腕を掴んでロッカーから引きずり出された。
「いやああっ」
絹香は絶望の悲鳴をあげて、その場に必死にしゃがみ込んだ。
脚に目隠しが当たって、床に落ちる。
ただの目隠しじゃない。
端にワイヤーが編んであり、後ろの部分は留め具を差し込んで電子ロックのようになるものだ。それが外れて落ちたのだ。
ただの目隠しにしては、相当に作り込んである器具だと思った。
それはともかく、せめて顔を見られまいと思って、必死に顔を伏せた。
だが、なんだか様子がおかしい……。
女の子の笑い声だけが、すぐそばで聞こえる。しかし、ほかの声は聞こえない。
顔をあげた。
唖然とした。
そこには誰もいなかった。
がらんとしている。
ただ、かおりだけが、すぐ横に立っていて、くすくすと笑っている。
「ん、んん?」
「どういうこと」と言おうとして、それはボールギャグで阻まれた。
とにかく、絹香は唖然とした。
「驚いた? つまり、こういうことよ。だけど、こんなことをよく思いつくわよね。しかも、ちゃんと準備したりして……。ああいうところは、あの真夫君もすごくマメなのよねえ。まあ、作るのは玲子だけど……」
玲子?
誰のことだろう……。
しかし、かおりが絹香が閉じ込められていたロッカーを指さしたことで、思念は途切れた。
そこには、小さな手の平ほどのラジオのような機械が磁石で張りつけてあった。
かおりがその機械に触ると、突然に男子生徒たちの会話やざわざわとした喧噪が聞こえてきた。
絹香は呆気にとられた。
どうやら、最初から誰もいなかったようだ。
目隠しをされていたので、すっかりと騙されていたのだ。
ほっとするとともに、全身の力が抜けたようになってしまった。
その絹香から、かおりがボールギャグを外した。
ふと見ると、そのボールギャグも電子ロック式のものだ。
「ほら、腕を向けて。そのままじゃ、ドアも開けられないでしょう。ここで外してあげるように言われているのよ。とにかく、頑張って、SS研までやって来てね……。まあ、こんなことやってもらいたくて、真夫君をSS研に誘ったんでしょうけどね……。彼、とっても張り切っているわよ」
かおりが絹香に背中を向けさせて、持っていた肩掛け袋から、小さな操作具を取り出した。
金属音が背中で鳴って、ずっと密着していた金属の腕輪が外れた。
「ああっ」
絹香はほとんど無意識に股間に手を持っていった。
貞操帯の上から必死で股間を擦る。
もう痒みは限界にまで達している。
なにしろ、十五分か、二十分のあいだ、ずっと腿を擦り合わせることすら我慢していたのだ。
「う、ううう……」
しかし、すぐに苦痛の呻き声をあげてしまった。
ほとんどなにも感じないのだ。
どういう構造になっているかわからないが、いくら上から押しても、揺すって動かしても、なにも触ってないかのように股間に刺激が伝わらない。
さらに横から指を入れようとしても無理だった。ここにも細いワイヤーみたいなものが編んであり、指どころか細い棒のようなものすら入りそうにない。
「無理よ。わたしも、その貞操帯は何度も装着されたことがあるもの。その掻痒剤もね……。苦しいのも、本当にわかるけど、我慢するしかないわ……。その貞操帯は外からの刺激は完全に遮断されてしまうし、その痒み剤も特別性よ。掻いても痒みは収まらないわ。男の人の精液に混ざらないと中和されない成分になっているんだって。痒みを消したければ、真夫君のところにいって、犯してもらうしかないわね……。まあ、それとも、二日ほど経てば、痒みも消えるらしいけど……。そんなんでも、開発に億単位の経費がかかっているらしいわ」
なんだか、かおりが気の毒そうな口調で言った。
億単位?
本当に……?
そして、気がついたが、かおりの手首には、絹香が装着されているものと同じ金属の腕輪がある。
また、同じような構造の金属のチョーカーも首に……。
「これ? あんたと一緒よ。真夫君の奴婢の印……。あの恵も同じものをしているわ。あんたも腕輪は貰ったしょう? 多分、犯した後で首につけるものをくれると思う。まあ、これはそのための遊びのようなものね……。いまは、とりあえず、これよ。こっちも真夫君の言いつけだから、悪く思わないでよね……」
かおりは絹香の首に手を伸ばすと、かおりの首についているものとは異なる太い金属の輪っかを嵌めてしまった。それには、まるで犬の首輪のように一メートルほどの細い鎖が繋がっている。
「ね、ねえ、こんなことやめて……。い、いくらなんでも、SS研になんて行けるわけないでしょう。文化部棟にはいっぱい生徒がいるわ。裸でなんて行けない」
懸命に訴えた。
しかし、かおりは首を竦めただけだ。
「わたしになにを言っても無駄よ。わたしは真夫君の奴婢なの。あんたを許してあげる権利なんてないわ。まあ、あの恵なら、真夫君の恋人だから、いうことをきかせることくらいできるかもしれないけど、わたしたちじゃ無理ね。だったら、夜中まで待ったら。きっと、人はいなくなるわ。真夫君なら、こういうことに手間暇惜しむタイプじゃないから、きっと待っているわ」
かおりは笑った。
「そ、そんなに待てない……。わ、わかっているでしょう。お、お腹が……」
すでにさっきからごろごろとお腹が鳴っている。
注がれている強烈な浣腸剤が猛威を振るっているのだ。
こうやっているだけで、ちょっとでも油断すれば、お尻からなにかが出そうな感じだ。絹香は一生懸命に、お尻に力を入れ続けている。
「だったら、頑張るしかないわね……。だけど、あんただけが、こんなことをしているわけじゃないのよ。あたしだって、こんなことばっかり、やらされているんだから。わたしが授業に出るとき、いつもそれと同じ貞操帯を装着しているの知らないでしょう」
「えっ?」
絹香は思わず言った。
真夫が転入して来てから、その真夫の従者生徒になったかおりは、いまは絹香と同じクラスに編入になっている。
だから、かなりの授業は一緒だ。
この学園は、選択単位制だから、同じクラスだからといって、必ずしも全授業を一緒に受けるわけじゃないが、少なくとも、朝夕のホームルームは一緒にいる。
そういえば、ときどき、びくりと身体を動かしたり、なにかを我慢しているような素振りをしていたような気もする。従者生徒になって、ちょっとどきっとするような短いスカートもはいているし、なんだか急に色っぽくなったような感じもしていた。
絹香は驚いた。
たが、教場で授業を受けているときにも、ひそかに淫具で辱しめられる……。
想像すると、絹香の中に怪しい淫情が目覚めた気がする。
「ふふふ、想像した? 満更でもなさそう……。わかりやすいわね。そんなに乳首、大きくしちゃって」
かおりが絹香の胸に手を伸ばした。
絹香は慌てて両手で乳房を隠す。
かおりはけらけらと笑った。
絹香は赤くなってしまった。
「……まあいいわ。とにかく、我慢するのね。あっ、でも、あんたにとっては我慢じゃないか。マゾだものね……。いずれにしても、わたしたちは勝ち組よ。あの真夫君の奴婢になれるんだもの。そこら辺の御曹司の正妻になるよりも、ずっといいわ。わたしは運がよかったと思っている。絶対に真夫君から、もう離れないわ。そのためなら、なんだってするし、もっときれいになるように努力もする。役にも立てるようにならないと、捨てられるかもしれないし……」
「勝ち組?」
絹香は首を傾げた。
真夫は確か両親のいない孤児であり、養護施設の出身のはずだ。
かおりのいう勝ち組とはどういう意味だろう。
「……あの坂本真夫君は、豊藤グループの御曹司なのよ。隠し子……。こうやって、女子高生の奴婢を集めているのは、その後継者になるための試験なのよ……。わかる? わたしたちは選ばれたのよ。彼に……」
かおりが小さな声で言った。
絹香はびっくりしてしまった。
しかし、言われてみれば、しっくりくる。
そもそも、なんの伝手(つて)もなく、財産家の子弟しか入れないようなこの学園に入れるわけがないし、しかも、いきなりのS級生徒だ。従者生徒だって、一流企業の娘である目の前の白岡かおりが就かされた。
なるほど、この学園は、豊藤系列の学校法人だ。
特別待遇だとは思っていたが……。
「わかるでしょう……? まあ、とにかく、お互いに競い合おうね。真夫君の寵愛がもらえるように……。そして、彼が後継者になるように協力しよう……。まあ、真夫君が後継者になっても、ならなくても、もう彼はわたしの面倒を看てくれるって、言っているけど、どうせなら、豊藤の後継者になって欲しいじゃない」
かおりは言った。
絹香は呆然とした。
しかし、考える暇もなく、一緒に来なさいと言って、ぐいと首輪の鎖を引っ張っられた。
「ま、待って、や、やっぱり、外になんか……」
絹香はたじろいだ。
「外にでなきゃどうするのよ。言っておくけど、男子野球部は今日は部外に行っているのよ。あと三十分もすれば、本当に戻るわよ。こんなところに、じっとなんかいられないんだから」
ぞっとした。
そう言われると、もういくしかない。
片手で胸を隠し、片手は股間にやってついていく。いくら擦っても痒みは癒えないことはわかっているのだが、そうしないとすごせないのだ。
また、だんだんと便意が強いものになっていく。
そのときだった。
「あっ」
絹香はその場でくの字に身体を曲げてしまった。
新しい浣腸液がさらに追加になったのだ。
お腹の苦しさが倍増する。
絹香は懸命にお尻の筋肉を引き締めた。
念のために腰の横を見る。
やはり装着式の液体のタンクがそこにある。管のようなものが貞操帯の内部に繋がっていて、ちょっと触ったが、とても外れそうにもない。
「だ、だめ……。で、出る……」
「こんなところで出さないでよ。多分、真夫君に頼まないと、うんちもさせてもらえないと思うから……。言っておくけど、真夫君の奴婢は毎日、彼に見られながらうんちをするのよ。お尻だって、彼が拭くの。最初はびっくりするし、恥ずかしいけど、いまは逆に気持ちいいくらいよ。本当に支配されているんだって気になるんだから」
かおりが思い出すように笑った。
絹香は仰天してしまった。
そして、かおりが絹香の首輪を引いたまま、廊下に出る扉を開ける。
慎重に外を見ている。
「大丈夫よ。誰もいない。いまよ……」
かおりが強い力で首輪を引っ張る。
絹香はついていくしかない。
廊下に出た。
確かに廊下そのものには人はいないが、ずっと向こうの文化部棟に向かう渡り廊下の方向には、何人かの生徒がいる様子が見える。
絹香は慌てて、身体を低くして身を隠す。
かおりは渡り廊下とは反対側の二階にあがる階段の方向に向かった。
そっちの階段をあがった二階にも、文化部棟に向かう渡り廊下はある。
そのとき、がちゃんと音がした。
びっくりしていると、鎖の反対側に留め具があり、それが廊下にあった自動販売機の金具に繋げられている。
「あっ」
固定されたのだ。
慌てて鎖を引っ張るけど、これも電子ロックだ。
外れる感じはない。
「じょう、冗談はやめてよ。は、外して──。外してったら──」
絹香は鎖を引っ張りながら言った。
腰は可能な限り低くして、いまはしゃがみ込んだような体勢だ。
「真夫君からの伝言よ。最初の課題だって……。胸だけで達しなさいって……。そうすれば、その鎖の留め具は外れるらしいわ」
「そ、そんな──」
絹香は愕然とした。
こんなところで……。
「何度も言うけど、わたしはただの奴婢よ。あんたと同じ──。わたしにはなんの力もないから……。あの変態に盲目的に従うだけよ……。さっそく始めたら……? あっ、そうだ。どうしても無理なときは、これを使っていいそうよ。その貞操帯を振動させるリモコンよ。ただし、それにも仕掛けがあって、強くなる方には動くけど、弱くする方には動かないわ。一度ひねれば、SS研まで強いままよ。考えて動かしてね」
かおりは、そのリモコンを絹香に握らせると、そのまま階段の方向に立ち去ってしまった。
そして、あがっていなくなる。
絹香は呆然とする。
しかし、もうどうしようもないのだろう。
とにかく、自動販売機の陰に隠れるようにして、両手で乳房を揉む。
感じるが、排泄感が邪魔をして、快感があがるまでいかない。そもそも、胸だけでなんて、自慰のときだっていったことない。
無理だ。
絹香は泣きそうになった。
今度は胸を揉みながら、貞操帯を力一杯、手で動かしてみた。
でも、やっぱり刺激が股間に伝わらない。
しばらく、もがいた。
だが、とてもじゃないが絶頂なんて状況にはならなかった。
すると、違和感を覚えた。
「えっ?」
運動部棟の前にバスが近づく気配を感じたのだ。
おそるおそる身体を沈めている体勢から、顔だけをあげて窓から外を見る。
外はすっかりと陽が落ちていたが、あれは野球部のバスだ。
絹香は確信した。
そういえば、さっきかおりが野球部は部外活動だと言っていた。
しばらくすれば、戻るとも……。
つまりは、ここに来る。
まだ、野球部の部室の目の前だ。
しかも、バスが窓の外に停車した。
ユニホーム姿の男子野球部の部員たちが、荷物を持って降り始める。
愕然とした。
「だ、だめよ……」
もう背に腹は変えられない。
絹香は貞操帯の振動を動かすダイヤルをぐいと思い切り回した。
凄まじい緊張感と猛烈な痒みに、貞操帯の淫らな振動が一気に伝わり、絹香の頭は一瞬にして真っ白になる。
だめ……。
強く、動かしすぎた……。
焦って、回しすぎたのだ。
慌てて戻そうとした。
しかし、さっきかおりが告げたように、逆の方向にダイヤルは回らない。
「んふううっ」
とにかく、お陰で、あっという間に達してしまった。
その瞬間に、がちゃんと金具が外れる。
外れたのは、鎖の先端の側だ。
絹香は急いで鎖を集めると、それを束にして掴む。
そして、階段の方向に……。
だが、股間の振動が強くて、腰に力が入らない。
しかも、それを狙ったように、三度目の浣腸液も……。
そんな、早すぎる……。
絹香は歯を喰いしばった。
仕方なく、四つん這いのまま床を這って行く。
階段に着く。
必死になって手すりにつかまって、とにかく上にあがる。
下の階に、どやどやと野球部がやって来たのは、絹香が辛うじて二階にあがる踊り場を越えたのとほぼ同じタイミングだった。
絹香は二階に這いあがった。