。
彼は絹香と遊びはしたが、束縛はしようとはしなかったからだ。
絹香は束縛されたかった。
命令されたかった。
絶対に実行することなどできない命令を与えられ、それを無理矢理に服従させられたかった。
そして、もうひとつだけ確かなことがある。
絹香は真夫に恋をしていた。
ただ礼儀正しく大人しい男子とだけ思っていた真夫の、竜崎に示したあれ程までに残酷な憤怒──。
彼の大切な女性のために……。
そんなものを目の前で見せられてしまっては、絹香も参ってしまわないわけにはいかない。
あれ以降、真夫をSS研に誘う絹香の言葉は、秀也にささやかれた言葉の暗示のようなものではなく、絹香自身の本心になった。
「命令だよ、絹香──。脚を開け。逆らうことは許さない」
真夫は言った。
「は、恥ずかしいよ……」
絹香は小さく言った。
しかし、ゆっくりと脚を開いた。
両手は身体の横だ。
短すぎるスカートはずれあがり、しっかりと絹香の剥き出しの股間が露わになっている。
「そこでオナニーをするんだ。やらないと、この写真が全校生徒の携帯の端末に強制的に送られることになる」
真夫が絹香の姿をスマホで何枚か写真を撮ったのがわかった。その写真の中には、絹香が股間をスカートの下から晒している写真もあるとわかる。
逆らえない……。
絹香はおずおずと手を自分の股間に持っていった。