「ね、ねえ、だいたい、どこに……。どこに連れていくの……? お、お願いよ……」
車が止まると、絹香は素っ裸のまま車の外に降ろされた。
汗だくの身体に触れる外気が火照り切った身体を冷やす。それが絹香の羞恥を誘う。
「どこだっていいでしょう。ちゃんと進まないと、このまま手を離してどっかに行っちゃうわよ、マゾ会長さん」
かおりの声が聞こえた。
そのかおりは絹香の左側にいる。
右側は恵だ。
ふたりとも真夫の従者ということになっていて、いずれも性奉仕をする奴婢だということは、絹香も知っている。
「あんたも、結構、鬼畜ねえ」
恵が半ば呆れたような口調で反対側から言っている。
「だって、いつもわたしばっかり、苛められ役なんだもの。こっちの方が愉しいかも」
かおりが嬉しそうにくすくすと笑った。
だが、絹香にとっては笑い事ではない。
局部に掻痒剤を塗られ、気が狂うような痒みと股間の疼きに襲われたまま、車の中で素っ裸にされて、かなりの時間をそのまま学園内をドライブさせられた。
どこをどう走っていたのかわからなかった。
目隠しをされていたのだ。そして、その目隠しはいまもされている。
また、両手首には背中で手首に嵌められた金属の腕輪で拘束されていた。それもそのままだ。
車の中では足を閉じられないように、両膝になにかの器具もつけられていた。
いずれにしても、その状態で両側から真夫とかおりに、身体のあちこちを弄られ続けたのだ。
しかし、声を出すと外に聞こえるよと脅され、絹香はただただ歯を食いしばって声を出さないように我慢するしかなかった。
そして、いま、突然に車が停止されて、目隠しと拘束のまま、裸で外に出されたのだ。
脚の金具が外されたのは、車の外だ。
そのとき、そのまましゃがみ込んで、必死になって内腿を擦り合わせたが、もちろん、そんなものでは痒みはなくならない。
また、かおりと、運転をしていた恵に両側から抱えられて、強引に立たされた。
逆らうことはできない。
歩かないとここに置き去りにすると脅されたのだ。
本当にそんなことをするかどうかわからないが、ここがどこかなのかも、絹香にはわからない。
そんなところに、目隠しと手錠をしたまま放置されてしまったらと思うと、怖くて彼女たちに逆らえないのだ。
そしていま、こうやって、彼女たちに両側から腕を掴まれて、歩かされているところだ。
「でも、かおりちゃんの立場は変わらないよ。絹香が加わっても、やっぱり、かおりちゃんは俺たちの中では一番下の奴婢だからね。今日は特別ということさ」
不意に後ろから真夫の声がした。
そして、かおりが手を離して、急に悶え声を出す。
「あっ、だ、だめえっ、こ、こんなところで……。う、ううっ」
なにをされているかわからない。
だが、すぐ隣で真夫とかおりがじゃれ合っているというのだけはわかる。
「ふふふ、でも、羨ましいかな。最下層の奴婢は、なんだかんだと、一番真夫ちゃんにくっついているんだから」
恵が笑いながら絹香から手を離して、そっちに寄っていくのがわかった。
「あっ、そ、そんな、手を離さないで──。ああっ」
両脇からかおりと恵が離れたことで、絹香にすさまじいまでの恐怖が襲いかかった。
その場でしゃがみ込む。
だが、三人は絹香のことを忘れたように、すぐそばで絡み始める。そんなことをするのだろうから、ここには誰にもいないのだろうが、明らかにここは外だ。それに彼女たちは服を着ているが、絹香は全裸だ。
目隠しをしているので、掴まれていた身体を離されると、一気に恐怖心が襲いかかる。
「い、いやだったら、真夫君」
「奴婢には拒否権はないのよ、かおり……。ほら、邪魔な手をどけて」
「声さえ出さなきゃ、こっちには誰も来ないよ」
三人がじゃれ続ける。
気配からすると、かおりが真夫と恵から悪戯をされている感じなのだが、とにかく、絹香は怖くて仕方がなかった。
一方で、股間の痒みが気が狂うようなものになって絹香に襲いかかってもくる。
かなりの長い時間、その状態が続いた。
「ん、んん、んんんっ」
やがて、噛み殺したようなかおりの喘ぎ声がした。
まるで達したときのような声だ。
すぐに、かおりの荒い息が聞こえてくる。
本当に、この場で絶頂をしてしまったような感じだ。
「う、うう……」
一方で絹香は、ただひとり痒みに苦しめられたまま、この場で素っ裸のまま放置されている。
「じゃあ、次はあさひ姉ちゃんだよ」
「あ、ああ、そんな真夫ちゃん……」
満更でもなさそうな恵のちょっと嬉しそうな声がしたかと思うと、今度はかおりも責め手に加わって、恵が責められだしたようだ。
しばらく、恵の我慢しているような嬌声が響く。
そして、その恵も達したみたいだ。
結局、そのあいだ、ずっと絹香は声もかけられることなく放置された。
すると、いきなり声がしなくなった。
絹香は不安に襲われた。
「……ね、ねえ……」
じゃれ合いが終われば、絹香のところに戻ってくるのと思っていたのだ。
しかし、誰も絹香のところにやって来ない。
やっぱり、いつの間にか三人の気配が消滅している。
絹香はパニックになりかけた。
「ね、ねえ、う、嘘でしょう? そ、そこにいるんでしょう──? い、意地悪しないで……」
びっくりして声をかけた。
だが、返事はない。
それよりも、声を出したことで怯えてしまった。
もしかして、本当に三人がいなくなっていから……。
このまま、この恰好で放置……?
それに、誰かが、さっきの絹香の声でやってきてしまったらどうしよう。
そう考えると、もう怖くて声などさせない。
絹香はしゃがみ込んだまま、息を殺した。
どこかに行ったはずはない……。
これはただの悪戯に決まっている……。
わかっているのだが、どこなのかわからない野外に、ひとりぼっちで裸で放置される恐怖は想像を絶する。
どこかに隠れようと思っても、どこに隠れていいもわからない。
そもそも、ここはどこなのだろう。
耳を澄ます。
すると、グラウンドでなにかの練習をしているような声がかすかだが遠くから聞こえるのがわかった。
学生棟の近く……?
かなり声が遠いことを考えると、やはり、周囲に人影はないのだろう。
だが、それでも声が聞こえるということは、誰かが絹香を見つけることもあるかもしれない。
とにかく、待つしかない。
しかし、じっともしていられないくらいの痒みが襲う。
とはいっても、呻き声さえも、怖くて出せない。
絹香は必死に歯をぎりぎりと噛み続けた。
どのくらい時間が経っただろうか。
やがて、がらがらと台車のようなものが押されてやって来るの気配が聞こえだした。
「ひっ、ね、ねえ、真夫──。ま、真夫……。かおり、恵さん……。ね、ねえ……」
驚愕して、声を出した。
ただし、ほんの小さな声だ。
返事はない……。
台車の音が近づく……。
人の気配もはっきりになった。
もう、怖ろしくて声も出せない。
怖い……。
怖い──。
誰か来る──。
真夫たちだろうか……。
そうだと思う……。
でも……。
もしも……。
絹香はもうどうしていいかわからず、さらに身体を小さくした。
股間の痒みは気が狂うほどにもなっていたが、いまはあまりの緊張感でそれを忘れていられるほどだ。
そして、台車とともに、誰かがすぐ横にやって来て……。
絹香の横で……止まった。
「ひっ」
絹香は恐怖で声を出してしまった。
「ふふふ、お待たせ。怖かった、絹香?」
かおりの声だ。
「あ、あああ……。い、意地悪──。ああっ」
あまりの安堵に、全身が脱力する。
「でも、あんたって、本当にマゾっ子なのね。こんなに乳首が立っちゃって」
いきなり胸に手が伸ばされて、乳首を指が摘まんだ。
「んふううっ」
その瞬間、まるで電撃が流されたような衝撃が走り、絹香は悶絶しそうになった。
「うわっ、びっくり」
絹香のあまりの過激な反応に、かおりが驚いたように指をさっと離すのがわかった。
「さあ、立つんだ。パーティの準備ができたよ、お姫様……」
真夫のお道化た声がした。
後ろ手錠の腕をとられる。強引に立たされた。
それでわかったが、ほとんど力が入らないくらいにふらふらだった。
絹香は崩れ落ちそうになり、足を踏ん張った。
すると、なにかが股の間に差し込まれた?
そして、異物が股間に当たり、ぎゅっと締めつけらる。
「い、いやあっ、な、なにしたの──?」
絹香は悲鳴をあげた。
「そんな大きな声を出しちゃだめよ、絹香さん。樹木の影とはいえ、見えるところに生徒がいるわ」
恵のささやき声だ。
横にいる。
「う、うう……」
股間になにかを装着されたと途端に、異様な感覚が襲いかかる。
股の部分にはなんだかいぼいぼのような丸いものが無数にあって、それが局部やクリトリスを圧迫しているのだ。また、お尻には小さな管のようなものがぐいと挿し込まれた。
「な、なんなの、これ?」
声が大きくならないように、ささやき声で訊ねた。
革の下着?
感覚的にはそんな感じだ。股間だけでなく腰周りもなにかに締められてから、後ろで電子ロックの音がした。
「ただの貞操帯だよ、革のね。さあ、口を開いて」
今度は口になにかを押し込まれて、頭の後ろでぎゅっと締められたのがわかった。
おそらく、これはボールギャグだと思う。
絹香も双子に使ったことがある。
息をするとひゅうひゅうと音がした。だから、球体に小さな穴がたくさん開いていて、涎が垂れ流しになるタイプだろう。
「じゃあ、こっちだ」
三人に押されて移動させられる。
そして、脚を抱えられるようにして片脚をあげられ、腰の高さほどのなにかを跨らせられた。
段ボール……?
足の裏にあたる感覚でそう思った。
反対の脚も同じように、大きくなにかを跨がらせられる。
「はい、隠れて」
ぐいと首を押されて、しゃがまさせられた。
また、片側の耳の穴になにかが押し込まれる。
「あ、ああっ」
思わず声が出た。
やっぱり、段ボール箱だと思った。
その上蓋が締まり、目隠し越しに感じる光が消える。
『聞こえるでしょう、絹香……。ここから先はしばらく、人のいる場所を通るからね。声を出さないのよ』
耳からかおりの声がした。
状況を把握するいとまもなく、ぐらりと身体が揺れる。
箱全体が移動し始める。
どうやら、台車に載せられた大きな箱に入れられたまま絹香は運搬されているようだ。
しばらくすると、周囲から喧噪が聞こえてきた。
廊下を歩いている生徒の声だ。
この学園では、あと一箇月後に文化部発表会があり、いまの時刻はまだまだ、その準備のための活動をしている時間だ。
だとすれば、各文化部クラブの部室が並んでいる校舎を進んでいるのだろうか……?
いずれにしても、絹香は必死になって、箱の中で息を殺し続けた。
そのときだった。
『……そろそろ、痒みも我慢できないよね。だから、贈り物だよ……。これは無音の淫具だから、声さえ出さなければ大丈夫だよ』
耳からまた声……。
今度は真夫だ。
すると、いきなり、股間に装着された貞操帯の内側の丸い突起物がゆっくりと振動をし始めた。
絹香は思わず声を出しそうになり、それこそ、ボールギャグを噛み潰さんばかりにして、それを耐えた。
痒みに苦しめられていた股間を襲う振動は、脳天まで突き抜けるかと思うような衝撃だ。
絹香は震えてくる裸身を必死に縮こませた。
「どこにいくの、みんな?」
声がかけられたのがわかった。
はっとした。
クラスメートの女子生徒だ。
台車が停止する。
「部室に持っていくの。荷物運びよ」
かおりの声だ。
さらに、箱の外の喧騒から、ここにはほかにもたくさんの生徒たちがいるということがわかる。
この場所が文化部棟だとすれば、多分ここは、部室が集まっている場所の中心にあるロビーのような場所だ。
人が集まって談話ができるようなテーブルや椅子がたくさんあり、自動販売機で飲み物などが買える場所である。
その自動販売機の前かもしれない。
箱の外をたくさんの人間が行き来する気配がある。
おそらく、大勢の生徒が箱の外にいる。
そこで素っ裸のまま箱の中に隠され、淫具で痒みに襲われている股間を刺激されている……。
想像も絶する辱めに、絹香は気が遠くなるようだった。
だが、同時に体内に渦巻く快感のうねりで神経が麻痺するような感覚も襲っている。
絹香は興奮していた。
全身に沸き起こる快美感は凄まじいものだった。
実際、責められている股間からは、貞操帯に覆われているにもかかわらず、それでも抑えきれなかった花蜜が内腿に溢れ出てもいる。
内腿にどんどん増えていくぬるぬるとする樹液でそれがわかる。
そのとき、さらに股間の振動が強くなった。
絹香は全身を弓なりにしてしまった。
どんと身体の一部が箱に当たった。
心臓が爆発しそうになった。
「えっ、なにか、箱で音がした? 生き物なの?」
声をかけた女生徒が訝し気な声を出す。
絹香は懸命に息を殺す。
しかし、少しずつ股間の振動が大きくなっていく。
絹香はボールギャグを噛みしめる。
「いいえ、本よ。図書館から特別の許可をもらって借りてきたの」
かおりの声。
相手はそれで納得したようだ。
ほっとした。
すると、振動が小さくなった。
なんとか我慢できるくらいまで刺激が弱まる。
「ふうん……。それでこっちの方は?」
どうやら、恵のことを訊ねているようだ。
「真夫君の侍女の
恵の声……。
「あっ、あの……」
女生徒の困惑したような声……。
おそらく、竜崎事件のことを記憶に思い出したのだろう。
竜崎が真夫の恋人の恵に手を出し、それを真夫が激怒して、完膚なきまでに竜崎たちを殴り倒した半月前の事件は、もはや学園の伝説だ。
「気にしないで。もう、大丈夫だから」
恵がそう応じている。
「そういえば、あんたたちって、クラブなんて、入ってたっけ?」
「SS研に入ったんだ」
真夫が応じた。
「へえ、そういえば、会長が一生懸命に坂本君のこと勧誘していたものね……。だけど、いまいち、あのクラブって、なのをしているのかわからないのよね。ねえ、なにのクラブなの、あれ?」
「まあ、社会学の研究サークルというとこかな。文化部発表会のときには、SS研も展示するから、そのときにでも見学に来てよ」
真夫が言っている。
「ええっ、興味ないなあ……。社会学の研究ねえ……」
女生徒は苦笑いしている。
「いや、ちょっと愉快だと思うよ。何せ、今回は拷問の歴史の研究発表だからね」
「へえ……」
今度は女生徒は少し興味を抱いたような響きになった。
絹香も、そうなのかと思ったが、それはちょっと愉しそうかもしれない。
そして、挨拶を交わすと、再び台車が動き出した。股間の振動も完全に切られた。
さっきの悪戯はわざとやっていたのは明白だ。
それからも、かなり台車は進んだ。
さっきの文化部棟から一度外に出た感じになり、また、どこかの棟に入った気配だ。
隣の棟といえば、運動部の部室がある棟ではないだろうか。
さっきの棟が文化部棟だとすれば、そうなると思う。
それを裏付けるように、こっちの棟に入ってからは、さっきの文化部棟のような喧噪はなく、ひっそりとしている気がする。
運動部はいまの時間は、ほとんどがグラウンドや体育館などにいるのだ。戻るのは着替えのときになるはずだ。
やがて、その棟の廊下を少し進み、どこかの部屋に入ったと思った。
「お待たせ。鬼畜ゲームのスタート地点に着いたよ」
真夫の声がした。
鬼畜ゲーム?
箱が開いた。目隠しの外に光を感じた。
強引に両側から腕を持たれて立たされる。箱に入ったときと同じように、両側から抱えられるような感じで箱の外に出て台車をおろされた。
ここは、どこ?
訊ねようとしたが、ボールギャグのために、鳴るような音になっただけだ。
とにかく、周囲はとても汗臭い。
「ここは男子野球部の部室だ。文化部系の部室を通り抜けて、運動部棟だ。そこに来たんだよ、絹香」
真夫が笑った。
やっぱり、運動部の部室棟……。
だけど、男子野球部……?
なにをさせるつもり……?
絹香は自分の顔が引きつるのがわかった。
だが、横で音がして金属の扉のようなものが開いた音がした。
ロッカー ──?
わけもわからず、そこに押し込められる。
背中と腕にひんやりとした金属の冷たさを感じた。
「……いいかい、絹香……。これは、俺の肉便所になった君の歓迎式だ。野球部の活動は多分、あと十分くらいで終わると思う。その連中がここに戻って来て着替え終わり、最後のひとりがいなくなったときが、ゲーム開始だ。そのとき、顔の目隠しが遠隔操作で自動的に外れるから、そうしたら、文化部棟のSS研の部室までやって来るんだ。簡単でしょう」
真夫は言った。
文化部棟?
しかし、ここが本当に運動部の部屋だとすれば、それは隣の棟だ。
一階でも、二階でもいいが、渡り廊下を通り抜けなければならない。
「んん、んんんっ」
必死に首を横に振った。
そんなこと……。
「今日は運動部は早終わりの日だけど、文化部は発表会の準備があるから、夜まで活動が許可されているのよね。だから、文化部棟はずっと人がいると思うから、そっちにやってきたら気をつけるのよ、絹香」
かおりだ。
確かに、そうだ。
生徒会長である自分が統制していることであり、今日は午後の七時までの夜間活動が認められている。二十個ほどある文化部のうち、半数は申請を出していたと思う。
無理……。
絶対に無理。
SS研はどの経路を使っても、二階の奥になる。
そこに辿り着くには、活動をしている文化部の部室の前をこの恰好で通るということだ。
絹香は必死で首を横に振り続けた。
「それと、いま絹香が入っているのは、適当に選んだ空ロッカーだよ。男子生徒が着替えをしているときに、声を出さない方がいいね。不審に思って開けられてしまうからね。また、このロッカーには鍵は閉めない。さっきも言ったけど、最後のひとりが部室を出たときに、遠隔で目隠しを外す。そうしたら扉に体当たりして、外に出るといい。フライングして、その前に逃げたら目隠しは外れないからね。それでもいいなら別だけど……」
真夫が言った。
絹香は気が遠くなりそうだった。
「じゃあ、そろそろ行くよ。それから、このゲームはもちろん時間制限がある。ただし、その制限時間は絹香次第だ」
意味が分からなかった。
しかし、ずっとお尻の穴に入ってた管から、冷たい液体が注入され始めた。
絹香は驚愕した。
「んふうっ、んんんっ」
さすがに悲鳴をあげる。
「静かにした方がいいよ。誰かに見つかりたければ、もっと大きな悲鳴をあげればいいけどね。それは浣腸剤さ。しかも、特別性のものでね。少量でもかなり効くと思う。それが三十分置きに一定量がお尻の中に注がれる。だから、ぼやぼやしていたら、貞操帯の中でうんちをしてしまうことになるということだ」
なにかが貞操帯の横に装着された。
重さを感じたので、もしかしたら、それは浣腸剤のタンクのようなものかもしれない。
「じゃあ、グッドラック。健闘を祈るよ」
ロッカーの扉ががちゃんと閉じられる音がした。
そして、部室の中から、真夫たちが出ていく気配も……。
絹香は気が遠くなった。
どのくらいがすぎただろうか……。
絹香はいま、激しい便意と痒みの苦痛──。
そして、いつ閉じ込められているロッカーの扉を開けられるのかという恐怖と戦っていた。
真夫が宣言したとおり、この中で待っていると、すぐに野球部の部員たちがやってきて、着替え始める音が外から聞こえてきた。
絹香は必死で息を殺した。
どのくらい待てばいいのか……?
十分?
十五分……?
しかし、野球部も一度に部員が戻ってくるわけじゃなく、後片づけをしていたり、グラウンドで話しこんだりしている者は遅れて来るようであり、この部室に外から誰かが入ってきたり、あるいは出ていったりという物音がずっと続いている。
だから、いつここが空っぽになるのかという予想はまったくつかない。
だが、絹香はそんなに長く耐えられないという予感がしてきた。
待っているあいだに、疼痛のような便意がだんだんと大きくなってきたのだ。
しかも、股間が痒い。
泣きそうなくらいに痒い。
しかし、この状況では腿も擦り合わせるということさえできない。
そんなことをすれば、異変に気がついて、男子野球部の誰かが、思わぬ気まぐれで、ここを開けないとも限らないのだ。
絹香は必死で耐えた。
ともかく、ここが空っぽになれば、どこかでそれを監視している真夫たちが、目隠しを信号で外すのだ。
それが合図だ。
それまでは我慢するしかない。
そのときだった。
いきなり、また、股間の貞操帯の振動が動き出したのだ。
「んふっ」
突然の刺激に、まったく備えていなかった絹香は、思わず高い声を洩らしてしまった。
しまった──。
全身からどっと冷汗が出たのがわかった。
いまの声を聞かれただろうか……?
「……なんだ、いまの?」
すると誰かが目の前で口にしたのが聞こえた。
絹香は懸命に息を殺した。
だが、いまだの股間の振動は続いている。
しかも、意地悪なことに、だんだんと強くなっていく。
絹香はこれ以上、声を我慢できそうになかった。
息をする音も、どうしても荒くなる。
「んんっ……」
また声が出てしまう。
もう、終わりだ。
絹香は絶望に襲われる。
「なんか、変だな……。息の音もするぜ」
「ここじゃねえか? このロッカーに誰かいるみたいだぜ」
だんだんと絹香が閉じ込められているロッカーの前に人が集まってくるのがわかる。
絹香の身体はあまりの恐怖にがくがくと激しく震えてしまった。
「あっ、また、音がした──。絶対に誰かいる。おい、開けろ──」
強い口調の声がした。
がんと手がロッカーにぶつかり、ばんと扉が開いたと思った。
絹香の身体に手が伸び、誰かに引きずり出される。
「んふううっ」
思わず座り込む。
そのとき、いきなり目隠しが落ちて、明るい光が絹香の目に飛び込んできた。