「んふうっ、ふうっ、ううっ……」
バスタブにあさひ姉ちゃんの色っぽい声が響き渡る。
あさひ姉ちゃんのアパートの風呂だ。
あまりに狭くて、ぼろだからと、あさひ姉ちゃんは恥ずかしがっていたが、その分密着できるから嬉しい。
真夫は、あさひ姉ちゃんと一緒に湯船に浸かっていた。
湯船の中で、真夫は浴槽の左右に脚を拡げるようにして浸かり、あさひ姉ちゃんはその脚のあいだに、真夫と同じ方向を向いて、背を真夫に預けるようにしている。
あさひ姉ちゃんには、首輪の後ろに両手首に嵌めた手錠を繋げさせたままだ。
真夫は、性交の疲労を湯で癒しながら、脚のあいだに抱えているあさひ姉ちゃんの乳房を後ろから揉み続けていた。
湯に上気して、肌を桃色に染めているあさひ姉ちゃんはとてもきれいだった。
このアパートにやって来て、二度もあさひ姉ちゃんに精を放ったのに、こうしていると、また新しい欲情の昂ぶりが沸き起こってくる。
そして、あさひ姉ちゃんもまた、真夫に乳房を揉まれ、眼を細めて官能に酔ったような表情をしていた。
何時間でもこうしていたい。
真夫は、あさひ姉ちゃんの乱れた息遣いを心地よく聞きながら思った。
「……ところで、明日、滝田さんという人に会うのは、どこで何時なの、あさひ姉ちゃん?」
真夫は思い出して訊ねた。
真夫が聖マグダレナ学園の生徒に冤罪に陥れられたことに抗議するため、明日の午前中に、滝田という学園の関係者と面会することになっている。
アポを取ってくれたのはあさひ姉ちゃんだが、そういえば、詳しいことを教えてもらっていなかった。
「はあ、はあ、はあ……ああっ、はあ……。ま、真夫ちゃん……」
だが、あさひ姉ちゃんは、うわの空で気持ちよさそうに眼を細めているだけだ。
どうやら、聞こえていないようだ。
「ねえ、あさひ姉ちゃんってばあっ──」
真夫はちょっと面白くなり、わざと大きな声をあげた。
ただし、そのあいだもしっかりと、あさひ姉ちゃんの胸をゆっくりと揉み続けている。
「あっ、は、はいっ。き、気持ちいいです、真夫ちゃん」
あさひ姉ちゃんがびくりと背筋を伸ばして、慌てたように言った。
真夫は噴き出してしまった。
「えっ、な、なに?」
やっと、あさひ姉ちゃんが我に返ったように首を後ろに向けた。
なんだか、あさひ姉ちゃんがとても愛おしい気持ちになった真夫は、そっと唇をあさひ姉ちゃんに近づけた。
すると、あさひ姉ちゃんもすぐにうっとりとした顔になり、そっと唇を寄せてくる。
目を細めて、半開きの唇を真夫の唇に合わせてきた。
あさひ姉ちゃんの舌が熱い吐息とともに真夫の口の中に滑り込んできて、真夫の舌に絡みつく。
真夫は、手錠の繋がった首輪が嵌まっているあさひ姉ちゃんの首を強く引き寄せると、しばらく欲情のまま、あさひ姉ちゃんの口腔を蹂躙して愉しんだ。
あさひ姉ちゃんは、乱暴な真夫のキスに抵抗しない。
むしろ、真夫以上の激しさで、口づけを交わしてくる。
「……ご、ごめん……、な、なにか、さっき言った、真夫ちゃん?」
唇を離すと、あさひ姉ちゃんが虚ろな眼をしながら訊ねた。
「明日の約束のことを訊ねたんだよ」
真夫は微笑みながら言った。
「あっ、明日のこと……」
あさひ姉ちゃんは、やっと大きく頷いた。
「……ご、ごめんなさい。そのことを言わないといけなかったんだ。さっき電話がかかってきたでしょう。それは、そのことだったんだよ……。でも、真夫ちゃんが意地悪するから……」
あさひ姉ちゃんが拗ねたように言った。
このアパートにやって来てすぐのことだと思った。
あさひ姉ちゃんと一緒にここにやって来た真夫は、自制できなくなり、部屋に入ることなく、玄関を入ってすぐの台所で、そのままあさひ姉ちゃんを押し倒して抱いた。
その行為の直後に、あさひ姉ちゃんの携帯に電話があり、真夫はつい悪戯心が芽生えて、電話で話をするあさひ姉ちゃんの股間に怒張を埋めたままゆっくりと律動したり、舌で乳首を舐めたりして、会話の邪魔をして悪戯したのだ。
あさひ姉ちゃんが必死になって快感に堪えて平静を装う仕草は、本当に色っぽかった。
「ごめん、ごめん。それで、なんて?」
真夫は笑いながら言った。
「それがね──。予定が変わって、約束の時間が午後になったのよ。しかも、滝田さんだけじゃなく、工藤という女の人も一緒に来るということよ。その人は、学園の顧問弁護士だって」
「顧問弁護士──? なんで?」
真夫はちょっと驚いた。
わざわざ、顧問弁護士がやって来るなど、随分と大袈裟な気がしたからだ。
「さあ……。とにかく、場所もホテルのロビーの喫茶店になったわ。その工藤さんという弁護士さんは、首に青いスカーフを巻いているのでわかるはずだと言っていたわ」
あさひ姉ちゃんは、待ち合わせ場所になったホテルの名を言った。
真夫でも知っている超一流のホテルだ。
約束の時間は午後二時だそうだ。
「ふうん……。まあとにかく、約束が午後なら、今夜はゆっくりでもいいということだね。じゃあ、しっかりと遊ぼうよ、あさひ姉ちゃん」
「ばかね……」
あさひ姉ちゃんが満更でもなさそうな顔で微笑んだ。
真夫は右手をあさひ姉ちゃんの乳房から、あさひ姉ちゃんの股間に移動する。
あさひ姉ちゃんは、固く膝を閉じていたが、真夫が太腿の隙間に手を入れようとすると、すっと腿の力を抜いて脚を開いた。
「んんっ……」
あさひ姉ちゃんがびくりと身体を震わせる。
真夫は、あさひ姉ちゃんの女陰の中に、ゆっくりと指を湯とともに埋めていっていた。
柔らかなあさひ姉ちゃんの膣の肉襞が指に心地よくまとわりついてくる。
「ああっ、そこは──」
だが、真夫が前側の穴に悪戯している右手に対し、もう一方の左手を反対側にある菊門に移動させると、さすがにあさひ姉ちゃんは身体を固くした。
だが、それほどの抵抗はない。
真夫がさらに執拗にお尻の穴に指をなぞらせると、あさひ姉ちゃんは恍惚の呻き声を洩らしながら、さらにぐったりと裸身を真夫に預けてきた。
しばらく、あさひ姉ちゃんを愉しんだ。
あさひ姉ちゃんは、またもやそのまま達しそうな仕草を示しだした。
しかし、真夫はすっと両手を一度離した。
「……約束だからね。身体を洗ってあげるよ。湯船の中でいい? 最後に一緒にシャワーを浴びよう」
「えっ?」
あさひ姉ちゃんは、当惑した声をあげたが、真夫は返事を待たずに、洗い場からボディーソープとスポンジを取った。
そして、たっぷりとスポンジにソープ液を含ませる。
「さあ、大人しくね」
真夫は肩口からあさひ姉ちゃんを洗い始める。
「うふっ、くすぐったいっ」
あさひ姉ちゃんはそれだけで、くすくす笑って身震いした。
だが、これだけ密着した状態では、身悶えしても、スポンジをかわすこともできない。
真夫は、泡を肩から脇に……。
そして、脇から二の腕に移動していく。
じわじわとスポンジを動かしていくうちに、あさひ姉ちゃんのくすぐったそうな笑い声が、切なそうな喘ぎ声にだんだんと変わっていった。
そして、雌そのものの嬌態を示しだす。
「こんなところも、あさひ姉ちゃんは感じるんだよね」
真夫はからかうような物言いをしながら、脇腹から脇へ、脇から二の腕にかけてと、スポンジを入念に滑らせていく。
あさひ姉ちゃんの裸身に触れているうちに、中学生だったあさひ姉ちゃんの身体に対する記憶が、目の前の大人のあさひ姉ちゃんにしっかりと重なってきた。
どこをどうすれば、あさひ姉ちゃんが感じるのか……。
それが、なぜかはっきりと真夫の頭に浮かぶ。
「う、ううっ、そ、そんなあ……。はああっ」
明らかに感じた声をあげるあさひ姉ちゃんは、ここが外の通路に接している風呂だということを束の間忘れたような感じだ。
まあいい……。
真夫はあさひ姉ちゃんが好きなのだ。
だから愛し合う行為に、別に疚しさも恥ずかしさも感じない。
むしろ、自分こそ、あさひ姉ちゃんの恋人なんだと、あちこちに宣言して回りたい。
それで、あさひ姉ちゃんが、真夫のことを受け入れざるを得なくなればいいのだ。
「ここも洗おうね、あさひ姉ちゃん」
真夫はさっとスポンジをあさひ姉ちゃんの美しい乳房に当てて、なぞりまわした。
「ふうううっ」
あさひ姉ちゃんが身体を弓なりにして声を響かせた。
「スポンジが気に入ったんだね、あさひ姉ちゃん」
「そ、そんなこと……」
恥ずかしいのか、真夫がからかうと、反論のような言葉を口にしようとする。
だが、真夫が、スポンジで乳房の表面を撫ぜてやると、途端に顔を仰向かせて上体を捩じった。
可愛いものだ。
「お、お願いよ、真夫ちゃん。自分で身体を洗わせて……」
あさひ姉ちゃんはやがて、耐えきれなくなったように哀願した。
だが、もちろん、こんなに面白いことを中止するわけがない。
真夫は、返事の代わりに、スポンジを湯の中ですっとあさひ姉ちゃんの股間に移動させて擦る。
「んふうううっ」
途端に歯を食い縛った悶え声が響く。
そのままスポンジを太腿に這わせる。
あさひ姉ちゃんが激しく反応した。
真夫は、湯の中であさひ姉ちゃんを反転させ、あさひ姉ちゃんを真夫に向かい合うようにさせる。
片脚をあげさせた。
膝から脛をスポンジで丁寧に擦る……。
さらに、ふくらはぎから足首……。
足の甲から踵……。
足の裏から足の指……。
一本一本まで丹念に擦る。
片脚が終われば、もちろん、反対の脚もだ……。
やっと脚全体を擦りあげたときには、あさひ姉ちゃんは、すっかりと荒い息をして脱力状態になっていた。
「ヴァギナは、スポンジじゃなくて、特別な洗い方をするね」
真夫はあさひ姉ちゃんを引き寄せると、湯の中で対面で向かい合ったまま、怒張をあさひ姉ちゃんの膣の中に挿入させた。
「ああっ」
あさひ姉ちゃんが鼻の奥から出すような悩ましい声を出す。
「あさひ姉ちゃん、愉しもうよ……。もっと愉しもう」
真夫は言った。
湯の中であさひ姉ちゃんの尻たぶを抱えるように、二度、三度と上下させて怒張の傘を子宮にぐいぐいと繰り返し当てていく。
続けるうちに、あさひ姉ちゃんはまたもや狂乱を示し始めた。
「あだ、あはあっ、す、すごい。やっぱり、真夫ちゃんはすごい。ああっ、す、凄いよっ」
リズミカルに腰を上下をさせながら、あさひ姉ちゃんは引きつった声をあげた。
さらに律動を続ける。
「うぐうううっ、んふううううっ」
やがて、あさひ姉ちゃんが、真夫に抱かれたまま、がくがくと腰を揺すった。
達したのだ。
真夫は今度はそれに合わせるように、あさひ姉ちゃんの中に精を放った。
「あああ……、真夫ちゃん……」
あさひ姉ちゃんが精根尽きたように、ぐったりと真夫に体重を預けてきた。
しばらく真夫はその状態のままあさひ姉ちゃんと抱き合ったままでいた。
時間がすぎるうちに、真夫の怒張はあさひ姉ちゃんの中で萎えた状態になった。
一度抜き、態勢を直す。
そして、また抱き合った。
そのまま、時間が経つのを忘れるかのように、ふたりでくっついていた。
「……ねえ、あさひ姉ちゃん」
やがての果てに、真夫は耳元でささやいた。
「えっ?」
「俺、ここに、ずっといちゃいけない?」
すると、びくりとあさひ姉ちゃんの身体が跳ねあがるように真夫から距離を取ろうとした。
もっとも、狭い湯船なので、身体を離すことなどできないのだが、あさひ姉ちゃんの態度は、明らかに大きな動揺をしたことを示していた。
「俺、もう十八なんだ……。高校も退学になっているし、本当は施設には戻れないんだよね。まあ、園長先生は、少しのあいだなら、いてもいいと言われているけど、なるべく早く出ていきなさいとも言われているんだ……。とにかく、働くよ……。だけど、できれば、このまま、あさひ姉ちゃんと暮らしたい……」
「えっ」
「ねえ、いいでしょう、あさひ姉ちゃん……。俺は働いて、お金を入れる。そうすれば、あさひ姉ちゃんも楽になるでしょう。バイトを少し減らして、学生に専念できるんじゃない。ねえ、そうしようよ……。俺、あさひ姉ちゃんが好きだし……。だから……」
だが、真夫の話の途中で、突然にあさひ姉ちゃんが湯船の中で立ちあがった。
その態度があまりにもいきなりだったので、真夫はびっくりしてしまった。
「あんまり、ずっと入っているとのぼせちゃうわね」
あさひ姉ちゃんは、にっこりと微笑んだ。
だが、その笑顔があまりにもぎこちなくて、真夫は変な感じがした。
どうしたんだろう。
変な感じだ……。
だが、真夫はもう決心していた。
「ねえ、あさひ姉ちゃん、さっきも言ったけど、俺は四月に十八歳になったんだ。結婚だってできる年齢だよ。俺は、あさひ姉ちゃんと……」
真夫は思い切って言った。
結婚なんて、いまのいままで全く考えていなかった。
だが、頭に思い浮かんでしまうと、それしか考えられなくなった。
あさひ姉ちゃんと夫婦になって、一緒に歳をとる……。
そのあまりにも甘美な将来に、真夫は酔いのようなものまで感じた。
きっと、あさひ姉ちゃんも……。
「やめてえっ」
そのとき、浴室に金切り声が響いた。
あさひ姉ちゃんに怒鳴られたのだと悟ったのは、少しの間が必要だった。
そして、我に返った。
いくらなんでも、どうやら、あまりにも自分が性急すぎたようだ。
あさひ姉ちゃんとは、五年ぶりだ……。
真夫があさひ姉ちゃんを想っているのと同じように真夫のことを想っているわけがないか……。
この五年、真夫はあさひ姉ちゃんを忘れたことなどなかったが、同じようにあさひ姉ちゃんが想ってくれたなどというのは虫がよすぎる。
よく考えれば、真夫など、ついさっき高校を退学になったばかりの子供じゃないか。
ちょっとくらいセックスしてもらったくらいで、一人前の男の真似をして求婚など、なんて、恥ずかしいことをしたのだろう……。
さすがに優しいあさひ姉ちゃんでも、どう対応していいか困るだろう……。
「ご、ごめん、あさひ姉ちゃん……。へ、変だよね。いきなり、結婚だなんて……。ご、ごめんとしか言えない……。でも、撤回はしないよ。俺、仕事を探すから……。そして、ちゃんとした仕事についたら、改めて、あさひ姉ちゃんに……」
真夫は、なんとか自分の気持ちだけは伝えようと、懸命に言葉を探った。
だが、あさひ姉ちゃんの顔を改めて見たとき、絶句してしまった。
あさひ姉ちゃんは泣いていた……。
とても悲しそうな顔だった。
どうして、そんなに悲しい顔をするの……?
あさひ姉ちゃん……。
「ち、違うの……。嬉しいの……。とっても嬉しいよ、真夫ちゃん。あたしだって、真夫ちゃんが好き。好きなの……。本当に好きなの……。だけど、あたしは真夫ちゃんと一緒にはなれない。ごめん。ごめんなさい。あたし、真夫ちゃんに黙っていたことがある……。実はあたし、あと半月もすれば、大学をやめるの」
「大学をやめる?」
真夫は驚いて声をあげた。
「このアパートも引き払う。真夫ちゃんには関係のない話だから、心配させないことだけを言って……。あたしはちゃんと大学生をしているんだということだけ見せて……。そして……そして、思い出だけをもらって……。それで、別れようと思っていた……。なのに……。それなのに真夫ちゃんの意地悪……。結婚しようだなんて、どうして、そんな意地悪を言うの──。意地悪……。意地悪……。意地悪……。意地悪……。そんなこと言われたら、あたし、真夫ちゃんと別れられないじゃないの……。ああっ、意地悪──」
あさひ姉ちゃんが声をあげて泣き出した。
真夫は呆然としてしまった。